1stGUNDAM 1yearWar 機動戦士ガンダム 1年戦争

1stGUNDAM 1yearWar 機動戦士ガンダム 1年戦争

乾杯のかけ声は「ジーク・ジオン!」どこかへいくときは「(自分の名前)、いきます」誰かにブタれたら「オヤジにもブタれたことないのに」失敗したら「坊やだからさ」赤いものは「シャア専用」 アニメ「機動戦士ガンダム」は、1979年4月~ 1980年1月に放映されたが、その衝撃は少年の心に深く刻み込まれ、オッサンになっても消えることはない。


「人類が増えすぎた人口を宇宙に移民させるようになって既に半世紀。地球の周りの巨大なスペースコロニーが数百機浮かび、人々はその円筒の内壁を人口の大地とした。
その人類の第2の故郷で、人々はそこで子を産み、育て、そして死んでいった。
宇宙世紀0079、地球から最も遠い宇宙都市サイド3はジオン公国を名乗り、地球連邦政府に独立戦争を挑んできた。
この1ヶ月あまりの戦いで、ジオン公国と連邦軍は総人口の半分を死に至らしめた。人々は自らの行為に恐怖した。戦争は膠着状態に入り8ヵ月あまりが過ぎた」
そんなナレーションで始まる「機動戦士ガンダム」は、宇宙世紀(U.C.)0079年1月3日~0080年1月1日に行われた「1年戦争」の終盤4ヵ月間を描いた作品。
この後、

U.C.0083年 「機動戦士ガンダム0083」
U.C.0085年 「機動戦士Zガンダム」
U.C.0088「機動戦士ガンダムZZ」
U.C.0093年 「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」】
U.C.0096年 「機動戦士ガンダムUC(ユニコーン)」
U.C.0105年 「閃光のハサウェイ」
U.C.0120年 「機動戦士ガンダムF90」「機動戦士ガンダムF91」
U.C.0133年 「機動戦士クロスボーン・ガンダム」
U.C.0149年 「機動戦士Vガンダム」

とシリーズは続く。
「ファーストガンダム」といわれる所以だが、後続に比べ、その画(え)のレベルは決して高いとはいえない。
にも関わらず全シリーズを通して最高の名作の1つとして称えられている。

「機動戦士ガンダム」には

・テレビアニメ43話
・映画「Ⅰ」「Ⅱ 哀・戦士編」「Ⅲ めぐりあい宇宙編」の3部作

がある。
いわゆるロボットアニメ、戦争アニメで、主人公は少年。
理不尽な大人の戦いに巻き込まれ、傷つきながらも生き抜き、成長していく少年兵の話。
彼が所属する連邦軍は善、ジオン軍は悪っぽく描かれる。
しかし決して勧善懲悪のヒーローものではなく、見方によっては悪モノにみえる人にも正義があることがわかる。
連邦という圧倒的権力から独立を望む、小さなジオン軍を応援する「ジオン派」も多い。
戦時下、連邦軍側にもジオン側にも、権力者や独裁者がいて、彼らの中には味方に殺されてしまう者もいる。
そして彼らに翻弄される人々には、それぞれ事情や思いがあり、人間関係が複雑に絡み合っている。
地球とその周辺の宇宙で戦争が行われるガンダムのテーマは
『人はなぜ戦うのか』
『人はわかり合えるのか』
しかしその答えは出ない。
それがガンダム。

人類は、イエス・キリストが生まれた年をはじまりとする「西暦(A.D.、Anno Domini)」で歴史を刻んできた。
時代が進み、国家の垣根が取り払われ地球連邦政府が樹立される頃には、総人口は90億人を突破し、環境問題や資源問題が深刻化。
人類は宇宙に巨大なコロニーを浮かべ移住することを決めた。
同時にこれを機に西暦から「宇宙世紀(U.C.、Universal Century)」に移行されることになった。
U.C.0001年1月1日、その記念すべき元年元日、首相官邸ラプラス(宇宙ステーション)で改暦セレモニーが行われ、地球連邦政府初代首相:リカルド・マーセナスはスピーチを行った。
「我々は宇宙世紀という未知の世界に踏み出そうとしています。
去り行く西暦。
誰もがその一部である人類の歴史に思いをはせ、そして祈りを捧げてください。
宇宙に出た人類の先行きが安らかであることを。
我々の中にある可能性というの神を信じて」
万来の拍手が沸き起こった直後、首相官邸ラプラスは爆発した。
犯人は連邦政府に反対する軍事主義者だといわれているが、真相は不明。
この爆破テロ事件によって新たな世紀は始まった。
以後も宇宙移民は進み、総人口110億人の約半数が遠心力によって重力を発生させた円筒型の宇宙コロニーの内側を大地として暮らした。
しかしスペースコロニーにいくは労働者階級で、政治家、官僚、富裕層は地球に残った。
スペースコロニーは、政府に重税を課されるなど不当に搾取され、まるで植民地だった。

U.C.0040年、
シャア・アズナブル(キャスバル・レム・ダイクン)の父親、ジオン・ズム・ダイクンは、人々に
「宇宙移民者たちは余剰人口者として宇宙へと追いやられたことが真実であり、星々を身の周囲に置き、寝食を共にした我々、スペースノイドは、人として新しく生まれ変わりつつあることを自覚していた。
宇宙の民として、この厳しい環境の中で闘い抜き世代を重ねてきて、かつて人の歴史を築き上げてきた地球を見上げ見下ろして思うことは、あの緑なす青く輝く地球こそは人類の発祥の星として永遠に守り続けなければならない聖地であるということであった。
宇宙の民として拡大した認識の力が判断する所には、地球は一部のエリート意識に固まった人々の生活の場として残されたものでもなく、特権階級の象徴の場として汚させてはならないのだ」
と訴えた。
「地球は聖地として保護し全人類は宇宙へ住むべき」
という考え方はスペースノイド(宇宙移民者)の間で広まり
「エレズム(地球聖地論)」
と呼ばれるようになった。
さらに数年後、ジオン・ズム・ダイクンは
「スペースノイドは経済的にも政治的にも自活が可能であり、連邦政府と対等な自治権を持つことができる」
「サイドの自治権、コロニーの主権を持つことは、地球に存在する主権に拮抗させんがためのものではなく、人類が1人残らず宇宙に翔び、地球圏そのものの主権をサイドの連合に置き地球を人類全体の聖地として守るべきだ」
「そのためのコロニーの拡大は容易であり、かつてキリスト者たちがその宗教の発祥の地をめぐって血なまぐさい争いを演じた歴史があるが、自分達はその誤ちを犯してはならない」
と主張。
U.C.0052年、
ジオン・ズム・ダイクンは、地球周回軌道上で、地球から一番離れた月の裏側付近にあるスペースコロニー「サイド3」へ移住。
サイド3を、ミノフスキー物理学を応用し、人工太陽を内部に持ち、単独での自給自足が可能となる密閉型コロニーに改修。
他のコロニーからの移民を奨励。
サイド3は、他のサイドの倍の人数が暮らすようになった。
U.C.0058年、
ジオン・ズム・ダイクン、デギン・ザビとギレン・ザビの親子、ジンバ・ラルらが革命を起こし、サイド3は「ジオン共国」として独立を宣言。
ジオン国軍も設立された。
「地球に居残る人々が天を見上げて、天にある人の支配を成さんとするのは笑止である」
他のサイドはジオンに大きな共感を示した。
U.C.0059年、地球連邦政府は、ジオン共国に経済制裁を実施。

U.C.0063年、ジオン・ズム・ダイクンが議会で演説中に急死。
側近だったデギン・ザビが後を継いだ。
ジオン・ズム・ダイクンは病死とされたが、シャア・アズナブル(キャスバル・レム・ダイクン)と妹のセイラ・マス(アルテイシア・ソム・ダイクン)、そしてジンバ・ラルは、
「ジオン・ズム・ダイクンが暗殺者だと名指ししようとした動作をデギン・ザビが後継者に指名されたように装った」
とデギン・ザビによる暗殺とみていた。
長年、ジオン・ズム・ダイクンを支えてきたデギン・ザビは、同志だったジンバ・ラルの排除を自分の子供達に指示。
ザビ家による迫害を受けたジンバ・ラルは、シャア・アズナブル(キャスバル・レム・ダイクン)とセイラ・マス(アルテイシア・ソム・ダイクン)を連れて地球へ脱出。
スペインのアンダルシアに住むテアボロ・マスに匿われた。
母親、アストライア・トア・ダイクンと生き別れとなったシャア・アズナブル(キャスバル・レム・ダイクン)は、ザビ家への復讐を誓った。

ダイクン派を一掃したザビ家、すなわち

父親のデギン・ザビ
野心家の長男、ギレン・ザビ
無骨な次男、ドズル・ザビ
男勝りの長女、キシリア・ザビ
美男子の三男、ガルマ・ザビ

はそれまでのやり方を一変させた。
国内には独裁的な政治を行い、地球連邦に対しては実力行使も辞さない強硬な姿勢を示した。
デギン・ザビは、ジオン・ズム・ダイクンの正当な後継者であると印象づけるために首都の名を「ズム・シティ」とし
「ジオンの大望を成すために」
と共国(国民により選ばれた大統領や首相が国のトップ)から公国(王様や貴族が国のトップ)へ変えて、自ら「公王」となった。

ギレン・ザビは、総人口1億5000万人のジオン公国の「総帥」として、総人口100億人を超える地球連邦と戦い、勝つための準備を着々と進めていった。
「ジオン公国の国民こそ選ばれた優良種である」
とプロパガンダ放送を制作、放送し国を鼓舞し、軍備増強を推し進めた。
ジオン軍は、ミノフスキー粒子の立方格子構造を利用し、驚異的な出力を落とすことなく小型化した新型核エンジン、それを搭載した人型有人機動兵器「モビルスーツ(MS)」を開発した。
「ミノフスキー粒子」の始まりは、トレノフ・Y・ミノフスキー博士による未知の素粒子の存在の仮説だった。
ミノフスキー粒子は、静止質量がほとんどゼロで、極めて強力な帯電性質を有し、一定濃度において立体格子状に整列する性質を持つ。
ミノフスキー粒子が散布された空間ではミノフスキー粒子より大きい物質を通さない。
電波、一部の可視光線、赤外線を遮断するため、戦場に散布すれば、あらゆるレーダーや通信機器を妨害する効果を生む。
しかしその仮説を学会は受け入れず、失意のミノフスキー博士は、デギン・ザビの知己を得て研究の場をサイド3へと移した。
そして熱核融合炉内で特殊な電磁波効果を発見し、ミノフスキー粒子の存在を証明。
数年後には、ミノフスキー粒子の立方格子構造を利用して放射線を遮断する小型の核融合炉の開発に成功した。
モビルスーツの開発は国営企業であるジオニック社が進めていたが、公式には
「作業用マシンの開発」
と発表していた。
地球連邦は警戒し、ジオニック社内で行われたテストの映像を入手したが、兵器としての可能性は見出せなかった。
この映像は一般にも出回り
「かわいい」
「ゆで卵のカラはむけるのか?」
「毛糸のマフラーは編めるのか?」
「積み木は積めるのか?」
などといって楽しませたが、実際、ジオニック社では約18mもあるMS-05ザクで積み木の練習を行っていた。
映像はジオニック社が意図的にリークしたもので、地球連邦側の反応を試していた。
笑うべきは地球連邦側のうかつさだった。
ミノフスキー粒子によりレーダーと射撃による遠距離戦は不可能になり、接近戦が主流となることをジオン軍だけが知っていた。

U.C.0072年、
急速に軍国化していくジオン公国をみて、トレノフ・Y・ミノフスキー博士は、自分の技術が戦争に利用されることを恐れ、地球へ亡命。
地球連邦の技術士官でアムロ・レイの父親、テム・レイ大尉を指導し、その技術を地球側にももたらした。
U.C.0078年、
地球連邦軍は、諜報活動、新兵器開発などを含む「RX計画」をスタートさせた。

U.C.0079年1月3日7時20分、ジオン公国は地球連邦政府に対して宣戦布告。
3秒後、月面都市「グラナダ」を攻撃。
8時2分、ジオンに加担しなかったサイド1、2、4を、軍民関係なく無差別攻撃。
この最初の攻撃で28億人が死亡した。
1月4日、ギレン・ザビは
「これは愚劣なる地球市民に対する裁きの鉄槌である」
とスペースコロニーを南米にある地球連邦軍本部「ジャブロー」へ落下させる「ブリティッシュ作戦」を発動。
サイド2のコロニー「アイランド・イフィッシュ」に対し、ジオン軍のシーマ・ガラハウ部隊が毒ガスを注入し2000万人の住民を虐殺し、核パルスエンジンを装着。
1月10日、アイランド・イフィッシュがジャブローへの落下軌道に投入されると、地球連邦軍は、必死の攻撃。
大気圏突入から約40分後、アイランド・イフィッシュは崩壊し始め、予定コースを外れていった。
前端部がオーストラリアのシドニーを直撃。
厚さ10kmの地殻を貫通し、M9.5の大地震を発生させ、後に「シドニー湾」となる最大直径500kmの巨大クレーターをつくり、オーストラリア大陸の16%を消滅させた。
残るコロニーの1/3は太平洋に、2/3は北米大陸に落下した。
1月11日、サイド6が中立宣言。
ジオン軍は、「ブリティッシュ作戦」を継続。
再度、コローニー落しを行うためサイド5に侵攻。
1月14日、
「ジオンの巨人どもをこれ以上進ませるわけにはいかん」
レビル将軍の第3艦隊を中核とする地球連邦の連合艦隊が宇宙要塞「ルナツー」を発進。
1月15日、サイド5宙域で両軍は激突し、圧倒的に数で優る地球連邦軍にドズル・ザビが率い、モビルスーツを持つジオン軍が圧倒。
地球連邦軍は、第3艦隊と第1艦隊がほぼ壊滅。
その上、レビル将軍がジオン軍の捕虜となった。
ジオン側も消耗が激しく、コロニー落しを実行することはできなかった。

この一戦で19歳のシャア・アズナブルは、赤く塗装されたザクを通常の3倍以上の速度で操縦し、1人でサラミス級戦艦4隻、マゼラン級戦艦1隻を撃沈し、中尉から少佐に2階級特進。
以後、「赤い彗星」の異名で呼ばれるようになり、地球連邦軍にとっては恐怖の存在となった。
1月17日、ジオン公国は、捕虜となったレビル将軍の姿を全地球圏に放送。
1月22日、極秘裏に地球連邦軍特殊部隊がレビル将軍奪還作戦を開始。
1月28日、相次ぐ勝利とレビル将軍捕獲で圧倒的に有利になったジオン軍の総帥、ギレン・ザビは、サイド6を通じて地球連邦政府に休戦条約の締結を打診。
1月31日、ジオン公国と地球連邦が南極で交渉。
ジオン公国が提示した休戦条約は、事実上の降伏勧告だったが地球連邦に戦争を継続する力は残っておらず、受け入れもやむなしと思われたとき、奇跡が起こった。
調印直前、捕虜となっていたレビル将軍が生還を果たし
「私はこの目でジオンの内情をつぶさにみてきた。
我々も苦しいがジオンも苦しい。
彼らに残された兵はあまりに少ない」
と放送で暴露。
これにより地球連邦は継戦に傾き、南極交渉は

