『ガンプラり歩き旅』その75 ~1986年に既に存在していた“リゲルグ”という名の「究極の『アタリ』のゲルググ」~

『ガンプラり歩き旅』その75 ~1986年に既に存在していた“リゲルグ”という名の「究極の『アタリ』のゲルググ」~

ガンプラ! あの熱きガンダムブーム。あの時代を生きた男子であれば、誰もが胸高鳴り、玩具屋や文房具屋を探し求め走ったガンプラを、メカ単位での紹介をする大好評連載。 新展開では『機動戦士Zガンダム』(1985年)『機動戦士ガンダムZZ』(1986年)『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』(1988年)まで、旧キットから最新のHGUCまで、商品の発売順に、再現画像と共に網羅紹介していこうという趣向になっております!


.

マシュマーのザクⅢ改と共に、ネオジオン反乱軍を相手取って、獅子奮迅の活躍をする、イリアのリゲルグ!

私、市川大河が、書評サイトシミルボンで連載している、 『機動戦士ガンダムを読む!』での、 再現画像で使用しているガンプラを、 古い物から最新の物まで片っ端から紹介していこうというテーマのこの記事。

今回紹介するのは、元々はモビル・スーツ・バリエーション、MSVのゲルググキャノンの金型を流用して、『ガンダムZZ』に登場する新型モビル・スーツとして再生された、しかし、キットの中身をよく見ると、執念にも似た「ゲルググへのリベンジ」が込められた、1/144 リゲルグをご紹介!

リゲルグ 1/144 14 1986年9月 700円(機動戦士ガンダムZZ)

.

リゲルグのボックスアート。キットの新規パーツにはビーム・ライフルも入っているのに、パッケージではあえてサーベルしか持たせていない辺りが確信犯(本文参照)

大河さん以前『機動戦士ガンダム』(1979年)のゲルググのガンプラに触れて「2018年の現在に至るまで“ドムにハズレなし。ゲルググに当たり無し”が続いている」と記したことがあった。
それは、MGやHGUCのゲルググにも言える共通点なので、何か呪いのようなものでもゲルググにはかけられているのだろうかと思いさえしたのだが、実はその呪縛からのエグゾダスは、既に1986年に解かれていたのだと、このキットで知ることになった。

.

キットのランナー一覧。当時の1/144としては4枚プラスアルファは大盤振る舞いだが、元になったゲルググキャノンのランナーを外さずに、リゲルグ用ランナー1枚(画像左上)を足したからである


まず、今回紹介するリゲルグという機体とガンプラのバックボーン解説から入ろう。
『ガンダム』のガンプラは、1982年から1983年に入るタイミングで、それまでは「アニメ及びアニメの設定で描かれたモビル・スーツをプラモデル化する」という当たり前のコンセプトがあったのだが、一つには、まだまだ「新製品を出すたびに大ヒット」が続いているが、アニメ登場のメカはほぼ商品化し尽くしてしまい、しかしシリーズを終わらせるわけにはいかないという営業面と、一つには「バンダイメインのプラモデル商品展開は、リアルタイムテレビ放送中の『戦闘メカザブングル』(1982年)『聖戦士ダンバイン』(1983年)『銀河漂流バイファム』(1983年)『重戦機エルガイム』(1984年)等の商品群をメインストリームにする」というのがあり、また一つには「ガンプラにだけ食いついてきたミリタリースケールモデラーの、ニーズをかなえる仕様とクオリティを」というのがあって、バンダイはそれらリアルタイム放映ロボットアニメ商品群と並行する形で、『ガンダム』から派生した、オリジナルのモビル・スーツをキット化する、モビル・スーツ・バリエーション(以下、MSV)という商品を展開し始めた。

MSVは、その名の通り既存のモビル・スーツの、試作型や水中型、長距離支援型といった「if」をメインコンセプトに、ザクキャノンや高機動型ザクやプロトタイプガンダムといったモビル・スーツを商品化していった。
それらは、組み立て方もパーツの分割や精度が、よりスケールモデルに近くなり、その上で、初期ガンプラではかなえられなかった可動やプロポーションが改善される試金石として機能し、この時期の技術革新をベースにした技術論は、今のガンプラにも活かされているほどである。

.

