「機動戦士ガンダム」を軽くおさらい!
日本を代表するロボットアニメである「機動戦士ガンダム」。富野由悠季(富野喜幸)監督の下、日本サンライズの制作により1979年から1980年にかけてテレビアニメとして放送されました。作中における、現実感のある兵器の描写や登場人物の心理描写の奥深さなどが特徴で、新たな時代のロボットアニメとしてアニメファンからは高い注目を集めました。

現在ではその名を知らぬ者はいないほどの知名度を誇るガンダムですが、初回放送では視聴率は振るわず、世間一般にまで人気が浸透するに至りませんでした。アニメは当初全52話の予定でしたが、43話で打ち切られる形で終了しています。そんなガンダムが注目されるようになったのは、放送終了から半年後にバンダイが発売したプラモデル(ガンプラ)からで、さらに再放送によって人気に火が付き、空前のガンプラブームが到来しました。

その後もガンダムの勢いは衰えることを知らず、1985年にはテレビアニメ「機動戦士Ζガンダム」、翌1986年には「機動戦士ガンダムΖΖ」が放送開始となり、以降もガンダムシリーズとして多数の作品が世に送り出されています。それと並行し関連商品も多数制作されており、2020年で40周年を迎えたガンプラや各種トイなど、現在も継続的に新作の商品が発売されています。
《ガンダムのパチモノを特集した動画を公開》
本稿で特集するガンガルやガルダン、宇宙黒騎士などの愛しきパチモノ達。
今回それらを特集した動画を製作しました!
ガンダムを意図的に模したそれぞれのパチモノの歴史をはじめ、日本を代表するパチモノ玩具メーカーであるコスモスの知られざる悲哀など、盛り沢山の内容となっております。
下記よりご覧ください!
ガンダムだけじゃない!素晴らしきパチモンの世界!!
今回のメインテーマであるガンダムのパチモンの前に、まずは巷に溢れるパチモンの数々をご紹介しましょう。ここでは特に、70年代から90年代に出回ったものをいくつかピックアップしてみたいと思います。
サザエボン
まずご紹介するのは、90年代に流行した「サザエボン」系統のグッズ。「天才バカボン」「ドラえもん」「サザエさん」といった国民的アニメを題材として、これらのキャラクターを組み合わせることでキーホルダーなどの商品が開発され、流通していました。当然ながら権利者に許可は取っておらず、製造会社は後に裁判を起こされ販売禁止の処分を受けています。



ぎゃおッpi
90年代後半に女子中高生を中心に爆発的な人気となった「たまごっち」。本家たまごっちの品薄も相まって、類似商品が多数出回りました。「ぎゃおッPi」「ジュラペット」「ゴジラッパー」といった恐竜を育てる系のパチモンや、「ぐあッPi」「ユキペンギン」「かるがもLAND」といった鳥を育てる系、さらには「ばうッPi」という犬を飼育するものまで出現し、いつの間にか姿を消していきました。




パチソン
一方、音楽ソフトにもパチモンと呼ばれるものは存在します。特にアニメソングの界隈においては「パチソン」というジャンルがあり、オリジナル楽曲の歌手以外の人物が歌唱を担当し、「〇〇大集合」といったタイトルの全10曲~15曲程度が収録されたカセットテープが流通していました。ただ、こちらはジャスラックのマークが記載されているものがほとんどのため、正規のカセットテープとして流通していた模様です。




OMY(オリエンタル・マグネチック・イエロー)
音楽系ですと、人気グループのパチモン的な名称のグループが活動することもありました。その中でも特筆すべきはYMOのパロディユニット「O.M.Y.(オリエンタル・マグネチック・イエロー)」であり、YMOを愛するゲームミュージックのクリエイターが集まって、パクリともパチモンとも呼べる独特な楽曲を多数発表していました。それ以外にも「Yセツ王」といったユニットも存在します。



ボディコンクエスト
家庭用ゲームに視点を移すと、80年代から90年代を中心に人気のタイトルをパクったお色気ゲームが「非公認ソフト」として流通していました。スーパーマリオブラザーズが元ネタと思われる「スーパーマルオ」、ドラゴンクエストが元ネタと思われる「ボディコンクエスト」、その他「ストリップファイターⅡ」「ハイレグファンタジー」といったソフトが、知る人ぞ知る存在としてマニアの間で親しまれていました。
なお、「ボディコンクエスト」「ストリップファイターⅡ」「ハイレグファンタジー」といったソフトを制作したのはハッカーインターナショナルという会社で、任天堂などに真っ向から対決姿勢を見せ、非公認ソフトを量産していた伝説の会社として語り継がれています。




GUNDAM 0079 THE WAR FOR EARTH
90年代後半にプレイステーションなどで発売されたゲーム「GUNDAM 0079 THE WAR FOR EARTH(ガンダム ダブルオーセブンティナイン ザ ウォー フォー アース)」もパチモンの系譜で語られることがあります。これはバンダイから発売されたものでパチモンではないのですが、ガンダムを題材とした実写ゲームであり「アムロ・レイに相当する主人公が『ガンダム』と呼ばれている」「シャアのアゴが凄い」「キャラの発する『ジオン』の発音が『ジョン』にしか聞こえない」といった原作との相違から、ある意味パチモンの迷作としてガンダムファンの間では語り草となっています。

モビルフォース ガンガル
ここからは、ガンダムのパチモンについて見ていきましょう。まずご紹介するのは「モビルフォース ガンガル」。これは1980年頃に玩具メーカーの東京マルイが販売していたプラモデルで、ガンプラが爆発的な人気を獲得していた頃に登場した商品です。キャラクターの名称をご覧になればわかる通り、「ガンガル(ガンダム?)」「ズク(ザク?)」「ジドム(ドム?)」など、ガンダムに登場するモビルスーツの名前をパクったとしか思えません!




