ゆったりとした時間の流れるラブストーリー「瞬きもせず」

ゆったりとした時間の流れるラブストーリー「瞬きもせず」

別冊マーガレットに連載されていた紡木たくさんの「瞬きもせず」を覚えていますか?前作「ホットロード」は非凡な話でしたがこちらは平凡なお話。ですがとても丁寧に描かれていて心に残る作品です。


「瞬きもせず」の連載時期

「瞬きもせず」は1987年に「別冊マーガレット」で連載スタート。9月号から11号まで「第一章」として3話掲載され、1988年6月号から1990年4月号まで第二章として23話掲載されました。最初は短期連載のつもりだったのかもしれませんね。コミックスは全7巻で紡木たくさんの作品の中で最長です。文庫版は全4巻でした。

700万部のヒットをした「ホットロード」の次の作品ですね。

「ホットロード」は暴走族を舞台にした物語でした。なのになぜか共感できるところも多いですが、ストーリー自体は非凡でしたよね。「瞬きもせず」は「ホットロード」とは真逆ともいえる世界。山口県を舞台にしたゆったりとしたラブストーリーです。

「瞬きもせず」のあらすじ

小浜 かよ子は高校1年生。中学時代は陸上をやっていたのですが、高校ではテニス部に入部。美つ子と仲良くなり、美つ子と同じ中学だった紺野や輝哉とも親しくなります。

ですがかよ子は、自分が町から離れた田舎に住んでいることや、兄弟の多い大家族であること、男子とうまく話せないことにコンプレックスを抱いていました。そんなある日、紺野に告白をされます。

紺野は中学からサッカー一筋で女子には興味がないといった感じでしたが突然かよ子に告白したのです。性格は明るく、好感度の高い男の子ですね、

2人はお互いを想いながらも、恋愛になれていないこともあり最初はすれ違いばかりでした。ですがだんだんと信頼関係を気づいていきます。

高校2年生になるとかよ子の家族のトラブルや、友人・輝哉が女子大生と交際したり、学校をやめて東京に行くなど周囲が騒がしくなっていきます。

この町では卒業後は県外に出る人が大多数。かよ子たちもだんだんとその実感がわいてきます。

そして高校3年生になり、自分たちの進路を決める時がやってきます。

山口の田舎町を舞台に、平凡な高校生の恋愛を1年生から3年生までじっくり描いた作品。私は田舎出身ではないのですが、共感できるところもたくさんありました。そして、山口県に行ってみたいと思った作品でもあります。

舞台は山口県!

「瞬きもせず」の舞台は山口県。当時、地方を舞台にした作品というのは画期的だったんですよ。セリフは全編山口弁でした。

漫画家のくらもちふさこさんは自身の「天然コケッコー」という作品を、「この作品を発表できたのは紡木のおかげ」と話しています。「瞬きもせず」があったから方言を使う決断ができたのだとか。のちの少女漫画に影響を与えた作品になっているんですね。

私は山口県にはいったことがないのですが、東京に出た主人公たちが、通りすがりの人に「山口県?どこそこ?」と言われるシーンが印象的でした。そして同時に自分が全然知らない場所にもいろんな人がいてそれぞれのストーリーがあるんだなということ実感しました。

先ほどもお話した通り全編山口弁で描かれていて、すごくリアルです。作者の出身地なのだろうと当時は思っていたのですが紡木さんは神奈川県出身。

山口県には修学旅行で行ったことがあり、大人になってもう一度訪れたそうです。その時の景色の美しさに感動したことからこの作品を描こうと思ったのだとか。執筆中は実際に山口県に移り住んで、高校に通い、サッカー部の練習や試合にも参加したそうです。

それだけ徹底しているのでリアルなんでしょうね。山口県が気に入り、連載終了後もしばらく住んでいたそうですよ。

最後はどうなった?

高校を卒業後、2人は東京に行きます。かよ子は東京の短大へ。紺野はサッカーを続けたい気持ちがあり、サッカー部のある神奈川県の工場へ就職します。

ですが、その矢先にかよ子の母親が倒れます。かよ子は元々地元に残りたい気持ちと、紺野についていきたい気持ちで揺れ動いていました。母親の一件でやはり地元に戻りたいと思い、短大をやめて山口に戻ります。紺野とは別々の道を進むことになります。

一方紺野は、今のチームからさらに上のチーム迄行った人は一人もいないという現実を知ります。そしてサッカー選手になるという夢を諦め、仕事ばかりの毎日に追われていくことに。

山口と東京で別々の生活を送っていた2人でしたが、やはりお互いが必要な存在であったと再確認します。紺野は東京での生活を諦め、山口に帰ります。

その後、かよこは地本の短大に編入。紺野は実家を手伝いながら子どもたちにサッカーを教えます。二人は再び同じ道を歩き出す、とうところで物語は終わっています。

漫画評論家の大塚英志さんは、外の世界(東京)に旅立つというところで終わる漫画は多いけれどこの漫画は違う。外の世界を知って短期間で地元に戻り、大人になって帰ってくる、そして新しい生活をスタートさせるというところで終わる珍しい漫画だと評価しています。この着地点は結構難しいのですが「瞬きもせず」は上手くまとまっているということです。

確かに、現実的なラストですが哀しすぎず、前向きな感じなのがいいですよね。

関連する投稿


JR西日本が保有し運行している臨時快速列車「SLやまぐち号」をデザインしたTシャツが登場!