完成したリゲルグ。まさにゲルググキットの究極系

一方で、今も書いたようにMSVは、初期ガンプラのリベンジを隠しテーマに持っていた。
例えば1/144 ザクマインレイヤー(1984年3月)は、バックパックをノーマルザクのパーツ(ちゃんとこの商品に含まれている)と交換すれば、事実上の「1/144 ザクVer.2」であったし、その直後の1/100 フルアーマーガンダム(1984年3月)は、フルアーマーを装着さえしなければ、ど真ん中直球の「1/100 ガンダムのリベンジ」であった。
この辺りは後々の今回の伏線にもなるのだが、要するにMSVは「単純にロボットプラモにハマった層」だけではなく「『ガンダム』という素材を触媒に、スケールモデル的な展開をプラモデルで展開する商品」を楽しむユーザーを育て、また他方で既存のガンプラのリベンジを、まだVer.2とかREVIVEとかいう発想もカテゴリもなかった時代に、別型とのコンパチで再生するという商品枠でもあったのだ。

.

リゲルグ制作後のランナー。ゲルググキャノンのパーツ一式が残るのは当たり前だが、リゲルグ専用ランナー(こっちの画像では右上)に、ポツンと残された「リゲルグ用ではない、ゲルググ用ビーム・ライフルのパーツ」に注目

そして1985年。
満を持して『ガンダム』の続編アニメ『機動戦士Zガンダム』が作られることになり、そこでは当然新型ガンダムをはじめとした新モビル・スーツが登場し、ガンプラ化される流れになった。
しかし、総監督の富野由悠季氏の意向により、『Zガンダム』は、ありがちなPart2、続編的な作り方ではなく、あえて前作と新作の間に、キャラもメカも世界観も、7年というミッシングリンクを作ることで、後々ガンダムというビジネスがそこを再利用できる計算を作っていた(そしてその目論見は見事に今現在でも成功している)。

そうなると、永野護氏、藤田一己氏、小林誠氏らを得た『Zガンダム』のメカ絵巻は、決して『ガンダム』の、レベルの低い直系ではなくなってしまい、2作品の隙間を埋めるはずのMSVが、パラレルワールド的な立ち位置になってしまいがちになる。

ガンプラビジネスへの理解も深い富野監督は、そこへの配慮も見せた。
『Zガンダム』作品展開の中で、おおまかに新ガンダム世界観が描けたタイミングで、あえて画面の端々にMSVを登場させることで、「二階へ上げられて梯子を外され」かけていたMSVファンやユーザーをレスキューし、『Zガンダム』という世界観へしっかり取り込んだのだ。
それはMSVファンだけではなく、出資者バンダイへの気遣いでもあり、その演出サービスは、つまりMSVのモビル・スーツが『Zガンダム』の登場メカでもあるというアリバイも産み、バンダイが既存のMSVのガンプラを、箱だけ変えて『Zガンダム』のシリーズのガンプラとして売り出す口実を与える。
実際、1/144でザクキャノン、グフ飛行試験型、ザクタンク、ザク強行偵察型、ジムキャノン、ジムスナイパーカスタム等が、MSVからピックアップされて『Zガンダム』ガンプララインナップの水増しに貢献した。

.

正面から見たリゲルグ。肩のバインダーがキュベレイを意識していることは一目瞭然

そのビジネスプランは見事に成功し、『Zガンダム』終了翌週から始まったさらなる続編『機動戦士ガンダムZZ』(1986年)でも踏襲されることになる。

リゲルグの話まで、まだあと少しマクラがある。
『Zガンダム』での、MSV金型再利用ガンプラの成功を踏まえた『ガンダムZZ』のガンプラ戦略であったが、当初からそうした「お手軽ビジネス」がいつまでも通用するとは、アニメの現場もバンダイも考えていなかったらしい。
しかし、『ガンダムZZ』ガンプラは、初動でR・ジャジャとハンマ・ハンマで「やらかして」しまったため、それはすぐさま影響をもたらし、直後の1/144 No.7のZZガンダムとN0.8のガ・ゾウム(1986年8月)以降「既存のガンプラの金型を流用せず、完全新規のガンプラ」は、No.16のドライセン(1986年10月)まで一切出なくなってしまった。
そこでは、MSVの金型流用もあったが、アイザックやガズR/Lのように、『Zガンダム』ガンプラの金型流用も含んだ、コスト削減の賜物であった(結果、ガンプラ化は当時されなかったが、リック・ディアスの金型流用前提のシュツルム・ディアス等のデザインも、この時期生み出されている)。

.

