有名漫画家も認める諸星大二郎の初の連載漫画「妖怪ハンター」という凄い漫画があるのだ。

有名漫画家も認める諸星大二郎の初の連載漫画「妖怪ハンター」という凄い漫画があるのだ。

1974年から始まった諸星大二郎の「妖怪ハンター」シリーズは、日本を舞台に歴史書や昔話、古史古伝などを題材とした伝奇漫画です。今もなお続く、このシリーズを紹介したいと思います。


諸星大二郎という1970年にデビューしたマンガ家がいます。その作風は当時から今までのマンガ界の中でも特殊で、日本だけでなく世界中の伝説や伝承、民俗学などを題材としたものが数多く存在しています。

その他にも寓話的なSF作品があったり、独特のユーモアが発揮された作品などがあるのですが、やはりそんな中で注目したいのは、豊富な知識と奇抜なアイデアから生まれた「妖怪ハンター」シリーズです。

「妖怪ハンター」とは

「妖怪」や「ハンター」ではない?!

これは稗田礼二郎という学者を主人公にした、連作短編シリーズになります。日本を舞台にして「古事記」などの歴史書、「花咲爺」などの昔話、他に各地の伝説などの古史古伝に多くの題材をとった、彼の代表作のひとつです。

「妖怪ハンター」というタイトルなのですが、この作品には、ほとんど「妖怪」とはっきり言えるようなものは出てきません。河童に近い物、鬼のような物は出てくるのですが、諸星大二郎の独特な解釈によるので、河童や鬼という風に呼んでいいのかも良くわからない存在なのです。

そして、主人公である稗田礼二郎は、それを退治するような「ハンター」でもありません。その怪異事件を解決する話も確かにありますが、基本的にはその事件を見ている観察者、説明役のような位置にいます。

「黒い探求者」

このシリーズには、たくさんの魅力的な短編があります。

・東北にある隠れキリシタンの集落、そこに伝わる「世界開始の科の御伝え」という独特な変化を遂げてしまった聖書の異伝を題材にした「生命の木」。

・飛行機の墜落事故から奇跡的に助かった兄妹に、「枯れ木に花を咲かせましょう」という花咲爺の昔話を絡めた「花咲爺論序説」。

などなど、どれも素晴らしいのですが、やはり最初に発表された「黒い探求者」を紹介したいと思います。

「黒い探求者」に出てくる怪物ヒルコ。「諸星大二郎立体異形図譜」より。

これは「古墳は王の墓であると共に、古代の祭儀の場所あるいは悪霊を鎮める所だ」という自説を証明するために、比留子古墳を訪れた稗田礼二郎を描いた短編になります。

日本最古の歴史書である「古事記」を題材に、謎の怪死事件、村に伝わる伝承、過去に村で起きた怪異事件など盛りだくさんで、「妖怪ハンター」の魅力がすべて詰まっていると言えるのではないでしょうか。

「ヒルコ/妖怪ハンター」

そんな「黒い探求者」はやはりたくさんの方に注目されたと思われ、「ヒルコ/妖怪ハンター」という映画になっています。原作は「黒い探求者」に、同じく素晴らしい短編である「赤い唇」を組み合わせたもの。

こちらの監督は塚本晋也がつとめました。1989年に「鉄男」という自主制作映画で国際的に評価された彼の、メジャーデビュー1作目になります。ちなみに同監督は2015年に、大岡昇平原作「野火」を監督して、こちらでも大きく評価されました。主演は稗田礼二郎役に沢田研二。他に竹中直人などが出演しています。

諸星大二郎とは

では、そんな作品を描いた諸星大二郎とはどんな作家であるか、その経歴を紹介いたしましょう。
1949年生まれですから、今年2019年で70歳ですね。

1970年に「COM」という雑誌の投稿コーナーに「ジュン子・恐喝」という作品で入選し、デビューしました。
この「COM」というマンガ雑誌は、1967年から1973年まで虫プロ商事から発刊されていました。創刊したのは手塚治虫。「火の鳥」シリーズを連載して、白土三平が「カムイ伝」を連載していた「月刊漫画ガロ」とライバル関係にありました。他に石森章太郎「サイボーグ009」シリーズなどを連載していたので、懐かしく思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。

