みんな大好き「川原泉」♪

川原泉の創作の原点は、お嬢様コンプレックス!?
川原泉は、1960年9月24日、鹿児島県指宿市の生まれです。鹿児島大学の法文学部在学中に、はじめての漫画「ジュリエット白書」を『花とゆめ』に投稿します。
鹿児島大学で日本史の教員免許を取得した川原泉は、教員採用試験を受けます。が、「勉学と良妻賢母、どちらを優先しますか」という問いに「もちろん勉学」と答えて、落ちてしまいます。就職に失敗したことで、川原泉はお嬢様学校コンプレックスに陥ったそうです。
しかし。転んでもただで起きない川原泉こと、カーラ教授は、「笑う大天使」の舞台設定を、超お嬢様名門校にしてギャグ漫画ワールドを創り出すのです。
うーん、さすがカーラ教授。「受かるためなら、嘘も方便」とか、思わないのでしょうか(汗)私なら「そうですね。良妻賢母は女の鏡です」とか、嘘をついちゃうところです??
カーラは公式化された愛称!?カーラ教授のエピソード♬

川原泉bot @kawaharaizmibot
カーラ教授の由来
川原泉はファンの人達から親しみを込めて、カーラ教授と呼ばれています。「メイプル戦記」のおまけに「カーラ君を探せ」という作品があります。現実に存在する有能なアシスタントでもある、「小学校時代からの友人M」に「カワハラ君」と呼ばれている川原泉。「カワハラ君」が「カーラ君」と聞こえるから、カーラ教授と呼ばれるようになったそうです。
教授と呼ばれるほど、川原泉はカリスマ性ある漫画家です。川原作品を読んでいると、ゆったりまったり「人生とは何か」「生きるとは」という授業を受けている気持ちになれます!
川原泉の漫画は、卓越したストーリー性、現実的な細部の描写、楽天的な主人公たち、哲学的で詩的なセリフが満載。コアな熱狂的ファンもたくさんいます。
王道の恋愛漫画・・・ベタなのに奥行きが「深い」川原泉ワールド!
川原泉の漫画に出てくる男性は、主人公よりだいぶ年が上で、社会的地位もある男性が多いです。女性は、大名のお姫様やその末裔(没落していたりする)が出てくることが多いです。家柄が高い女性の主人公も多いように思います。
年齢・身分差のある男女が出会い、惹かれ合っていくというストーリーは、少女漫画の王道ですが、その設定を使いながら、「深いなあ」と思わせるストーリーを作ってしまえるところが、川原泉の真骨頂といえそうです。。
書店に行く度に2万円ほど本を購入!?
「生活費の中で一番、本代にお金をかける」という川原泉は大の読書家。漫画の中にも、多くの本からの引用がみられるように思います。「心理学・哲学・修辞学・歴史・文学の本は、学生時代から膨大に持っていた」と、高校時代の友人のYさんも「メイプル戦記」のあとがきの中で証言しています。知識をふんだんに取り入れた漫画の緻密な構成は、膨大な読書量から来ていたのですね。
大好物の紀文食品「魚河岸あげ」で紀文食品に描き下ろしを!

[冷蔵] 魚河岸あげ たまご 4個入
人には皆、「これが好物!」という食べ物があるものですが、川原泉の場合、それは紀文食品の「魚河岸あげ」のようです。川原泉によれば、東京で発見した美味しいものベスト3に入ると「メイプル戦記」の4分の1スペースに書いています。作品の中にも登場させ、遂に「漫画魚河岸あげの魅力」という描き下ろし作品を紀文食品のサイト内で発表することになりました。
大きな特徴を持つカワハラ漫画。
川原泉の漫画には、大きな特徴が2つあるのではないかと言われています。
1つ目は、弱者、貧困、不幸への慈しみの眼差しです。貧乏な女子学生が孤軍奮闘して幸せになる話や、記憶喪失で少年に戻った男が女子高生と心を通わせる話。異質なものを排除するのではなく、俯瞰的な神の視点(川原泉の視点)から人々を包み込んでいるといえそうです。
2つ目は、繰り返しを多く使っていることです。「たのしいね、たのしいね、たのしいね」などです。「たのしいね たのしいね たのしいね」のように3回、同じ言葉を繰り返すと、哀愁を感じる表現になると聞いたことがあります。胸がキューッとなって感情が揺さぶられる表現です。
また、「んだば」のように方言を入れたもの、「わしら」のように、一見、女の子らしくない表現も使っています。これらの言葉や方言などが入ると、登場人物たちに親近感が湧いてくるように思います。
赤絵玉緒さんは、川原泉の漫画について、「人間と人間の距離感がものすごく好き。川原泉さんはラジオで語るときの大切な指針。『師』って感じ」と語っています★
お嬢様コンプレックスから生まれた名作「笑う大天使」