サイドビュー。肩のバインダーの大きさに気づかないと、ゲルググのサイドビューと見間違えてしまいそうになる

ここでようやくリゲルグの話題になるのだが。
そういった諸々を含めて、1/144 リゲルグは『ガンダムZZ』ガンプラシリーズのNo.14として1986年の9月に発売されたのだが、その金型は基本的に、1983年9月にMSVシリーズNo.13で発売された、1/144 ゲルググキャノンのものが使われている。
リファインデザイン的には、一年戦争でのジオンのエース量産型だったゲルググをベースに、ネオジオンの女性統治者、ハマーン・カーンの乗るキュベレイの両肩の巨大なバインダーに似せたアーマーをつけることで、『ガンダム』と『ガンダムZZ』のジオンイメージの橋渡しにして、なおかつ機動力に秀でた新型モビル・スーツとしてイメージさせるというコンセプトは、基本的に悪くない発想であったと思う。
アニメ劇中でも、あえてイリア・バジムという女性パイロットを乗せることで、女性統治者ハマーンのキュベレイのローコスト版のイメージにもつなげるとと共に、初期はギャグキャラだったマシュマーが乗る、いかにもジオンらしいザクⅢ改の、さらにジオンらしいザクグリーン濃淡カラーの機体に対して仕える構図で、ジオン的な構図に貢献したとも言える。

ここで先にすっとぼけて(笑)、商品としての1/144 リゲルグのガンプラの仕様を表層的に解説すれば。
上記したように、元はMSVのゲルググキャノンに、リゲルグとしての記号用のパーツをならべた新規ランナーを一枚追加しただけの仕様であるため、1986年新発売扱いのガンプラにも拘わらず、ポリキャップが採用されていないという欠点をいきなり抱えている。

.

バックビュー。ゲルググではむしろ何もなかった背中に、仰々しいバックパックが付く

また、リゲルグ用の新規ランナーが一枚追加はされたが、元のゲルググキャノンのランナーは全て遺されているので、このキットを買ったユーザーは、これをゲルググキャノンとして作ることも可能ではある(そんな酔狂な人がいたかどうかはともかくとして)。しかし、その酔狂さが実は、このキット最大の隠しポイントの確信犯に繋がっているのであるが……解決編はまだもうちょっと後。

リゲルグのリファインデザイン自体は、肩のキュベレイ風大型バインダーと、高機動バックパック以外は、あえてゲルググそのままである。
このキットをHGUCに手が慣れた今の時代に組み立ててみると、なるほど、バンダイはMSV時期にはとことん、スケールモデラー向けにガンプラを開発していたのだということが改めて分かってくる。
細かいパーツ分割、スリッパや膝頭のひし形などの、グレーに塗られるべき部分が、梨地で成型されているなど、ミリタリーモデルテイスト全開である。
その上で、可動の方に目をやると、確かにポリキャップこそ使われてはいないものの、可動の為の新解釈や新技術が、そのほとんどが肩の可動に集約されているので驚いた。

.

肩関節とバインダー。別個に可動して見栄えも維持する独特の構造は、HGUCにはない模型的テクスチュアである

確かに1/144 旧キットゲルググの最大の欠点は、潰れた頭や太ったプロポーションと共に、接着された肩アーマーのせいで、せっかくの可動腕が全く活かせなかったところにあったのだが。
今回のリゲルグ(=ゲルググキャノン)は、まるでそこへの復讐の権化のように、肩の可動に技術力の殆どを注ぎ込んでいる。
元々ゲルググの肩アーマーは、直接ボディに接続されているのではなく、一度蛇腹のジョイントを経て繋がっているのだが、旧キットは馬鹿正直に、この蛇腹を再現した結果、肩アーマーが動かなかったというわけだ。
逆を言えばイマドキのHGUC版ゲルググ等は、この蛇腹自体の存在をなかったことにして、楽をしている。

.

肘の曲がり角度は浅いが、手首は『ガンダムZZ』他キットに準拠して可動指の物が新造されている

もっとも、2018年の今であれば、KPSや多彩なポリボールジョイントなどを使って、蛇腹がありのゲルググの肩を1/144サイズで再現することも簡単なのだろうが、あろうことかこのゲルググキャノンは、1983年というガンプラ初期の段階で、その蛇腹を逆に活かして、2軸の(プラ素材だが)可動軸を仕込むことで、肩が蛇腹部分と、上腕付け根部分の2か所で開き、さらに蛇腹付け根でしっかり回転し、さらに肩アーマーが(リゲルグの場合は肩バインダーが)独立して動くという、驚異のギミックを仕込むことに成功してしまった。その恩恵で、このキットでは両肩が、左右に水平以上に上げられるHGUCレベルに達している。

.