太陽系戦隊ガルダン
「ガンガル」と同時期に、アリイ社が制作したプラモデル「太陽系戦隊 ガルダン」。こちらもガンガル同様に当時のガンプラブームに便乗したパチモンで、パッケージには「機動戦士ガンダム」に似せたロゴやパイロットのイラストをあしらえており、アニメを観ていた子供はともかく、大人には非常に紛らわしいものでした。そのため、子供から「ガンプラが欲しい」とねだられ、親が店に足を運んで「ガルダンを間違えて買ってしまう」といったケースが続出したらしく、当時の子供たちを何とも悲しい気持ちにさせた伝説のパチモンとして語り継がれています。また、それぞれのプラモと合体出来る「戦車シリーズ」も展開していたようです。




宇宙黒騎士
ガンダムにおける「アニメのパチモン」として有名な作品に「宇宙黒騎士」というものがあります。これは1979年に韓国で制作されたアニメで、キャラクターがガンダムに登場する人物とそっくりであり、さらにストーリーなど作品の背景も酷似しているため伝説のパクリアニメとして有名です。とはいえ多少の違いはあり、「主人公である宇宙黒騎士(シャアのようなキャラ)が、マスクを取るとアムロになる」といった、日本のガンダムファンからすると面白可笑しい要素が散見されます。
なお、当時の韓国は日本文化の流入を制限していたため、当然ガンダムも制限されていました。そのため、自国民がガンダムを知らないのを良いことにこの作品が制作されたと思われます。



宇宙戦士ダンガム
かつて存在した玩具メーカー・コスモスが販売していた「宇宙戦士ダンガム」。80年代にビックリマンチョコのシールのパチモン「ロッチ」を制作していたことでも有名なコスモスですが、元々はガンダムの版権を獲得していました。しかし、その後版権がバンダイに移ったことから、ガンダム関連商品を正規で制作することが出来なくなり、ガンダムのデザインを変えた「宇宙戦士ダンガム」というパチモンに手を染めることとなりました。




ガチャガチャメーカーとして名を馳せたコスモスの悲哀。
上述の「宇宙戦士ダンガム」を制作していた玩具メーカー・コスモス。現在40代~50代の方が駄菓子屋などに行くと、このメーカーのガチャガチャがよく置いてあったので覚えている方も多いのではないでしょうか?

1977年に設立されたコスモス。玩具メーカーとしては小規模な会社であったものの、「ガチャガチャ」を使用した販売形態をヒットさせ、全盛期には全国に50万台のガチャガチャが駄菓子屋などに設置され、当時の小学生にとって放課後の楽しみになっていました。

このコスモスを語る上で外せないのは、知的財産権の問題です。これは前述の「宇宙戦士ダンガム」に加え、ロッテのビックリマンシールそっくりの「ロッチ」や、タカラのチョロQそっくりの「チョロカー」といった、流行に便乗したパチモンを知的財産権を無視して多数制作していました。そのため、1988年にはロッテから著作権法に違反しているとして告訴され、多額の賠償金をロッテ側に払うことに。そういった経緯もあり、1988年にコスモスは倒産し、新たな会社に引き継がれることとなりました。


80年代におけるパチモンを語る際によく引き合いに出されるコスモスですが、上述のパチモン系商品の他にもユニークなガチャガチャを多数制作していました。2015年にはバラエティ「マツコ&有吉の怒り新党」にて「新・3大コスモスの冒険しすぎたガチャガチャ」と題した特集が組まれ、コスモスのユニークな玩具が多数紹介されています。その中には、「蛇口のミニチュア模型」「16連打マシーン」「三角形の面積を覚える玩具」「長島一茂のサインボール」などもあり、想像力豊かなクリエイターが同社の商品開発に関わっていたことを伺わせます。
知的財産権の問題が引き合いにだされるコスモスですが、その一方でテレビアニメ「めちゃっこドタコン」などのスポンサーを務めたり、前述の通りガンダムの版権を獲得していた時期もありました。しかしながら、特に80年代に小学生時代を過ごした人にとっては「コスモス=パチモン」という印象は否めず、ガチャガチャでゲットした玩具についても、何か本物と違う物悲しさを感じてしまう人が多かったかと思います。
まとめ
いかがでしたでしょうか?かつてのガンダムのパチモンについて見ていきましたが、実は現在でもガンダムのパチモンは海外を中心に散見されます。特に中国においては、遊園地にガンダムの偽物が飾られていると話題になりましたよね。そんな中国ですが、2021年には上海に正規の「実物大フリーダムガンダム」が進出する予定となっており、また日本のフィギュアの偽物を製造していた現地のメーカーを上海警察が摘発し、それに感謝する形でバンダイが「ユニコーンガンダム」の金色の模型を現地警察にプレゼントしたりと、近年中国では知的財産権の問題意識が高まっています。かつてはパチモンのメッカとも言われた中国ですが、それも過去の話になっていきそうです。
我々の心をなぜか惹きつけて止まない「パチモン」。知的財産権への意識の高まりにより、今後再びパチモンが隆盛を極める可能性は低いと思われますが、古き良き昭和を思い出させてくれる時代の一側面として、今後も語り継がれていくことでしょう。