「攻殻機動隊」の士郎正宗が放ったSFアドベンチャー!アニメ「ランドロック」をあなたは知っていますか?

「攻殻機動隊」の士郎正宗が放ったSFアドベンチャー!アニメ「ランドロック」をあなたは知っていますか?

あの大ヒットアニメ「GHOST IN THE SHELL」の1年後(1996年)に、原案が士郎正宗で「ランドロック」という大プロジェクトのアニメが作られていました。ゲームも発売予定だったのですが、これは幻のタイトルになってしまうのです…。


士郎正宗ってどんな人?

1995年に押井守監督のアニメ「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊」が上映されると、それは世界中で大ヒットとなりました。1999年のウォシャウスキー兄弟監督の「マトリックス」に多大な影響を与え、また2017年にはルパート・サンダース監督で「ゴースト・イン・ザ・シェル」という形でハリウッドで映画化されました。

その原作「攻殻機動隊」の作者こそ、士郎正宗です。美少女たちだけでなく、丁寧に書き込まれた背景、緻密な銃器の描写、独特なデザインのメカたちと、そのビジュアル面の才能は本当にマンガ界に衝撃を与えたと思います。ストーリーだって、人間の脳を電子化した未来世界を描くなど、アイデアに満ちててとても凄いんですよ!

「話題のスタッフ&キャストで贈るA級エンターテイメント!」と宣伝していました

そんな士郎正宗が「攻殻機動隊」の1年後、キャラクター原案・コンセプトデザイン原案で参加したアニメこそ、今回紹介する「ランドロック」です。
オリジナルアニメビデオ(つまりテレビ用でも劇場用でもない)の上下巻組として制作され、上巻は「紅い眼の章」、下巻は「蒼い眼の章」というタイトルでした。

制作・著作はセガエンタープライゼスで、監督は松村康弘。
キャラクターデザインは中沢一登。本編を見ると、かなり士郎正宗の作風に似せたキャラクターです。

声優は、主人公ルーダに柏倉つとむ。ヒロインのアガハリに緒方恵美(「新世紀エヴァンゲリオン」の主人公、碇シンジ役)。もうひとりのヒロインのアンサは天野由梨。

原作・脚本はORCA。
制作はサンクチュアリです。
このふたつの名前、後々もう一度出てくるので、頭の片隅にでも入れておいてくれたらとても嬉しいです。

おおまかなストーリー

最終戦争後の、文明が逆戻りした自然豊かな世界。「風使い」であるムーグに育てられた少年ルーダ。そこへゾロアース軍がやってきて、彼らが暮らす村を焼く。その隊長はアガハリという、軍の司令官ザナークの娘だった。アガハリの使命はムーグを殺すことと、ルーダを捕らえること。アガハリは左眼が蒼く、ルーダは右目が紅かった……。

というストーリー紹介ではまったく面白さを伝えられないので、注目ポイントをいくつか挙げていきたいと思います。

上巻「紅い眼の章」

主人公のルーダは弱く、泣いてばかり

アガハリに出会ったルーダは、彼女に馬乗りになられ、何発も顔を殴られます。鼻と口からは出血。泣き出したルーダは謎の力が発動して、気を失いながらも逃げることに成功します。しかし目覚めた彼は村のことを思い、殺された父のことを思い、さめざめと泣くのでした。
その後も、再び出会ったアガハリに殴りかかるのですが、あっさりと返り討ちに。鼻と口からまた出血して、泣き出すのです。

巫女アンサも役に立たない

アンサという美少女がルーダを助けに来るのですが、アガハリの蹴り一発で気絶。その後も謎の遺跡の力で空間移動して現れますが、気をすでに失っています。それであっさり捕虜になってしまうのですから、もう少し役に立って欲しいと思いました。

謎の親子関係

アガハリのヌードというサービスシーンの後、いろいろ衝撃の事実が判明し、なんとアガハリは父親である司令官ザナークと一対一で戦うことになります。16年間育てた父と、育てられた娘は剣を持って殺し合うのでした。ふたりの間に情はないのかと思ってしまいました。

