劇団ひとりの恋愛妄想狂時代

劇団ひとりの恋愛妄想狂時代

日本生まれアラスカ育ち、黒人やクマとの死闘。愛と涙の恋愛妄想。剣道、ボクシング、柔道など格闘技 経験し、修学旅行では他校のヤンキーにカラまれ、サングラスの下で目を光らせた。


劇団ひとり、本名、川島 省吾は、千葉県千葉市生まれ。
最古の記憶は、3歳のときに寿司屋で嘔吐し、カウンターに寝かされたこと。
体が弱く、アトピーや喘息、苦しみ、全身の湿疹が出ると傷にならないように手袋をハメられ、蚊取り線香で病院送りになったこともある。
蚊取り線香は大人になっても苦手でキンチョーではなく緊張の夏を送っている。
「なった人間にしかわからないだろうが、蚊取り線香で死にそうになるほど悔しいことはない」
近所の保育園に入ると、なぜかラグビーをやらされた。
タックルにいかないと園長先生に
「気合が入ってない」
と怒られ、涙と鼻水を流しながらタックルの練習を繰り返した。
そんな苛烈な保育園生活でたくましく成長。
運動会の日には日頃の成果をみせてやろうと張り切っていたが、当日、行われるのはリレーや玉入れなど生ぬるいものばかり。
「あれだけ頑張ったのに、なぜ?」
なぜラグビーが行われないのか疑問に思い、園長先生をみると、いつものラガーシャツではなく背広を着て優しく微笑んでいた。
「大人というものを少し理解した」

初恋は5歳。
お相手は同じ保育園に通う近所のリカちゃん。
ポニーテールと少し吊り上がった目が印象的なリカちゃんは、ママゴトの天才。
ある日、自分の家に遊びにきたリカちゃんと「秘密基地」である物置の中へ。
「ここは旅館。
私はお客。
君は旅館の亭主」
リカちゃんはそういって自分の家から持ってきたシイタケを出して
「これは毒キノコ。
これを「夕飯です」っていって持ってきなさい。
毒キノコを食べた私は体がシビれて動けなくなるから、そのとき私のお尻をさわりなさい」
と指示。
いわれた通りシイタケを運んでいくと
「アラッ、おいしそうなキノコね。
いただきまーす」
キノコを口にしたリカちゃんがカッと目を見開いて
「ウウlッ
こ、これは?」
といってノドをかきむしり、その場に倒れた。
劇団ひとりは、ワケがわからないままリカちゃんのお尻を撫でた。
またあるとき水色の毛布をみてリカちゃんがひらめき、
「これはプール」
といって部屋に敷いた。
「今から私はここでおぼれるから。
そしたら助けて、お尻をさわっちゃいなさい」
毛布の上で全力でおぼれるリカちゃん。
劇団ひとりは、ワケがわからないままリカちゃんのお尻を撫でた。
結局、リカちゃんの提案する遊びは、設定は違えど、終わりは全て同じなミニエロコントだった。
「リカちゃんが幼少期にボクに与えた影響は強く、30年近く経とうとしている今もなお鮮明に頭の中に焼きついている。
彼女は今どうしているのだろう。
あのまま成長しているとしたら相当な女性になっているかもしれないが、今の僕ならその期待に応えられなくもない。
リカちゃん、僕は成長しました」

母親と一緒にスーパーにいったとき、ガス風船をもらい、店内をウロチョロしているときにふと手を離してしまった。
天井にぶつかって揺れている風船のヒモに背伸びしたりジャンプして手を伸ばしたが届かない。
すると老人がやってきて風船とってくれた。
「ありが・・・」
とお礼をいおうとしたとき、老人はヒモを首に巻きつけられて締めてきた。
息ができずに顔面が破裂しそうになる中、おぼろげに走ってくる母親がみえた。
元客室乗務員で元ミス札幌、現マナー講師の母親は見事なショルダータックルを決め、息子を救った。


親戚の集まりで眠くなって、目を閉じていると
「まあ、かわいい寝顔」
という声が聞こえてきたので、そのまま寝たフリを続け、みんなに自分の顔がよくみえる角度に寝返りを打ち、口をムニャムニャさせて無邪気な寝顔をつくった。
そして
「かわいい」
という声とカメラを構える人間を薄目で確認。
そのせいで大人になって自分の子供ができて、その寝顔をみても簡単には
「かわいい」
とはいえず
「本当は起きてんじゃないか」
と疑ってしまう。

