The Official Charts Company
イギリスの音楽セールス調査会社であるThe Official Charts CompanyがUK・オフィシャル・シングル・チャート誕生60周年を記念して発表した、イギリスでのシングル売り上げ上位10曲をご紹介します。まぁ、平たく言えばイギリスの音楽史上最も売れたシングル「ベスト10」ですね。

オフィシャル・チャート・カンパニー
勿論売り上げは随時変動していますからチャートも変わることになります。ある時点でのシングル売上ベスト10ということになります。まぁ、何にしろ流石に名曲ばかりですよ。
10位 LOVE IS ALL AROUND
早速行ってみましょう。第10位はスコットランドのグラスゴーで結成された「ウェット・ウェット・ウェット」が歌った「愛にすべてを」です。

愛にすべてを
この曲はヒュー・グラントが主演し世界中で大ヒットした映画「フォー・ウェディング」のテーマ曲でしたね。映画ともども大ヒットしました。
185万枚という大ヒットですが、これはイギリス国内だけの数字です。この曲に限らず、イギリスでヒットした曲の多くはアメリカをはじめ多くの国でヒットしていますからねぇ。曲としての売上枚数は何倍にもなる場合が多いかと思われます。
9位 UNCHAINED MELODY
1995年、イギリスのドラマ「Soldier Soldier」で、ロブソン・グリーン&ジェローム・フリンが歌って大ヒットした「アンチェインド・メロディ」が第9位です。初登場から7週連続で1位だったといいますからスゴイですね。

アンチェインド・メロディ
ロブソン・グリーン&ジェローム・フリン。そして「アンチェインド・メロディ」。もしかすると日本ではあまり知られていないのかもしれませんねぇ。しかし、ロブソン・グリーン&ジェローム・フリンを知らなくても、「アンチェインド・メロディ」という曲名が分からなくても、聴くと誰もが「あぁ、この曲か」と思うに違いない名曲です。
オリジナルは、トッド・ダンカンが1955年の映画「アンチェインド」の主題歌として発表したものですが、有名なのは1965年にライチャス・ブラザーズが録音したバージョンでしょう。このバージョンは、1990年の映画「ゴースト/ニューヨークの幻」の主題歌となって映画ともども世界的に大ヒットしましたからねぇ。
ね?!聞き覚えがあるでしょう?なんせこの曲は世界各国で様々な言語によって500種類を超えるバージョンが存在すると言われています。プレスリーからU2、ハリー・ベラフォンテから尾崎紀世彦まで実に幅広いアーティストたちがカバーしているんですよ。
8位 SHE LOVES YOU
90年代の曲が続いた後、いきなりの60年代。イギリスが世界に誇るミュージシャンの筆頭、ザ・ビートルズの登場です。
曲は1963年リリースの「シー・ラヴズ・ユー」。この曲はザ・ビートルズにとって4枚目のオリジナル・シングルです。

シー・ラヴズ・ユー
70年、80年代の洋楽に親しんだ人にとってイギリスはパンク、ニューウェーブの印象が強いかと思いますが、それはほんの一部の話で、そもそもイギリスは紳士の国。「シー・ラヴズ・ユー」は、「Yeah Yeah Yeah」というコーラスが印象的ですが、実は当時のイギリスでは「Yeah」というのは下品とされていたんですよ。故にロックは不良の音楽ってことになったんでしょうけどね。
シングルというのは一般的に言って発売当初が最も売れる。というか、それ以降は売れないものですよね。多くが廃盤になりますし。そう言った意味でもビートルズというバンドは特別。末永~く、売れ続けているんですから。もっとも、それだけいつの時代に聴いても素晴らしい楽曲ということに疑う余地はありません。
7位 RELAX
7位の「リラックス」はイギリスに限らず1980年代を代表するヒット曲といっていいでしょう。歌詞がSM行為を描写しているということで放送禁止となったにも関わらず世界的に大ヒットを記録し、映画やCMなどにも引っ張りだことなりました。

リラックス
バンド名のフランキーとは、アメリカの大歌手フランク・シナトラのことです。フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドとは、シナトラが音楽界から映画界へチャレンジする際の新聞記事の見出しで、「都へ出てきて堕落する」というニュアンスを含んだ慣用句的隠語です。
「イギリスのヴィレッジ・ピープル」とミック・ジャガーが評したように、フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドにはゲイのメンバーがいたということと、プロデューサーに大きくコントロールされていました。
当初から、メンバーはまともに演奏が出来ないだとか、プロデューサーの言いなりだといった声が聞こえましたが、このプロデューサーが只者ではなかった。
プロデューサーは、ヒット曲「ラジオ・スターの悲劇」で知られるバグルスやイエスのボーカリストとして知られていたトレヴァー・ホーンです。今でも凄いですが、当時は時代の最先端を行くサウンドを作ってたんですよ。
6位 RIVERS OF BABYLON
ボニーMは、イギリスのグループではありません。英語で歌っていますが、ドイツです。ボニーMもまたプロデューサーのフランク・ファリアンが曲者なんです。メンバーを中南米とアフリカから集め、自分は影のボーカリストとしてコントロールしとります。

バビロンの河
プロデューサーが中心となっているグループという共通点があるとは言え、音楽性はフランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドとは全然違います。ボニーMは、アバに近い感じがしますね。
そう言えば、アバもイギリスのグループではありません。スウェーデンです。イギリスでは日本では考えられないくらいアバも大人気ですから、そもそもソフトでゴージャスなダンスミュージックというものが好きなんでしょう。
「バビロンの河」は、彼らにとって6枚目のシングル。それまでにも「ダディクール」や「サニー」といったヒットを放っていました。日本ではジンギスカンがカバーしてヒットした「怪僧ラスプーチン」がよく知られているかと思います。
5位 YOU'RE THE ONE THAT I WANT
アメリカ映画「グリース」のサウンドトラック・アルバムからのシングルカット曲「愛のデュエット」が第5位です。これは実に楽しい映画でしたね。音楽の方もそれはもう楽しいなったら楽しいなと、思わずスキップしたくなるほどです。当然のようにえいがもサントラ盤も全世界で大ヒットしました。

