平井和正
作家、平井和正は2015年1月17日に76歳で亡くなるまで実に多くのシリーズ作品を残しています。ウルフガイ・シリーズ、死霊狩り(ゾンビー・ハンター)三部作、アブダクション・シリーズなどがよく知られていますが、代表作となると、やはり「幻魔大戦」でしょうかねぇ。
「幻魔大戦」は雑誌「野性時代」に1979年から1983年にかけて連載されていたのですが、なんと毎月、文庫1冊分の原稿が執筆され、雑誌掲載の翌月には早くも文庫本が発売されていたというから驚きです。文庫にして全20巻が発行されていますが、それで終わることなく他にも関連シリーズとして「新幻魔大戦」、「真幻魔大戦」、「ハルマゲドン」、「ハルマゲドンの少女」などを生み出し統計2千万部を超える大ベストセラーシリーズになっています。

幻魔大戦
改めて言うまでもなく平井和正はSF小説の第一人者として知られているわけですが、最初にブレイクしたのは小説家としてではなく、漫画の原作者としてでした。平井和正原作の漫画、これがまた面白んです。
ということで、平井和正が原作の漫画を集めてみました。
8マン
小説家としては1962年に「レオノーラ」という作品でデビューしていましたが、ブレイクするには至っていませんでした。
平井和正が注目されたのは翌年の原作を担当した漫画「8マン」です。

8マン
「8マン」は当時としてはとてもシリアスな物語となっていて、しかも当時最先端のSF技術を取り入れた作品として知られています。
この漫画は「エイトマン」としてテレビアニメ化され大ヒットしましたが、日本で最初のティーン向けアニメ作品といわれています。
「エイトマン」の存在を知る人の多くは、日本でも大ヒットした1987年公開のアメリカ映画「ロボコップ」を見た際に「いいのか?これ」と思ったはず!酷似しすぎですもんね。
平井和正が続いて桑田次郎と組んで作り上げた作品「エリート」。これがまたイイ。
作画は更にスタイリッシュになっています。しかし、何よりもストーリーが最高ですよ。
主人公こそ中学3年の少年ですが、これはもっと大人になってから読みたい作品ですね。
物語は「人類は宇宙に進出する資格があるか?」を問うために宇宙生命体最古の種族であるアルゴールというのが、3人の地球人を選んでテストするのです。この3人の潜在能力を引き出し「エリート」に覚醒させるのですが、面白いのは一人は主人公の少年、もう一人は赤ちゃん、そして最後に犯罪者がエリートに選ばれるという。
エリートに選ばれた犯罪者は世界征服を企むようになるという展開なのですが、この犯罪者はまずエリートの赤ちゃんを狙うんですよ。何故か?それは他の2人のエリートにはない超能力が備わっていたからなんですねぇ。

エリート
そして三度桑田次郎と組んだ「超犬リープ」。当時も今も、ロボット犬が主人公というのは斬新ですね。猫型ロボットといばドラえもんですが、犬型となると、、、ちょっと思い浮かばないです。

超犬リープ
「8マン」ほど一般的には知られていない「エリート」と「超犬リープ」ではありますが、どちらも面白いです。
それにしても平井和正と桑田次郎の相性は良かったのでしょうね。立て続けに名作を生み出したというわけです。
幻魔大戦
平井和正の漫画原作の4作目は、石森章太郎と組んだ名作中の名作「幻魔大戦」です。
「幻魔大戦」といえば先にもふれたように平井和正の代表作ですが、実は小説を漫画化したのではなく、漫画版が先に作られているんですよ。