下巻「蒼い眼の章」

「わかんない」のだからしょうがない

飛行機にダール、アガハリ、アンサ他の計5人で乗りんで逃げます。どう考えても定員オーバーです。

そんな中、落ち込むアガハリにアンサは声をかけました。

「これからは私たちの村ザールで暮らしましょう。村はめちゃくちゃになったけど……」

するとダールは叫びます。

「村をめちゃくちゃにしたのはこいつだぞ!」

しかし、アガハリも負けずに言い返すのでした。

「それじゃなぜ助けた! そんな私をなぜ助けた!」

ダールはつぶやきます。

「わかんない。ぜんぜんわかんない。いろいろありすぎて、なにがなんだか」

衝撃の結末

ついに司令官ザナークと最終決戦になります。
そこへ突然、彼の右肩にヒビが入り、そこから紅と蒼の光が噴出しました。
どうしてそんなことに!?

この後、衝撃の結末が待ち受けているのです。
最後の最後まで、決して目が離せないと思います。

通称「パカパカ」という演出技法

いまさらなのですが、この作品は、赤と青の光の演出がとても多いです。神殿も、風の力も、特殊な力はみんな赤と青が交互に光ることで表現されています。
これは通称「パカパカ」と呼ばれる技法で、昔から派手な演出として良く使われていました。
しかし1997年12月16日、この「パカパカ」により130名以上が入院する騒ぎとなってしまいます。いわゆる「ポケモンショック」です。この演出により、子供たちに光過敏性発作が起きてしまったのでした。

「ランドロック」の1年後の事件ですし、これは確認が取れていないのですが、おそらく以降再ソフト化する時にも修正はされていないと思います。

大プロジェクトの結末

さて、そんな「ランドロック」なのですが、ラジオドラマCDが3枚も出ています。小説も上下巻出ています。ラジオ番組も放送していたようです。大プロジェクトだったのです。
そして制作・著作のセガエンタープライゼスからは、1997年にゲームも発売予定と大々的に宣伝されていました。残念ながら、そのゲームは発売されていません。たぶんセガのプロジェクトとしては、失敗だったのではないかと思われるのですが……。

そして伝説へ…

さて、これでこの記事を終える訳には、まだいかないようです。

1999年、ある未完成のアニメが劇場で上映されました。
未完成なので、前売り券を購入した方の希望者には、返金に応じました。
劇場に入る前には「これは未完成ですがいいですか?」とスタッフが尋ね、承諾した方のみが入場できました。
また、後からきちんと完成したビデオを観客に送付するという、きわめて異例な措置がとられました。

そのタイトルこそ「ガンドレス」。
キャッチコピーは「天沢彰〈ORCA〉×士郎正宗が挑む華麗なる映像体験」。

そう、士郎正宗がキャラクター・メカデザインで、天沢彰〈ORCA〉が原作・脚本なのです。制作はサンクチュアリ。
「ランドロック」と同じメインスタッフが集結した作品なのです!

未完成だったことばかりが話題になるものの、その脚本も大概に酷かったと言われる「ガンドレス」は、「ランドロック」以上にアニメファンを驚愕させたのではないでしょうか。

関連する投稿


レトロゲーム配信サービス「プロジェクトEGG」より『トラぶるCHASER 第1話』『3Dテニス』が配信スタート!!

レトロゲーム配信サービス「プロジェクトEGG」より『トラぶるCHASER 第1話』『3Dテニス』が配信スタート!!

レトロゲーム関連の復刻・配信ビジネスなどを行うD4エンタープライズが運営するレトロゲーム配信サービス「プロジェクトEGG」にて、新規コンテンツ『トラぶるCHASER 第1話 トラブルは空から未来から(PC-9801版)』『3Dテニス(MSX版)』の配信がスタートしました。


抜群のスタイルで💦世の脚光を浴びた『広田恵子』現在は?!

抜群のスタイルで💦世の脚光を浴びた『広田恵子』現在は?!

高校時代からモデル活動を始め1986年に「カネボウ・スイムウエアイメージモデル」として脚光を浴びた広田恵子さん。現在は家族で〇〇を組んで活動している・・・。


完璧・無量大数軍の一人「完肉」の称号を持つキン肉マン『ネメシス』が、SpiceSeedキン肉マンシリーズに登場!!