国際線のパイロットである父親の転勤で、小2のときにアメリカ、アラスカ州へ引っ越すことになった。
子供心に、とにかく遠くて寒い場所だということはわかったが、何よりもツラかったのはクラスメイトとの別れ。
最後の授業が終わり、担任の先生にいわれて教室の前に立ってお別れの挨拶をした。
挨拶が終わると担任がチャッチャッと号令をかけ、みんなサッサと帰ってしまった。
「えっ、それだけ?」
文字通り教室にひとり残って落胆。
「きっとみんな泣きながら自分との別れを惜しむに違いない」
と思っていたのに、あまりにもあっけない終わり方だった。
「冗談じゃない。
人がどこだかわからないような遠くに行ってしまうというのになんでヤツらは悲しまないんだ。
おかしいだろ。
俺みたいなクラスの人気者がいなくなるんだから悲しんで当然だ」
落胆は怒りに変わり、帰宅後、どうしても納得いかないので友人宅までいき、思いを打ち明けた。
そしてその友人と共にクラスメイトの家を訪問し、改めてお別れの言葉をもらうことにした。

「お別れの挨拶をしてほしい」
クラスメイト達は突然の訪問に驚き戸惑いながら
「あっ、えっと、元気でいてください」
などと挨拶。
「はい。
わかりました。
ありがとう」
劇団ひとりは挨拶を聞いて満足すると、
「お別れの品をちょうだい」
といって家から持ってきたバケツを差し出した。
「えっ?」
「いなくなるんだからお別れの品をちょうだい」
「う、うん」
最初にもらったのは発売されたばかりの「小学二年生」
次々とクラスメイトの家に突撃し、次々と戦利品をバケツに放り込んでいった。
おもちゃやマンガが多かったが、中にはつくりかけのプラモデルや50円玉もあった。
満杯になったバケツとお別れの言葉を胸に出国。
アラスカで荷物を整理していると、父親が紙袋を持ってきた。
開けてみると千羽鶴とたくさんの手紙が入っていた。
「おそらく担任の先生が用意してくれたサプライズだったのだろう。
そうとも知らずみんなの家かを訪ね、無理やりお別れの言葉をいわせ、物を奪い取っていったのだ。
なんてことをしてしまったのか。
しかし謝りたくても謝れない。
自分が遠い異国に来たことを実感した瞬間だった」

当たり前だが学校は全員が外国人だった。
「イエローモンキー」
「ジャップ」
などと罵ってくる黒人の同級生がいたので、必死に下品な英語を勉強して浴びせ返していると数ヵ月もしないうちに日常会話が話せるようになった。‌
算数は、日本にいればかけ算を習っている時期だったが、机の上に瓶を配られ
「1、2、3、4・・・」
と数を数える授業。
頭を抱えるクラスメイトもいる中、即答し
「ワオッ!」
「一瞬で覚えやがった」
「なんて奴だ」
と日本から来た天才児のような扱いを受けた。

アラスカといえば、犬ぞりに乗ったり、アザラシの生肉を食べたりするイメージがあったが、家はビルが立ち並ぶアンカレッジにあった。
それでも冬は家の近くの凍った湖でスケート。
週末はスキーにいき、小4でコブを滑り降りるモーグルができるようになった。
夏は短パンで過ごせる時期が1ヵ月ほどあり、家族全員でシャワー、トイレ、キッチン、ベッド付きのキャンピングカーに乗って、川沿いで寝泊まりしながらシャケ釣りをした。
ある日、川沿いを歩きながらフィッシングポイントを探していると、遠くの人だかりに大きく手を振られ、大声で呼びかけられた。
見ず知らずの人に手を振られて恥ずかしく、テレてそらした目の先でクマが2本足で立っていた。
その2mを超える巨体に、咄嗟に死んだフリをしようと思った。
しかしその場で死んだフリをするのは動けなくなるのでコワい。
だからとった行動は
「死んだように歩く」
白目をむいて口を半開きにして足を引きずってゾンビのように歩いた。
日本から来た天才児の作戦は的中。
クマは襲って来なかった。

小5でアラスカから帰国。
当たり前のように英語が話せ、マクドナルドは
「マクダァーナー」
と発音。
膝に穴が開いたジーンズと整髪料でオールバックを決めて登校し、自分の中では最先端だったが
「なんで穴が開いてるの?
貧乏なの?」
「なんで油っぽいの?
お風呂に入ってないの?」
と理解されなかった。
「あぶない刑事」に夢中になって、父親のYシャツに自作のホルスターをつけて登校したこともあった。
教師に怒られることを覚悟していたが何もいわれず不思議に思ったが、後で歪んだ背骨を矯正する器具と勘違いされ、気を遣われていたことを知った。


帰国当初は、字幕を読まなくても洋画が観れたが、やがて字幕をみないと理解できなくなっていき、
「2年で完全に忘れてしまった」
その上、日本の勉強はアラスカよりはるかに進んでいてまったくついていけない。
テストでまったく解答できず、苦し紛れに名前の欄に
「マイケル・ジャクソン」
と書いたが、後でみると「ン」と「ソ」を間違えて
「マイケル・ジャクンソ」
になっていた。
勉強では勝てないが、アメリカ仕込みの自己主張が強さを武器に決して負けていなかった。
学級委員を決めるとき、転校して間もないのに挙手。
他に誰も立候補せず、唯一の立候補者だったので
「やらせてもらえる」
と思ったが、推薦という形で
「無理やり」
立候補させられた人間に多数決で負けた。

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