【JC優勝】去勢して才能が開花!騸馬として初めてGIを勝ったレガシーワールド

【JC優勝】去勢して才能が開花!騸馬として初めてGIを勝ったレガシーワールド

レガシーワールドは、騸馬(せんば)として初めてGIレースを勝った競走馬です。デビュー当初こそ勝てなかったものの、去勢してからは高い競走能力を発揮し、ついにはジャパンカップを勝利しました。同期で同厩のミホノブルボンがクラシック路線を進む中、独自路線で強さを見せたレガシー。そんな実力馬の足跡を振り返ります。


陣営の大英断

レガシーワールドは、1989年4月23日、

父 モガミ 母 ドンナリディア

の間に誕生した鹿毛牡馬(後に騸馬)で、生産はへいはた牧場です。



所属は戸山為夫厩舎。あのミホノブルボンと同じ厩舎で、しかも同期です。



デビューは1991年。3歳新馬戦未勝利戦に立て続けに出走しますが、5連敗に終わります。潜在的な競走能力はあったものの、気性の激しさに加え、スタートの出遅れが顕著で、レースでは結果が残せませんでした。



ここで陣営は大英断を下します。それが去勢手術。気性を穏やかにし、うまく競走できるようにするための措置ですが、一度去勢してしまうと、種牡馬になれない、クラシックレースに出られないなど、大幅な制限を受けることになります。とは言え、結果が出なければ元も子もなく、思い切った荒療治を行いました。

騸馬になって才能開花

重賞初出走初勝利

明け1992年、騸馬となった4歳。手術が功を奏し、一気に才能が開花します。ようやく未勝利戦に勝利。500万下900万下のレースを連勝し、UHB杯(OP)も2着と好走します。そしてついに、菊花賞のトライアル競走である、セントライト記念(GII)への出走が決まります。



レースは、レガシーワールドが逃げる展開。道中は、自分のペースに持ち込み、レースをリードします。最後の直線では、追い込んできたライスシャワーに一瞬交わされますが、すぐに差し返しアタマ差の勝利。重賞初挑戦で初勝利を飾りました。

GIレースも好走

菊花賞トライアルに勝利したものの、菊花賞には出られず。しかも、菊花賞を制したのは、皮肉なことに、セントライト記念で破ったライスシャワー。そこで陣営は、4歳ながらジャパンカップ(GI)への出走を決めます。初めてのGI競走が、古馬とのGIというだけでなく、当時はまだ力の差があった外国招待馬も出走する過酷なレース。その中で、レガシーワールドは10番人気に支持されます。



レースは、強力な逃げ馬がいない中、レガシーワールドが逃げを打つ展開に。道中は、後続と差なくほぼ先頭を維持します。最後の直線では失速し、トウカイテイオーやナチュラリズムに交わされますが、お得意の粘りを見せ、なんと4着に好走。思えば、これが翌年優勝への布石だったのかもしれません。



その勢いのまま、暮れの有馬記念(GI)にも出走。ジャパンカップの好走から、5番人気に支持されます。レースは、メジロパーマーが大逃げを打つ展開。レガシーワールドは、後続三番手集団の先頭付近につけます。スローペースだったため、最後の直線に入っても、メジロパーマーの脚は衰えず。しかし、レガシーワールドは怒涛の追い込みを見せ、最後は、メジロパーマーとハナ差の2着。あともう少しでGI勝利だった、惜しいレースでした。

ジャパンカップ制覇

明け5歳となった1993年は、AJC杯(GII)からスタート。ホワイトストーンの2着に敗れた後、骨折休養に入ります。休養中に、戸山為夫調教師が死去。弟子の森秀行調教師が引き継ぎ、秋のGI戦線に臨みます。



秋初戦は、京都大賞典(GII)。結果はメジロマックイーンと3馬身半差をつけられるも、休み明けながら2着に好走しました。天皇賞は出走できないため、次走は、前年も出走したジャパンカップ(GI)です。



外国招待馬は、ブリーダーズカップ・ターフなどGI競走を勝ちまくっていたコタシャーン、凱旋門賞2着のホワイトマズル、アーリントンミリオン優勝馬スターオブコジーンなど錚々たる面々が名を連ねました。また、その年のダービー馬、ウイニングチケットも出走。レガシーワールドは、6番人気に支持されます。



レースは、戦前の予想通りメジロパーマーが逃げる展開。レガシーワールドは、二番手につけます。日本馬がレースをリードし、そのまま第4コーナーへ。最後の長い直線では、メジロパーマーを交わし、早々に先頭に立ちます。後続からコタシャーンがものすごい末脚で襲ってきますが、ゴール板の誤認などあり届かず。ついに、念願のGI勝利を果たしました。これは、騸馬として初めてのGI勝利です。



翌年には奇しくも、同じ騸馬のマーベラスクラウンが、ジャパンカップを制しています。

長期休養の後に引退

6歳となった翌1994年は、屈腱炎を発症し、長期休養に追い込まれます。復帰は、有馬記念から1年8ヶ月後の1995年8月。7歳で臨んだ函館記念(GIII)でした。GIホースとしての実績が評価され、2番人気に推されますが、結果はまさかの16頭立ての16着。その後のレースも、逃げを打ったり、地方競馬に出走したり、見せ場を作りますが、かつての先行粘り込みの走りは見る影もなく、惨敗に終わりました。



結局、8歳となった1996年、宝塚記念(GI)の出走を最後に引退しました。

レガシーワールド 1995年10月8日 京都競馬場

32歳まで長生き

引退後は、騸馬のため種牡馬にはなれなかったものの、生まれ故郷のへいはた牧場にて功労馬として余生を送りました。その後は長生きし、2021年8月18日、老衰で天寿を全うします。なんと32歳でした。

去勢の決断、戸山調教師の死、晩年の惨敗など、波乱万丈の競走生活でしたが、同厩同期のミホノブルボンが4歳で引退する中、騸馬ならではの独自路線を歩み、古馬として実績を残したのは見事でした。

2022年7月現在、騸馬でGIを勝利したのは5頭のみ。その筆頭がレガシーワールドです。今後も名馬の一頭として、語り継がれていくことでしょう。

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