完璧・無量大数軍の一人「完肉」の称号を持つキン肉マン『ネメシス』が、SpiceSeedキン肉マンシリーズに登場!!

ハイクオリティフィギュアの製造・販売で好評を博している株式会社SpiceSeed フィギュア事業部より、キン肉マンシリーズのフィギュア『ネメシス』が発売されます。


懐かしの名作が勢揃い!特製クリアしおりが貰える書店フェア「藤子・F・不二雄 S(すこし)★F(ふしぎ)な世界」が開催!!

懐かしの名作が勢揃い!特製クリアしおりが貰える書店フェア「藤子・F・不二雄 S(すこし)★F(ふしぎ)な世界」が開催!!

藤子・F・不二雄による名作の数々を紹介する書店フェア「藤子・F・不二雄 S(すこし)★F(ふしぎ)な世界」が、8月7日(木)より全国のフェア参加書店にて順次開催されます。


「おかあさんといっしょ」の『にこにこ、ぷん』が令和に復活!公式YouTubeチャンネル開設&グッズ展開決定!!

「おかあさんといっしょ」の『にこにこ、ぷん』が令和に復活!公式YouTubeチャンネル開設&グッズ展開決定!!

NHK「おかあさんといっしょ」の人形劇コーナーとして1982年から1992年までの10年間にわたり放送され、累計2,000話以上の物語が制作された人気シリーズ『にこにこ、ぷん』が、令和の時代に新たなかたちで帰ってきます。


最新の投稿


ギタリスト 鈴木茂「BAND WAGON」発売50周年記念ライブを東阪ビルボードで開催!

ギタリスト 鈴木茂「BAND WAGON」発売50周年記念ライブを東阪ビルボードで開催!

ギタリスト 鈴木茂が、『鈴木茂「BAND WAGON」発売50周年記念ライブ~Autumn Season~』を11月13日にビルボードライブ大阪、16日にビルボードライブ東京にて開催する。今回は、1975年にリリースされた1stソロアルバム「BAND WAGON」の発売50周年を記念したプレミアム公演となる。


【1965年生まれ】2025年還暦を迎える意外な海外アーティストたち!

【1965年生まれ】2025年還暦を迎える意外な海外アーティストたち!

2025年(令和7年)は、1965年(昭和40年)生まれの人が還暦を迎える年です。ついに、昭和40年代生まれが還暦を迎える時代になりました。今の60歳は若いとはと言っても、数字だけ見るともうすぐ高齢者。今回は、2025年に還暦を迎える7名の人気海外アーティストをご紹介します。


吉田沙保里  強すぎてモテない霊長類最強の肉食系女子の霊長類最強のタックル その奥義は「勇気」

吉田沙保里 強すぎてモテない霊長類最強の肉食系女子の霊長類最強のタックル その奥義は「勇気」

公式戦333勝15敗。その中には206連勝を含み、勝率95%。 世界選手権13回優勝、オリンピック金メダル3コ(3連覇)+銀メダル1コ、ギネス世界記録認定、国民栄誉賞、強すぎてモテない霊長類最強の肉食系女子。


消えた回転寿司チェーンの記憶──昭和・平成を彩ったあの店はいまどこに?

消えた回転寿司チェーンの記憶──昭和・平成を彩ったあの店はいまどこに?

昭和から平成にかけて、全国各地で親しまれていた回転寿司チェーンの数々。家族の外食、旅先の楽しみ、地元の定番──いつしか姿を消したあの寿司屋は、なぜ消え、どこへ行ったのか。本記事では、現在は閉店・消滅した地域密着型の回転寿司チェーンを、当時の特徴やSNSの証言とともに記録として振り返る。


【歌謡曲】ありえないシチュエーション!歌詞がおもしろくて笑ってしまう歌謡曲5選!

【歌謡曲】ありえないシチュエーション!歌詞がおもしろくて笑ってしまう歌謡曲5選!

昭和の歌謡曲には、現代ではお蔵入りしてもおかしくないほど、ありえないシチュエーションを描いた詞が数多くあります。その中には、残酷な人物像や露骨な情景描写もあり、思わず笑ってしまうような歌詞もありました。今回は、筆者の独断と偏見で、歌詞がおもしろくて笑ってしまう歌謡曲を5曲ご紹介します。