幻魔大戦
漫画版の「幻魔大戦」は、あの壮大な幻魔大戦シリーズの第1作にして原典の作品となっています。小説の前半部分のみしか描かれていないのですが、その後は全く別の物語になっていくことを考えると、漫画となった前半部分には石森章太郎の意向が大きく反映されていたのではないかと思われます。
個人的には小説よりも漫画版の「幻魔大戦」方が面白いと思ったりします。で、その漫画版をベースに1983年にアニメ化されました。
アニメ版は、キャラクターデザインを大友克洋が担当したことで漫画とは印象が随分変わってしまいました。まぁ、これは好みの分かれるところですねぇ。
1971年から「SFマガジン」にて、再び石森章太郎と手を組んで制作された「新幻魔大戦」。舞台は江戸時代ということで「幻魔大戦」の主人公である東丈は出てきません。ただ東丈の先祖が出てくるんですよ。

新幻魔大戦
「新幻魔大戦」も「幻魔大戦」に負けず劣らず壮大な絵巻となっとります。だからという訳でもないのでしょうが、未完のままです。漫画版の「幻魔大戦」も結局打ち切りという事で謎を残したままで終わっていますから、何というか、平井和正と石森章太郎の相性は良くなかったのかもしれんですねぇ。。。作品としては最高に面白いんですがねぇ。。。
ウルフガイ
「幻魔大戦」と並んで平井和正の代表作いえる「ウルフガイ」。坂口 尚とのコンビで制作されていますが、この作品も「幻魔大戦」と同様に小説よりも漫画の方が先なんですね。
平井和正は「幻魔大戦」の後にまたまた桑田次郎と組んで「デスハンター」を発表し、「ウルフガイはその後、つまり漫画原作としては6作目の作品となります。

ウルフガイ
好き嫌いがはっきりするのかもしれませんが、坂口 尚の画風は独特というか個性的です。
このストーリーだけを読むと、何のことやら分からんですね。まぁ、狼男っちゅうわけです。不死身です。愛する美人教師のために命をかけます!命を懸けるのですが、不死身です。
ご存じない方にはぜひ見てもらいたい、読んでもらいたい「ウルフガイ」。
小説版は「狼の紋章」「狼の怨歌」「虎の里」「ブーステッドマン」「黄金の少女」「キンケイド署長」「パットン将軍」「タイガーウーマン」と続々と続いていくのですが、漫画版は「狼の紋章」と「狼の怨歌」までが描かれています。う~ん、ここからがまた面白いんですけどねぇ。
残念ながら掲載誌「週刊ぼくらマガジン」の廃刊に伴い掲載終了となってしまったんですね。もったいないなぁ。
それにしても「週刊ぼくらマガジン」には、「仮面ライダー(石森章太郎)」「タイガーマスク(梶原一騎・辻なおき)」「バロム・1(さいとう・たかをとさいとうプロ)」「天才バカボン(赤塚不二夫とフジオプロ)」「魔王ダンテ(永井豪とダイナミックプロ)」「モジャ公(藤子不二雄)」といった素晴らしい作品が連載されていたんですけどねぇ。なんで廃刊になるかな?!
で、「ウルフガイ」は1973年に志垣太郎主演で「狼の紋章」として映画化されています。
今でもカルトな人気を誇っているこの映画、松田優作の映画初出演作品でもあるんですよ。
宇宙人ピピ
この後となると池上遼一とのコンビで「スパイダーマン」、更には先ほど紹介した「新幻魔大戦」の原作を行っていますが、この頃になると小説家として売れに売れていますからね。平井和正は漫画の世界から遠のいていきます。
ところで、平井和正は「エイトマン」以外にもテレビの原作もやってるんですよ。小松左京との合作「宇宙人ピピ」がそれです。
宇宙人ですからねぇ、SFっちゃSFですが、小松左京と平井和正というSF小説界の巨匠が二人で取り組んでいたとは驚きです。
で、話を戻しますが、平井和正が漫画に携わった作品として主だったところでは80年代以降にも「クリスタル・チャイルド(画:泉谷あゆみ)「バチガミ(画:余湖ゆうき)」「8マン インフィニティ(桑田二郎との共同原作 ストーリー:七月鏡一、作画:鷹氏隆之)」「幻魔大戦 Rebirth(石ノ森章太郎との共同原作 脚本:七月鏡一、漫画:早瀬マサト)」「8マンVSサイボーグ009」などがあります。