・(コロニー落しなど)大量破壊兵器使用禁止
・核ミサイルの設計図の公開
・サイド6など中立宣言区の承認
・捕虜の取り扱いについて

などいくつかの軍事条約を締結したのみで終わった。


2月7日、ジオン軍は、ザビ家の末弟、ガルマ・ザビをトップとする地球方面軍を設立し、地球侵攻作戦を開始。
まず月面からの砲撃で地球上の耐空防衛網を破壊していった。
2月13日、ミノフスキー粒子散布されてレーダーが使えなくなった戦場でモビルスーツに瞬く間に戦艦を撃沈され、自ら捕虜となったレビル将軍は、モビルスーツを開発する「V作戦」を立案。
その有効性に懐疑的なジャブロー高官たちを説得した。
3月1日、ジオン軍が、地球降下作戦を開始。
まずカスピ海(ユーラシア大陸中央にある世界最大の湖)、黒海(ヨーロッパとアジアの間にある内海)の沿岸一帯を占領し、地下資源の確保。
それからヨーロッパ、中東へ進軍するという計画だった。

3月4日、ウクライナ南部の都市:オデッサに、マ・クベを中心としたジオン軍資源発掘隊が降下。
鉱物資源の獲得のため、この地を占領。
3月11日、ガルマ・ザビ率いるジオン軍が、北米大陸に降下し、大部分を占領し、穀倉地帯を手に入れた。
3月18日、ジオン軍が、ニューギニアおよびオセアニアに降下。
ジオン軍の勢いはすさまじく、開戦からわずか3ヵ月で地球の約半分を支配下に置いた。
地の利があるはずの地上でもモビルスーツを持たない地球連邦にジオン軍の侵攻を防ぐことはできなかった。
ギレン・ザビ総帥は、
「遅くとも8月までには地球全土を掌握できる」
と発表。
4月1日、地球連邦が
・モビルスーツの開発と量産化
・モビルスーツ専用母艦の建造
・モビルスーツの運用方法の確立
を目的とする「V作戦」を開始。
先行していた「RX計画」も、この計画に統合された。
4月4日、ジオン軍が、北アフリカに降下。
5月9日、地球連邦軍がアメリカアリゾナのジオン軍第67物資集積所を襲撃。
戦地で接収したザクを使ってジオン軍のザクを撃破したが、直後、ジオン軍のモビルタンク、ヒルドルブにより全滅。


5月17日、ジオン軍が旧サイド5宙域に「宇宙要塞ソロモン」を完成させた。
宇宙要塞ア・バオア・クー(ギレン・ザビ)、月面基地グラナダ(キシリア・ザビ)、宇宙要塞ソロモン(ドズル・ザビ)という宇宙戦線を形成された。
またキシリア・ザビは、月面基地グラナダに、ニュータイプの研究を目的にした「フラナガン機関」を設立した。
6月、戦略的価値の低い極東の小さな地方基地での戦いであったものの、地球連邦軍が、この戦争が始まって以来、初めて勝利を挙げた。
その後、スペースノイドを蔑視する将官と故郷を蹂躙され愛する者の命を奪われた兵士は、慣れない地上での戦いに疲弊したジオン軍に対し容赦ない戦いぶりをみせ戦局を覆していった。
「無理な領土拡大が仇になった。
わずかずつだが戦況は好転しつつある。
モビルスーツの量産が実現するまではなんとしても持ちこたえなければならん」
(レビル将軍)
「地球侵攻作戦の初期目的である資源の確保は、ほぼ達成した。
今後も予定通り侵攻作戦を継続していく」
(ギレン・ザビ)

9月、地球連邦軍が

・RX-75ガンタンク(両肩の120mmキャノン砲、両腕に4連装ポッドミサイルという高火力を装備した長距離砲撃戦用)
・RX-77ガンキャノン(両肩にキャノン砲、頭部にバルカン砲を固定装備し、状況に応じ武器の追加が可能な中距離支援用)
・RX-78ガンダム(新素材であるルナチタニウム製の装甲とシールド、戦艦の火力に匹敵するビームライフル、ビームサーベルを装備し、なおかつ高機動力を確保)

の3タイプのRXモビルスーツを完成。
9月15日、新鋭戦艦、「ホワイトベース」が、3タイプのRXモビルスーツを受領するため南米の地球連邦軍総司令本部、ジャブローを出航。
9月18日、ホワイトベースがサイド7に入港。
技術仕官、アムロ・レイの父、テム・レイは、自らが開発したRXモビルスーツを最終テストを行うべく準備を始めた。

サイド7の住民には
「軍艦が入港するために避難するように」
と命令が出されていた。
サイレンが鳴る中、住人の1人、15歳のアムロ・レイは、自分の家の部屋でパンツ一丁姿でパソコンを組み立てていたが、迎えに来た近所の女友達、フラウ・ボゥに促されやっと家を出る準備を始めた。

以前からフラウ・ボゥは、父親が留守がちで家の中で内気な趣味に没頭し、身の回りのことをほとんどしないアムロ・レイに食事を差し入れるなど世話を焼いていた。
フラウ・ボゥが先に出ると、ちょうどハヤト・コバヤシが柔道着を持った避難するところだった。
「アムロのお父さんみたいな軍事技術者がここにこなけりゃ・・」
(ハヤト・コバヤシ)
「研究施設ができるんで立ち退きさせられたのを、まだ恨んでるの?」
(フラウ・ボゥ)
アムロ・レイ、フラウ・ボゥ、ハヤト・コバヤシ、3人は同じ高校に通っていた。

ムサイ級巡洋艦、ファルメルでホワイトベースを追尾していたシャア・アズナブルは、部下のジーン、デニム、スレンダーの3機のザクを偵察部隊としてサイド7のコロニー内へに侵入させた。
偵察隊はスレンダー1機を見張りに置いて2機が深く潜入。
大型トレーラーの載せられ最終テスト場に運ばれていく地球連邦軍の3機の新型モビルスーツを発見すると
「シャア少佐だって、戦場の戦いで勝って出世したんだ」
「手柄をたてちまえばこっちのもんよ。
へ、敵を倒すにゃ早いほどいいってね」.
と独断で攻撃を開始。
地球連邦軍は完全に奇襲を受ける形となり壊滅状態。
民間人も攻撃を受けた。

アムロ・レイは、逃げている途中、トレーラーの上に寝かされたガンダムを発見。
かけよりコックピットをのぞいてみるとメーター類が動いていた。
「こいつ、動くぞ」
ガンダムに乗り込み、マニュアルを片手に起動。
「すごい!
5倍以上のエネルギーゲインがある」
ガンダムを大地に立たせ、襲ってきたジーン、デニムのザク2機をなんとか撃破。
ザクの爆発によってコロニーの壁が壊され、大気と共にいろいろなものが吸い込まれいき、テム・レイも宇宙空間に放り出され行方不明となった。

「スレンダーは?」
「サイド7を脱出して本艦に向かっております」
「認めたくないものだな。
自分自身の、若さゆえの過ちというものを」
部下の身勝手な行動と上官として自らを恥じたシャア・アズナブルは戦艦、ファルメルでサイド7を攻撃。
新しい攻撃が始まり、さらに逃げる場所が失ったサイド7の住民はホワイトベースへ避難した。
ホワイトベースでも正規軍人の大半が死傷。
パオロ艦長も負傷し、一刻も早く出航するよう、軍に入ってまだ6ヶ月、宇宙は初めてという19歳のブライト・ノア少尉に指示。
ブライト・ノアは、生粋のアースノイドで、非常に真面目で厳しい考え方を持つオールドタイプ。
以後、周囲がニュータイプへの覚醒をみせていく中、彼だけは最後までその徴候さえみせなかった。
このときすでにザクを2機撃破したという謎の少年に無線で命令し、強引にガンタンクとガンキャノンをホワイトベースに運び入れる作業をさせいて、その剛直さをうかがわせていた。

負傷兵の手当てをしながら、パオロ艦長とブライト・ノアのやり取りを聞いていた18歳のミライ・ヤシマは
「あのクルーザー級のスペースグライダーのパイロットのライセンスが役に立つとは思えませんが、私でよければ・・」
と申し出た。
ミライ・ヤシマはヤシマ家のご令嬢。
父、シュウ・ヤシマは、スペースコロニー建設でヤシマグループを巨大化させたが、地球連邦政府のやり方に反対しサイド7に移住。
友人のテアボロ・マスが襲撃を受けたとき、ジオン・ズム・ダイクンの遺児を保護していることを打ち明けられ、それがザビ家の凶行であることを知ると、あえてザビ家に恭順の意を表し監視されやすい場所にいたほうがよいと進言。
このとき15歳のミライも惨劇のあったテアボロ邸に同行していたが、窓から悲運の兄妹を目撃し深い憐憫の感情を抱いた。
学業優秀なミライは、その後、宇宙飛行士を夢みて、飛び級でカレッジに進んだ。
自分と一緒に負傷者の手当てをしている女性がマス家にいた兄弟の1人だとは気づかなかった。

その女性、セイラ・マスは、パオロ艦長に依頼され逃げ遅れた人の捜索に出ることになった。
18歳のセイラ・マスは、シャア・アズナブルの妹だった。
2人は、名を変え、素性を隠し地球で過ごした後、兄は祖国に戻り軍人を、妹はサイド7へ移住し医師を志した。
捜索に出ようとしたとき、セイラ・マスは、ホワイトベースに逃げこもうとするカイ・シデンに出会った。

カイ・シデンは、アムロ・レイ、ハヤト・コバヤシ、フラウ・ボゥと高校のクラスメイトだったが留年しているために年齢は1個上の16歳だった。
「あ、ほかの人はいませんでした?」
(セイラ・マス))
「知らねえな。
爆撃の後をよけながらようやくたどり着いたんだ。
(エレベーターに)乗るのかい?」
(カイ・シデン)
その態度に怒ったセイラ・マスは、カイ・シデンにかけより、いきなりビンタ。
「お、お前」
「それでも男ですか!軟弱者」
「なんだってんだよ」
「あなたみたいな人、サイド7に1人残っているといいんです」
「お高くとまりやがって」
「そんな不良みたいな口のきき方、おやめなさい」
かまわずセイラ・マスとフラウ・ボゥは2台の車で捜索に出た。
「ちょっと君、手伝ってくれ」
「ああ」
負傷者を運搬していた地球連邦軍兵士、リュウ・ホセイ曹長に頼まれ、カイ・シデンはそれを手伝った。

「中尉、突撃隊員を3名招集したまえ」
「はっ?
補給艦の到着を持つのではないのですか?」
「戦いとはいつも2手3手先を考えて行うものだ」
「スレンダーは脱出した。
ということは逆もまた可能ではないかな」
シャア・アズナブルは、ドレン中尉にサイド7への攻撃を継続させながら、3名の部下と宇宙服を着て生身でサイド7に潜入。
一方、ブライト・ノアは、ガンタンクとガンキャノンをホワイトベースに運び入れる作業をしていたたガンダムに命じた。
「アムロ、サイド7に残ったガンダムの部品はすべて破壊しろ」
「なんでです?
あと3機分くらいは・・」
「ジオンに機密を渡せというのか!」
生存者の捜索中のセイラ・マスは不審者を認め、車を停めて拳銃を持って密かに背後に回った。
「下ろしなさい。
お捨てなさい!」
それはザクが破壊した地球連邦軍のモビルスーツの残骸を調べるシャア・アズナブルだった。
シャアは持っていたモビルスーツの部品を捨てた。
「勇敢だな。
軍人ともゲリラとも思えんが」
「動くと撃ちます」
「似ている!」
「ヘルメットをとってください。
そして後ろを向いてください」
シャアは素顔をさらした。
「ハッ!」
動揺したセーラ・マスの拳銃をシャアが蹴り上げた。
「しかしアルテイシアにしては・・・」
そのときガンダムが現れたため、シャアはいったん退避。
そしてブライト・ノアの命令通り、モビルスーツの部品を破壊し、帰艦するガンダムを密かに尾行。
ガンダムを入れるために港がハッチを開けた瞬間、飛び出し、中に潜入した。
「ブライトさん、ジオンの兵士が港に入っていきました」
(アムロ・レイ)
「ホワイトベースのすべてのハッチを閉めろ」
(パオロ艦長)
「誰でもかまわん。
前方より接近中のジオンの兵を狙撃しろ」
(ブライト・ノア)
四方八方からの銃撃をかいくぐり、シャアはホワイトベースへの接近しカメラでその姿を撮ることに成功。
しかしすぐにカメラを撃たれ破壊されたため、壁に爆弾を穴をあけ宇宙へ逃走。
ガンダムも追って宇宙へと出た。
ミライを操舵士にしたホワイトベースもそれに続いた。

宇宙へ出たホワイトベースは、すぐに接近してくる2つの機体の情報をキャッチした。
「ザクか?」
(ブライト・ノア)
「で、でも、このスピードで迫れるザクなんてありはしません。
1機は通常の3倍のスピードで接近します」
「シャ、シャアだ。
あ、赤い彗星だ」
(パオロ艦長)
「艦長、何か?
エエッ!赤い彗星のシャア?」
(ブライト・ノア)
「ルウム戦役で5隻の戦艦がシャア1人のために撃破された。
に、逃げろ!」
(パオロ艦長)
「みせてもらおうか、連邦軍のモビルスーツの性能とやらを」
シャア・アズナブルは、ガンダムのビームライフを回りこんでかわしながら120mmマシンガンを命中させた。
「どうだ。
ンッ?
バカな!
直撃のはずが」
ガンダムが無傷だったがアムロ・レイは恐怖で浮き足立ち、ビームライフルを連射。
シャアはもう1機のザクに指示。
「スレンダー、敵のモビルスーツの後ろへ」
「少佐、ぶ、武器が違います
あの武器は自分はみていません」
「当たらなければどうということはない。
援護しろ」
スレンダーはいわれた通りにしたがガンダムのビームライフルに撃ち抜かれ死亡。
「スレンダー・・・
一撃で、一撃で撃破か。
なんということだ。
あのモビルスーツは戦艦並みのビームライフを持っているのか」
シャアは退避。
帰艦したアムロはブライトは初対面した。
「君か。
ガンダムの性能を当てにしすぎる。
戦いはもっと有効に行うべきだ」
「な、何?」
「甘ったれるな!
ガンダムを任されたからには貴様はパイロットなのだ。
この船を守る義務がある」
「い、いったな」
こうしてアムロはガンダム、カイ・シデンはガンキャノン、ハヤトはガンタンクのパイロット、ミライは操舵士、セーラ・マスは通信士となり、フラウ・ボゥもコックピット内や船内でいろいろな仕事を任され、地球連邦軍の最高機密に属する新鋭戦艦と3体のRXモビルスーツは、20歳に満たない少年少女たちによって運営されることになった。

