【訃報】菅井きんさん亡くなる
女優として名脇役として知られる菅井きんさんが8月10日に亡くなっていたことが事務所により公表された。
通夜、葬儀はすでに行われており、お別れ会などが開催される予定は今のところ無いという。
菅井きんさんの活躍
菅井きんさんは1926年生まれ。《昭和》が始まるのは1926年12月25日からなので、厳密には大正15年生まれということになる。東京がまだ《東京府》と呼ばれていた時代だ。
OLとしての生活を経てから昭和21年《劇団俳優座》に所属。その後、監督にスカウトされて映画に出演。1951年の「風にそよぐ葦」が映画デビュー作品となった。

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名脇役としての活躍はこの頃からすでに始まっており、例えば1954年の初代「ゴジラ」では《代議士》として出演している。これは出番こそ多くないものの個性と迫力あるキャラクターで、憶えているという方がけっこうおられるようだ。
1973年になると「必殺仕置人」シリーズに準レギュラー出演。中村主水の姑《中村せん》役である。
こちらも物語の中心になったり殺陣に登場したりという事は少ないものの、話の最初や最後で「むこ殿!」と叱りつける台詞は多くの人の印象に残っている。
wikiによると、
という話まであったらしい。もっともこの件は、娘さんが結婚したことで降板しなくても良くなった――というオチがついている。
また「太陽にほえろ!」でもジーパン(柴田刑事)の母親という、主人公に近い役を演じている。

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1994年の「家なき子」、2000年のドラマ「トリック」などでは悪役的な立ち位置にあり、その演技力と迫力を十分に見せつけてくれた。
《善も悪も抱えている》のような多面性のある人物がひじょうに巧みで、2006年の大河ドラマ「功名が辻」の豊臣秀吉の母親(大政所)役はキャスティングとしてクリーンヒットだったろう。
彼女は大河ドラマとよく関わっていた。
1968年の「竜馬がゆく」から2010年「龍馬伝」まで、合計6本の大河ドラマに出演している。なかには「樅ノ木は残った」のような傑作大河も含まれている。

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受賞歴としては1984年の報知映画賞最優秀助演女優賞、翌85年の日本アカデミー賞最優秀助演女優賞がある。そのキャリアの豊かさは日本でも指折りで、1990年の紫綬褒章、1996年の勲四等宝冠章も受章。
その経歴の豊かさに反して、主演であった事は一度しか無い。
それは2008年「ぼくのおばあちゃん」での事で、当時の《世界最高齢映画主演女優》としてギネス記録になっていた。

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