開高健
1989年、58歳の若さでこの世を去った小説家、開高健。最近の若い人は知らない人の方が多いのかもしれませんね。しかし、このまま忘れ去られてしまうには余りのも惜しい作家です。
芥川賞をはじめとして多くの文学賞を受賞し、名作を数多く残しています。しかし、しかし、開高健の魅力はそれだけではありません。

開高健
酒を愛し、食を愛し、何よりも釣りを愛した作家です。世界各国、魚を求めて飛び回り、人生を大いに楽しんだ男なのです。そう、ヒトの何倍も。その生き方に人々は憧れました。
開高健の魅力。釣りの魅力を開高健の作品を通して見ていきましょう!
私の釣魚大全
先ず最初にご紹介したい作品は、1969年に発売された「私の釣魚大全」です。開高健は、1957年に発表した「裸の王様で第三十八回芥川賞受賞しています。「私の釣魚大全」は開高健にとって最初の釣りに関する作品集です。芥川賞受賞から12年。作家として脂ののってきた時期ですね。

私の釣魚大全
これはもう楽しい。釣りに興味がなくとも楽しめる極上のエッセイです。
エサとなるミミズを掘ることから始まり、メコン川でカチョックという余り聴きなれない魚を釣るまでの話。他にも井伏鱒二が鱒を釣る話などのエピソードも紹介されています。
それでは、魚釣りに関する開高健の講演の模様を聴いてみましょう。
優しい語り口ですね。しかし、確信に満ちている。思わず引き込まれてしまいます。
フィッシュ・オン
1971年、開高 健ファンの間で、釣り好きの間で必読の書といってもいい作品「フィッシュ・オン」が発売されます。これはもうバイブル、人生のバイブルです。
アラスカ、スウェーデン、アイスランド、西ドイツ、ナイジェリア、フランス、ギリシャ、エジプト、タイ、そして日本と、世界各国を一緒に旅をし、釣りに没頭している気分にさせてくれる一冊。

フィッシュ・オン
そこで出会った人、魚との心に沁みるエピソードの数々。人生は楽しまなきゃいかんのだなぁと、考えさせられます。と同時に疑似体験したような気にもなれるという優れものです。
「フィッシュ・オン」と直接関係はありませんが、食通としても知られていた開高健の釣りと食との関わり方がよく分かるドキュメント映像があります。
思いっきり釣りを楽しみ、釣れたらガッツリ食べる。こうでなくっちゃいけませんね。
オーパ!
ポルトガル語でびっくりしたときに使う感嘆詞、「オーパ!」。それをタイトルにした開高健の著書は1978年に発売されベストセラーとなりました。氏の代表作といってよいでしょう。

オーパ!
アマゾンでの様々な魚たちとの格闘の記録です。1978年とはいえ、今のようにそう簡単に海外旅行が出来る時代でもなく、ましてや魚を求めてアマゾンまで赴くというのななかなか前例のないことです。
それだけにワクワクする。ピラニアって凄いんだということがリアルに伝わります。只の釣り師ではない。さすが芥川賞作家です。
アマゾンでの魚釣りといわれても、ピンとこないですもんね。
ヒットすると続編が作られるというのは、よくあることです。例え作家が嫌がっても出版社が半ば強制的に書かせる。それも良く聞く話です。「オーパ!」の場合も続編が出されるわけですが、開高健は自ら進んで取り組んだようですね。
事実上「オーパ!」の続編といえる「もっと遠く!南北両アメリカ大陸縦断記・北米篇」と「もっと広く! 南北両アメリカ大陸縦断記・南米篇」を1981年に朝日新聞社より発表した後、満を持して1983年に集英社から「海よ、巨大な怪物よ オーパ、オーパ!!アラスカ篇」を出します!

海よ、巨大な怪物よ オーパ、オーパ!!アラスカ篇
巨大。剛力。剽悍。孤高。聡明。 それがキング・サーモンである。 そういう魚である。 川の王である。 海の生物がとても荒々しく しかし 緻密にく描かれています。
https://www.amazon.co.jp/%E6%B5%B7%E3%82%88%E3%80%81%E5%B7%A8%E5%A4%A7%E3%81%AA%E6%80%AA%E7%89%A9%E3%82%88%E2%80%95%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%83%91%E3%80%81%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%83%91-%E3%82%A2%E3%83%A9%E3%82%B9%E3%82%AB%E7%AF%87-%E9%96%8B%E9%AB%98-%E5%81%A5/dp/4087724298海よ、巨大な怪物よ―オーパ、オーパ!! アラスカ篇 | 開高 健 |本 | 通販 | Amazon
何だかよく分かりませんが、開高健は大きな魚を求めて釣りを、旅をするんですね。キングサーモンもデカイ!入手は難しいかとは思いますが、キングサーモン釣りに挑戦した記録。釣りを通して発せられる開高語録が楽しめるDVD「開高健~河は眠らない~」はお勧めですよ。

開高健~河は眠らない~
「海よ、巨大な怪物よ オーパ、オーパ!!アラスカ篇」から2年。1985年に出版されたのが「扁舟にて オーパ、オーパ!!カリフォルニア・カナダ篇」です。

扁舟にて オーパ、オーパ!!カリフォルニア・カナダ篇
砂漠の巨大湖でブラック・バスを、山麓の大河でスタージョンに挑んでします。今でこそ日本各地で釣ることが出来るブラック・バスですが、当時はまだまだ知る人ぞ知る存在でした。スタージョンとなると当時も今も耳慣れないですよね。怪魚です。怪魚。
さて、それから更に2年後の1978年には「王様と私 オーパ、オーパ!!アラスカ至上篇」と「宝石の歌 オーパ、オーパ!!コスタリカ篇スリランカ篇」の2冊を世に送り出します。

王様と私 オーパ、オーパ!!アラスカ至上篇
王様(キング)と私―オーパ、オーパ!!アラスカ至上篇 | 開高 健, 高橋 〓 |本 | 通販 | Amazon

宝石の歌 オーパ、オーパ!!コスタリカ篇スリランカ篇
スリランカの密室、宝石商の金庫は開かれ、息をのむような巨石、名石、奇石の数数が転がり出る。コスタリカの束の間の晴れ間、小説家はジャングルの巨魚に挑む。
https://www.amazon.co.jp/%E5%AE%9D%E7%9F%B3%E3%81%AE%E6%AD%8C%E2%80%95%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%83%91%E3%80%81%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%83%91-%E3%82%B3%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%AA%E3%82%AB%E7%AF%87%E3%82%B9%E3%83%AA%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%AB%E7%AF%87-%E9%96%8B%E9%AB%98-%E5%81%A5/dp/4087726282https://www.amazon.co.jp
そして2年後の1989年。開高健が亡くなった年、シリーズ最終作となる「国境の南 オーパ、オーパ!!モンゴル・中国篇」が出版されました。

国境の南 オーパ、オーパ!!モンゴル・中国篇
国境の南―オーパ、オーパ!!モンゴル・中国篇 | 開高 健, 高橋 昇 |本 | 通販 | Amazon
最後まで携わっていたシリーズですからライフワークと呼んでもいいでしょう。最後まで釣り師であり、作家であった。世界中を旅し、人生を謳歌した。享年58。最高の人生、思い残すことは何もなかったのではないでしょうか?いや、もっと旅をしたかったのかな?もっと、もっと釣りをしたかったのかもしれませんね。
人生の達人、開高健。その代表作である「オーパ!」シリーズ。若い人にこそ知ってもらいたいです。忘れ去られてしまうには余りにも惜しい人物、余りにも惜しい作品。