マイルはおまかせ!地方からやってきたマイルの鬼・トロットサンダー

マイルはおまかせ!地方からやってきたマイルの鬼・トロットサンダー

みなさんはトロットサンダーという馬をご存知でしょうか?1995年から1996年にかけてマイルチャンピオンシップと安田記念の2つのGIを勝利した名マイラーです。彼は地方・浦和競馬でデビューし、その後中央競馬に移籍してきました。そんな彼の生涯は波瀾万丈なものでした。今回はマイルの鬼・トロットサンダーをご紹介します。


デビューは浦和競馬

トロットサンダーは1989年5月10日、北海道鵡川町にあるフラット牧場で誕生しました。父は1986年の皐月賞馬・ダイナコスモス、母はラセーヌワンダという血統です。そんなトロットサンダーはJRAではなく、地方の浦和競馬で1992年7月にデビューを果たします。



4歳の7月という競走馬としてはかなり遅いデビューとなりました。デビューがこれほど遅れたのは育成牧場時代に大怪我を負ってしまったためです。しかしそんなデビューの遅さをものともせず、デビュー戦を1番人気で快勝したトロットサンダーは快進撃を続けます。



翌年の2月までに8戦して7勝2着1回というほぼ完ぺきな内容。しかしそんなトロットサンダーをまたも悲劇が襲います。球節を骨折してしまったのです。それも競走能力を喪失してしまうのではないかというほどの重傷。この怪我により1年以上の休養を余儀なくされます。



それでもトロットサンダーは不屈の闘志で復帰します。1年3カ月ぶりの復帰戦を見事勝利で飾ったのです。これで戦績は9戦8勝2着1回。このレースを最後にトロットサンダーは華々しい戦績を引っさげJRAに移籍することになりました。この時すでに6歳。競走馬としてはすでにピークを迎えているかに思われましたが、トロットサンダーのピークはもっと先にあったのです。

JRAデビュー

JRAでのデビューは7月17日、札幌競馬場で行われた芝の1800m戦・日高特別。この日単勝4番人気に支持されたトロットサンダーは勝ち馬から半馬身差の2着と健闘します。浦和競馬時代は全てダートのレースでしたがJRA移籍後は全て芝のレースに使われたトロットサンダー。芝のレースでもそのスピードは十分に発揮され、陣営は中央でもその能力は十分通用すると自信を深めたに違いありません。むしろ芝でこそトロットサンダーのスピードは活かされると考えたのではないでしょうか。



陣営のその期待に応えるように続く2戦を連勝したトロットサンダーは、いよいよ重賞に挑みます。陣営が選んだレースは3月の中山競馬場・芝1800mで争われるGⅡ・中山記念。毎年強豪馬が集うこの時期の中山の名物レースです。単勝4番人気に支持されたトロットサンダーでしたが、この日は自慢の末脚も不発に終わり7着と初めての大敗を喫してしまいます。



格上挑戦した重賞で思わぬ大敗を喫したトロットサンダーは、自己条件に戻り府中の芝マイル戦を快勝します。そして再び重賞戦線へ。陣営が次に選んだのは札幌。札幌競馬場が最も沸くレース、GⅢ・札幌記念でした。札幌競馬場の芝・2000mで行われるこのレースもまた秋の大目標を睨んだ強豪馬たちが集まる1戦です。



そんなレースでトロットサンダーは単勝2.0倍の圧倒的1番人気に支持されます。ファンもトロットサンダーの強さを認めたのです。しかしトロットサンダーはファンの期待に応えることができず、またも7着と大敗してしまいます。

距離適性

またしても重賞の壁に跳ね返されてしまったトロットサンダー。続く函館の芝・2000m戦、函館記念も7着に敗れてしまいます。そしてその次に陣営が選んだレースはGⅡ・毎日王冠。東京競馬場の芝・1800mで争われるこのレースで陣営は一筋の光明を見出します。



重賞の壁に跳ね返され続けたトロットサンダーのこの日の単勝人気は6番人気。しかしレースでは道中後方待機から直線上がり最速の35.0秒の鋭い末脚で3着に追い込み、重賞で初めての好走。この結果に陣営はトロットサンダーの距離適性がマイル前後にあるのではないかと睨みます。



