【かわいいは正義】女子も男子も夢中になった川原由美子『観用少女』【隠れロリ】

【かわいいは正義】女子も男子も夢中になった川原由美子『観用少女』【隠れロリ】

「観用少女(プランツ・ドール)」とは「生きるお人形」そして「植物」。中華圏のどこかを舞台に、独特の世界観と少女の圧倒的な可愛さで読者を魅了した『観用少女』シリーズを見てみましょう。


製造方法は全く謎に包まれた「少女」で「人形」の「植物」

「観用少女」もう字面見たまんまのこの生きもの(?)。
「観葉」と掛けた「観用」、ルビを振ると「プランツ・ドール」つまり植物。
そして「少女」で、「観用」=「観賞用」なお人形。
なんと的確なネーミングじゃありませんか。

「ネムキ」は「眠れぬ夜の奇妙な話」を略したマンガ誌のタイトル。
タイトル通り、ちょっとホラーかかったファンタジーや不思議系の話が多いです。
1991年か2013年まで発刊されていました。

『観用少女(プランツ・ドール)』は、1992年に掲載が始まり、2001年まで約30話がつくられた人気シリーズでした。

2000年ネムキ11月号

ヤフオク! - 2000年ネムキTONO 巻頭カラー、川原由美子 観...

「観用少女」ってどんなもの?

wikiの解説をひとつずつ拾って見てみましょう。

職人たちと言うからには複数いるのか? ”名人”と呼ばれない職人もいるのか?
というつっこみはとりあえず置いておいて。
製造方法については全く明かされていません。

つまりこれはお店で売っています。
しかも陳列されている少女たちはみな「眠っている」
普通に椅子に座っているんですが、目を閉じたままです。

たまたま店の前を通りかかって、波長が合ったりすると
少女(プランツ)は目を覚まします。
で、その対象人物に向かってにっこり微笑んだりする。
「買って買って」光線を放ったりもする。
店主も
「目を覚ましたプランツはその持ち主と一緒にいないと枯れてしまう」
などと脅かす、とんでもない店です。

やんわりと脅かされた結果、ものすごい大金を払って買うことに。
さらに主食のミルクも、砂糖菓子も高価。
そして身につけさせる衣類や調度類も高価です。

でもなんでそこまで払ってまで入手するのか。
それは少女(プランツ)のおめがねにかない、プランツを手に入れることは
都市伝説と言われるほど稀有でラッキーなことだから。

主食はミルクと砂糖菓子ではありますが、むしろ「持ち主の愛情」が一番の栄養です。
愛情が不足するとミルクを飲まなくなり、枯れてしまいます。

波長が合わないのに無理やり買った(奪った)プランツも、目覚めないまま枯れてしまいます。

ですが、愛情いっぱいに世話をされたプランツはとても長生きします。
持ち主が年老いてもプランツは美しい少女の姿のままです。

プランツ・ドールに魅せられた人々

名前のない人間たち

プランツの持ち主は、たまたま店の前を通りかかって、買うはめになった客がほとんどですが
よそで見かけて欲しくなって来店、運よく波長の合うプランツとめぐり合う人もいれば
何度通いつめても全くカップリングに至らない人もいます。
プランツは、見た目がこんななので、欲しがる人間は男ばかりかと思いますがさにあらず。
持ち主は男女とも、老いも若きもいろいろいます。

また、持ち主としてではなく、その周辺の人間としてプランツと関わる人々もいます。

このシリーズでは、個々のプランツには呼び名やあだ名があったりなかったりしますが
登場する人間たちには一切名前がありません。

このことからも、この『観用少女』シリーズの芯はプランツたちであり、
プランツが最重要のモチーフであることがわかります。

そこそこ売れっ子だけどいろいろと中途半端なモデルが、親友に見切られ失意のときに出会ったプランツ。
それまで適当にこなしていた仕事っぷりが、プランツと暮らすことでがらっと意欲的になります。
自分だけに向けてくれる天使の笑顔を見るためにがんばる主人公。
プランツへの主人公のメロメロさが根っこにあるわけです。

『天使の役作り』プランツにメロメロの主人公

『観用少女(プランツ・ドール)②』川原由美子 朝日ソノラマ p136

プランツを手に入れることで、高額なローンやら高価なミルクやらドレスやらの必需品を賄うために働く必要が出てくるのですが、それが真面目に働くことにつながったりします。
さらにプランツの「自分だけ」に向けられる笑顔のために、より一層生活にハリが出て幸せになる、文字通り「ラッキードール」となるわけです。

極貧で余命少ない主人公が店のウィンドウで出会ったプランツ。店主は主人公に「昔盗難に合ったことがあってそれ以来保険に入ることにした」などと言い、主人公にプランツをこっそり連れ帰るよう促します。
人生で初めて自分を必要としてくれたプランツのために、死ぬまでどのように過ごしていたのかがうかがえるシーン。
プランツを育てるにはきれいな服や花やリボン、高価な調度品、栄養たっぷりの専用ミルク、とされてはいるのですが、それ以上に「愛情」が必要であり、それに勝るものはないことがこのコマからわかります。