ホワイトベースは地球連邦軍の宇宙基地「ルナツー」へ入港。
元々、鉱物資源採掘のために運ばれてきた小惑星だったが、今や地球連邦軍の最前線基地となっていた。
「ホワイトベースの修理と子供たちを・・」
(パオロ艦長)
「はい、この船は間違いなくジャブロー(地球にある連邦軍本部)に直行させます」
(ルナツー司令、ワッケイン)
「避難民だけでも収容していただけませんか?
我々がこのホワイトベースをジャブローまで運ぶなど不可能です」
(ブライト・ノア)
「素人の集まりなんですよ」
(ミライ)
「すでに諸君らは実戦をくぐり抜けた。
みなさん方には気の毒だが、この船は新型の戦艦です。
地球連邦軍本部、ジャブローに直行して、みなさんの以後の処理を決定します」
(ルナツー司令、ワッケイン)
「地球に戻るのか?」
「私たちはサイド7に戻りたいんだ」
ホワイトベースに避難している民間人の訴えにも耳を貸さず、ワッケインは
「ジャブローの命令です。
この艦は直ちに発進します」
とホワイトベースをルナーツーから出した。

南米の地球連邦軍本部「ジャブロー」を目指すホワイトベースは、宇宙から大気圏へ突入しようとしようとしていた。
「20分後には大気圏に突入する。
このタイミングで戦闘を仕掛けたという事実は古今例がないはずだ。
地球の引力に引かれ大気圏に突入すれば、ザクとて一瞬のうちに燃え尽きてしまうからだ。
しかし敵が大気圏突入のために全神経を集中している今こそ攻撃をするチャンスだ。
第1目標、木馬。
第2目標、敵のモビルスーツ。
戦闘時間は2分とないはずだが、諸君らであればこの作戦を成し遂げられるであろう。
期待する!」
シャア・アズナブルはザク部隊で奇襲を仕掛け、ホワイトベースはガンダムを出した。
「アムロ、発進後4分でホワイトベースに戻って。
必ずよ」
(セイラ・マス)
「了解。
セイラさん、僕だって丸焼けにはなりたくありませんから」
(アムロ・レイ)
「後方R3度。
ザクは4機よ。」
「4機も?
シャアは手持ちのザクは無いはずだ。
そうじゃない?セイラさん」
「事実は事実よ。
高度には気をつけて。
そうしないと大気圏で燃え尽きるわよ」
「戦っている最中に気をつけられると思ってるんですか?」
「あなたならできるわ」
「おだてないでください」
「カタパルトへ」
「アムロ、行きます」
4機のザクは2手に別れ、それぞれガンダムとホワイトベースを攻撃。
1機はすぐにやられ、アムロ・レイとシャア・アズナブルは1対1で対決。
「フフ、モビルスーツの性能の違いが戦力の決定的差ではないということを教えてやる!」
前回、ザクの武器は通用しないことを知ったシャアは格闘戦でガンダムを圧倒。
「アムロ、ホワイトベースに戻って。
オーバータイムよ」
(セイラ・マス)
「クラウン、かまわん。
もういい戻れ」
シャア・アズナブルは味方に戻るよう指示し、自身も大気圏突入カプセルに収容された。
しかしアムロ・レイは最後のザクを攻撃しにいった。
ガンダムとザクは大気圏に吸い込まれていった。
「クラウンは?」
(シャア・アズナブル)
「ダメです。
もはや回収不可能です」
「少佐ー。
助けてください。
減速できません。
シャア少佐、助けてください」
(クラウン)
「クラウン。
ザクには大気圏を突破する性能はない。
気の毒だが・・・
しかしクラウン、無駄死ではないぞ。
お前が連邦軍のモビルスーツを引きつけておいてくれたおかげで撃破することができるのだ」
(シャア・アズナブル)
ザクは灼熱の大気に包まれ空中分解。

アムロ・レイはガンダムのマニュアルを読んでいた。
「あった!
大気圏突破の方法が。
間に合うのか?」
耐熱フィルムと冷却シフトによってガンダムの機体温度は低下した。
「すごい。
装甲版の温度が下がった。
しかしどうやって着陸するんだ?」
(アムロ・レイ)
「モビルスーツの位置は変わらんな。
燃え尽きもしない。」
(シャア・アズナブル)
「どういうことでしょう?
あのまま大気圏に突入できる性能をもっているのでしょうか?」
「まさかとは思うが、あの木馬もあのまま大気圏を突入しているとなればあり得るな。
残念ながら」
「ようやくわかりましたよ、シャア少佐。
よしんば大気圏突入前に討ちもらしても進入角度を変えさせる2段構えの作戦」
「戦いは非情さ。
それくらいのことは考えている」
そういってシャア・アズナブルは無線でガルマ・ザビを呼び出した。
「よ、なんだい赤い彗星」
「その呼び名は返上しなくっちゃならんようだよ、ガルマ・ザビ大佐」
「ハハハッ、珍しく弱気じゃないか」
「敵のV作戦って聞いたことがあるか?
その正体をつきとめたんだがね」
「なんだと?」
「そのおかげで私はザクを6機も撃破されてしまったよ」
「ひどいものだな。
そんなにすごいのか?」
「そちらにおびき込みはした。
君の手柄にするんだな。
後ほどそっちに行く」
「ようし、そのご好意は頂こう。
ガウ攻撃空母で迎え撃つ。
緊急出動だ!」

大気圏突破後、ガンダムはホワイトベースへ無事に収容された。
帰艦したアムロ・レイは、仲間に声をかけられても無視し、自分の部屋にこもった。
サイド7以来、続いた出撃で疲労が重くのしかかっていた。
ホワイトベースが降りたのは南米ではなくジオン公国軍に占領されている北米大陸だった。
ホワイトベースの前方にガルマ・ザビの乗った攻撃空母、ガウが現れ、シャア・アズナブルが乗ったカプセルを収容した。
「シャアは戦術に優れた男です。
私たちはシャアにハメられたんです」
(ブライト・ノア)
「よう、シャア。
君らしくもないな。
連邦軍の船1隻にてこずって」
「いうなよガルマ。
いや、地球方面軍司令官、ガルマ・ザビ大佐とお呼びすればいいかな?」
「士官学校時代のガルマでいいよ」
「あれが木馬だな」
「赤い彗星と呼ばれるほどの君がしとめられなかった船とはね」
「わざわざ君が出てくることもなかったといいたいのかな?」
「いや、友人として君を迎えに来ただけでもいい、シャア」
「大気圏と突破してきた船であることをお忘れなく」
「ああ、その点から推測する戦闘力を今計算させている。
君はゲリラ争闘作戦から引き続きだったんだろ?
休みたまえ」
「お言葉に甘えよう。
しかしジオン十字勲章ものであることは保障しよう」
「ありがとう。
これで私を一人前にさせてくれて。
姉に対しても私の男を上げさせようという心遣いかい」
「ははは」
「笑うなよ、兵がみている」

さっそくガルマ・ザビは自らも戦闘機、ドップに乗り込み出撃。
地上にも戦車、マゼラ・アタックを展開し、空と陸からホワイトベースを挟み撃ちにする作戦を展開。
「しかし見事じゃないか。
ガルマ大佐の攻撃ぶりは。
親の七光で大佐になっただけの人物ではないな」
ガウに残ったシャア・アズナブルは、そういいながら密かに無線のケーブルを引き抜いた。
「少佐よろしいのでありますか?
我々はみているだけで」
「いいだろ。
援護が必要なら呼び出すといっていたし、ヘタに手出しをするとプライドの高い彼のことだ。
後で怒られるし、この距離なら、無線は使えるんだろ?」
「このくらいの距離なら・・・」
「それならいいじゃないか。
私だってガルマにしかられたくないからな」
リュウとハヤトがガンタンク、カイがガンキャノンが出撃したが、部屋にこもっていたアムロ・レイは拒否。
目前に敵が迫る中、怒ったブライトは、ブリッジを離れ、アムロ・レイの部屋に走った。
「アムロ、貴様なぜ自分の任務を果たそうとしないんだ」
「ブライトさんはなぜ戦っているんです?」
「クッ、今はそんな哲学など語っている暇はない!
立てよ、おい。」
「やめてくださいよ。
そんなにガンダムを動かしたいんならあなた自身がやればいいんですよ」
「なに?
できればやっている。
貴様にいわれるまでもなくな」
「僕だってできるからやっているんじゃないんですよ」
ブライト・ノアはアムロ・レイを殴った。
「殴ったね!」
「殴ってなぜ悪いか!
貴様はいい。
そうして喚いていれば気分も晴れるんだからな」
「ぼっ僕が、そんなに安っぽい人間ですか」
ブライト・ノアは、今度は手の甲でアムロをブッた。
「クッ、2度もブッた。
親父にもブタれたことないのに」
「それが甘ったれなんだ!
殴られもせずに一人前になった奴がどこにいるものか!」
「もうやらないからな!
誰が2度とガンダムなんかに乗ってやるものか」
「俺はブリッジにいく。
アムロ!
今のままだったら貴様は虫ケラだ!
俺はそれだけの才能があれば貴様はシャアを超えられる奴だと思っていたが、残念だよ!」
横で一部始終をみていたフラウ・ボゥはアムロにいった。
「あたしガンダムに乗るわ!
自分のやったことに自信を持てない人なんて嫌いよ!
今日までホワイトベースを守ってきたのは俺だっていえないアムロなんて男じゃない!
あたし・・・」
「フラウ・ボゥ・・・
ガンダムの操縦は君には無理だよ」
「アムロ・・・」
「悔しいけど・・・僕は男なんだな」

アムロ・レイは再び戦場に向かった。
「リュウさん、下がれ。
後はガンダムがやる」
ガンダムは、次々に敵を破壊。
「この化け物が、落ちろ、落ちろ~」
(ガルマ・ザビ)
ガンダムは突っ込んでくるガルマ・ザビのドップの片翼を斬り落とした。
右翼を失いながらガルマ・ザビは無線で指示。
「ガウ、聞こえるか?
モビルスーツだけを木馬から引き離す。
ガウの射程距離に入ったらモビルスーツを撃ち落とせ!」
「逃がすものか」
追ってくるアムロ・レイを確認してガルマ・ザビ微笑んだ。
「フフッ、ガウのビーム砲の射程に入ってきたとも知らないで。
ガウ、撃て!
モビルスーツを!」
(シィーン)
「聞こえないのか、ガウ!
私だ、ガルマだ。
どういうことだ。
こちらからは確かに発信しているはずなのに」
そのときガンダムの前に、地球連邦軍の一隊が現れ、スピーカーで警告。
「そこのモビルスーツ、聞こえるか?
深追いするとガウの餌食になる。
ホワイトベースに戻れ」
マチルダ・アジャン中尉率いるミデア輸送隊だった。
九死に一生を得て帰艦したガルマ・ザビは無線をみて怒った。
「こんな汚れでは接触不良を起こして当たり前だろ。
懲罰の覚悟をしておけ」
シャア・アズナブルにも
「貴様も貴様だ」
といい放った。
「そう思うよ」
「戦いはみていたはずだ。
私の連絡がなくとも手の打ちようがあったろう」
「だからガルマのプライドを傷つけちゃ悪いと思ってな」
「私のプライド?」
「ただみていろと私にいっただろ?
それにガルマなら、あの程度のキズはなんなく切り抜けてくれると信じていた」
「そりゃあそうさ」
「まあ残念なことは敵の輸送機を撃墜しようとしたときガルマの機を一直戦場だったので撃てなかった。
すまんな」
「いや、わかればいい、シャア」
10月1日、ガルマ・ザビの攻撃をしのいだホワイトベースは、ミデア輸送隊から補給を受けて修理を行った。
そしてマチルダ・アジャン中尉は、避難民と負傷者の一部を引き取り、ホワイトベースには、単独で脱出するようにというレビル将軍からの命令を伝えた。
「あなたの戦いがなければ私達もやられていたわ。
ありがとう。
あなたはエスパーかもしれない」
(マチルダ・アジャン)
「そ、そんな」
(アムロ・レイ)
「がんばって」
「はい」
そういってマチルダ・アジャンは去っていった。

10月4日、パーティーの最中、ガルマ・ザビはホワイトベースの情報を得た。
「木馬がF3ポイントに紛れこみました」
F3ポイントを突破されれば、地球連邦軍の制空圏だった。
「予定通りだよ。
私も現地に向かう。
シャア少佐にも伝えろ。
出動だ」
ホワイトベースは、廃墟化した町を見つからないよう明かりを消して低空飛行していた。
北から敵の編隊が現れ、照明弾が上げた。
そのわずかな明かりでブライト・ノアは半壊したドーム型スタジアムを見逃さなかった。
ホワイトベースは、そこに入り、動力を停止。
中ではモビルスーツ隊が戦闘準備を整えた。
ガルマ隊はホワイトベースを見失った。
「穴に逃げ込んだネズミをいぶりだすのは絨毯爆撃に限るな」
(シャア・アズナブル)
「うん。
全機ローラーシフトを敷き、直ちに爆撃を開始しろ!」
(ガルマ・ザビ)
ジオン軍は絨毯爆撃を開始。
ホワイトベースは、敵の攻撃の中でドームで静かに息を潜めた。
「木馬は出てきたか?」
ホワイトベースが見つからないことにいら立つガルマ・ザビに、シャア・アズナブルは自ら地上に降りることを志願。
「シャア、木馬なり、モビルスーツを発見したらすぐに知らせろ。
ガウで仕留めてみせる。」
「わざわざのお見送りには恐縮するよ。
今回はそのつもりだ。
頼むよ、ガルマ」
「頼むぞ、シャア」
「勝利の栄光を君に」

ホワイトベースは、ガウから3機のザクが出動したのを確認。
ブライト・ノアは、ガンダムにザクをホワイトベースの前におびき寄せるよう指示。
シャア・アズナブルは、ガンダムを2機のザクに任せ、周囲を偵察しホワイトベースを発見。
「なるほど。
モビルスーツがおとりとなっておびき寄せ、木馬が攻撃する。
いい作戦だ」
と見抜いた上でガルマ・ザビに嘘の無線。
「モビルスーツが逃げるぞ。
その先に木馬がいるはずだ。
追えるか?」
「追うさ」
ガルマ・ザビは出撃。
ガウ攻撃空母編隊を確認したホワイトベース、ガンタンク、ガンキャンは背後から一斉射撃。
「後ろだと!」
驚くガルマ・ザビに、ガレキに隠れたシャア・アズナブルは無線を送った。
「ガルマ、聞こえていたら君の生まれの不幸を呪うがいい」
「何?不幸だと」
「そう、不幸だ」
「シャア、お前は」
「君はいい友人であったが、君の父上がいけないのだよ」
「シャア、謀ったな!
シャア!」
シャアの陰謀に引っかかったことを悟ったガルマ・ザビは、すでに被弾し燃えているガウ攻撃空母の操縦席を部下から奪い取り、ホワイトベースに特攻をかけた。
「私とてザビ家の男だ。
無駄死はしない。
ジオン公国に栄光あれぇ」
そう叫びながら、ホワイトベースの攻撃を受けて散っていった。
ガルマ・ザビ大佐の死は直ちに本国に伝えられ、報告を聞いたデギン・ザビ公王は声もなく杖を落とした。