笑う大天使(ミカエル) (第1巻) (白泉社文庫)
あらすじ
カトリック系のお嬢様名門女子校、「聖ミカエル学園」に通うお嬢様たちは、富と家柄が完璧。学園内での挨拶は、「ごきげんよう」。しかし。どこの世界にも異端児というものは存在する。聖ミカエル学園に通う「大天使の乙女たち(アークエンジェルの乙女たち)」には、庶民になりたがる迷える子羊が3匹。司城史緒、斉木和音、更科柚子。
猫をかぶるのが、辛くてたまらない史緒は、ある日の自習の時間、校舎を抜け出して、学校の裏の小高い雑木林で、焚き火を起こして串に刺したアジの開きを焼き、かぶりつく。柚子と和音が探しだした時、史緒はアジの開きを口に加えながら、くるり「んば?」。途端に地を出す3人。自分たちが同質の人間だと気づき「いかに自分が庶民であるか」を競って語り合う。
ある時、たわむれに作った薬品が原因で、3人はメンデレーエフの力と呼ぶ超人的な怪力を手に入れる。その頃、名門女子高校生連続誘拐事件が立て続けに起こり学園にも犠牲者が・・・!?
「アークエンジェルの乙女たち」現実世界に降臨!上野樹里主演で映画化に♫

笑う大天使(ミカエル)
2006年、「笑うミカエル」は、上野樹里主演で映画化されました。笑いあり、感動あり、そしてぶっ飛びのアクションありのスーパーエンターテインメントに仕上がっています。上野樹里は、訳あって超お嬢様校・聖ミカエル学園に転入した主人公史緒を元気いっぱいに演じています!上野樹里ファンは是非、ご覧になってみてください。
漫画を描けなくなったキーパーソンは友人だった!?

総特集 三原順 少女マンガ界のはみだしっ子
川原泉はしばらく漫画を書くのを休業していたとのことでした。
川原泉の友人に、三原順という漫画家がいます。川原泉が取材旅行で北海道に行った際、北海道に住んでいた三原順と知り合いました。三原順は1973年、『別冊マーガレット』に掲載の「ぼくらのお見合い」でプロデビュー した漫画家です。代表作には1975年から1981年にかけて『花とゆめ』に連載した「はみだしっ子」シリーズがあります。
三原順は、社会や人間の心理を掘り下げる作風の漫画家で、深い洞察力を持っていました。文章のみで構成されたページもありました。同じく哲学的な漫画を描き、カーラ教授と読者にいわれる川原泉と三原順の間に友情が芽生えたのは自然な流れだったのではないでしょうか。
しかし、三原順は1995年、42歳の若さで病没します。
川原泉が、1996年に東京の世田谷から生まれ故郷の鹿児島に移住したのも、三原順の死となにか関係があるのかもしれません。
カーラ教授の現在
川原泉の絵に変化が・・・!?

文庫-川原泉/ブレーメンⅡ全4巻セット 白泉社文庫
1990年代後半に画業を再開した川原泉の作品が「ブレーメン」です。初期の頃とは違う、硬質の線が使われており、目も初期の頃の作品のものと違うように思います。
川原泉の作品は、お気楽でのほほんとしたキャラが、落書きのような脱力系の絵柄で深い真理を口にする作風が特徴でした。「現在のかっちりした硬質の線の絵になると、初期の頃のみずみずしい深さがなくなってしまっているように思うときもある」と、ネットでも指摘されています。
故郷での第1作はエッセイ漫画「小人たちが騒ぐので」。その次に描いた「ブレーメンⅡ」が2005年に星雲賞コミック部門およびセンス・オブ・ジェンダー賞特別賞を受賞しました。その後も「レナード現象には理由がある」からはじまる「~がある」シリーズを描くなど、活動は続いています。
作品を描くペースが遅いことでも知られる川原泉。たびたび原稿を落としており、作品数は決して多くはありません。今も、自分なりのペースで、作品を発表し続けています。
まとめ
学園モノ、SF、スポーツ漫画など、様々なジャンルで一貫してギャグ漫画を描き続けている川原泉。「いじめられたことがあったり、家庭環境が複雑だったりする人にはかなり受ける作風」だと読者にいわれたりもするそうです。
「つらくてもそれを一切周りには悟らせない、けなげな主人公。 そして、その主人公には必ず理解者が現れる(ここが現実と違う)。 そのあたりをベタッとした感情に訴えることなく サラリと描くことに関してはこの人の右に出る漫画家はいない」とのコメントもありました。
特に初期の頃の作品群は兎に角、素晴らしいので、まだ川原泉を知らない人は是非、作品を読まれることをオススメします。私もこれを書いていたらまた読みたくなってきてしまいました。