『スノウホワイトpart2』主人公亡きあとに店に返されたプランツ

『観用少女(プランツ・ドール)①』川原由美子 朝日ソノラマ p94

もっともプランツも多種多様らしく、人間にいい影響を及ぼすプランツもいれば、ただ自分の美しさを維持する環境のみを追求するかなり自己チューなプランツもいます。
プランツに意思があるのかどうかはわかりませんが、植物が、自分の生きる環境を見極めて成長戦略を巡らせていると思えば、わりと自然な気もしますね。

プランツが芯で重要モチーフなのは確かですが、プランツを中心に悲喜こもごもの動きを見せる人間たちのストーリーは、明るくハッピーな展開もあれば、陰鬱で心をえぐるような展開もあります。
この漫画の一番の見せ場は、「プランツ・ドール」に魅せられた人々の、プランツによってクローズアップされる心情のドラマなのだと思います。

プランツにまつわる象徴的なエピソード

「天使の涙」プランツの流す涙が希少な宝石になる

プランツを普段泣かせるような環境は、愛情たっぷりとは言えないわけで、そんな中ではプランツは当然枯れてしまうのですが、
愛情たっぷりの中にも悲しい出来事に遭遇すると、プランツは涙を流します。
プランツが涙を流す、というシーンが本当にレアなのです。

その涙は高価なプランツよりも遥かに高額で取引される、希少な宝石となります。

「天使の涙」が欲しいと顧客に依頼された宝石商の男が、プランツの店に来て「売ってくれ」と言った時の店主のリアクション。あやしさ満載でうさんくさい限りの店主ですが、とてもプランツには愛情を持っている様子。
このあと、訳あって返品された最高級プランツ「白雪」のおめがねにかなうよう、宝石商の彼はどんどん変容していくことになります。

『スノウホワイトpart1』宝石商の男が「天使の涙」を求めて店に来る

『観用少女(プランツ・ドール)①』川原由美子 朝日ソノラマ p60

借金のカタになったプランツをたまたま世話する羽目になった主人公。
最初にプランツを見た時は「目ぇ開いてる」と言ってめっちゃビビっていて、世話ができず半分枯れさせかけるところでしたが、持ち主に捨てられたプランツを自分の境遇と重ね合わせて親身に世話をするうちに懐いていきます。
別の持ち主に引き渡すことが決まり、その別れのシーンでプランツが流す「天使の涙」。
プランツ自身よりも高価なその涙が、多くの人間をまたつないでいきます。

『ブルードール』プランツの涙するシーン

『観用少女(プランツ・ドール)②』川原由美子 朝日ソノラマ p21

「大人になる」育ってしまうプランツ

プランツの主食はミルク、時々砂糖菓子。
それ以外のものを与えると変質してしまいます。
変質するとどうなるか・・・「大人になる」のです。

高価すぎるプランツを出資者数人で共同育成するサークルのリーダー。
厳しく管理していたにもかかわらず、他のメンバーが勝手に食べ物やスイーツや酒など与えてしまったせいで、プランツは育ってしまい、サークルは空中分解。
その後偶然出会ったリーダーは、育ったプランツを妻にしていました。

『サークル』大人になったプランツを妻にした男

『観用少女(プランツ・ドール)③』川原由美子 朝日ソノラマ p66

ミルク以外のものを与える以外にも、大人になったプランツを想定して絵を描く、持ち主が老いて行き、それに合わせてプランツが成長してしまう等、プランツを少女ではなく成長した女性として扱った時、どうもプランツは育ってしまう傾向があるようで、シリーズの中には成長したプランツの姿が時々登場します。

「プランツのタネ」物議を醸すプランツの製造方法

プランツは植物なので、当然「種」らしきものがある、はずなのですが、プランツの製造方法については一切説明がありません。
ですがシリーズには、「天使の涙」よりもさらに希少で美しく、育つと珊瑚の花、水晶玉の実をつけ、その中にプランツが眠っているとされる「タネ」や、大人になったプランツが産む卵とか、プランツの亜種かもしれない「アクアプラン虫(チュー)」などが登場します。
もっともどれも噂の範疇を出ることはなく、謎は常にあいまいなままで終わりますが。

『プランツ・ドール』不可侵な少女の美しさ

朝日ソノラマのソノラマコミックス4冊のほかに、この装丁のNemuki+コミックスが3冊、シリーズの単行本未収録作品を含む愛蔵版が2冊出ています。

観用少女プランツ・ドール Ⅰ (Nemuki+コミックス) Kindle版 川原由美子

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『観用少女』というタイトルだけ見ると、なかなかにエロチックな方面に想像が行きがちですが、実はとてもストイックでプラウドフルな、不可侵な「少女」のお話です。
プランツはみな、人間が自分の中に持つピュアな部分、善なるもの、の象徴なのかもしれません。
「守りたい、この笑顔」と感じる部分はどの人も持っているもの。
それを圧倒的な可愛さ、美しさで表しているのがこの『プランツ・ドール』なのではないでしょうか。

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