デギン・ザビ公王は長兄、ギレン・ザビ総帥に一族の召集を命じた。
「ガルマの死を無駄にするわけにはまいりません。
ザビ家末代までの沽券にかかわります。
犬死の間々終わらせるわけにはまいりませんな」
(ギレン・ザビ)
「ギレン、私はただガルマの死を・・・」
(デギン・ザビ)
「遅くなった。
父上!」
(ドズル・ザビ)
「早かったな、2人とも」
(デギン・ザビ)
「残念です。
あのガルマが連邦のモビルスーツの前に倒れたと」
「兄貴、俺はまだ信じられん。
いまにもアイツが顔を出すんじゃないかと・・」
(ドズル・ザビ)
「過去を思ってみても戦いには勝てぬぞ、ドズル」
(ギレン・ザビ)
「しかしアヤツこそ俺さえも使いこなしてくれる将軍にもなろうと楽しみにしておったものを」
(ドズル・ザビ)
「ドズルのいう通りだ。
だからだ、ギレン、静かに丁重にガルマの冥福を祈ってやってくれまいか」
(デギン・ザビ)


ホワイトベースは、再びマチルダ・アジャン中尉率いるミデア輸送隊と合流。
補給作業が行われる中、マチルダ・アジャンはブライト・ノアに、「ニュータイプ」の話をした。
「ニュータイプですか?」
「ジオンではそれなりに研究が進んでいるようです。
勘のよい、ちょっとしたエスパーのようなものだといわれています」
重力に支配される地球上で育ったオールドタイプと比べ、重力のない宇宙で育ったニュータイプは、常人とかけ離れた強い脳波を発っし、第6感を有していた。
時空を超えた非言語的コミュニケーション能力、超人的な直感力と洞察力を持っていた。
シャアの父、ジオン・ズム・ダイクンはニュータイプを、「人類の革新」と呼び、その最大の意義は、人と人とが分け隔てなく理解し合えるということだった。
しかし戦争が起こると、ニュータイプは優れた空間認識力を有するパイロットとして注目され、ニュータイプ専用兵器「サイコミュ(サイコ・コミュニケーター)」の研究と開発も行われていた。
補給を終えたホワイトベースは、それまで南米、ジャブローに向かっていたが、ウクライナ南部の都市:オデッサを占領しているマ・クベのジオン軍資源発掘隊を掃討する「オデッサ作戦」に参加すべくヨーロッパへ進路を変更した。

10月5日、ジンバ・ラルの息子でジオン軍の勇将であるランバ・ラルの部隊が、戦艦ザンジバルで地球に降下した。
父、ジンバ・ラルがダイクン派に属し、自身、ジオン・ズム・ダイクンの2人の遺児と共に地球で暮らした。
そのためジオン軍に入った後、冷遇され、実力と実績はあるものの日陰の道を歩いていた。
ドズル・ザビにガルマ・ザビの仇討ちを命じられ
「この作戦はザビ家の私的な恨みから出ている」
と思いながらも自分のためではなく、部下や内縁の妻、クラウレ・ハモンのために引き受けた。
そして大気圏突入直後、太平洋上を移動中のホワイトベースを発見すると迷わず攻撃を仕掛けた。
嵐の雲の中に身を隠したホワイトベース、追うザンジバル、けたたましく鳴る雷の音に、両戦艦の乗組員は共に敵の新兵器と思った。
「あわてるな。
これは地球の雷というものだ。
以前、地球でみたことがある。
大丈夫だ」
(ランバ・ラル)
その後、小島に着陸したホワイトベースにランバ・ラルはグフで出撃し、2機のザクに指示を出した。
「アコース、コズン、我々が地球で戦うのは初めてだ。
深追いはするな」
ガンダム、ガンキャノン、ガンタンクが出てくると
「アコース、コズンは後ろの2台のモビルスーツに仕掛けろ。
私は白いのをやる。」
(ランバ・ラル)
「やってやる、やってやるぞ。
新型のモビルスーツがなんだ!」
アムロ・レイは新型モビルスーツをみて闘争心を燃やし、グフの電磁ムチ、ヒート・ロッドにビームサーベルで応戦。
「ザクとは違うのだよ、ザクとは」
「こいつ、違うぞ。
ザクなんかと装甲もパワーも」
グフでガンダムを蹴り飛ばした後、ランバ・ラルは部下に撤退を命じた。
「逃げられた・・・というより見逃してくれたのか」
(アムロ・レイ)

サイド3の首都:ズム・シティでガルマ・ザビの国葬が始まり、ギレン・ザビ総帥が演説が行った。
その様子は全地球圏に中継放送され、アムロやブライトたちはホワイトベースで、ランバ・ラルも自分の戦艦でこれを観た。
「我々は1人の英雄を失った。
しかしこれは敗北を意味するのか?
否!
始まりなのだ!
地球連邦に比べ我がジオンの国力は1/30以下である。
にもかかわらず今日まで戦い抜いてこられたのは何故か?
諸君!
我がジオン公国の戦争目的が正義だからだ。
これは諸君らが一番知っている。
我々は地球を追われ宇宙移民者にさせられた。
そして一握りのエリートらが宇宙にまで膨れ上がった地球連邦を支配して50余年、宇宙に住む我々が自由を要求して何度踏みにじられたか。
ジオン公国の掲げる人類1人1人の自由のための戦いを神が見捨てるはずはない。
私の弟、諸君らが愛してくれたガルマ・ザビは死んだ。
何故だ・・・・」
そのとき、国葬に出席せずバーで1人酒を飲みながらテレビを観ていたシャア・アズナブルはつぶやいた。
「坊やだからさ」
ちなみにこのときシャアが飲んでいた酒は、「ラ・マニー」という実在するラム酒だった。
ギレン・ザビの演説は続いた。
「・・・
新しい時代の覇権を選ばれた国民が得るは、歴史の必然である。
ならば、我らは襟を正し、この戦局を打開しなければならぬ。
我々は過酷な宇宙空間を生活の場としながらも共に苦悩し、錬磨して今日の文化を築き上げてきた。
かつてジオン・ダイクンは人類の革新は宇宙の民たる我々から始まるといった。
しかしながら地球連邦のモグラ共は自分たちが人類の支配権を有すると増長し我々に抗戦する。
諸君の父も子も、その連邦の無思慮な抵抗の前に死んでいったのだ!
この悲しみも怒りも忘れてはならない!
それをガルマは死をもって我々に示してくれた!
我々は今、この怒りを結集し、連邦軍に叩きつけて、初めて真の勝利を得ることができる。
この勝利こそ、戦死者全てへの最大の慰めとなる。
国民よ立て!
悲しみを怒りに変えて。
立てよ!
国民よ!
我らジオン国国民こそ選ばれた民であることを忘れないでほしいのだ。
優良種である我らこそ人類を救い得るのである。
ジーク・ジオン!」
「ジーク・ジオン!ジーク・ジオン!ジーク・ジオン!」
(ジオン国民の声)
「これが敵・・」
(アムロ・レイ)
「なにをいうか。
ザビ家の独裁を目論む男がなにをいうのか!」
(ブライト・ノア)

「オデッサ作戦」のため地球連邦軍は8つのルートに分かれウクライナ南部の都市:オデッサに向かっていた。
オデッサのジオン軍資源発掘隊、マ・クベはホワイトベースがそれに加わったことを知ると
「まずいな」
といい、しばらく考えてから部下に命じた。
「ガルマの敵を討つために降りてきたランバ・ラルの隊に(ホワイトベースの情報を)教えてやれ。
やつに木馬の始末をさせればこちらの戦力を割かなくてすむ。
我々はキシリア・ザビ麾下の部隊だ。
ドズル直営のランバ・ラル隊に援助することはない。
手伝いはさせてもな」
中央アジアの砂漠を横断しカスピ海沿いに黒海に向かうホワイトベースは、途中で、敵から攻撃を受け、ブライト・ノアは、アムロ・レイにガンダムで出撃するよう指示。
しかしアムロ・レイは
「傭兵の問題はまだブライトさんにはわかりはしない。
なんでもかんでもガンダムで戦わせれば良いってもんじゃない」
と独断でハヤトとガンタンクで出撃。
そこへランバ・ラル隊の大型陸戦艇、ギャロップが現れた。
なんとか帰艦したアムロ・レイをブライト・ノアは叱責。
しかしアムロ・レイは今回の攻撃にはガンタンクが適していたと主張した。
「しかしギャロップが来たな」
「はい」
「兵士には作戦全体を見通すことが出来るわけないんだ。
命令は絶対に守れ。
軍規違反だ。」
「軍規?」
「そう、戦いには必要なことなのだ」
「わかりますが、僕ら軍人なんですか?」
ブライト・ノアは、その質問を無視した。
「気をつけてくれよ」
「はい」

その後、アムロ・レイは、ドッグのコンピューターでグフの戦力の計算をし直した。
「ザクもグフも操縦者や環境でまるっきり動きが違っちゃうってことか。
根本的にやり直さなくっちゃいけないのか」
そしてそのままそこで眠ってしまった。
やがてそこへブライトとミライが現れ立ち話を始め、アムロはその声で起きた。
「あんまり賛成できないけど」
「ジョブだって良いし、オムルだってシュミレーションをやらせてある」
「でもねぇ」
「ん?キャノンの修理はしていないのか?」
「スペアの腕を工作室で整備中よ」
「なあ、どう思う?」
「ブライトは決めたんでしょ。
アムロをガンダムから降ろすって」
「じゃあミライはアムロがニュータイプだと信じているわけか」
「そうとでも考えなければサイド7以来のアムロの働きはわからないわ」
「それは認めるが確証はない。
現在の我々はいかに生き延びるかが課題だ」
「ニュータイプは人の革新だっていうわ。
アムロだってその兆しがあるんだったら・・・」
「そんなもの待っていられるか。
今はアムロをガンダムから降ろして・・・」
「ブライト」
「ヤツの行動を認めたらヤツは自分を特別の人間だと思って増長するだけだ。
ミライ、賛成してもらいたいな」
そのときミライはアムロに気づいた。
「はっ、アムロ!」
「き、聞いていたのか」
ショックを受けたアムロ・レイは涙を流しながら逃げ出した。
「あ、アムロ、どこいくの?」
「やめたまえ」
ブライトは追おうとするミライを制した。
「返ってくどくど説明する手間が省けたということだ」
「そうかしら」
その後、フラウ・ボゥは、荷物を持って廊下を歩くアムロを見つけた。
「アムロ、どこ行くの?」
「ホワイトベースを降りるんだ。
元気でな」
「え、なに?」
「船を降りるんだよ」
「どうしたの?」
「ブライトさんとミライさんが僕は不必要だってうんだ。
だから船を降りるんだよ」
「ちょ、ちょっと」
「止めるな!」
そしてガンダムに乗ってホワイトベースを出た。

アムロ・レイは、ガンダムを砂漠の砂の中に隠し、水を求めて歩いた。
町を見つけ、レストランで食事をしていると店の前にグフを載せたトレーラーが止まり、
「オヤジ、休ませてもらうぞ。
13人だ」
とランバ・ラル隊が入ってきた。
「すまんな。
お前らは見張りだ。
交代は急がせる」
「はい、ランバラル隊長」
店先で2人の隊員に見張りを命じたランバ・ラルが少し遅れて入店。
(ランバ・ラル?)
アムロ・レイは、その名を覚えた。
「オヤジ、うまい水をくれ」
(ランバ・ラル)
「あのぉ、この町は中立地帯ですので戦争は・・・」
(店主)
「他でやる。
心配するな」
(ランバ・ラル)
「なにもないのねぇ。
できるものを14人分」
(クラウレ・ハモン)
「1人多いぞ、ハモン」
(ランバ・ラル)
「あの少年にも」
(クラウレ・ハモン)
アムロ・レイは立ち上がり、ランバ・ラル隊に近づいた。
「あの、なんていうか、ご好意は嬉しいんですけど僕にはいただけません」
「なぜ?」
(クラウレ・ハモン)
「あなたに物をめぐんでもらう理由がありませんので」
(アムロ・レイ)
「はははっ、ハモン、一本やられたな。
この小僧に」
ランバ・ラルは豪快に笑った。
「君のことを私が気に入ったからなんだけど理由にならないかしら?」
「ハモンに気に入られるなど余ほどのことだぞ」
「僕乞食じゃないし」
「気に入ったぞ小僧。
それだけものをはっきりいうとはな。
ハモンだけのオゴりじゃない。
わしからもオゴらせてもらうよ。
なら食っていけるだろ?」

そこへバギーに乗ってアムロ・レイを探しにきたフラウ・ボゥが、連邦軍の服を着ていたためランバ・ラル隊の見張りに拘束され中に連れられてきた。
「フラウ・ボゥ!」
「あなたのお友達?」
「ええ」
「その子、この子のガールフレンドですって」
クラウレ・ハモンがいうとランバ・ラルは解放するように命じた。
そしてアムロ・レイに近づき
「いい目をしているな」
といいながらアムロ・レイが羽織っていたコートをはがした。
するとアムロ・レイの手には拳銃が握られていた。
「それにしてもいい度胸だ。
ますます気に入ったよ。
アムロとかいったな」
「は、はい」
「しかし戦場であったらこうはいかんぞ。
がんばれよアムロ君」
「は、はい。
ランバ・ラルさんもハモンさんもありがとうございました」
アムロとフラウが店を出るとランバ・ラルはすかさず部下に2人を尾行するように指示した。
「さっきの女の人がみていたから手をつなぐのやめたんでしょ。
どんどん私から離れていっちゃうのね。
アムロ」
店の外に出たフラウ・ボゥは、ヤキモチを焼きながらもアムロ・レイにホワイトベースに戻るよう説得した。
「みんなが心配しているのはこいつ(ガンダム)だろ」
「違うわよ。
今帰れば許してくれるって」
「許す?
何の話だい?」
「だってカイさんは敵前逃亡罪は死刑だって」
「それがみんなの本音かい。
帰れ!」
「違うわ。
ホワイトベースのみんなはアムロの力を必要としているのよ」
しかしアムロ・レイはバギーを降りた。
「また逃げる気?
本当はみんなの自分を認めてもらうだけの自信がないんでしょ。
だから帰れないのね」
「僕の気持ちがわかるもんか」
バギーを追ってホワイトベースの位置を知った部下の報告を受けたランバ・ラルは、すぐにグフに乗った。
一方、ホワイトベースでは、フラウ・ボゥがブライトに町でアムロ・レイとジオン軍と出会ったことを報告。
「フラウ・ボゥなんてよこしやがって、ブライトが自分で来りゃいんだよ」
砂漠に寝転び1人愚痴るアムロの上をグフとザクが飛行していった。
「フラウ・ボゥがつけられたんだ」
アムロ・レイはあわてて砂漠に埋めたガンダムを掘り始めた。