このレース以後、トロットサンダーは芝のマイル、1600mを中心にレースを使われることになります。続くレースに選ばれたのは、東京競馬場の芝・1600m戦、オープン特別のアイルランドトロフィー。トロットサンダーは単勝2.3倍の1番人気に推され、陣営の目論見どおり2着に3馬身差を付ける快勝。この結果をうけて陣営もいよいよGI挑戦を決断します。

初重賞制覇はGI

そして迎えた秋のマイル王決定戦、GI・マイルチャンピオンシップ。京都競馬場の芝・1600mで行われるこのレースでGI初挑戦になるトロットサンダーは単勝4番人気に支持されます。重賞勝ち馬が何頭も揃った中、トロットサンダーは圧巻のパフォーマンスを披露します。



レースはスタートで出遅れたトロットサンダーでしたが、最後の直線で前を行くヒシアケボノを豪快に差し切り快勝重賞初勝利を挙げるとともに、GI初挑戦にして初制覇という快挙を成し遂げたのです。おまけに2着に単勝16番人気の大穴、メイショウテゾロを引き連れてきたため、馬連は10万円を超える大万馬券に。



この当時はまだ馬券の種類も少なく、3連単はおろか3連複すらなかったため、10万円を超える配当に場内はどよめきました。

マイルの鬼

晴れてGI馬となったトロットサンダーは、年が明けて8歳を迎えます。8歳を迎えてもトロットサンダーは絶好調。現役続行が決定し、年明け初戦を2月の東京新聞杯としました。このレースも得意のマイル戦。この日のトロットサンダーはGI馬となったこともあり、単勝2.2倍の圧倒的1番人気



レースは2着メイショウユウシとクビ差の接戦となりますが、GI馬の貫禄を見せ勝利。やはりマイル戦では無類の強さを見せます。春の最大目標をマイルのGI・安田記念に定めたトロットサンダーは、安田記念の前哨戦となる京王杯スプリングカップに出走。このレースは東京競馬場の芝・1400mで争われます。



このレースを単勝2番人気で迎えたトロットサンダーでしたが、前年の安田記念の覇者・ハートレイクに0.1秒差の3着に敗れてしまいます。そして迎えた春のマイル王決定戦、GI・安田記念。この年の安田記念は出走馬17頭中、8頭がGI馬という超豪華メンバー。そんな中トロットサンダーは単勝3.4倍で堂々の1番人気に推されます。



レースは逃げるヒシアケボノ、そしてそれを追うタイキブリザードとジェニュイン。その外からトロットサンダーがまとめて豪快に差し切り、2着タイキブリザードにハナ差競り勝ちます。これでマイル戦は6戦して負けなしの6勝。まさにマイルの鬼。マイルGIを連勝し、文字どおりトロットサンダーは正真正銘のマイル王となったのです。

名義貸し事件、そして引退へ

GI2勝目を挙げ、マイル王となったトロットサンダーは秋に毎日王冠と天皇賞(秋)に出走して年内で引退することを表明。しかし毎日王冠出走に向け調整されていた9月、両前脚に骨膜炎を発症し、毎日王冠出走を断念。放牧に出されます。そんなさなかに事件は起きてしまったのです。



9月末、トロットサンダーの馬主名義貸し事件が発覚します。トロットサンダーは地方競馬から中央競馬に移籍してきました。地方競馬から中央競馬に移籍する場合、地方競馬の馬主が中央競馬の馬主資格を持っていれば中央競馬でもそのまま所有を続けることができます。しかしトロットサンダーの地方競馬時代の馬主である有限会社A中央競馬の馬主資格を持っていませんでした



そのため有限会社Aはその馬主の権利を中央競馬の馬主資格を所有する者へ譲渡しなければなりませんでした。中央競馬の馬主資格を所有する個人馬主Fに権利を譲渡したと見られていました。しかし1996年秋になっても実質的な所有者は有限会社Aのままであることが判明。個人馬主Fがその馬主名義を貸していたことが発覚したのです。



これが俗に言う「トロットサンダー名義貸し事件」です。これにより個人馬主Fは競馬法11条に違反したとして馬主資格をはく奪されてしまいます。この影響でトロットサンダーは半ば強制的に引退へと追い込まれてしまいました。



引退後、種牡馬となったトロットサンダーでしたが、地方競馬にウツミジョーダンなど数頭の活躍馬を出すにとどまり、2004年8月に種牡馬を引退。その年の秋、雪で脚を滑らせ骨折し安楽死処分となりました。こうしてトロットサンダーの波乱の生涯は幕を閉じたのです。

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