バインダー内部も作り込まれていて、スラスターバーニアが並べられていて情報量がここだけ落ちるということもない

やはりバンダイも、当初の1/144 ゲルググの出来の酷さとユーザーからの酷評に、相当反省をしていたのだろう。
下半身等は、足首も膝も平均的な可動に収まっているのだが、肩の可動に関してだけ、異常なほどに拘りと進化の跡が見受けられるのだ。
また、今でこそアニメロボットの常識でもある「関節部分だけが装甲と違うパーツ」という概念は、絵的には『ガンダム』でも、既にガンキャノンや、ゲルググの膝などでその表現が始まっていたが、このキットでは肘関節部分も別パーツ化(しかも細かいモールド入りで)することで、上腕ロールを可能にしている。

.

開脚は、今の目で見ると優秀ではないが、この時期のハンマ・ハンマやR・ジャジャの流れで見ると及第点である

多分おそらく、1983年当時、1/144 ゲルググキャノンは、1/144 ゲルググへのリベンジとして開発されたのだろうし、そのリベンジは見事に果たされていると言ってもよかった。
しかし、ゲルググキャノンの場合、バックパックが交換可能だったザクマインレイヤーとは違い、頭部のデザインが元のゲルググからはアレンジ変更されているため、バックパックを外しただけでは、ちゃんとした「1/144 ゲルググ」にはなりはしなかった。
また武装も、ビーム・ナギナタのパーツは入っていたが、長距離支援用として開発されたキャノンの設定があるため、元のゲルググが手にしていたビーム・ライフルのパーツは入っていなかった。
要するに、どこまで行ってもこのキットは、あくまでゲルググキャノンであり、バックパックを外しても、「ライフルを持っていない、顔の違うゲルググ」以上にはならなかったというのが当時の現実であり。
だからだろうか、ゲルググキャノンの素晴らしすぎるリベンジは、当時あまり話題にならず、ザクマインレイヤーやフルアーマーガンダムほどには、アニメ版ガンプラオンリーファンの手には届かなかった。

それから3年。
『ガンダムZZ』で要所をリファインされて、ゲルググキャノンはリゲルグとして再生された。
リゲルグは、ゲルググキャノンとは違って、顔は元のゲルググそのままである。
アニメ設定的にゲルググと違うところは、肩の大型バインダーとバックパックの他は、その頭部と、前腕に付くミサイルランチャー、あとはビーム・サーベルとビーム・ライフルが当時なりの最新型にデザインリファインされていたぐらいか。

そしてこのキットは、元のゲルググキャノンのランナーを全て残してあるので、元のゲルググ用の肩アーマーも、前腕の追加パーツも残されている。
その上で、新たに追加された「ゲルググそのままの頭部」これが何を意味するか?

.

おそらく歴代キットの中で、もっとも優秀で出来の良い「ゲルググの頭部」モノアイスリットが別パーツなのもポイントが高い

少しわき道にそれるが、ここでこの、リゲルグの頭部の出来の素晴らしさにも触れておかなければなるまい。
このゲルググ頭部(正確にはリゲルグ頭部)、80年代のキットでありながら、首が回転だけではなく、上下に稼働するほか、「顔のパーツ分割が、元のデザインの装甲分割に沿っているので、合わせ目消しがいらない」「顔のモノアイレールが内蔵パーツで、頭部前面にモノアイスリットが空いている」という、まさにイマドキのHGUC仕様そのままを、30年前にやってのけた、恐るべきキットであった。

.

その上、まるでイマドキのHGUCキットのように、頭部は回転するだけではなく、上下可動も可能になっている。この頭部と、ゲルググキャノン用パーツの肩を組み合わせれば……?

話を戻そう。
先ほども書いたが、この「1/144 リゲルグ」での新規追加ランナーは一枚。
先ほども書いたが、リゲルグのビーム・ライフルは、時代性に合せて新型の物がアニメ劇中で使用されている。
しかし、「リゲルグ用の新規追加パーツランナー」になぜか、「旧『ガンダム』でゲルググが使用していたビーム・ライフル」のパーツが入っており、むしろなぜかリゲルグ用のビーム・ライフルパーツが入っていない。「これ」は何を意味するのか?

.

オプション。ここで紹介するのは「あえて」ビーム・サーベルだけ。理由は本文を参照

名探偵、皆を集めて「さて」と言い。
さて、皆さん。お分かりの方ももういらっしゃるでしょう。
ゲルググは、もともとバックパックがなかったモビル・スーツ。
そしてゲルググキャノンのランナーには、ゲルググ用の腕アーマーと肩アーマーとビーム・ナギナタがあるが、顔が違っていてライフルがない。
一方、リゲルグのキットには、リゲルグとしての「ゲルググと同じ顔」が入っていて、なぜか「リゲルグのものではない、ゲルググのライフル」が新規追加されている。
ここまで書けば、皆さんももうお判りでしょう。
そう、このキットは、表向きは「ゲルググキャノンの金型を流用したリゲルグのキットで、購入者は好きな方を組み立てられます」ですが、パーツ単位で取捨選択をすることで、実は「三つめの完成形」として「完璧な1/144 ゲルググ」を作ることが可能な、1/144 ゲルググVer.2」キットなのです!