JR西日本が保有し運行している臨時快速列車「SLやまぐち号」をデザインしたTシャツが登場!

JR西日本が保有し運行している臨時快速列車「SLやまぐち号」をデザインしたTシャツが、山口県山口市にある百貨店「山口井筒屋」で開催されている、OJICO期間限定ショップで先行販売中です。


「昭和レトロ」探訪特集で話題の「高山昭和館」を体感【auスマプレ調査隊が行く!】

「昭和レトロ」探訪特集で話題の「高山昭和館」を体感【auスマプレ調査隊が行く!】

昨今Z世代を中心に流行りを見せる「昭和レトロ」に注目し、昭和を体感できると話題のスポット「高山昭和館」を訪ね紹介する企画を公開しています。また、3月6日まで山口県下関市で開かれていた【大丸下関店】昭和レトロ&あかり絵の世界展の様子もご紹介します。


「先生!」「青空エール」など4作品が実写化!河原和音さんの初期作品まとめ

「先生!」「青空エール」など4作品が実写化!河原和音さんの初期作品まとめ

「先生!」、「高校デビュー」、「青空エール」、「俺物語!!」と今まで4作品が実写映画化されている人気漫画家・河原和音さん。長編もいいですが、短編も面白いので初期の作品をご紹介していきます。


ふんわりとした絵柄とタイトルが印象的。斉藤倫さんの漫画まとめ

ふんわりとした絵柄とタイトルが印象的。斉藤倫さんの漫画まとめ

別冊マーガレット、cookieなどでおなじみの漫画家・斉藤倫さん。ふんわりとした絵柄とタイトルが特徴的な作家さんです。今回は斉藤倫さんの作品を振り返ってみましょう。


【デビュー20周年】「君に届け」が大ヒット!漫画家・椎名軽穂さんのお仕事まとめ

【デビュー20周年】「君に届け」が大ヒット!漫画家・椎名軽穂さんのお仕事まとめ

別冊マーガレットで連載されていた「君に届け」は大ヒットして実写映画化もされましたね。2021年でデビュー20周年を迎えた原作者・椎名軽穂さんの作品をまとめてみました。


最新の投稿


世界が熱狂!葛飾商店街×『キャプテン翼』コラボ「シーズン2」開催!新エリア&限定メニューで街を駆け抜けろ!

世界が熱狂!葛飾商店街×『キャプテン翼』コラボ「シーズン2」開催!新エリア&限定メニューで街を駆け抜けろ!

葛飾区商店街連合会は、2025年10月10日より『キャプテン翼』とのコラボイベント「シーズン2」を亀有・金町・柴又エリアで開催。キャラクターをイメージした限定メニューやスタンプラリーを展開し、聖地巡礼と地域活性化を促進します。


キン肉マン愛が英語力に!超人たちの名言・名場面で学ぶ『キン肉マン超人英会話』発売

キン肉マン愛が英語力に!超人たちの名言・名場面で学ぶ『キン肉マン超人英会話』発売

人気アニメ『キン肉マン』の「完璧超人始祖編」の名言・名場面を題材にした英会話学習書『キン肉マン超人英会話』が、2025年11月29日(土)にKADOKAWAより発売されます。超人たちの熱い言葉を通じて、楽しみながら実用的な英語表現をインプットできます。TOEIC満点保持者やプロレスキャスターなど、豪華プロ集団が監修・翻訳を担当した、ファン必携の英語学習本です。


【カウントダウン】あと2日!古舘伊知郎&友近「昭和100年スーパーソングブックショウ」いよいよ開催迫る!豪華ゲスト集結の東京国際フォーラムは「昭和愛」で熱狂へ!

【カウントダウン】あと2日!古舘伊知郎&友近「昭和100年スーパーソングブックショウ」いよいよ開催迫る!豪華ゲスト集結の東京国際フォーラムは「昭和愛」で熱狂へ!

開催直前!TOKYO MX開局30周年記念「昭和100年スーパーソングブックショウ」が10月16日に迫る。古舘伊知郎と友近がMC、豪華ゲストと共に贈る一夜限りの昭和ベストヒットに期待高まる!


ギタリスト 鈴木茂「BAND WAGON」発売50周年記念ライブを東阪ビルボードで開催!

ギタリスト 鈴木茂「BAND WAGON」発売50周年記念ライブを東阪ビルボードで開催!

ギタリスト 鈴木茂が、『鈴木茂「BAND WAGON」発売50周年記念ライブ~Autumn Season~』を11月13日にビルボードライブ大阪、16日にビルボードライブ東京にて開催する。今回は、1975年にリリースされた1stソロアルバム「BAND WAGON」の発売50周年を記念したプレミアム公演となる。


【1965年生まれ】2025年還暦を迎える意外な海外アーティストたち!

【1965年生まれ】2025年還暦を迎える意外な海外アーティストたち!

2025年(令和7年)は、1965年(昭和40年)生まれの人が還暦を迎える年です。ついに、昭和40年代生まれが還暦を迎える時代になりました。今の60歳は若いとはと言っても、数字だけ見るともうすぐ高齢者。今回は、2025年に還暦を迎える7名の人気海外アーティストをご紹介します。