ホワイトベースに戻ると、すでにガンキャノンの片方のガンキャノン砲、ガンタンクのキャタピラを失っていた。
ガンダムはビームライフルでガンキャノンに巻きついていたグフのヒートロッドを破壊。
さらに連射するが当たらない。
「正確な射撃だ!
それ故、コンピューターには予想しやすい」
(ランバ・ラル)
ガンダムはライフルを捨てた。
「ほお、思い切りのいいパイロットだな。
手ごわい。
しかし・・・」
(ランバ・ラル)
グフはヒートロッドと盾を捨て、両手でサーベルを握り、突っ込んでくるガンダムの盾を切り裂いた。
しかしそこにガンダムの姿はなかった。
「なにっ?」
ジャンプしていたガンダムは真上から攻撃。
グフの前面を頭部から腹部まで切り裂いた。
ランバ・ラルは眼前にビームサーベルに迫られながら、すぐに反撃し、ガンダムのコックピットをサーベルで突き返した。
「やるな、ガンダム。
しかしこちらとてまだまだ操縦系統がやられたわけではない」
闘志が衰えないランバ・ラルはガンダムにかかっていった。
「来た!」
アムロ・レイは、グフのサーベルをかわし、下から両腕を肘から切断。
そのとき互いにむき出しになったコックピットから、アムロ・レイとランバ・ラルはお互いを確認し合った。
「あ、やっぱり」
「お前は・・・さっきの坊やか。
アムロとかいったな。」
「そうか、僕達を助けたのはホワイトベースを見つけるためだったのか」
「まさかな。
時代が変わったようだな。
坊やみたいなのがパイロットだとはな」
グフはガンダムに体当たり。
ガンダムはグフにビームサーベルを突き刺したが、ランバ・ラルはコックピットから脱出。
「見事だな。
しかし小僧、自分の力で勝ったのではないぞ。
そのモビルスーツの性能のおかげたということを忘れるな」
「負け惜しみを」
グフは爆発したがランバ・ラルは生き延びた。

ホワイトベースに戻ったアムロ・レイは独房に入れられた。
「どんな理由があろうと独断専行は重罪だ。
ガンダムから降りてもらう」
(ブライト・ノア)
「ブライトさん、一方的過ぎます。
僕のいい分だって・・」
(アムロ・レイ)
「聞くわけにはいかんな」
(ブライト・ノア)
「ブライトさん、どうせランバ・ラルが攻めてくれば僕が必要になってくるくせに」
(アムロ・レイ)
「アムロ!
もう俺だってセイラさんだってガンダムは扱える」
(リュウ)
「そのへんをよっく考えるんだな。
えっアムロ」
(カイ)
「話をすればわかるんだ。
出してください。
こんなところに入れることないでしょ」
立ち去るブライト達にアムロ・レイの叫び声は届かなかった。
独房の中でアムロ・レイは、グフを失ってもランバ・ラルは必ず攻めてくると確信していた。
ドズル・ザビから
「陸上戦タイプのドムを3機、回す」
といわれたため、ランバ・ラル隊は、それを受け取った後にホワイトベースに攻撃を仕掛けることを決めた。
しかしキシリア・ザビに忠実で、彼女が政権を握ることを夢みるマ・クベは、部下に
「ドムが届かない」
という嘘を伝えさせた。
「マ・クベ司令は、増援は回せぬと申しております。
その上でラル大尉独自で木馬を奪取していただけぬかとのお願いであります」
「無傷で奪い取れとおっしゃるのか」
「はい、なにとぞ」
「わかった。
ランバ・ラル、たとえ素手でも任務をやり遂げてみせると司令にお伝えください」

「戦力はなくてもゲリラや本来のやり方で当たればなんとかなる」
ランバ・ラルは、ゲリラ戦でホワイトベースを落とすことにし、大型陸戦艇、ギャロップでホワイトベースに向かった。
「この風、この肌触りこそ戦争よ」
ギャロップを認めたホワイトベースは主砲を発射し、セイラ・マスがガンダムで発進。
後方から小型戦車が現れたため、ブライトノアは、ガンタンク、ガンキャノンの出撃を中止し白兵戦の準備をさせた。
アムロ・レイも独房から出され右舷の機銃を任された。
ランバ・ラルは、ホワイトベースの後方に小型戦車を接近させ
「出撃だ」
と敵艦に乗り移った。
ホワイトベースの乗組員は銃を持って船の後方へ移動。
銃と爆弾が飛び交う白兵戦が始まった。
戦いの途中、ランバ・ラルは、フラウ・ボゥの銃を叩き落とし
「銃を持っていたら殺す。
どこかに隠れているんだ」
といって逃がした。


ブライト・ノアは、アムロ・レイにセイラ・マスと交代してガンダムに乗るよう指示。
ガンダムを降りたセイラ・マスはランバ・ラルと鉢合わせになった。
「ひ、姫、姫様。
間違いない。
アルテイシア様に違いないな。
私をお忘れか?
あなたの父上、ジオン・ダイクンと革命に参加したジンバ・ラルの息子、ランバ・ラルです」
一瞬、動揺しながらもセイラ・マスは毅然といい放った。
「アルテイシアと知ってなぜ銃を向けるか」
「やはり・・・ではなぜ・・・」
そこへかけつけたリュウがランバ・ラルの左肩を撃った。
ランバ・ラルは反撃し、リュウは弾丸を受けた。
「リュウ!
ランバ・ラル、逃げなさい!」
セイラ・マスは叫んだ。
ランバ・ラルは第2ブリッジに入りカギを閉めた。
ブライト・ノアはガンダムに第2ブリッジを爆破するように指示。
ランバ・ラルはクラウレ・ハモンに通信。
「ハモン、すまん。
木馬をギャロップで撃破してくれ。
ランバ・ラル、戦いの中で戦いを忘れた。
アルテイシア様が・・・」
そのときガンダムが第2ブリッジを外側から破壊。
ランバ・ラルは吹き飛ばされた。
「またモビルスーツのガンダムのボウズか」
ランバ・ラルの前には破壊された壁から中をのぞくガンダム、後ろにはドアをこじ開け入ってきたブライトたち。
「君達は立派に戦ってきた。
だが兵士の定めがどういうものかよくみておくのだな。
戦いに敗れるとはこういうことだ」
ランバ・ラルは手榴弾を抱えて外に身を投げ、それを受け止めようとしたガンダムの手の中で爆死。
ホワイトベースの乗組員は、敵とはいえ戦っている相手も生身の人間であることを痛感した。
一方、ギャロップはホワイトベースに向かって攻撃を続けた。
「ハモンさん。
ランバ・ラルが死んだんだぞ!
やめるんだ!」
アムロ・レイは、そう叫びながらギャロップを撃った。
ギャロップは爆発したが、クラウレ・ハモンは間一髪、脱出。
「隊長から連絡はありませんか?」
「はい、あれを最後に・・・」
「そう・・・ランバ・ラル・・・」

ホワイトベースはかなりダメージを受けた上に弾薬や物資も乏しかった。
リュウ・ホセイはベットで寝ていた。
アムロ・レイは再度、ブライト・ノアによって独房に入れられた。
まさに満身創痍だったが、ホワイトベースはオデッサ作戦へと向かった。
リュウはベッドを抜け出し、フラつきながらブリッジに向かい
「うぬぼれがなくなるまで出さないつもりだ」
というブライト・ノアにアムロ・レイについて助言を与え、帰りには独房に寄った。
「アムロ、期待しとるぞ」
ランバ・ラルを失ったクラウレ・ハモンは仇を討つべく攻撃準備を進めた。
「ガルマ様の仇討ち部隊として地球に降り立ったものの、我々はまだ任務を終わっておりません。
一見小さな作戦ではありますが、敵は連邦軍の最新鋭戦艦とモビルスーツです。
ジオンの国民は我々の戦果に期待しております。
ランバ・ラルは私にもったいないくらい実直な男性だった。
あんな心を寄せてくれた人のためによしんば砂漠に散るのも後悔はない。
この作戦に不服があるものは参加しなくてもランバ・ラルは怒りはしません。
私もです」
生き残った18名の部下の中で作戦を降りる者は1人もおらず、ランバ・ラル隊はホワイトベースを再度、攻撃。
独房から解放されたアムロはガンダムで敵を爆破。
「ホワイトベースがやられちまえば、病気だケガだっていってられるかよ」
リュウも寝室を出た。

クラウレ・ハモンが乗ったカーゴがホワイトベースに突進。
「待てよ、これは特攻するつもりじゃないのか。
とすればあの中は爆薬でいっぱいのはずだ」
アムロ・レイは武器を捨てガンダムでカーゴを受け止めた。
「特攻はさせぬつもりか。
こしゃくな!
ガンダム1機で止められるものか。
木馬にぶつかればその中の爆薬は・・・」
ザクがガンダムを後ろから攻撃。
クラウレ・ハモンと部下がカーゴから戦闘機、マゼラ・トップで飛び立ち、上から攻撃。
ガンダムはザクを盾にし、マゼラ・トップの攻撃を避け、そのままザクを投げマゼラ・トップにぶつけた。
「2人のパイロットを同時に討ち取るとは・・・
さすが私の見込んだ坊やだけある。
しかし・・・」
クラウレ・ハモンはマゼラ・トップをガンダムの真後ろにつけた。
「いくら装甲の厚いガンダムといっても、これだけ近ければ持ちはすまい。
そしてガンダムとカーゴの爆発力は木馬をも・・・」
「ハ、ハモンさんか?」
「ほんと、好きだったよ、坊や」
カーゴはガンダムの背中に向けて砲撃。
ガンダムは背負っていた盾のおかげで1発目はなんとか耐えた。
「これでおしまい」
2発目を撃とうとするクラウレ・ハモン。
「うわあ!」
そこへリュウが叫びながら、コアファイターで飛び込んできてマゼラ・トップに激突。
クラウレ・ハモンとリュウ・ホセイは死亡した。

オデッサ作戦のためにヨーロッパの前線基地にいる地球連邦軍総司令、レビル将軍は、敵の後方にいるホワイトベースにマ・クベ隊を攻撃させたかった。
しかしそのためには補給物資を送り、修理を行わねばならなかった。
「後は君の部隊がいかに手早くホワイトベースを直してやれるかだ」
「全力を尽くします」
マチルダ・アジャン中尉は支援物資を積んだミデア輸送隊を率い、ジオン軍の攻撃を切り抜け、ホワイトベースへと急いだ。
補給を受けたホワイトベースは急ピッチで補修を進めた。
「どこへ行くんですか?」
「ブリッジよ」
ある日、アムロ・レイは、ブリッジに向かうというマチルダ・アジャンの案内で買って出た。
「マチルダさん、なぜ補給部隊に入ったんですか?」
「そうね。
戦争という破壊のなかで、ただひとつ物をつくっていくことができるからかしらね。
戦いは破壊だけでも、人間ってそれだけでは生きていられないと私には思えたからよ」
「マチルダさん、僕思うんです。
マチルダさんって強い方なんですね」
「生意気ね」
「すいません」
「いいのよ」
マチルダ・アジャンに気づかず、カイは仲間とおしゃべりをしていた。
「あのマチルダさんってよー、俺好みってとこかな。
キリってしててやさしくてよー。
中尉みたいな人、恋人だったら最高だよな」
(カイ)
「手の方がお留守のようねぇ」
(マチルダ)
「えっ!
あー、おはようございます!
中尉」
「すてきな恋人さがしてね。」
「ちゅ、中尉。
恥のかきついでであります。
後ほど一緒に写真を撮らせていただきたく、お願い申し上げます」
「ええ、いいわ。
今すぐならね」
次々に男性乗組員が集まり、マチルダ・アジャンを中心に写真撮影が行われた。

11月7日、キシリア・ザビの月面基地グラナダから、ガイア、オルテガ、マシューの「黒い三連星」を地上に降下した。
「さっそく木馬と白いモビルスーツとやらをみせてもらおう。
オルテガ、マシュー、行くぞ!」
(ガイア)
彼らは地上用ドム3機でホワイトベースに出撃。
エンジンを修理したばかりで動けないホワイトベースは、敵を確認すると、ガンダムを出した。
マチルダ・アジャンはミデア輸送機をいつでも発進できるように準備させた。
ドムはホワイトベースの近くまで迫り、ガンダムの盾にジャイアントバズーカが命中させた。
「連邦のモビルスーツ、噂ほどではないわ!」
他のドムはホワイトベースを襲った。
「あと一息でホワイトベースは生き延びるというのに、こんなところでむざむざと傷つけられてたまるものか」
マチルダ・アジャンはミデアで出撃した。

「あのパイロットめ、只者ではないぞ。
オルテガ、マシュー。
モビルスーツにジェットストリームアタックをかけるぞ!」
(ガイア)
ドム3機、一直線上に並んでガンダムを攻撃。
1機目の攻撃をかわすと、次が攻撃をしかけ、さらに3機目が攻撃。
ガンダムはこれをギリギリでかわした。
ドムは、再度、ジェットストリームアタック。
1機目のドムが閃光を放ち、アムロ・レイは視力を奪われながらジャンプしてかわし、2機目がジャイアントバズーカを発射。
「うわー、俺を踏み台にしたー。」
(ガイア)
ガンダムは1機目のドムを踏み台にして2機目をビームサーベルで刺した。
3機目は援護に来たマチルダ・アジャンが乗ったミデアとぶつかった。
「このぉ!」
怒ったドムは両手を組んで両腕を振り上げ、上からミデア輸送機のコックピットを叩き潰し、落とした。
ミデア輸送機は爆発しながら墜落し、マチルダ・アジャンは投げ出され死亡。
「うわあ」
怒ったアムロ・レイは2機目のドムを真っ二つに切断。
「マシューのドムがやられた」
(ガイア)
「ジェットストリームアタックをスリ抜けるなんて、信じられん」
(オルテガ)
2機のドムは退却した。
その後、ホワイトベースは無事に出発した。
「ミデア輸送部隊、マチルダ隊の戦死者に対して哀悼の意を表して、全員、敬礼!」
(ブライト・ノア)
「私が不慣れなばかりに・・・。
すみません、マチルダさん」
(セイラ・マス)
「チルダさん、マチルダさん、マチルダさん、マチルダさん、マチルダさん、マチルダさーーーーーん」
(アムロ・レイ)

