ロックの化身
皆さんご存じのように、昭和のアイドルたちはライブでやたらとカバー曲を歌ってました。中にはなんでこんな曲を!という例は枚挙にいとまがありません。というか、全てそれです。もっともそこが楽しいわけで、中でも西城秀樹のライブは最高も最高です。まさに「ヒデキ、感激!!」。いや、感激したのはこっちなんですけどね。
ありえないカバー曲のオンパレード。それがヒデキのライブです。ヒット曲が山ほどあるにも関わらず、オリジナル?そんなもん知らん!とばかりにカバーで埋め尽くされたライブ。最高としかいいようがありません。

西城秀樹
当時のアイドルは歌わされているとよく言われていましたが、ヒデキは違う!ヒデキは自ら選択していると思います。そうでないとこのカオスな選曲に説明がつかないです。スタッフが指示しているとしたら、もっとまとまったものになるに違いありませんからね。誰か止めるヤツは居なかったのか⁈と思ってしまう選曲には脳天を撃ち抜かれます。
狂気、そう言っても良いでしょうね。ヒデキのライブは。
自らの本能に従った結果、ロック魂が凝縮されまくったヒデキのライブに酔いしれてみましょう。
秀樹!エキサイティング・ポップス
改めて言うまでもなく、ヒデキのロック好きは尋常ではありません。ライブで歌いあげているカバー曲を改めてスタジオ収録したアルバムを何枚も出しているんですから。
ということは、ヒデキのカバー曲はファンに支持されていたってことですよねぇ。ヒデキのライブをより楽しむために、先ずカバーアルバムをご紹介しましょう。
最初のカバー・アルバムは1974年に発売された「秀樹!エキサイティング・ポップス」です。
収録曲からもライブでのエキサイティングぐあいが分かります。

秀樹!エキサイティング・ポップス
アルバムのA面はビートルズ・ナンバー3連発の後、モンキーズ・ナンバー3連発でまとめ上げています。大胆ですねぇ。しかし、まぁ、これはファンサービスでしょう。
で、本領発揮なのはB面です。B面はウィルソン・ピケットのというか、ウォーカー・ブラザース的な「ダンス天国」から始まってジーン・ヴィンセントの「ビーバップ・ア・ルーラ」でしめています。「孤独の太陽」「朝日のあたる家」など、アイドルにしては実にシブい選曲となっているところにヒデキのロックを感じずにはいられません。そう、「ヒデキ、感激!!」です。
西城秀樹ロックの世界
1974年10月10日には早くも2枚目のカバー・アルバム「西城秀樹ロックの世界」をドロップ。「秀樹!エキサイティング・ポップス」が同年の4月25日発売ですからね、なんというハイペースなんでしょう。
但し、A面は前作「秀樹!エキサイティング・ポップス」に収録されていたものそのまんまです。これにはファンも度肝を抜かれたのではないでしょうか?!しかし、ヒデキが本領を発揮するのはB面です。いつだってヒデキはB面で燃えるのです!

西城秀樹ロックの世界
お楽しみのB面は「グッド・ゴーリー・ミス・モーリー」で幕を開けます。リトル・リチャードの「グッド・ゴーリー・ミス・モーリー」は、C.C.R. (クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル)やザ・キンクスなどのカバーでも知られています。
ライブでは井上陽水の「心もよう」などを歌っているヒデキではありますが、B面ラストの「クレイジー・ラブ」は陽水ではなく、ポール・アンカの曲です。ちょっと残念です。
ヒデキ・ロック・オン・ステージ
タイトルとジャケット写真からライブ盤と間違えられそうですが、れっきとしたスタジオ版です。というか、歓声をかぶせた疑似ライブ構成となっているのですが、そんなことしなくてもいいのにねの、カバー・アルバムの第3弾「ヒデキ・ロック・オン・ステージ」は1976年8月25日にリリースされました。

