『ジキルとハイド』とは
『ジキルとハイド』は、1973年にフジテレビ系列で放送された、丹波哲郎主演のサスペンスドラマです。撮影が完了したのは1970年でしたが、映像の過激さから放送は見送られ、実際に放送されたのは約3年後の1973年1月9日〜4月24日(毎週火曜日)でした。
以下は、DVDを販売するベストフィールドが、公式サイトに掲載している「作品内容」です。
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『ジキルとハイド』ついにDVD発売!
そんな問題作でしたが、最初の放送から約50年後の2023年6月30日。ついに『ジキルとハイド』のHDリマスター版がDVD化され、販売が開始されました!
本作はこれまで、1973年のテレビ放送(フジテレビ系列)、2001年と2006年のCS放送(ファミリー劇場)の3度しか放送されていません。未視聴の方はもちろんのこと、視聴済の方でも、よりクリアな映像の『ジキルとハイド』を楽しめることでしょう。
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『ジキルとハイド』の主なスタッフ・出演者
以下は、『ジキルとハイド』の主なスタッフと出演者を列挙したものです。
丹波哲郎を筆頭に、五社英雄、長坂秀佳、原信夫とシャープス&フラッツ、篠山紀信、松尾嘉代、露口茂・・・と豪華な面々が名を連ねています。
スタッフ
企画:丹波哲郎
監督:五社英雄、石田勝心、山際永三、今野勉、村木良彦、西村潔、他
演出:五社英雄
脚本:長坂秀佳(出雲五郎)、大津皓、小川英、他
演奏:原信夫とシャープス&フラッツ
写真:篠山紀信
レギュラー出演
慈木留公彦 博士(ハイド):丹波哲郎
慈木留美奈:松尾嘉代
毛利刑事:露口茂
植木刑事:井上紀明
秋元和代:三笠れい子
ナレーション:中江真司
ゲスト出演
第1話:小川真司
第2話:山谷初男、須賀不二男、江角英明
第3話:見明凡太朗、三崎千恵子、岸久美子
第4話:横山リエ、中井啓輔
第5話:梅田智子、武藤英司、片岡五郎
第6話:亀谷雅彦、河村祐三子、今福正雄(現:今福将雄)、伊佐山博子(現:伊佐山ひろ子)
第7話:久里千春、中山克巳、沢りつお、斎藤清憲(現:伴大介)
第8話:太地喜和子、関弘子、伊達三郎、中沢治夫(現:剛たつひと)
第9話:吉行和子、佐田豊、福山象三、盛山毅アナウンサー
第10話:池田昌子、本山可久子
第11話:森下哲夫、石井富子(現:石井トミコ)、赤塚真人、畠山麦、福岡正剛
第12話:津田亜矢子、宇佐美淳也、山谷初男、北原文枝、吉水慶
第13話:小林重四郎、川島育恵、石田茂樹
『ジキルとハイド』の見どころ
あらすじ
主な登場人物は、慈木留博士(演:丹波哲郎)、20歳以上年下の妻・美奈(演:松尾嘉代)、慈木留家によく出入りする友人・毛利刑事(演:露口茂)の3人。さらに、美奈と毛利はかつて恋人同士だったという若干複雑な関係です。
物語は、慈木留が開発した緑色の薬から始まります。慈木留自身が実験台となって薬を服用すると、彼とは似ても似つかぬ、屈強で凶暴な "ハイド" という若者に大変身。ハイドは、街に出て暴力・強姦、さらには殺人と無慈悲に人を襲います。しかし、慈木留に戻るとその記憶は消失。。。
ハイドを捜査していた毛利は、ハイドの目撃情報から、慈木留とハイドに何らかの関係があることを確信します。最後は、ハイドを追い詰めますが、その結末やいかに。
ハイドへの変身
慈木留博士は59歳。外見と挙動からはもっと老けて見えますが、薬を飲んだ瞬間、見た目30代(という設定)のハイドに変身します。髪の毛は白髪混じりから真っ黒な髪に、体つきはヨボヨボからガッチリとした肉体に変わり、同一人物とは到底思えない別人が誕生します。ただ、衣服まで、白衣から黒いトレンチコートに変わってしまう点は謎です。
ハイドの暴力・強姦・殺人のシーン