11月9日、マチルダ・アジャンが死んだ数日後、
「午前6時にオデッサ作戦を開始する」
レビル将軍はマ・クベ隊に対して攻撃を決定し、全軍を発進させた。
戦線に向かうホワイトベースにも
「ホワイトベースは6時30分、マ・クベの基地後ろから突入せよ」
と通達があった。
オデッサ作戦は連邦軍が優勢だった。
マ・クベは、レビル将軍に
「オデッサ作戦の総司令官レビル将軍。
聞こえるか。
私はマ・クベだ。
ここで手を引いてくれねば、私の方は水素爆弾を使う用意がある。
無論、核兵器を使わぬと約束をした南極条約に違反はするが我々も負けたくないのでな」
と無線。
レビル将軍は黙って、ただ前進するよう手を振った。
結局、オデッサの作戦は地球連邦軍の勝利に終わった。
オルテガ、ガイアの2機のドムは撃破され、マ・クベはいち早く宇宙へ脱出し、敗残部隊も地球の各地へ逃亡した。
「戦いはこの一戦で終わりではないのだ。
考えてもみろ。
我々が送り届けた鉱物資源の量を。
ジオンは後10年は戦える」
(マ・クベ)
11月10日、ジオン軍はオデッサ鉱山地帯の放棄を発表した。

11月18日、ホワイトベースは、大英帝国の北アイルランドにあるベルファスト基地に入港。
「しゃあねえな。
軍人なんてお堅てえのは俺には性に合わねえんだから」
正規の軍隊として扱われることに馴染めず、カイはホワイトベースを降りた。
そしてベルファストの街で1人の少女、ミハルと出会った。
「泊まるトコないんだろ?
ウチヘおいでよ」
「いいのかい?」
実はミハルは、ジルとミル、幼い弟と妹を育てるためにジオンのスパイをしていて、ホワイトベースから下りてきたカイに偶然を装い近づいていた。
その夜、物資の補給と修理を終え、港にいたホワイトベースはジオン軍の攻撃を受けた。
「ちくしょー、何でいまさらホワイトベースが気になるんだ」
戦火を認めたカイは急いでホワイトベースに戻った。
一方、ミハルはジオン軍からお金と地球連邦軍の制服を受け取った。
「お前たち、姉ちゃん、仕事にいってくる。
今度は少し長くなるかもしれないけど、いいね。
お金は少しずつ使うんだよ。
置き場所は誰に教えちゃいけないよ」
といいジルとミルを抱きしめた。
「この仕事が終わったら戦争のないところへいこうな。
3人で」
そういって2人と別れ、戦闘のドサクサに紛れ、ホワイトベースに忍び込んだ。
敵を撃退したホワイトベースは、南米にある地球連保軍総司令部、ジャブローに向かった。
「ミハルじゃないか!
なんで?」
カイは机の下に隠れているミハルを発見。
自分に部屋に匿おうとするところをアムロ・レイにミハルをみられ
「ジャブローで降ろすからさ」
と口止めした。
(ジャブロー?)
2人の会話からホワイトベースの行き先が知ったミハルはジオン軍に情報を送った。

ジオン軍はモビルアーマー、グラブロが発進させ、ホワイトベースを襲った。
攻撃を受け、船内で幼い子供たちが作業を手伝ったり、攻撃を受けた衝撃で転げ回る姿をみたミハルは
「カイ、私にも戦わせて。
弟たちが助かってあの子たちが死んでいいなんてことないもん」
と志願。
2人はガンペリーに乗って向かい、カイは操縦し、ミハルは爆撃手としてミサイルを発射させた。
戦闘の最中、発射スイッチが故障したため、コックピットを出てカタパルト(射出機)へ移動。
カイの合図でレバーを引いてミサイルを発射させたが、そのジェットエンジンの爆風で吹き飛ばされ、空へ投げ出された。
ミサイルはグラブロに命中し破壊。
「ミハル、、やったぞ」
カイは歓喜したが、帰艦後、ミハルの死を知り泣いた。

11月27日、ホワイトベースは大西洋上でのジオン軍の攻撃を切り抜け、地球連邦軍総司令部、ジャブローに到着。
海中から密かに尾行、監視していたシャア・アズナブル率いるジオン潜水艦隊はホワイトベースがレーダーから消えたのをみると
「ついにジャブローの最大の出入り口をつきとめたというわけだな」
とその地点を徹底的に調査すると共に、アメリカ、カリフォルニアに駐留するジオン軍に出撃を要請した。
一方、ホワイトベースは修理を受けた。
そしてアムロ・レイは、ホワイトベースの修理を担当し、マチルダ・アジャンの婚約者だったウッディ・マルデン大尉に出会った。
「そうか、君がガンダムのパイロットなのか。
マチルダから聞いてはいたが・・
マチルダとはオデッサ作戦が終わったら結婚する予定だった」
「ご結婚を・・・
すみませんでした。
僕がもっとガンダムを上手に使えればマチルダ中尉は死ななずにすんだんです」
「うぬぼれるんじゃない、アムロ君。
ガンダム1機の働きでマチルダが助けられたり戦争が勝てるなどというほど甘いものではない。
パイロットはそのときの戦いに全力を尽くしていればいいんだ。
私はこの修理に全力をかけている。
人にはそれくらいしかできんのだ」

11月30日、シャア・アズナブル率いる水陸両用モビルスーツ部隊で出入り口を発見し侵入。
シャア・アズナブルは部下に格納庫の爆破を指示し、自らはホワイトベースを目指した。
北米を飛び立った18機のガウ攻撃空母が南米に到着後、爆撃を開始。
続いて、モビルスーツ隊が降下したが、地球連邦軍の対空砲火を受け、地上に到達したのは28機だけで、地上につくと地球連邦軍のモビルスーツと交戦になった。
それでもジオン軍の攻撃はホワイトベースに迫り、ガンダム、ガンキャノン、ガンタンクが出撃。
ウッディ・マルデン大尉は
「ジオンの進入を許したのか!
メカマンも防戦に当たらせろ!」
と指示し、
「マチルダが守った船には触らせん。
下がれ下がれぇ」
と自らはホバークラフトに乗り前線に出撃した。
アムロ・レイは異様に動きの速いモビルスーツを発見。
「赤い色のモビルスーツ?
ザクじゃないけど、赤い色のモビルスーツ。
シャアじゃないのか?
あっ、ジ、ジムが。
やめろ!
うかつに近づくんじゃない!」
ジムはコクピットを貫かれ、爆風と共にシャアのズゴックが立ち上がった。
「ま、間違いない。
奴だ、奴が来たんだ!」
シャア・アズナブルのズゴックとガンダムが交戦開始。
「シャアか」
「さらにできるようになったな、ガンダム!」
その最中、ウッディ大尉のホバークラフトがズゴックを背後から攻撃。
「マチルダが守った船には触らせん!
至近距離からミサイルを撃ち込めば!」
とさらに接近。
「冗談ではない」
ズゴックはそれを地面に叩きつけた。
「シャアッ!」
怒ったアムロ・レイはズゴックの右腕を斬り落とした。
「私にプレッシャーをかけるパイロットとは・・・
いったい何者なんだ?」
シャア・アズナブルは、ミサイルで地下道を崩落させ、なんとか追ってくるガンダムから逃げた。
ジャブロー攻撃を行ったジオン軍のモビルスーツ部隊は、ほぼ壊滅。
ガウ攻撃空母も18機中、8機が撃墜され、ジオン軍のジャブロー降下作戦は失敗に終わった。
この戦いによって地球上での連邦軍の勝利は確実になった。

「我々のホワイトベースに囮(おとり)専門になれとおっしゃるんですか?」
ブライト・ノアは、ホワイトベースの次の任務が陽動作戦であると通達された。
ジオン軍がホワイトベースを重視していることに注目したジャブローの上層部は、まずホワイトベースが単独で月に向かい敵を引きつけ、主力宇宙艦隊がジャブローを発進するという作戦を立てた。
12月2日、出港準備を進めるホワイトベースを1人の軍人が訪ねた。
「ここの責任者はどこだ?
スレッガー・ロウ中尉だ。
今日づけでこっちに配属になった。
ほう、俺もツイてきたな。
こんなキレいなお嬢さんとご一緒できるなんて!」
「ミライ・ヤシマです」
「フンッ」
スレッガー・ロウは手を差し出したが、ミライはそっぽを向いて応じなかった。
12月3日、ホワイトベースがジャブローを出立。
後の追うシャア・アズナブル隊は、その進路が月であることを確認した。
「キシリア様のグラナダに向かうのか?」
「まさかな。
引っかかったんだよ。
木馬は囮だ。
今頃、ジャブローからは主力艦隊が発進しているころだ」
「ならば転進してそれを・・」
「本気か?
我々が背中を向ければ木馬が攻撃してくる」
シャア・アズナブルは、かつての部下、ドレン大尉が指揮するジオン軍キャメルパトロール艦隊と連携し挟撃を目論んだ。
12月5日、ホワイトベースはキャメルパトロール艦隊を全滅させ、中立地帯のサイド6に進路をとった。

サイド6の入管検察官、カムラン・ブルームは、サイド6に入港しようとするホワイトベースのすべての武器の発射口を赤い布を取りつけ、ブライト・ノアに、布が破られると罰金が発生すること、また補給も修理も戦争協力になるためにできないことを告げた。
そしてホワイトベースのブリッジで操舵している、かつての婚約者、ミライを見つけた。
「ミライ、ミライじゃないか。
生きていてくれたのか」
入港作業が終わり、2人きりになると猛アタック。
「なんで僕に連絡してくれなかった!
君の消息を探すのに必死で・・」
「必死で?」
「必死で探させた。
いくら費用が掛かったか知れないくらいだ」
「なぜご自分で探してくださらなかったの?
結局、親同士が決めた結婚話だったのね」
「それは違う、誤解だ。
ゆっくり話し合おう。
これから家にこないか」
そこにスレッガー・ロウが乱入し、カムラン・ブルームから眼鏡を奪い、額に軽くパンチを入れた。
「下手なちょっかい出してほしくないもんだなぁ」
結局、戦争を避けて生きてきたカムラン・ブルームにミライが魅力を感じることはなかった。


ホワイトベースのクルーはサイド6に買い出しに向かった。
円筒形のスペースコロニーは、中心部が港になっていて、ここは無重力。
そこから30㎞ほどエレベーターで降下すると、重さを感じることのできる人口の地上につく。
そこには森や川、野生動物もいた。
クルーたちは山を抜け、街に向かい買い出しを行った
帰り道、偶然、アムロ・レイは本屋で会計をしている父、テム・レイをみつけた。
「と、父さん。
みんな、先に帰ってて」
「おお、アムロ。
ガンダムの戦果はどうだ?」
「はい」
「ウムッ、来るがいい」
テム・レイは、今、自分が住み込んでいるジャンクパーツ屋に息子を連れていき
「こいつをガンダムの記憶回路に取りつけろ」
と部品を渡した。
(こ、こんな古いものを・・父さん酸素欠乏病にかかって・・)
テム・レイはアムロ・レイの知っていた、かつての父親ではなかった。
ザクが起こした爆発によってサイド7から宇宙に放り出され酸素欠乏症となり以前の精悍さはなかった。
アムロ・レイは、父親と別れた後、絶叫しもらったもらった部品を地面に叩きつけ、泣いた。

翌日、アムロ・レイは、再び、父に会うためにオープン仕様のバギーで走っていたが、砂降りの雨に遭った。
「雨の予定表ぐらいくれればいいのに」
前方に家を発見し、玄関で雨宿りさせてもらった。
それは湖畔の家で小さいボートもつないであった。
しばらくすると雨の中、湖に白鳥が舞った。
「鳥だ」
導かれるように庭に歩いていくと1人の美少女が屋根の下の椅子に座っていた。
肌は浅黒く、裾の広がった民族衣装のような黄色のワンピース、額にはヒンドゥー教の女性がするビンディがあった。
「可哀想に・・・」
彼女はつぶやいた。
すると白鳥は雨の中、着水した。
少女はアムロ・レイに気づいた。
「ごめん、別に脅かすつもりじゃなかった」
「・・・・・・」
「あの鳥のこと・・・・・・好きだったのかい?」
「美しいものが嫌いな人がいるのかしら?
それが年老いて死んでいくのをみるのは哀しい事ではなくて?」
「僕の聞きたいことはそういうことではなくて・・」
「雨がやんだわ」
と少女が立ち上がり、アムロに近づいた。
「フフフッ綺麗な目をしているのね」
「そ、そう?」
少女は裸足でかけていった。

アムロ・レイは父親に会った後、変わってしまった彼に心の中で別れを告げた。
そして帰り道、ヌカるんだ道にタイヤをとられてしまった。
アクセルを踏んでもスリップして脱けられない。
すると前から1台の車が来たので手を上げて助けを求めた。
車はアムロ・レイに泥をかけながら停車。
降りてきたのはシャア・アズナブルだった。
「すまんな、君。
なにぶんにも運転者が未熟なものでね。
泥はかからなかったかね」
(シャア!)
驚きながらアムロ・レイは冷静に答えた。
「いいえ、よけられましたから」
「ごめんなさい。
スピードを出し過ぎたみたいね」
続いて湖畔の家であった少女が車を降りてきた。
彼女はシャア・アズナブルによって見出され、ジオンのニュータイプ養成機関で育てられたジオン軍少尉だった。
「車で引かないとダメだな。
ララァ、トランクを開けてくれ。
君も手を・・・」
「アムロ・レイです」
「ンッ?アムロ・レイ?
不思議と知っているような名だな」
首をかしげるシャア・アズナブルをみてアムロ・レイは思った。
(そう、知っている。
僕はあなたを知っている。
それにあの子ララァといったな)
アムロ・レイは、我に返って牽引する準備をするシャア・アズナブルにいった。
「すみません。
お手伝いします」
「かまわんよ。
もうすんだ」
「すみません。
あのお名前は?」
「シャア・アズナブル。
みての通り軍人だ。
ララァ、ゆっくり車を発進させるんだ」
バギーは無事、ぬかるみから引き出された。
「君は年はいくつだ?」
「16歳です」
「そうか、若いな。
敵の士官をみて硬くなるのはわかるが、せめて礼の一言くらいはいってほしいものだな」
「あっ、すいません」
アムロ・レイは慌てて牽引の後片づけを手伝った。
そして
「ほんとに、あの・・・・ありがとうございました」
と礼をいうとあわててバギーで走り去った。
「どうしたんだあの少年」
「ウフフッ、怯えていたんですよ。
大佐が赤い彗星のシャアとわかったので」