ヒデキ・ロック・オン・ステージ
このシリーズ、A面は比較的よく知られたスタンダード・ナンバーを収め、B面で冒険をするという趣向のようですね。ヒデキのロック魂が躍動するのはB面。「ヒデキ・ロック・オン・ステージ」も聴きどころとなるのは当然B面です、一発目クール&ザ・ギャングの「ファンキー・スタッフ」からハロルド・メルビン&ブルー・ノーツの「恋の逃亡者」とつながるファンキー路線は白眉です。
あ、因みにB面5曲目の「S.O.S.」はピンクレディではなく、エアロスミスのカバーですよ。ちょっと残念です。
ロックンロール・ミュージック/ヒデキ
1976年8月25日に出たカバーアルバム第4弾「ロックンロール・ミュージック/ヒデキ」はスタジオライブとなっています。
やっぱりロックは生だということでしょう。疑似ライブでは納得できんということに違いありません。う~、だったら何もこんなアルバム出さずに普通にライブ盤でいいじゃんという意見もあるでしょう。あるでしょうが、これはこれです。ライブ盤はライブ盤でヒデキはバンバン出してますからね。

ロックンロール・ミュージック/ヒデキ
「クレイジー・ラブ」「ダイアナ」「君はわが運命」「タイム・トゥ・クライ」と、4曲もポール・アンカの曲が入ってますね。そして最後に矢沢の永ちゃん2連発。
このカバーアルバム・シリーズでもライブのカオス具合を垣間見ることが出来ます。が、ライブはそれどころじゃない。もう、徹底的にカオス!一切の容赦なしだ!
では、数あるヒデキのライブアルバムの中から1979年に後楽園球場で収録された「BIG GAME ’79 HIDEKI」をご紹介しましょう。
BIG GAME ’79 HIDEKI
1979年8月24日、ヒデキにとって2回目の後楽園ライブは激しい雨の中で行われました。この年に発売された「YOUNG MAN (Y.M.C.A.)」が既に大ヒットしていて人気は絶頂であったにも関わらず、この記念すべきステージでもカバーの嵐です!
オープニングの後、畳みかけるように、クイーン、キッス、ビリー・ジョエル、ドナ・サマーと飛ばしに飛ばし私たちの度肝を抜くヒデキ。今の感覚からすると既に尋常ではありませんよね。そしてサザンオールスターズの「いとしのエリー」の後に、ようやくオリジナルの「ブルースカイ ブルー」です。

BIG GAME ’79 HIDEKI
さぁ、これからオリジナルが聴けるぞとホッとしたファンも多かったのではないかと思いますが、その期待は軽ーく裏切られます。
そう、ホッとしたのもつかの間、この日2曲目のクイーン「ドント・ストップ・ミー・ナウ」がきます。もう誰もヒデキを止らる者などいませんって。
留まることを知らないこの日のヒデキですが、次いで披露されるのは何とキングクリムゾンの「エピタフ」です。ヒデキとクリムゾン?!ヒデキがプログレ?!知らなければ誰もが不安になるでしょうねぇ。が、心配無用。ヒデキは歌うんです!ここが最大の聴きどころと言っていいでしょう。
続く「シェイク・ユア・ハンド」「ゴー・ウエスト」に、後で歌われる「YOUNG MAN (Y.M.C.A.)」を加えてヴィレッジ・ピープルのカバーが3曲も収録されています。同じアーティストの曲を3曲。この辺りも実にヒデキです。「感激!!」だ。
TOTOの「愛する君に」の後、「勇気があれば」「ホップ・ステップ・ジャンプ」とオリジナルが2曲続きます。
で、フランスの国民的歌手ジョニー・アリディがオリジナルの「この愛の終る時」を濃密な、いや、もっと濃い!濃密では言い表せないくらい濃すぎるアレンジでこってりと聴かせるヒデキ。
そして「YOUNG MAN (Y.M.C.A.)」で盛り上げ、ロッド・スチュアートで知られる「セイリング」でエンディングと充実しきった圧巻の内容。聴いて損なし、買って損なしの「BIG GAME ’79 HIDEKI」です。
それにしても今改めて思います。ヒデキはデビューから亡くなるまで常に素晴らしかった。常に全力だったと。