マイケル・ジャクソンとは

「キング・オブ・ポップ」ことマイケル・ジャクソン(Michael Jackson)は、20世紀以降の音楽界に多大なる影響を与え、全世界で5億枚以上のセールスを誇る史上最も売れた音楽家の1人です。1970年代に兄弟グループ「ジャクソン5」のリードボーカルとしてデビュー。当初から天才的な才能を発揮し一世を風靡しました。80年代にはソロアーティストとして『オフ・ザ・ウォール』『スリラー』『バッド』、90年代以降も『デンジャラス』『ヒストリー』など数多くの大ヒット作を生み出し、前人未到の大成功を手にするとともに、ポピュラー音楽界における頂点に君臨し続けたのです。その一方で、私生活ではスキャンダルが絶えず、心労からくる薬への依存に悩み、2009年急性プロポフォール中毒により50歳という若さでこの世を去りました。
あの娘が消えた(1979年)
まずはピュアさと危うさをはらんだマイケル・ジャクソン青年期から。「あの娘が消えた」(原題:She's Out Of My Life)は、ギター・ベース・電子ピアノ・弦楽合奏だけというシンプルな編成が特徴的で、よりマイケルの歌声にスポットが当てられた初期の名曲です。それまで歌ってきた雰囲気とは異なり、初めて大人びた恋愛感情を表現するマイケル。彼の自伝「ムーンウォーク」で語られているエピソードによると、この曲のレコーディング中、毎回最後には泣いてしまい何度もテイクを重ねたという。そんな状況を解決したのが、涙声をそのまま録音し作品の一部にするというアイディアでした。

同曲は1979年に発売されたマイケル・ジャクソン通算5作目のソロアルバム『オフ・ザ・ウォール』に収録され、シングルカットされた1曲です。プロデューサーにクインシー・ジョーンズを迎えた同アルバムはそれまでと比べクオリティーが格段に上がった作品と言われ、またアメリカで800万枚を売り上げロングセラーを記録したこのアルバムこそがソロとなったマイケルの真のファーストアルバムだと評価する人も多い名作。
ヒューマン・ネイチャー(1983年)
「ヒューマン・ネイチャー」(原題:Human Nature)は、リチャード・カーペンターの親友で「愛にさよならを」「トップ・オブ・ザ・ワールド」「イエスタデイ・ワンス・モア」などカーペンターズの多くの楽曲で作詞を担当していた作詞家のジョン・ベティスと、作・編曲をTOTOのスティーヴ・ポーカロが担当した作品です。

同曲は現在に至るまで7000万枚以上を売り上げ、「史上最も売れたアルバム」として認定されたマイケル・ジャクソンのモンスターアルバム『スリラー』に収録され、のちにシングルカットされた1曲。とりわけ「スリラー」や「今夜はビート・イット」「ビリー・ジーン」といった超ド派手な楽曲たちの中においてはシンプルな印象を受けますが、聴く者の心をグッと捉えて離さない癖になるメロディーと「人間の性(さが)」を歌った歌詞がたまらなく愛おしい、まさにマイケルファンの間で人気の高い隠れた名曲の1つです。またアーティスト人気も非常に高く多くの歌手仲間からカバーされていることでも有名です。
ギヴ・イン・トゥ・ミー(1993年)
「ギヴ・イン・トゥ・ミー」(Give In to Me)は、世界15か国以上で1位に輝いた大ヒット曲「ブラック・オア・ホワイト」に続きガンズ・アンド・ローゼズの天才ギタリスト、スラッシュと共演したハードなロックチューン。

この曲は1991年に発売されたアルバム『デンジャラス』からシングルカットされた1曲です。感情的で男らしいマイケル・ジャクソンの歌声が何とも魅力的。そしてまるで怒りを表しているかのような力強いスラッシュのパフォーマンスには圧巻のひと言!さすがはスーパースター同士の共演ですね。魅せ方が違います。
アース・ソング(1995年)
「アース・ソング」(Earth Song)は、「環境破壊」「貧困問題」「紛争」などの世界的な社会問題に激しく切り込み訴えかけたマイケルソングの中でもメッセージ性の強い楽曲の1つです。

この曲は1995年に発売されたアルバム『ヒストリー パスト、プレズント・アンド・フューチャー ブック1』からのシングルカット曲であり、マイケル・ジャクソン自身が作詞・作曲の両方を手がけた楽曲です。2枚組となっている同アルバムは1枚目がベスト盤、2枚目が新作という面白い構成になっていて、当時疑惑の渦中にいたマイケルの「怒り」や「叫び」そして「孤独」といったダークな感情がふんだんに散りばめられた曲調が彼の心を代弁しているかのよう。
ブラッド・オン・ザ・ダンス・フロア(1997年)
「ブラッド・オン・ザ・ダンス・フロア」(原題:Blood on the Dance Floor)は、不気味な歌詞と個性的なサウンドが何とも味わい深い楽曲で、またダーティーな雰囲気で大人の色気漂うマイケル・ジャクソンの男っぽさがとても魅力的です。

この曲は事前のプロモーションをほとんどせずに600万枚以上を売り上げたリミックスアルバム『ブラッド・オン・ザ・ダンス・フロア:ヒストリー・イン・ザ・ミックス』からシングルカットされた楽曲で、斬新かつチャレンジングな作品となっています。同アルバムは全体的に暗く、歌詞もホラー的な表現が多いのですが、エネルギッシュで芸術性に富んだ1枚でもあります。
フォールアゲイン(2004年)

「フォール・アゲイン」(FALL AGAIN)は、ウォルター・アファナシェフとロビン・シックによって作曲された楽曲で、もともとは2001年に発売されたスタジオアルバム『インヴィンシブル』に収録される予定でした。しかし息子のプリンスくんが病気になってしまい作業は一旦中断。その後も同曲が完成することはなく、そのまま埋もれてしまうかに思えた2004年、マイケルの未発表曲やレア音源、デモなどを一挙に集めたボックスセット『アルティメット・コレクション』が発売されたことで、ようやく「フォール・アゲイン」は日の目をみることとなるのです。
するとたちまちファンの間で人気が高まり今ではすっかり隠れた名曲の筆頭格に!別れても愛しているその女性と再び恋に落ちたい未練を歌ったこの曲は、歌詞をマイケルが書いたわけではないものの、その愁いを帯びた切ない声と、当時の彼の状況から考えてみても、別れた元妻リサ・マリー・プレスリーを思い浮かべながらレコーディングに臨んだのではないかと推測するファンも少なくありません。そんな物語も含めてとてもドラマチックな1曲となっています。欲を言えば完成版の「フォール・アゲイン」も聴いてみたかったですね。