ハイドの暴力は容赦がなく、大抵の場合、殺害するまで徹底的に暴力を振るいます。変身前の慈木留博士からは想像もできないほど屈強になり、大勢に囲まれても怯むことなく、相手を徹底的に叩きのめします。
また、若い女性がいれば必ずと言っていいほど強姦し、女性は悲鳴をあげ抵抗しますが、なぜかその後はハイドに好意を抱くようになります。ハイドは、妻の美奈まで襲い、最初は美奈も恐怖におののきますが、次第に、ハイドと夫(慈木留博士)が同一人物だと気づき、心と体を許すようになります。
妻の美奈に限らず、第3話の青年団員の恋人(演:岸久美子)、第4話の慈木留の研究室の新人医師(演:横山リエ)、第8話のアイドル歌手(演:太地喜和子)、第11話の団地の主婦(演:石井富子)、第12話の慈木留の友人の娘(演:津田亜矢子)らもまた、ハイドに好意を抱くようになりました。
強姦のシーンは、衣服を破るシーンや接吻のシーンはありますが、露骨な裸体のシーンはありません。代わりに篠山紀信のヌード写真を挿入したり、手足の動きや悲鳴だけを流したりして、行為を暗示する効果を演出しています。
『ジキルとハイド』の音楽
オープニングテーマやドラマ中のBGMは、日本を代表するビッグバンド、原信夫とシャープス&フラッツによる演奏です。特に、オープニングの篠山紀信のサイケデリックな写真とのコンビネーションは、ドラマの不気味さを暗示するようで、冒頭からいきなり惹きつけられます。
また、当時の流行歌も起用されており、ちあきなおみの『四つのお願い』(1970年4月10日発売)、藤圭子の『圭子の夢は夜ひらく』(1970年4月25日発売)、『命預けます』(1970年7月25日発売)がBGMとして流れました。1970年3月の時点で全13話の撮影が終了していたという説がありますが、これら楽曲のリリースはその後のことで、どのタイミングで起用されたかは不明です。
第9話で幼児が登場するシーンでは、童謡『夕焼け小焼け』を不協和音にアレンジし、不気味な雰囲気を作り出しています。
『ジキルとハイド』のロケ地
当時のロケ地については情報がなく、ほとんどが不明ですが、2023年現在確認できるものをいくつか挙げます。いずれも、半世紀以上前の街の雰囲気がわかる貴重な映像です。
新宿駅周辺
街並みの映像で最も多いのが、新宿駅周辺です。第3話や第8話では、西口の駅前や東口の新宿通り界隈の様子が確認できます。
特に第8話の、青年が見知らぬ女性(演:伊佐山ひろ子)と出会うシーンでは、かつて新宿三丁目にあった映画館「新宿ロマン劇場」(現在はコメ兵新宿店)らしき映像も確認できます。因みに、当時公開中の映画は『パットン大戦車軍団』。日本の封切りは1970年6月27日で、第8話の撮影時期はこれ以降だったのでしょうか。
また、青年が女性と一夜を共にし、翌朝街を歩くシーンでは、武蔵野通りの「ライオン」と、突き当たりに丸井の古いロゴ(「井」を丸で囲んだロゴ)が確認できます。
半世紀以上前の新宿の様子が垣間見える、貴重な映像と言えるでしょう。
横浜外国人墓地前
第4話で、慈木留博士が研究室の新人医師(演:横山リエ)と食事をするシーンがあります。窓の外には、横浜の外国人墓地が見えており、建物は明らかにその前に位置する「カーネルスコーナー(1967年竣工)」と確認できます。現在は、2階に「エリゼ光」というレストランが入っているようです。
半世紀以上経っても変わらない光景という点で、これまた貴重な映像と言えるでしょう。
その他のロケ地
第4話で石上ユリ(演:梅田智子)が登場するシーンでは、神宮球場や渋谷駅南口らしき映像が確認できます。
おわりに
最後に、『ジキルとハイド』の最終回予告のナレーションの一部を引用します。
ハイドへの変身で慈木留が開放感を得たように、そして周囲の人間がハイドに魅力を感じたように、本作は、視聴者にも "爽快な開放感" を与えてくれるドラマなのかもしれません。興味のある方はぜひご覧ください。