ミドルエッジ読者の皆様で1971年から72年放送「帰ってきたウルトラマン」をご覧になっていた方はどのくらいいるでしょうか?
当時リアルタイムで観ていた人、70年代後半のウルトラマンブームのなか再放送で観ていた人。様々にいらっしゃることと思います。
今回、日本コロムビアから発売された「帰ってきたウルトラマン MUSIC COLLECTION」は、ファン必携の圧倒的ボリュームを収録した作品。
オリジナルBGM、EXTRA楽曲、劇中で使用された楽曲など「帰ってきたウルトラマン」の音の世界のみならず、まさに放映当時の音楽シーンが鮮やかに蘇る構成となっています。
今回、作品の発売を記念して、本作の企画と内容の制作をした高島幹雄さんにお話を伺って参りました。
「帰ってきたウルトラマン MUSIC COLLECTION」リリース
【収録内容】
「DISC-1」
帰ってきたウルトラマンオリジナルBGMアーカイヴス。
「帰ってきたウルトラマン」オリジナルBGMを、CD冒頭のオープニング再現部分以外はMナンバー順に収録。(94トラック)
「DISC-2」
追加録音音楽、他作品使用音楽、別テイク集。
未採用主題歌「戦え!ウルトラマン」を添えた仮想オープニングで始まり「帰ってきたウルトラマン」の追加録音曲、劇中に使用された冬木透作曲「ウルトラセブン」やテレビドラマのオリジナルBGMを使用話数ごとにセレクトして構成。
オリジナル・カラオケの他、初のワンダバ「MATのテーマ」誕生の時を体感する音源など、Mナンバーのクレジット音声付きでBGMを厳選収録。
「DISC-3」
ソング・コレクション+効果音集。
主題歌シングル・レコードや企画アルバムの収録曲、劇中使用されたGSや歌謡曲、主題歌を歌う主演の団次郎が本作の前年(1970)に日本コロムビアから発売したシングル2枚、さらに効果音も収録。
本作を企画した高島さんにインタビュー!

高島幹雄さん

高島さんは映像・音楽ソフトメーカー大手バップのご出身です。「ミュージックファイルシリーズ」などを手掛けてこられました。
=VAP= Music File series Official Site

入社3年目くらいの90年から伝説的TVドラマ『傷だらけの天使』や『俺たちの勲章』の初ビデオ化があって、92年に今度は『太陽にほえろ!』を初ビデオ化するという話があったんです。
そこで、バップでもこのあたりのTVドラマの音楽を集めたCDが出来ないかな?と社内で相談をしたんです。そして出来たのが「ミュージックファイルシリーズ」の最初の10枚でした。
「◯◯ミュージックファイル」というタイトルでシリーズ化しましたが、そのネーミングのアイデアの元ネタはそれ以前にキティから発売されていた『うる星やつらミュージック・ファイル』です(笑)。

さかのぼると、実は高校時代からコロムビアさんにはバイトなどでお世話になってましたが、新卒ではバップしか受からなくて、そこに新入社員として入った頃は雑誌媒体担当の宣伝マンとして、菊池桃子さんのラ・ムーとか、杉山清貴さんなどの告知記事を載せて貰えるようにという仕事をしていました。
CHA-CHAという男性ユニットもいましたね。そのうち、ドラマ『前略おふくろ様』や『熱中時代』のビデオパッケージ化が始まり、徐々にこういった作品が好きで、学生時代にはLPレコードのサントラ盤制作に関わっていた話を、社内で人を選んで(笑)話すうちに、同じ社内でも全く違うジャンルの仕事からだんだんこっちに近づいてきたんですね。

バップといえば、個人的には全日本プロレスのVHSをよく購入させていただきました(笑。実に多岐に渡る作品を送り出していましたよね。

プロレスのVHSはプロレス愛がある後輩が担当してましたね。「ミュージックファイルシリーズ」を始める前のことですが、90年頃は昭和のアニメや特撮主題歌CD化が進んでいた時代でもあったんですよ。
でもまだCD化されていない歌も多く、そんななかで「レインボーマン」、「侍ジャイアンツ」、「エースをねらえ!」などの主題歌を初CD化する商品を提案して、自分はこの頃、映像商品の宣伝部署にいたので、プロレスCDも担当の先輩ディレクターに面倒を見てもらって、一緒に作りました。

なかでも「ミュージックファイルシリーズ」にはお世話になりました!

