3度の難病を乗り越えつかんだ勲章!不屈のGI馬・オフサイドトラップ

3度の難病を乗り越えつかんだ勲章!不屈のGI馬・オフサイドトラップ

みなさんはオフサイドトラップという馬を覚えているでしょうか?8歳まで現役を続け、その間に3度の屈腱炎を克服し、不死鳥のようによみがえった馬でした。しかも8歳で重賞初勝利を挙げ、重賞連勝の勢いでGI・天皇賞(秋)まで制します。今回はそんな不屈の闘志を持ったGI馬・オフサイドトラップをご紹介します。


上々のスタート

オフサイドトラップは1991年4月21日、北海道新冠町の村田牧場で誕生します。父は凱旋門賞馬・トニービン、母はトウコウキャロルという血統で、オフサイドトラップはトウコウキャロルの初仔でした。栗毛の綺麗な馬で幼い頃からバランスの良い好馬体をしていました。



牧場での評価も高かったオフサイドトラップは、3歳を迎え美浦の加藤修甫厩舎に入厩します。入厩してからも調教で良い動きを見せ、デビュー前から評判になり厩舎スタッフも大きな期待を抱いていました。そして迎えたデビュー戦は12月の中山競馬場、芝・1600m戦。前日の雨の影響で芝の状態は重馬場。



オフサイドトラップは単勝6.0倍の4番人気でした。レースは勝ち馬から半馬身差の2着。まずは上々のスタートを切ったと言えました。中1週で臨んだ2戦目は中山の芝・2000m戦。この日は単勝3.4倍の1番人気に支持されたオフサイドトラップでしたが、逃げた勝ち馬を捉え切れず3馬身差の2着。あと少しのところで勝ち切れません。



しかし年が明けて1月。中山競馬場で迎えた3戦目は初めてのダート戦。このレースでオフサイドトラップは単勝1.7倍の圧倒的1番人気に支持されます。レースはダートの1800mをオフサイドトラップがまんまと逃げ切り、見事圧倒的1番人気に応えて初勝利を収めます。

一躍クラシック有力馬に

初勝利を挙げて2週間後、オフサイドトラップは再び出走します。舞台は東京競馬場。陣営は再び芝のレースに戻します。芝・1800mで争われるセントポーリア賞。​この日のオフサイドトラップは単勝14.8倍の5番人気に甘んじます。しかし、その低評価をあざ笑うかのようにレースでは2着馬に2馬身半の差をつけて快勝



しかも2着に負かした馬が約4カ月後にオークスを勝つチョウカイキャロルだったのです。これで未勝利戦からの連勝で2勝目を挙げたオフサイドトラップはクラシック出走を目指し皐月賞トライアル・若葉ステークスに駒を進めます。



迎えた皐月賞トライアル・若葉ステークス。前走の快勝からこの日のオフサイドトラップは単勝2.3倍の1番人気に推されます。レースはスタートを決めたオフサイドトラップがそのまま逃げ切り、見事3勝目。3連勝でクラシック第1弾・皐月賞の出走権を手にしたオフサイドトラップは、一躍クラシックの有力馬に躍り出ました。

GIレースでは歯が立たず

3連勝と勢いに乗るオフサイドトラップは、いよいよGI・皐月賞を迎えます。しかし、オフサイドトラップに限らず1991年に生まれた牡馬にとってこの年のクラシックは不運だったと言えるかもしれません。そう、この年のクラシックにはあの馬がいたのです。あの馬とは、シャドーロールの怪物・ナリタブライアンのことです。



ご存知のとおり、ナリタブライアンは前年の朝日杯からこの年のクラシック3冠、そして有馬記念までも圧倒的な強さでGIを勝ちまくりました。オフサイドトラップはそんな怪物と同世代だったのです。レースは当然ナリタブライアンが単勝1.6倍の圧倒的1番人気。しかしオフサイドトラップも3連勝の勢いを買われ、単勝13.3倍の5番人気に支持されます。



結果はナリタブライアンの圧勝でした。オフサイドトラップはナリタブライアンに1.6秒離された7着に終わります。続いて迎えた大一番、日本ダービー。この日も主役はあの馬でした。ナリタブライアンは単勝1.2倍という圧倒的な1番人気に推されていました。レースでもファンの期待に応え、皐月賞を上回る5馬身差の圧勝。オフサイドトラップは皐月賞よりも更に離され、2.1秒差の8着に終わります。GIレースでは、いや、ナリタブライアンには全く歯が立ちませんでした。

1度目の試練

GIでは全く歯が立たなかったオフサイドトラップ。まずは重賞初制覇を狙い、ダービーから1ヵ月後、GⅢ・ラジオたんぱ賞に出走します。出走メンバーの中では実力上位と見られたオフサイドトラップはこのレースで単勝3.7倍、2番人気の支持を受けました。しかしレースでは人気を裏切る形となり4着に敗れてしまいます。



レース後、更にオフサイドトラップを悲劇が襲います。以前から不安のあった右前脚に屈腱炎を発症してしまったのです。屈腱炎とは、上腕骨と肘節骨をつなぐ腱である屈腱の繊維が一部断裂した状態で、患部が熱を持ち腫れてしまうという競走馬にとっては不治の病とも言われる難病です。オフサイドトラップは屈腱炎により戦線離脱を余儀なくされてしまいます。オフサイドトラップにとってまずはこれが1度目の試練でした。