デビュー後いくつかの雑誌に作品を発表し、1974年「生物都市」で第7回手塚賞に入選しました。マンガの神様・手塚治虫は、あれだけの才能がありながら後輩たちを常にライバル視していて、滅多に彼らを褒めることはなかったそうですが、諸星大二郎の「生物都市」を読んで「僕は諸星さんの絵だけは描けない」とコメントしたということです。

そして1974年から「週刊少年ジャンプ」に「妖怪ハンター」の連載を開始して、本格的な作家活動に入りました。

その後、主な作品としては、1979年から「月刊少年チャンピオン」など秋田書店の雑誌に掲載された「マッドメン」シリーズ。

以降、受賞した作品を紹介するだけでも、1983年から「月刊スーパーアクション」誌に掲載された「西遊妖猿伝」。これは2000年には第4回手塚治虫文化賞マンガ大賞を受賞しました。

2008年に第12回文化庁メディア芸術祭においてマンガ部門優秀賞を受賞した「栞と紙魚子」は、少女向けホラー雑誌である「ネムキ」に掲載されたものです。「栞と紙魚子の怪奇事件簿」としてドラマ化され、栞役を南沢奈央、紙魚子役を前田敦子が演じていました。

そして2014年には「瓜子姫の夜・シンデレラの朝」で第64回芸術選奨文部科学大臣賞をしました。

2018年には「諸星大二郎劇場」で第47回日本漫画家協会賞コミック部門大賞を受賞しています。

その人物像と与えた影響

諸星大二郎は、人前にはあまり出ない作家として有名です。その奇抜な作風も相まって、伝説が多い作家となりました。2016年に御子息が取材を受けて「ほとんど取材を受けず、業界内での交友も少なかった」と答えています。しかし、その後「最近はマンガ家さん同士の交流が増えてきて」とコメントしていました。
2018年11月25日に川崎市民ミュージアム「ビッグコミック50周年展 星野之宣×諸星大二郎 ~ふたつの宇宙、その中心に迫る~」というトークイベントに出演しているので、何か心境に変化があったのかも知れませんね。

なお、この時の司会も務めた夏目房之介は、1989年の手塚治虫の葬儀で偶然に諸星大二郎とタクシーで一緒になり、その中で柳田國男の本を読んでいた彼の姿に「あまりにもイメージ通り」だったので驚いたということです。

有名なエピソード

高橋留美子「うる星やつら」の主人公の名前が諸星あたるなのですが、これは諸星大二郎からとったのだそうです。

また「影の街」という作品に巨人が人を手づかみで食べるシーンがあるのですが、これは庵野秀明「新世紀エヴァンゲリオン」に影響を与えているということです。「生命の木」では地面から十字架型の光が現れるという、まったく同じような場面がありますね。

あの宮崎駿も明らかに影響を受けていると指摘する声もありました。確かに良く見ると画風は似ています。

懐かしの作品が今でも読める!

「妖怪ハンター」シリーズは「週刊少年ジャンプ」からスタートし、以降、集英社の「週刊ヤングジャンプ」「月刊ベアーズクラブ」「月刊ウルトラジャンプ」等と掲載雑誌を変えながら続きました。2003年からは講談社「メフィスト」にて連載などもしましたが、2012年には「月刊ウルトラジャンプ」に連載という形で集英社に戻っています。

「妖怪ハンター」は現在、全3巻の「地の巻」「天の巻」「水の巻」で、2005年までに集英社から発表されたすべての作品を読むことができます。

2005年以降も「妖怪ハンター」は続いています。
講談社からは2005年に「稗田のモノ語り 魔障ヶ岳 妖怪ハンター」など、集英社からは2009年に「妖怪ハンター 稗田の生徒たち(1) 夢見村にて」が発売されています。

他に面白い所では、新潮社の「月刊コミック@バンチ」にて「闇の客人」のリメイク「妖怪HUNTER〜闇の客人〜」が掲載されたということです。作者は井上淳哉。

そしてこれからも

こうして「妖怪ハンター」シリーズは1974年から、なんと45年以上も続いているのですから、まさしく作者のライフワークですね。

この記事を読んで「懐かしいなあ」と思われた方の中にも、まだ今も続いていることに驚かれた方がいらっしゃるのではないでしょうか。

今後もまだまだ続いていきそうな「妖怪ハンター」シリーズ。他の作家ではあまり見られない、独特の世界が楽しめるマンガだと思います。

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