「ミュージックファイルシリーズ」は最初の「伝説のアクションドラマ音楽全集」10枚は、利益が出るくらいに売れたので、その後も、主に昭和時代でサントラ盤が出ていなかったTVドラマや映画の音源を権利関係など調整しながらCD化していました。
日テレに限らず『Gメン'75』、『プレイガール』など他局のドラマや、『侍ジャイアンツ』などのアニメ、『仁義なき戦い』などの映画にも手を広げてBGM集を出しましたね。
ライターさんにお出し出来るギャラの予算があるか自分が書けない作品以外は、当時から自分でライナーノーツやインタビュー原稿を書いたり、ときには声をかけて頂いたTV、ラジオ、雑誌に出て告知したりしていました。
※10作品のラインナップ※
伝説のアクションドラマ音楽全集 太陽にほえろ!MUSIC FILE 東宝レコード音楽復刻盤 | 音楽:大野克夫 | 1992/9/21 |
伝説のアクションドラマ音楽全集 探偵物語 MUSIC FILE | 音楽:SHOGUN | 1992/9/21 |
伝説のアクションドラマ音楽全集 あぶない刑事 MUSIC FILE | 音楽:志熊研三・小路 隆ほか | 1992/9/21 |
伝説のアクションドラマ音楽全集 もっとあぶない刑事 MUSIC FILE | 音楽:志熊研三・小路 隆ほか | 1992/9/21 |
伝説のアクションドラマ音楽全集 ジャングル+NEWジャングル MUSIC FILE | 音楽:林 哲司 | 1992/9/21 |
伝説のアクションドラマ音楽全集 傷だらけの天使 MUSIC FILE | 音楽:大野克夫ほか | 1992/11/1 |
伝説のアクションドラマ音楽全集 俺たちの勲章 MUSIC FILE | 音楽:トランザム | 1992/11/1 |
伝説のアクションドラマ音楽全集 大追跡 MUSIC FILE | 音楽:大野雄二 | 1992/11/1 |
伝説のアクションドラマ音楽全集 俺たちは天使だ!MUSIC FILE | 音楽:SHOGUN | 1992/11/1 |
伝説のアクションドラマ音楽全集 プロハンター MUSIC FILE | 音楽:クリエーション | 1992/11/1 |

そしてウルトラマンシリーズとの出会いが訪れます。

94年3月に日テレで『ウルトラセブン 太陽エネルギー作戦』という単発ドラマが放送されて、そのビデオ商品をバップで発売出来たことから、円谷プロダクションと縁ができました。そこで、ウチの会社…って…辞めて10数年ですけど(笑)、バップでもウルトラマン関連のCDを出したいと、95年3月には『円谷プロBGMコレクション ウルトラマン・決戦 ミュージックファイル』を発売しました。
これは『ウルトラQ』から『ウルトラマンレオ』までの戦いや防衛チームのテーマBGMだけを集めたCDです。ウルトラのBGMでベスト盤を出したら良いというアイデアをくれた社内の後輩からは、CDの最後の曲は「星空のバラード」にして欲しいと言われたので本当にそうしました(笑)。
他に2枚、この時に単独アルバムが市場になかった2作品を『ウルトラマンA ミュージックファイル』と『ウルトラマンT(タロウ)ミュージックファイル』として全部でCD3枚を同時発売しました。
「ウルトラマンシリーズ MUSIC COLLECTION」

バップを離れた後は多方面でご活躍される高島さんですが、日本コロムビアのウルトラマンシリーズMUSIC COLLECTIONも手掛けてきました。
ウルトラマンシリーズCD紹介サイト | 日本コロムビア

すでに発売中の『ウルトラマンA』、『ウルトラマンタロウ』といった各CD3枚組は、放送45年のタイミングで企画、制作させて頂きました。AやタロウのCDはそれまでは、1つのトラックに複数のBGMを収録する形で編集されたものしかなくて、好きな曲、聴きたい曲を探すのに不便でした。なので、最近の3枚組は出す意味があると思ってました。
『帰ってきたウルトラマン』は、短い曲も全部聴きたい曲をサーチしやすい1曲を1トラックの形で編集、収録した『帰ってきたウルトラマン ミュージックファイル』を99年に出したものですから、その点でニーズがあるのかが疑問で、放送45年の時にはコロムビアさんでの再CD化は考えなかったんです。
その後、TwitterでこういうCDはニーズがあるかな?とかつぶやいてみたら、比較的多めの反応を頂いたのと、50年までは待てないかなと思いました。順番で考えれば、今年はウルトラマンレオが45年でもありますが、『帰ってきたウルトラマン』を先に提案、制作させていただきました。今回の3枚組で約20年ぶりに『帰ってきたウルトラマン』のCDを作らせて頂く縁があって、内容を大幅に更新出来て良かったかなと思います。

帰ってきたウルトラマン MUSIC COLLECTION

収録楽曲数もさることながら54ページも及ぶブックレットに驚きました!

