2018年の映画『SUNNY 強い気持ち・強い愛』公開もあり、1990年代、そしてコギャルに再び注目が集まっています。広瀬すず、山本舞香、池田エライザという豪華なキャストが当時のコギャルを忠実に演じ、かつてコギャル世代だった女性陣の心を掴んでいるようです。ここで1990年代、そしてコギャルについて、一抹の懐かしさと共に振り返ってみましょう。
波乱の時代だった1990年代
それまでの日本はバブル景気の真っただ中でしたが、1991年にバブルが崩壊し、「失われた20年」と呼ばれる低迷期に入ります。そして1995年には阪神・淡路大震災が発生し、さらに地下鉄サリン事件という痛ましい事件も同年に起こっています。このように世相は決して明るくはありませんでした。

バブル崩壊のイラスト
しかし、その後に現れたコギャルたちが、暗い世相など吹っ飛ばす勢いで登場したのです。ミニスカ、ルーズソックス、ローファーに身を包み、顔は日焼けサロンで焼き(いわゆる「ガングロ」)、髪の毛は当時の安室奈美恵を意識した茶髪のストレートか、広末涼子を意識したショートボブ。

彼女たちは彼女たちなりの価値観を持ち、ポケベルやPHSを駆使し、大人には分からない自分たちだけの言語で仲間たちと会話をしていました。突如として現れた異星人のようなコギャルに、はじめは世間もメディアも困惑した視線を送っていましたが、コギャルが次第に影響力を持ち、ついには時代の寵児となり、コギャルたちがこの時代の顔となったのです。

「egg エッグ 1998年6月」
コギャル文化あれこれ
コギャルはそれまでの価値観に縛られない存在でした。そして仲間意識が非常に強く、友達とプリクラを取って手帳やPHSの裏に貼り、友情を確かめ合い、仲間内だけでしか通じない言語で話していました。しかしその発想のユニークさにメディアが食いつき、コギャルたちの使う言葉が世代を超えてブームになったのです。例えば「チョベリバ」。超ベリーバッドを略した言葉で、嫌な事に遭遇した時に使います。また逆に「チョベリグ」、すなわち超ベリーグッドを略した言葉も流行りました。

「富士通 fujitsu FC741B1 PHS電話機(B1)」
この「チョベリ」シリーズは広く浸透し、あのSMAPでさえも「SHAKE」という曲で「チョベリベリ最高」と歌っていたほどと言えば分るでしょうか。また他に「ホワイトキック」(白を蹴る→白ける)、「MK5」(マジでキレる5秒前)という言葉なども流行しました。今となってはほとんど廃れてしまった言語ですが、「超かっこいい!」など、言葉の頭に「超」をつけるコギャル語は未だに根強く残っています。

「8cmCDS◆SMAP/SHAKE」
難読ポケベル文字!?
携帯電話が普及する前の世代のコギャルは、ポケベルを駆使して連絡を取り合っていました。ポケベルは日本には1968年に登場し、1993年には『ポケベルが鳴らなくて』という歌が大流行したぐらい、コギャルの必須アイテムだったのです。

国武まりのシングル「ポケベルが鳴らなくて」
ポケベルは当初、番号だけしか送ることができませんでした。そのため、文字を使った語呂合わせで様々なメッセージが誕生しました。例えば「おやすみ」なら「0833」、「遅れる」なら「0906」、「会いたいよ」なら「11014」などなど。特に難読なのが「1052167」。いーごにいろな? いえいえ、これで「どこにいるの?」になるんだそうです。この域に達すると、もはや暗号ですよね!

「ポケベル 東京テレメッセージ」
やがて、ポケベルも日本語入力に対応しましたが、ガラケーのようにボタンを何回も押したり、スマホのようにフリック入力がある訳ではなく、二つの数字を組み合わせて打つ「ポケベル打ち」と呼ばれる少々変わった入力方法でした。しかも今では信じられない事に、ポケベルは受信専用で、送ったメッセージが相手にちゃんと届いているかは推測するしかなかったのです。

「広末 涼子 NTTドコモ ポケベル 50度数 テレカ 未使用」
ポケベルは一文字でもずれてしまうと意味不明な日本語になってしまうので、時には送られてきたメッセージを数字に戻して、どこで間違えたのか推測する、といった今では考えられないような方法でメッセージのやりとりをしていたといいますから、コギャルのこういったスキルの高さには本当に驚きますね!
ちなみに、スマートフォンのアプリの中にはポケベル打ちをすることができるようになるものもありますので、一度使ってみると当時のコギャルの苦労が分かるかも知れません。
コギャル文化、今再び!?
最初に取り上げた映画『SUNNY 強い気持ち・強い愛』の影響もあるかも知れませんが、ファッション界にも再びコギャルを思わせるテイストのものが流行の兆しを見せています。例えばギャルの聖地・109では、9月16日に歌手生活に幕を閉じた安室奈美恵のリバイバル商品として売り出した厚底ブーツが完売したり、ブランド「EGOIST」では90年代のテイストにこだわり抜いた商品を販売したりと、その動きは活発です。

2019年12月現在の「egg公式サイトトップページ」
では、ムーブメントは今後定着し、再び「ブーム」になるのでしょうか。109側の答えは「トレンドも早い。一過性だと思っている」ときっぱり。「当時の90年代カルチャーに憧れた人が影響を与える立場になっている。平成も終わる、安室さんの歌手生活も終わる、いろいろな要素が重なってムーブメントにはなっている」と、まとまった動きはあるものの、「ギャルに戻ります、昔いいでしょということでは全くない」としています。コギャル文化の復活は短い夢に終わりそうですが、激動の1990年代を生き抜いた人には、今も懐かしいものとして鮮やかに記憶されていることでしょう。
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