ホワイトベースではサイド6からの出港についてミーティングを行われていた。
宇宙ではジオン軍が待っているのがわかっていた。
そこにカムラン・ブルームが来訪し
「サイド6の空域内でも攻撃してくるかもしれません。
せめてこの空域内だけでも私に水先案内をさせてください。
自家用機がありませので盾代わりにはなると思います」
と申し出た。
しかしミライは反発。
「余計な事をしないで頂きたいわ」
「君がこの船を下りないというなら、せめて僕の好意を」
「それを余計なことでなくて何なの」
それをみていたスレッガー・ロウはいきなりミライを平手打ち。
「バカ野郎!
この人は本気なんだよ。
わかる?
そうでもなきゃこんな無茶いえるか」
そしてカムラン・ブルームにも肩を叩きながらいった。
「あんたもあんたじゃないの。
あんなにグダグダいわれて、なんで黙ってんの」
「殴らなくたって・・・」
「本気なら殴れるはずだ」
「そんな野蛮な・・・」
「そうだ、カムランさん、気合いの問題なんだよ」
「お気持ちが変わらなければお願いできませんか?
カムラン検察官」
(ブライト・ノア)
こうしてホワイトベースはカムラン・ブルームに先導されてサイド6を出た。
ジオン軍は即座に反応。
「リックドム、全機発進させろ。
急げよ。
領空侵犯も構わん」
ドムに至近距離であおられながら、
「領空を出るまでは・・・いや、この船でついていけるところまではお供させてもらいます」
と粘るカムラン・ブルームだったが
「カムラン、ありがとう。
お気持ちは頂いたわ。
でも、でも帰ってください・・」
とミライに促され、船を反転させ、ホワイトベースの横を通過するときブリッジにその姿を追った。
(生き延びてくれよ、ミライ)
この後、ガンダムは12機のリックドムを全滅させ、さらに敵将の乗る戦艦、チベも爆発させた。
ニュータイプとして覚醒を始め、さらに感覚が鋭くなったアムロ・レイに泣き虫だった面影はなく、精悍さを増していた。

地球連邦軍は、戦争初期にルウムでの大敗で失った宇宙艦隊の再建を果たした上、モビルスーツを戦力に加えた。
「ソロモンを攻撃してくる可能性が高い」
ギレン・ザビはそう予想し、弟、ドズル・ザビと妹、キシリア・ザビに戦力の結集を命じた。
同じ頃、父、デギン・ザビは、ジオン公国首相:ダルシア・バハロと密かに地球連邦との和平について話し合っていた。
「とにかくギレンめ、弟を死なせておいてまったく動ぜん。
異常だよ」

ホワイトベースは牧畜と観光のために建設されたコロニー、テキサスコロニーに着いた。
戦争が始まるとテキサスコロニーは放棄され、人はおらず砂漠化が進んでいた。
シャア・アズナブルとララァ・スンは研究者と共に、ニュータイプ専用兵器「サイコミュ(サイコ・コミュニケーター)」を実戦に導入するべく最終テストを行っていた。
「なにかしら・・」
ララァ・スンはホワイトベースからテキサスコロニー内の偵察のため放たれたガンダムの気配を感じ取った。
シャア・アズナブルは、ジオン軍では初の強力な携行ビーム兵器を持つ新型モビルスーツ、ゲルググで出ることにした。
「テストを兼ねて偵察してみる。
脱出の用意をしておけ」
「はい、しかし・・・」
整備士は少し難色を示した。
「わかっている。
ゲルググのデーターは頭に入れてある」
「ノーマルスーツを着てはいただけませんか?」
「私はモビルスーツに乗っても必ず帰ってくる主義だ。
死にたくない一心でな。
だから戦闘服だのノーマルスーツなどは着ないのだよ。
上げてくれ」
「はい」
シャア・アズナブルはララァ・スンに
「モビルスーツとの接触があるかもしれん。
そのときは安全なところからよくいみておけ」
といい、彼女はジープに乗って赤色のゲルググを追った。
「ガンダムとはな!」
ゲルググはガンダムを攻撃。
戦闘中、ガンダムが地雷原に飛び込むと
「ララァ、伏せろ」
とゲルググでララァ・スンを爆発から守り、帰艦を命じた。

ホワイトベースは、地球連邦軍、第3艦隊と合流。
ワッケイン司令はノア・ブライトに
「ホワイトベースは我々と共にソロモン攻略の先鋒となる」
と告げた。
12月22日、地球連邦軍の連合艦隊がルナツーを出航。
同日、ジオン軍は、新兵器「ソーラ・レイ」開発のためサイド3、マハルコロニーの住民を強制疎開させた。
12月24日、地球連邦軍のソロモン攻略作戦、「チェンバロ作戦」が開始。
ジオン軍は激しく抵抗し、宇宙に無数の光と爆発が起こり、その度に命が散っていった。
地球連邦軍は、ソーラーシステムを照射し、ソロモンの第6ゲートに焦光。
ソロモンは新兵器によって焼かれた。
撤退を始めるジオン軍もあったが、その後も戦闘は熾烈を極め、スレッガー・ロウはコアブースターが被弾したためホワイトベースに帰艦。
「中尉、死なないでください」
修理を受けて再出撃しようとするスレッガー・ロウにミライは泣きながら想いを告げた。
スレッガー・ロウは、そんなミライに母親の形見の指輪を託した。
「宙(そら)でなくしたら大変だ。
預かっといてくれ」
いくつもの生と死が交錯している戦場で、ひと時、2人は重なり口づけを交わした。

「フフフッ、こうも簡単にソロモンが落ちるとはな」
一方、ソロモンの放棄を決めたドズル・ザビは、家族と部下に撤退を命じ、自らはモビル・アーマー、ビグ・ザムに乗り、地球連邦軍の主力に特攻をかけた。
ビグザムは、モビルアーマーの中でも特に巨大で、円盤のような胴体に2本の脚部、強力な火器を多数備えた異形の機体だった。
ビグ・ザムは、1年戦争で最大かつ最強といわれ、地球連邦軍の長距離ビームを受けてもビクともせずに突進しメガ粒子砲で多数の戦艦を一気に殲滅した。
「圧倒的じゃないか」
(アムロ・レイ)
「ハハハッ、みたか。
ビグ・ザムが量産の暁には連邦など一気に叩いてみせるわ」
(ドズル・ザビ)
「ガンダムちゃん、しっかり面倒みてよ。
悲しいけど、コレ、戦争なのよね」
ビームバリアを持つビグ・ザムには直接攻撃しかないと、スレッガー・ロウは突っ込んでいった。
アムロ・レイは、その後に続いた。
「下か!
耐空防御」
ドズル・ザビは下に潜り込もうとするコアブースターにビグ・ザムの爪を発射。
「まだまだあ」
コックピットに爪を突き刺されたままスレッガー・ロウは突進し、ビグ・ザムを下から突き上げるようにして爆死。
「やったな」
それでも倒れないビグ・ザムをアムロレイはビームサーベルで斬った。
「たかが一機のモビルスーツに、このビグ・ザムが・・・
やらせるかぁ」
切り裂かれ燃え盛るコックピットの中からドズル・ザビはガンダムめがけライフル銃を乱射。
「何者なんだ!
なんだ!」
アムロ・レイは、ドズル・ザビの後ろに大きな悪魔の姿をみた。
「貴様ごときモビルスーツにジオンの栄光をやらせはせんぞ」
そう叫びながらドズル・ザビは爆死。
地球連邦軍のソロモン攻略は完了。
ジオン軍に残されたのは、宇宙要塞アー・バオア・クー、月面基地グラナダ、そしてジオン本国のみとなった。
約40機のコロニーで形成されるジオン公国の総人口は1億5000万人。
この戦争においてまだ1番被害が少ないサイドだった。

12月25日、ソロモンを奪われた翌日、ギレン・ザビ総帥は、父、デギン・ザビ公王に新兵器「ソーラ・レイ」開発の裁可を得た。
「直径6kmからのレーザーなら連邦を殲滅するのも易しかろう」
(デギン・ザビ)
「はい」
(ギレン・ザビ)
「勝ってな、どうするつもりか」
「せっかく減った人口です。
これ以上増やさずに優良な人種だけを残します」
「貴公、知っておるのか?
アドルフ・ヒトラーを」
「ヒトラー?
旧世紀の人物ですな」
「独裁者でな。
世界を読み切れなかった男だ。
貴公はヒトラーのシッポだな」
「私とてジオン・ダイクンの革命に参加した者です。
人類がただ数を増やすだけでは人の軟弱を生み、軟弱は人を滅ぼします。
地球連邦の絶対民主制が何を生みましたか?
官僚の増大と情実の世を生み、後はひたすら資源を消費する大衆を育てただけです。
今時大戦の共食いを生んだのも連邦の軟弱さ故です。
もう人類は限界を超えましたよ。
私はア・バオア・クーで指揮を執ります。
ま、勝ってみせますよ。
その上で真のニュータイプの開花を待ちましょう。
ヒトラーの尻尾の戦いぶりをご覧下さい」
立ち去る長男の背中にデギン・ザビはつぶやいた。
「ヒトラーは身内に殺されたのだぞ」

地球連邦軍は、ソロモンをコンペイトウに改名し自らの拠点として機能を取り戻させた。
そして奇妙な事件が起こり始めた。
コンペイトウ周辺で地球連保軍に対する正体不明の攻撃が連続で発生。
姿がみえぬまま敵に戦艦が次々に破壊されたため
「ソロモンの亡霊」
と恐れられた。
その正体は、ニュータイプの少女、ジオン軍のララァ・スン少尉が操縦するモビルアーマー、エルメスだった。
エルメスは、ニュータイプ専用操縦システム「サイコミュ」を搭載し、ワイヤレスで操作される無人ビーム砲端末「ビット」を多数装備し、多方向からの射撃で敵を撃破するオールレンジ攻撃を得意としていた。
ララァ・スンのニュータイプ能力は非常に高く、長距離からビットをコントロールして地球連邦軍の艦船やモビルスーツを次々と撃破していった。
地球連邦軍は、多くの被害を出しながらなんとかエルメスの外観を撮影することに成功。
「トンガリ帽子」というアダ名をつけた。
宇宙の遠くで次々と起こる爆発の光をみて、ゲルググでエルメスの護衛をしていたシャア・アズナブルは感嘆した。
「あの輝きがララァが仕掛けたものか。
すごいものだな」
月面基地「グラナダ」へ帰投するとシャア・アズナブルは、キシリア・ザビに呼ばれた。
「やはりな。
いわれてみれば父上の面影がある。
気づかぬものだ」
シャア・アズナブルの正体が、ジオン・ズム・ダイクンの息子、キャスパル・ズム・ダイクンであると見抜いたキシリア・ザビは、
「すでにザビ家打倒をあきらめた」
というシャア・アズナブルの本心を問い正した。
「父のいうようなニュータイプの時代の変革があるのならばみてみたい。
それが自分の野心です」
「ギレン総帥を私は好かぬ。
それだけは覚えておいておくれ」
その頃、コンペイトウではジオン本国への侵攻作戦「星1号作戦」を発動。
デギン・ザビ公王は、政治家の和平工作を待ち切れず、自ら地球連邦軍と折衝を行うため、ジオン公国を出立した。
ギレン・ザビの独走を止めたい一心で行った行動だったが、
「老いたな、父上。
時すでに遅いのだがな」
父親の乗る戦艦、グレートデギン号の背中をみながらギレン・ザビはつぶやいた。

12月28日、ジオン軍艦隊が地球連邦軍に向け発進。
大規模な戦闘が開始された。
その中で突然、ガンダムは攻撃を受けた。
「トンガリ帽子だな」
アムロ・レイが、そう感じた直後、複数のビットが接近し、ガンダムの周囲を高速ランダム移動しながらオールレンジ攻撃。
「トンガリ帽子の付録か」
最初はアムロ・レイは防戦一方だったが
「みえるぞ」
と恐るべき集中力を発揮しビットの動きと攻撃を予想し撃破。
ビット攻撃を破られたエルメスは新しいビットを放ちながら自ら接近し直接攻撃。
交戦の最中、アムロ・レイとララァ・スン、ニュータイプの2人はお互いを認識し、戦いながら意識を共鳴させた。
「ア・ム・ロ」
「ララァならなぜ戦う」
「(シャア)大佐を傷つけるいけない人」
「そんなバカな」
「あなたは力があり過ぎるのよ
あなたを倒さねばシャアが死ぬ」
「シャア?
それが・・」
「なぜなの。
あなたと出会ったからってどうなるの。
どうにもならないわ。
どうにも。
あなたは私にとって遅すぎた」
「僕にとってあなたは突然すぎた」
そのとき激怒したシャア・アズナブルが2人の中に割って入った。
「ララァッ!
奴とのジャレ事をやめろ」
ゲルググで突進し、ガンダムと交戦。
「兄さん、下がってください」
さらにそれを見つけたセイラ・マスが乗るコアブースターも参戦したため、4つ巴の戦いとなった。
妹とは知らずにコアブースターを斬ろうとするゲルググに、ニュータイプとしてすべてを感じとったララァ・スンが警告。
「大佐、いけません」
「アルテイシアか」
ゲルググがビームナギナタを止めた右腕をガンダムは容赦なく斬り落とした。
「シャア、覚悟」
とどめのビームサーベルを突こうとするガンダム。
「大佐!」
ララァはエルメスで突進し、シャア・アズナブルの盾となりガンダムのビームサーベルでコックピットを貫かれ死んだ。
「ララァ」
ララァの死に泣きながら放心状態のアムロ・レイ。
撤退するゲルググの中でシャア・アズナブルも仮面の下から涙を流した。
ララァ・スンは2人の男にとって「永遠の女」となった。
この残酷過ぎる運命によって・・・・

12月30日、ギレン・ザビ総帥が指揮し、ジオン軍にとって最終防衛拠点である宇宙要塞アー・バオア・クー。
ここを失えばジオン公国は無防備な本土をさらけ出すことになる。
地球連邦軍にとって戦いは最終局面に入った。
「ジオンに残された戦力は決して多くない。
しかしジオンとてこの戦いの重要性はよく知っていよう。
だからこそこの戦いには必ず勝たなくてはならない。
連邦の勝利をより確実なものにするために。
諸君らの健闘を期待する。
以上」
レビル将軍率いる連合主力艦隊が集結。
一方、密かにデギン・ザビ公王が乗るグレートデギン号が、和平交渉を行うためにレビル将軍の戦艦に接弦した。
まさにそのときギレン・ザビは最終兵器を起動させようとしていた。
「アー・バオア・クーのギレンである。
敵のレビル艦隊の主力は3隊に分かれて進行中であるが、ソーラーレイで、この半分を殲滅できる。
ソーラーレイ、スタンバイ」
「了解であります。
ソーラーレイ、スタンバイ」
「発電システム異常なし。
マイクロウェーブ送電良好。
出力、8500万GW、パー、セカンド。」
「発射角度、ダウン012、ライト、0032」
「8時方向の、そこのムサイ、下がれ!
放出出力が下がる!」
宇宙に多数の超大型ソーラーパネルが開かれ展開。
集められたエネルギーは、改造されたマハルコロニーに集められていった。
「ソーラーレイ稼働8秒前!
7、6、5、4、3、2、1」
12月30日21時5分、ジオン軍は、ソーラ・レイを発射。
宇宙に巨大な閃光が走り、地球連邦軍の連合艦隊の1/3が壊滅。
公王デギン・ザビ、レビル将軍を含む多くの人員が戦死。