ブックレット

ブックレットには作品の音を楽しむことが出来るよう、可能な限りの情報を詰め込んでいます。またジャケットやブックレットに用いた写真は夕景のモノが多いんです。それは帰ってきたウルトラマンが夕陽の中で闘うのが印象的だったから。
その回数は実際はそう多くは無いのですが、例えば、ウルトラセブンと初代ウルトラマンが帰ってきたウルトラマンを助けに来る2話連続の回といった印象深いエピソードに夕方に戦うシーンがあったんです。その回の写真は封入ブックレットの表紙と裏表紙にしました。

DISC-1 帰ってきたウルトラマンオリジナルBGMアーカイヴス

曲目にある「M-〇〇」とは制作当時に付けられていた音楽の曲名代わりの記号でM(ミュージック)ナンバーというもので、それをCDもトラックリスト(曲目表)にそのまま載せています。
例えば1曲目の「M-63」は、番組冒頭でキラキラと光が舞う中から番組のロゴが現われるメインタイトルの短い音楽です。その後に実際の放送ではCMを挟んで主題歌が流れるのですが、番組を見ていたのと同様な感覚で聴けるようにCDの最初に添えています。
BGMを並べた部分はMナンバーの順番ですので、1曲目に入れたM63は、同じ音楽が2回入ることになりますが、番号順収録にしたBGMの並びの中にも敢えて収録しています。
制作開始当初に追加録音した曲についてもMナンバー順に並べてあります。
なかには録音されなかったものとしての欠番もありますし、どの場面で使われたのか、そういったものを可視化するための役割をブックレットが担っています。

DISC-2 追加録音音楽、他作品使用音楽、別テイク集

『帰ってきたウルトラマン』には、この番組の音楽を手がけた冬木透さんが作曲した『ウルトラセブン』のオリジナルBGMも使われていたんですよ! DISC-2は特定の回のために追加で録られた曲に加えて、セブンや他の番組のBGMから使用頻度の高い曲をセレクトしています。
また最初の部分は「仮想オープニング」と題して、「戦え!ウルトラマン」を収録しています。この歌は、主題歌制作の時に、すぎやまこういちさんが2種類作曲して録音までしてから、スタッフが1つを選ぶという時に、採用されなかったほうなんです。
もしもこのパターンが採用されていたら?なんて考えることも楽しいと思います。

あのワンダバが誕生する瞬間を感じることが出来る収録音も入っています。コーラスの人が練習している声も聞こえます!
オープンリールテープで録音していた時代ですから、録音開始や停止のボタンを押す際の音もカットしないでそのまま入れました。そういったアナログテープ時代ならではの音も楽しんでいただきたいです。

DISC-3 ソング・コレクション+効果音集

なぜかザ・ドリフターズやザ・ゴールデン・カップスの曲が収録されていますが、これは作中で若者のキャンプファイアや、郷隊員が休憩中のラジオから流れてくる歌として劇中に使われた楽曲を収録しています。
PYGの「花・太陽・雨」は、第34話「許されざるいのち」という回の重要なシーンで使われています。途中からまるで昭和歌謡のコンピレーションCDを聴いているような感じになると思いますよ(笑)。

この情報量はまさにファン必携のCDではないかと感じます!手にされたファンの方におススメの聴く順番はありますか?

聴きたい曲から聴いても、最初から通して聴いても良いように作っています。
また現代ならではですが、パソコンに音楽を取り込んで、第何話で使われた曲順みたいに並べ替えて聴いてみるといった遊び方も出来ますね。
高島さんにとっての「帰ってきたウルトラマン」

帰ってきたウルトラマンが夕景に映えるウルトラマンだというのは今まで気が付きませんでした!
また各ディスクの収録曲にも並々ならぬこだわりを感じます。

今回の『帰ってきたウルトラマン』だけでなく、『ウルトラマンA』や『ウルトラマンタロウ』の3枚組CDでもそれぞれにこだわりながら作ったのですが、『帰ってきたウルトラマン』が新番組だった頃は、小学校に入学した年で、ウルトラマンを初めて、再放送ではなくリアルタイムで見た作品だったから、特に思い入れは強いですね。当時は子供心に、初代ウルトラマンのハヤタ隊員が出ていない新しいウルトラマンなのに、「帰ってきた」とは、変なタイトルだなあと思っていました(笑)。
音楽面では、特に第1話の最初に出てきたBGMがワンダバコーラスのMATのテーマ曲だったので、TVを見ていて本当にインパクトがありましたね。これはワンダバにインパクトを受けた世代に向けたCD BOXなんです。
子供の頃に好きで観ていた人、後から再放送、レンタルビデオやDVDなどで観て音楽が気になった人には、是非聴いて頂きたいですね。

楽曲のみならず映像、ブックレットを揃えて楽しみたい仕上がりとなっている「帰ってきたウルトラマン MUSIC COLLECTION」。
ワンダバ世代の皆様、ぜひ聴いてみてはいかがでしょうか?
高島さん、本日はどうも有難うございました!
高島さんのツイッターはコチラ!
高島幹雄'19(@micktk)さん | Twitter