愛のデュエット
「愛のデュエット」は映画の主役を務めたオリヴィア・ニュートン・ジョンとジョン・トラボルタが歌っています。実に息の合ったところを聴かせてくれますよ。
サントラ盤には他に「想い出のサマー・ナイツ」、「ウィ・ゴー・トゥギャザー」という2人のデュエット曲があります。
それから、最高のロックンロールバンド、シャ・ナ・ナが6曲も歌っているんですよ。これがまたゴキゲンなんですよね。
4位 MULL OF KINTYRE
「MULL OF KINTYRE」とは、スコットランド南西部のキンタイア半島の先端にある岬のことです。それが邦題では「夢の旅人」となります。1977年当時、まだこのようなことが許されていたんですねぇ。いゃ、実に良い邦題だと思います。第4位は、ポール・マッカートニーが率いたウイングスの「夢の旅人」です。

夢の旅人
当時イギリスで最も売れていたシングルはザ・ビートルズの「シー・ラブズ・ユー」でした。それを自らの手で塗り替えたというわけですね。
「夢の旅人」は英国トラッド色があまりにも強かったので、アメリカではB面の「ガールズ・スクール」をA面にしてリリースされています。
ちなみにこの「ガールズ・スクール」は、ポール・マッカートニーが新聞のポルノ広告を見て曲のアイディアを思いついたそうで、当初のタイトルは「Love School」だったとか。これはこれで良いタイトルですよねぇ。
3位 BOHEMIAN RHAPSODY
近年同名の映画が世界的に大ヒットしたことでまたまた注目されたクイーンの名曲「ボヘミアン・ラプソディ」。映画の影響で新たにファンになった方も多かったようですが、当時から人気の曲でした。

ボヘミアン・ラプソディ
それにしても不思議な曲です。6分を超える長い曲で、オペラの要素を含んだ複雑な構成。それにも関わらず、どのパートも印象に残るんですからねぇ。
4位の「夢の旅人」もそうですが、「ボヘミアン・ラプソディ」もまた日本からは絶対に生まれることのない、とてもヨーロッパ的な曲ですよね。
2位 DO THEY KNOW IT'S CHRISTMAS?
名曲と呼ばれる歌は数多くありますが、歌そのものが感動の塊というのはそうはありません。エチオピアで起こった飢餓の為のチャリティー・プロジェクト「バンド・エイド」。そこから生まれた「ドゥ・ゼイ・ノウ・イッツ・クリスマス」がそれです。
作ったのは、このプロジェクトの発起人でもあるブームタウン・ラッツのボブ・ゲルドフとウルトラヴォックスのミッジ・ユーロ。
チャリティー・ソングという言葉では済まされない、音楽の持つ力、そして感動がここにはあります。

ドゥ・ゼイ・ノウ・イッツ・クリスマス
この曲はビデオを観るべきです。曲の素晴らしさは勿論ですが、ビデオが最高なんですよ。特別な演出があるわけではありません。ただ当時のイギリスとアイルランドを代表するロック・ポップス界のスーパースター達が同じ目的のために一堂に会して演奏している。ただそれだけです。それだけではありますが、これが感動的なのですよ。当時は信じられない出来事でしたよ。
音楽でこんなことが出来るのかと思いましたもんね。涙が出ました。奇跡という思いに近い感情でした。この思いが世界中を駆け巡り「ウィ・アー・ザ・ワールド(We Are The World)」につながっていくことになります。
名曲と言う以上に、音楽で世界を救うことが出来る。世界を変えることが出来る。ということを教えてくれた偉大な曲ですよ、これは。
1位 CANDLE IN THE WIND
さて栄光の1位は、エルトン・ジョンの「キャンドル・イン・ザ・ウインド」と「サムシング・アバウト・ザ・ウェイ・ユールック・トゥナイト」です。
両A面という扱いでしたが、まぁ、これだけ売れたのはダイアナ元英皇太子妃への追悼曲「キャンドル・イン・ザ・ウインド」の人気でしょう。イギリスでは初日だけで65万8000枚の売り上げ。日本では初回出荷30万枚、アメリカに至っては初回出荷800万枚と言いますから凄まじいです。

キャンドル・イン・ザ・ウインド
いくらダイアナ元英皇太子妃の追悼曲であったとはいえ、曲が良くないことにはこれだけ売れることはありません。が、それにしても、ダイアナ元英皇太子妃の悲報には世界中が悲しみに暮れました。愛されていましたからねぇ。
この曲、実は1974年に一度リリースされているんです。その際の邦題は「風の中の火のように(孤独な歌手、ノーマ・ジーン)」でした。ノーマ・ジーンとはマリリン・モンローの本名。そう、元々はモンローへ捧げた曲だったんです。1973年にリリースされたアルバム「黄昏のレンガ路(これ名盤です)」にも収録されています。この頃のエルトン・ジョンは絶頂期ですからねぇ。天才の絶頂期。そりゃぁ、素晴らしい曲が出来て当然てなもんでしょう。
それにしても音楽大国イギリス、流石としか言いのない名曲ばかりですね。この上位10曲はバリエーションがありますし懐が深い!
いや、ホント素晴らしい。これからも聴き継がれていくことでしょう。