戦列復帰、しかし2度目の試練が

屈腱炎発症から5カ月後の12月、オフサイドトラップは戦列復帰します。中山の芝・2000mで争われるオープン特別、ディセンバーステークス。5カ月振りに戦列復帰したオフサイドトラップをファンは単勝3.9倍の1番人気に支持します。しかしレースでは惜しくも3着に敗れてしまうという結果に。



年が明けて1月のGⅢ・中山金杯に出走したオフサイドトラップ。ここでもファンは単勝3.0倍の1番人気に支持しますが、結果は人気を大きく裏切る8着と大敗を喫します。そして迎えた復帰3戦目。2月の東京、芝・1800mのオープン特別・バレンタインステークスでオフサイドトラップは11カ月振りの勝利を挙げます。



しかし喜びもつかの間、レース後に屈腱炎が再発してしまったのです。こうしてまたしても療養することとなったオフサイドトラップ。2度目の試練を迎えます。

再び戦列復帰、しかしまたしても・・・

療養開始から10カ月後、オフサイドトラップは再び戦列復帰を果たします。復帰戦に選ばれたレースは前回と同じ12月の中山・オープン特別のディセンバーステークスでした。5番人気ながら3着と健闘したオフサイドトラップでしたが、続けてレースを使えるほどには回復しておらず、再び長い療養に入ります。



状態に良化が見られてきたのは翌年の秋でした。ここから本格的に戦列に復帰します。重賞でも惜しいレースが続きますがなかなか勝ち切ることができません。そして1997年5月のGⅢ・エプソムカップで6着に敗れた後、オフサイドトラップをまたしても悲劇が襲います。またも屈腱炎が再発してしまったのです。この時オフサイドトラップは既に7歳。このまま引退するという選択肢もありましたが、調教師の加藤はオフサイドトラップの高い素質を信じ、現役続行を決断。オフサイドトラップは3度目の療養生活に入ります。

不屈の闘志で不死鳥のごとく復活

およそ10カ月の療養を経て、復帰戦となったのは1998年3月の中山。芝・1600mのオープン特別、東風ステークスでした。長期の休み明けや8歳という年齢的なこともあり、この日の人気は10頭中7番人気。しかし、オフサイドトラップはその低評価をいい意味で裏切ります。長期休み明けにもかかわらず2着と健闘したのです。まだまだやれるということをレースで証明して見せました。



オフサイドトラップはまた重賞戦線に戻ってきました。5月に出走したGⅢ・新潟大賞典では惜しくもクビ差届かず2着。続くGⅢ・エプソムカップでも勝ち馬からわずか0.1秒差の3着と勝ち切れないまでも惜しい競馬が続きます。初重賞制覇はもう手の届くところまできていました。



そしてついにその時は訪れます。7月の福島、名物レースのGⅢ・七夕賞。このレースから出走レースのほとんどで手綱を取っていた安田富男騎手に変わり蛯名正義騎手が手綱を取ることになります。この日のオフサイドトラップは単勝5.0倍の2番人気。レースは逃げるタイキフラッシュをゴール前わずかクビ差で競り勝ち、ついに念願の初重賞タイトルを手にしました。オフサイドトラップは3度の屈腱炎から不死鳥のごとく見事に復活を遂げたのです。



続くGⅢ・新潟記念でも単勝1番人気の支持に応え、ゴール前ハナ差競り勝ち重賞を連勝します。8歳にしてピークを迎えた感のあるオフサイドトラップはこの勢いのままGIに挑みます。

ついに手に入れた勲章

迎えたGI・天皇賞(秋)。しかしこのレースにもとんでもない怪物が出走していたのです。自慢の絶対的なスピードが武豊騎手の騎乗により一気に開花したサイレンススズカです。この日まで他馬に影をも踏ませぬ逃走劇でGI・宝塚記念を含め6連勝中。このレースでも単勝1.2倍という圧倒的1番人気に支持されていました。



ファンもサイレンススズカの逃げ切り勝ちを信じて疑いませんでした。ところが、競馬の神様はとても残酷だったのです。この頃天皇賞(秋)で1番人気になった馬は勝てないというジンクスがあり、府中の杜には魔物が棲んでいるとまで言われていました。サイレンススズカもまた例外ではなかったのです。



圧倒的なスピードの違いでこの日も快調に逃げていたサイレンススズカ。しかし3コーナー過ぎで左前脚を骨折しずるずると後退していきます。そのまま競走中止となり予後不良となってしまいます。しかし話はここで終わりではありません。この衝撃的な事実に隠れてしまいがちですが、このレースを勝ったのがオフサイドトラップなのです。



レースは中団から最内をついて伸びたオフサイドトラップがステイゴールドの追撃を凌いで、8歳にして見事GI初制覇を成し遂げたのです。当時8歳馬の天皇賞制覇は史上初となる快挙でした。サイレンススズカの故障という悲しい事件の影には不屈の闘志で3度の試練を乗り越え、見事GIという勲章を手にしたオフサイドトラップの物語があったのです。オフサイドトラップはこの後有馬記念で10着となったのを最後に引退。壮絶な競争生活に試合終了のホイッスルが鳴り響きました。

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競馬 1998年 GI

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