御影 アキ(みかげ アキ)
本作のヒロイン。実家は上川郡清水町で酪農を一家で営んでいる。部活は馬術部。
気さくな笑顔とショートカットが特徴の、明朗で社交的な少女。スタイルも良い。人当たりもよく素直な性格であるが、周囲に迷惑を掛けないようにとの思いが強く、自我を抑えて独りで抱え込んでしまう傾向がある。
実家には農耕馬がおり、祖父の影響もあって幼いころから乗馬クラブに通うなど乗馬に慣れており、高い乗馬技術の持ち主。将来の夢は大好きな馬に関わる仕事に就くことだが、一人っ子で後継ぎとして期待され、それがプレッシャーとなっていた。八軒の後押しで自身の本心を家族に打ち明け、ばんえい競走馬厩舎を営む叔父の下で働きたいと叔父に懇願し、「大学を出ること」を条件として認可を得る。
一般受験で入学した八軒に興味を持ち、何かと気に掛ける。自他共に認めるほど勉強が苦手なため、八軒に勉強を教えてもらうことになるが、男女の機微には疎く、周囲からは「ひどい女」「ニブい」「バカなの」「八軒に同情する」などとさんざん言われている。
駒場 一郎(こまば いちろう)
アキの幼馴染で、実家は酪農家。物言いが武骨で無愛想だが、実直で男気のある性格で礼儀正しい。一般教科の成績は芳しくないが「作物」など専門教科の成績は優秀。毎日の実習授業と部活を物ともしない豊富な体力と持久力を有しており、腕っ節も強い。
部活は野球部で、ポジションはピッチャー。甲子園に出場してプロ野球選手になり、あまり裕福ではない実家の経営を立て直したいという夢も抱いていたが、実家の借金が原因で離農が決まり、借金返済と家計を助けるために学校を中途退学した。しばらく空虚な生活を送っていたが、八軒たちから影響を受け、「自分の牧場を持つ」という目標に向かう決意をする。
常盤 恵次(ときわ けいじ)
鶏農家の長男で、家業を継ぐために推薦入学した。教わったことを3歩歩いただけで忘れるほど頭が悪く、特に数学はテストで二桁の点数を取ったことがない。しかし鶏の生態や飼育法などの知識は豊富で、勉強以外の面でも知恵が回ったり、意外な才能を発揮する部分もあり、周囲に感心される。
相川 進之介(あいかわ しんのすけ)
幼少期から獣医を目指しており、少しでも早く獣医学研究に携わるため、研究設備の整っているエゾノーに入学した。部活はホルスタイン部に入部。「生物」や「畜産」、「バイオテクノロジー」を得意教科とし、一般教科の成績もおおむね優秀。一般人の感性に理解を示す数少ない生徒の一人で、八軒とは実習時以外でも2人で連れ立っていることが多い。
小学生の時にひどい牛の手術を見たトラウマで、多少にかかわらず血(特に生体から流れる血)が苦手になってしまい、授業で行われる家畜の手術や屠殺の現場で失神するという醜態を晒すことがある。
稲田 多摩子(いなだ たまこ) / タマコ
全体のシルエットが卵のような肥満体型の少女。実家は共同経営型の大規模な牧場。「お金が大好き」と明言し、いずれは実家の牧場に就職、実父から社長の座を奪おうと考える野心家でもある。将来は、安全・信頼は勿論、そこに生産性や合理性を兼ね備え、さらに高い収益をもたらす農業経営を学び、世界と渡り合える農業を築くことを目指している。
かなりのリアリストで、八軒にしばしば現実を見るよう忠告を行っている。年末を前に、八軒の依頼で常盤が発案した「豚肉ファンド」の経理を任され、起業をめざす八軒の企画書の添削を行うようになる。
吉野 まゆみ(よしの まゆみ)
酪農家である実家の牛乳を使ったチーズ工房を立ち上げることが夢。そのためチーズの知識に長け、また「食品製造」を得意教科としており、一学期中間考査でも満点の成績を収める。
常に明るくはっきりした性格だが、中島先生を脅迫して秘蔵のチーズを無断で持ち出すなど、チーズに関することでは手段を選ばない面もある。八軒の生真面目さや義理堅さを評価する人物の一人。
卒業後はチーズ関係の仕事について勉強し、チーズ職人として修業するべく単身フランスに渡ることを計画中。
大川 進英(おおかわ しんえい)
馬術部部長で八軒の一年先輩。部活引退後も顔を出し、先輩の立場から、八軒に忠告や協力等を度々行なっている。
手先の器用さ、作業時の要領の良さなどは他者の追随を許さない。一応就職組ではあるが、将来の希望を明確にしておらず、結局就職先が決まらないまま卒業となった。
良く言えば臨機応変、悪く言えば行き当たりばったりな性格。
バイト先でもらった黒豚を連れてエゾノーを訪れるうちに八軒とともに放牧養豚事業に着手。さまざまな分野の作業を器用かつ迅速にこなす姿から「仕事さえ与えておけばまとも」と判断した八軒に社長に任命され、バカにしてくる実家の家族を見返すために奮起する。
マンガ「銀の匙 Silver Spoon」の見どころ
作者の荒川弘自身が北海道の畜産農家の生まれで、帯広農業高校の出身であり、マンガを描きながら実家を手伝ってきた経験が活かされた作品です。「鋼の錬金術師」終了時に「もっとゆるいマンガが描きたい」と連載開始した作品なのですが、コミカルな絵柄とキャラでありながら、内容は日本の農業・酪農・畜産業の実態をガチに扱った社会派。産業を維持し拡大する経済経営的な話から、生きものの命をいただく話までバラエティに富んでおり、日本の農業を知るためのいいテキストにもなりうる作品です。農家で育っていないからこそシンプルな立場で見える八軒くんの視点は読者と重なり、自身のビジネスを立ち上げ奮闘する姿は、アキとの仲の進展も含めてめっちゃ応援したくなります。
本作とは別に「百姓貴族」という作品もあり、こちらは作者本人の実経験エッセイマンガなので、本作と絡めて読むとウラ事情がよりよくわかって興味深いですよ。