12月31日0時00分、レビル将軍を失った地球連邦軍は「星1号作戦」の強行を決定。
1時17分、アー・バオア・クーのギレン・ザビ総帥も出陣演説を行った。
「我が忠勇なジオン軍兵士たちよ。
いまや地球連邦軍艦隊の半数が我がソーラーレイによって宇宙に消えた。
この輝きこそ我らジオンの正義の証である。
決定的打撃を受けた地球連邦軍にいかほどの戦力が残っていようと、それはすでに傀儡である。
あえていおう。
カスであると。
それら軟弱の集団が、このアー・バオア・クーを抜くことはできないと私は断言する。
人類は我ら選ばれた優良種たるジオン国国民に管理運営されてはじめて永久に生きのびることができる。
これ以上戦い続けては人類存亡そのものに関わるのだ。
地球連邦の無能なる者どもに思い知らせ。
明日の未来のために。
我がジオン国国民は立たねばならんのである。
ジーク・ジオン!」
「ジーク・ジオン!」
ジオンの士気が頂点に達っした。

5時、地球連邦軍は残存艦隊の再編を完了。
8時、地球連邦軍がア・パオア・クー攻略作戦を開始。
戦況は、お互いに引かず膠着状態。
9時、シャア・アズナブルは、キシリア・ザビからニュータイプ専用のサイコミュ・システムを搭載したMSN-02 ジオングを与えられた。
両腕の肘から先を放ち、5連装メガ粒子砲を有線誘導したオールレンジ攻撃が可能。
その他、身体各部に13門もの大型メガ粒子砲を装備してあった。
「脚はついていないな」
「脚なんて、あんなの飾りです。
偉い人にはそれがわからんのです」
(ア・パオア・クー防衛隊技術整備士、リオ・マリーニ曹長)
「使い方はさっきの説明でわかるが、サイコミュが私に使えるかな?」
「大佐のニュータイプの能力は未知数です。
保証できるわけありません」
「ハッキリいう。
気に入らんな」
「どうも。
気休めかもしれませんが大佐ならうまくやれますよ」
「ありがとう。
信じよう」
そういってシャア・アズナブルは出撃。
「さて問題は私に明確なニュータイプの素養があるかどうかだ。
ララァ、私を導いてくれ」
ジオングは戦場を駆け抜け、連邦軍のモビルスーツや戦艦を蹴散らせていった。

9時25分、
「フフフッ、Nフィールドはドロス(ジオン軍ドロス級大型空母1番艦)の部隊だけで支え切れそうだ」
ア・バオア・クーの司令室でギレン・ザビは椅子に座り戦況を見つめていた。
キシリア・ザビは、その背後に歩み寄った。
「結構なことで」
「んっ?」
「グレートデギン、父が乗っていた。
その上で連邦軍と共に。
何故です?」
「やむを得んだろう。
タイミングずれの和平交渉がなんになるか」
「死なすことはありませんでしたなあ、総帥」
キシリア・ザビはギレン・ザビのこめかみに銃口を向けた。
「フッ、冗談はよせ」
「意外と兄上も甘いようで」
キシリア・ザビがそういって引き金を引くとギレン・ザビは後頭部から撃ち抜かれ、体を前方に舞わせた。
「死体を片づけい!
父殺しの罪はたとえ総帥でもまぬがれることはできない。
異議のある者はこの戦いの後、法廷に申し立てい。
ア・パオア・クーの指揮は私がとる」
司令室内にいた将兵が動揺する中、ギレン・ザビの腹心だったトワニング准将は叫んだ。
「ギレン総帥は名誉の戦死をされた。
キシリア閣下、ご采配を」

ホワイトベースは、激しい戦闘でエンジンを撃たれ、やむを得ず切り離し、ア・パオア・クー内のドッグに座礁。
ブライト・ノアは白兵戦の指示。
敵のドッグ内で身動きの取れないホワイトベースは、四方八方から攻撃を受けながら、カイとハヤトのガンキャノン2機と共に総員で反撃。


9時40分、ア・バオア・クー防衛宙域Nフィールドにて、ジオン軍ドロス級大型空母1番艦「ドロス」撃沈。
10時10分、ア・バオア・クー防衛宙域Sフィールドにて、ジオン軍ドロス級大型空母2番艦「ドロワ」撃沈。
一部の部隊が戦線離脱を開始。
やっとア・バオア・クーにたどり着いたガンダムに、ジオングが突進。
アムロ・レイとシャア・アズナブルも最後の戦いへ入った。
ニュータイプ同士、高速の戦いが続いたが、ガンダムは接近戦に持ち込みジオングの左腕を破壊。
「ガンダム!」
「こう近づけば四方からの攻撃は無理だな。
シャア」
「な、なんだ?」
「なぜララァを巻き込んだのだ。
ララァは戦いをする人ではなかった」
「ええい」
ジオングもガンダムの左腕を破壊したが、すぐに右腕をやられたため逃げた。
シャアはコックピットでノーマルスーツに着替え、胴体部のコックピットから頭部コックピットへ移動。
「ガンダムのパイロット、アムロとかいったな。
どうする。
あのニュータイプに打ち勝つ方法は」
焦るシャアの攻撃を読んだガンダムは、ジオングの胴体中央をビームライフルで撃ち抜いた。
「ガンダム」
ジオングは、頭部を切り離しメガ粒子砲でガンダムの頭部を破壊した。
「シャアめ。
まだだ。
たかがメインカメラをやられただけだ」
アムロ・レイは連射したが、ジオングは逃げた。
「赤い彗星も地に落ちたものだな」
胴体部を破壊されたジオングから識別信号がなくなるとキシリア・ザビはつぶやいた。
そして密かにトワニング准将を呼び寄せいった。
「私の脱出15分後にここを降伏させるのだ」
「し、しかし」
「グラナダの戦力と本国の戦力が残っているうちに・・」
「しかし今となっては脱出こそ至難の業かと・・」
「私が生き延びねばジオンは失われる」
「降伏後、私の身柄は?」
「捕虜交換の折りに引き上げよう。
船の用意を」
「直ちに!」

11時30分、
「シャアだってわかっているはずだ。
本当に倒すべき相手が誰だっていうことを」
左腕と頭部を失ったガンダムはア・バオア・クー内を歩行移動しジオングを探した。
「いるな」
そして前方になにかを感じるとアムロ・レイはコックピットから出た。
ガンダムは自動で歩いていき、上方の死角で待ち伏せていたジオングの頭部に向かってビームライフを発射。
ジオングもメガ粒子砲を発射。
両機は相討ちになり大破。
「まっすぐ行けばア・バオア・クーの核へいける」
ア・バオア・クーの中枢部へ行こうとするアムロ・レイの背後からシャア・アズナブルが現れた。
「貴様がララァを戦いに引き込んだ」
「それが許せんというなら間違いだな、アムロ君」
「な、何」
「戦争がなければララァのニュータイプへの目覚めはなかった」
「それは理屈だ」
「しかし正しいものの見方だ」
「それ以上近づくと撃つぞ」
「君はいかに自分が危険な人間かわかっていない。
素直にニュータイプのありようを示し過ぎた」
「だからなんだというんだ」
「人は流れに乗ればいい。
だから私は君を殺す」
2人のニュータイプは拳銃とライフルで撃ち合った。

敵のドッグ内で身動きの取れないホワイトベースは、四方八方から攻撃を受けながら、総員が武器を持って反撃。
ガンキャノン2機は奮闘の末、破壊され、カイとハヤトも白兵戦に入った。
コアブースターでホワイトベースに戻ったセイラ・マスも白兵戦に入ろうとした。
しかし兄、シャア・アズナブルの存在を感知し、敵地を拳銃1つで進んでいった。
しゃべり声が聞こえるほど近くにいる敵兵とあちこちで起こる爆発をかいくぐって進んでいくと、やがてシャア・アズナブルとアムロ・レイの声が聞こえてきた。
「貴様が最強の兵だからだ」
「本当のザビ家ではないのか」
モビルスーツ戦に続いて銃撃戦でも決着がつかなかった2人は剣を持って戦っていた。
「やめなさい、アムロ。
やめなさい、兄さん」
そうセイラ・マスが叫んだ直後、2人は交錯。
勢いあまって頭と頭を突き合わせ抱き合う形になった。
アムロの剣先はシャアの額に当たっていたがヘルメットのために貫通せず、一方、シャア・アズナブルの剣はアムロ・レイの右肩を貫いていた。
そのときセイラ・マスの背後で爆発が起こり、3人は吹き飛ばされ、位置関係を変えた。
「あっ、アムロ、大丈夫?」
(セイラ・マス)
「ウッ・・・」
(アムロ・レイ)
「アルテイシア!」
(シャア・アズナブル)
「兄さん、やめてください。
アムロに恨みがあるわけではないでしょう」
「しかし敵にするわけにはいかん。
相手であれば倒せるときに・・・」
「兄さんの敵はザビ家ではなかったの」
「ザビ家打倒などもうついでのことなのだ、アルテイシア。
ジオン亡き後はニュータイプの時代だ。
アムロ君がこの私のいうことがわかるのなら、私の同志になれ。
ララァも喜ぶ」
「なにっ?!」
「兄さん、なんてことを。
あっ!」
「あっ!」
「うわっ!」
再び爆発が起こり、シャア・アズナブルはセイラ・マスを助けにいった。
「兄さん、額の傷は・・」
「ヘルメットがなければ即死だった」
1人だけ違う場所に飛ばされたアムロ・レイは折れた剣の刃を自分で引き抜いた。

シャア・アズナブルは倒れているトワニング准将を発見。
「キシリア閣下が脱出されるので護衛にと思いましたが残念です。
大佐なら・・・」
「安心しろ。
貴様に代わってキシリア殿は必ずお守りしてみせる」
「ありがとうございます」
トワニング准将の死亡を確認すると立ち上がりいった。
「ここもだいぶ空気が薄くなってきた。
アルテイシアは脱出しろ。」
「兄さんはどうするのです?」
「チャンスは最大限に生かす。
それが私の主義だ。」
「兄さん」
「お前ももう大人だろ。
戦争も忘れろ。
いい女になるのだな。
アムロ君が呼んでいる」
「アムロが・・・」
シャア・アズナブルはビームバズーカ砲を持って妹から去った。
12時05分、シャア・アズナブルは脱出しようとしているキシリア・ザビの戦艦の前にいって敬礼を送った。
「シャアか」
キシリア・ザビは、それに気づいた。
「ガルマ、私のたむけだ。
姉上と仲良く暮らすがいい」
そうつぶやきながらシャア・アズナブルは、ザンジバル級機動巡洋艦のコックピットに向かってビームバズーカを撃ちこんだ。
それはキシリア・ザビの頭部を貫通し、船も破壊。
直後、ア・パオア・クー防衛司令部から緊急伝文が各隊へ発せられた。
「我、すでに指揮能力なし。
作戦参加の全艦艇は速やかに戦闘を中止し各個の判断によって行動せよ」
以後、ア・パオア・クーとの連絡は途絶。
「投降せよっていってる」
「ギレン総帥が戦死されたって本当なんだ」
「キシリア少将も」
「まるで敗走ではないか」
ジオン軍の各部隊は戦線を離脱し始めた。

12時30分、
「ちくしょう、ここまでか」
戦火の中、ア・パオア・クーの中をひたすら逃げ続け、あきらめかけたアムロ・レイの目前に偶然、頭部と腕を失い横たわったガンダムが現れた。
「まだ助かる」
アムロ・レイは機体を切り離し、コア・ブースターに乗り込んだ。
するとララァ・スンの声が聞こえた。
「殺し合うのがニュータイプじゃないでしょ」
「あ、みえるよララァ。
みえるよ、みんなが」
その後、ホワイトベースのクルーたちはアムロ・レイの声を聞いた。

「セイラさん立ってください」
「アムロ?
アムロなの?
でもここはどこだかわからないのよ。
エッ、ここを真っ直ぐ?」
(セイラ・マス)

「アムロ?
退艦命令を出さないと全滅する?」
(ブライト・ノア)

「アムロ?
そうね、ランチの発進準備をさせるわ」
(ミライ)

「聞こえましたか?」
(ハヤト)
「ああ、アムロだ」
(カイ)
「もうここは撤退ですって」
「そう思うな」
「連邦軍は攻勢らしいし」
「勝つとなりゃここを引き上げてもよかろう」

「僕の好きなフラウ。
次に銃撃が止んだら一気に走り抜けられるよ」
「アムロなのね。
どこにいるの?」
「ランチのところへ行くんだ。
いいね」

アムロ・レイの導きにより乗組員はランチに乗ってア・パオア・クーを脱出。
直後、ホワイトベースは爆発した。
「アムロが呼んでくれなければ我々はあの炎の中で焼かれていた」
ノア・ブライトは敬礼を送ると周囲もそれに倣った。
「じゃあ、このランチにアムロはいないの?!
ブライト!」
(セイラ・マス)
「いない」
(ブライト・ノア)
「・・・・・」
「・・・・・」
そのときクルーたちは炎の中から飛び出す一機のコアブースターを認めた。
「アムロー」
「アムロ」
「アムロ」
仲間の無事を確認したアムロ・レイは涙を流しながらいった。
「ホワイトベースのみんな。
ああっ・・・ごめんよ。
僕にはまだ帰れるところがあるんだ。
わかってくれるよね。
ララァにはいつでも逢いに行けるから」
そしてコアブースターを乗り捨て、ランチに飛びこんでいった。

崩れ行くア・パオア・クーはザビ家の崩壊を思わせた。
ジオンの敗北は歴史の必然だったのか。
18時30分、デギン公王から内密に依頼を受けていたジオン公国首相:ダルシア・バハロが、公国から共和制へ移行を宣言。
サイド6を通じて、地球連邦政府に終戦協定の締結を打診した。
U.C.0080、1月1日15時、月面都市グラナダにおいて地球連邦とジオン共和国の間で終戦協定が結ばれた。
サイド3、すなわち敗戦国となったジオン共和国は武装解除され、地球連邦軍が進駐。
地球連邦政府は、第2のザビ家を出現させないために強力な中央集権体制を布き、実質的にその統治下においた。
こうして地球圏に再び平和が訪れたが、それは争いがなくなったのではなく争うことすらできない抑圧が人々に課せられただけだった。
やがてその抑圧は新たな戦いの火種となる。
戦後も抵抗を続けるジオンの戦士たち、再起を待ち闇に潜む崇高な魂が、暗黒の宇宙から地球を見つめていた。

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