.

サーベルを構えたリゲルグ。今年ようやく発売が決まったHGUC版リゲルグには正式デザイン版ビーム・ライフルが付属する

……などとハッタリを効かせるほどでもない話なのかもしれないが。
結果として「リゲルグとしては」専用ライフルがないという、なんとも痛し痒しな仕様にはなっているが、おそらく、肘や膝や足首の可動範囲等の時代性を汲む前提があれば、むしろHGUC版よりは、このキットを「第三の完成形」として組んだゲルググの方が、最初の『ガンダム』に登場したゲルググのイメージに近い、という人が多かったとしても不思議はない。
実際、筆者が再現画像のためにこのキットを購入して作り上げた直後に、バンダイは長らく放置してあったHGUC ゲルググの金型を流用して「HGUC リゲルグ」の発売(2018年7月 2100円)をアナウンスした(ただしプレバン限定品)。
しかも、HGUCゲルググの致命傷だった「ライフルや関節等ことごとくABS」を、しれっとなかったことにするかのように、素材をKPSに変えて出しなおした。
ある意味「ちゃんと塗装してHGUC ゲルググを完成させたい人」向けですらあるHGUC版リゲルグ(しかし、シールドやナギナタは用意されていないという、中途半端な……)。

これがガルバルディβやバイアランであれば、苦渋の選択でHGUCの発売を待ち、総合会スケジュールに遅れが出ても、満を持す方向で『ガンダムを読む!』のガンプラ選びは進行しているのだが、このリゲルグについては、出番の少なさ、旧キットの出来の良さと志の高さ、HGUC版ゲルググの残念さ加減を総合的に見て、旧キットを使用することにした。

ガンプラ歴史の影に埋もれてしまったが「アタリのゲルググ」は「ここ」にあったのだと言い切っても良いと思う。

.

バックパックのデザインは、『Zガンダム』のハイザック同様、MSVの流れを受け継いでいると言ってもよいだろう

その他、このキットでの特徴をいくつか。
まず、手首はこの時期から90年代中盤まで主流になる「親指だけが固定で、人差し指とその他の指が別個に動く可動指」が採用されている。
詳細はもう少し調べないとなんとも言えないが、ガンプラの1/144ではおそらく、『ガンダムZZ』の、この時期のキットから始まった仕様であると思われる。
もっとも、あくまでこのキットをゲルググとして組みたい人で、可動指手首のメカっぽさに違和感がある人向けに、このキットはゲルググキャノンのパーツを全て残してあるので、そこに付属してくる拳や平手を使うのもアリだろう。
また、リゲルグとゲルググの違いとしては、リアスカートの中のバーニアが、ゲルググやゲルググキャノンは3基だが、リゲルグは5基なので、そこは間違えてはいけない。
肩の可動は、上でも書いた驚愕の自在さを誇るが、肘や膝の曲がり角度はあまり大きくない。

しかし、バーニアが全て大きさを変えて別パーツになっていたり、モノアイがシールではなく、水転写デカールであったりと、スケールモデルテイストに溢れた懐かしい意味で評価が高くなる好キットではある。

.

オプションや肘関節の可動範囲で、似たようなポーズしかとれないが、ライフルがあれば「化ける」素材なので、誰かHGUC版からライフルだけこちらに持たせてみてはどうか

本来は、時間があればと、HGUCゲルググに、肩のバインダーとバックパックと、腕のランチャーを移植するという、webでは定番の「なんちゃってHGUCリゲルグ」に挑戦してみようかと思っていたのだが、むしろ時間に追われてキットの素組になって、初めてこのキットのポテンシャルの高さに触れられて僥倖であった(ここ富野台詞調)。


もっとも、関節や可動軸はポリキャップが使われていないので、手にして動かしている分にはよいが、ポーズを付けていざ撮影しようと思うと、関節の保持力が(金型劣化のためか)ほぼ皆無なので、イメージ画像撮影では悩まされた。
余計なお世話かもしれないが、「究極の1/144 ゲルググ」をワンオフで作りたい上級モデラーであれば、HGUC版リゲルグをベースに悪戦苦闘するよりも、こちらを選んで、関節をポリキャップやボールジョイントに置き換えたり、可動範囲を広げる加工をしてみる方が、面白いし出来がよくなるのかもしれない。

.

2000年代のバンダイが「正解」と提示したHGUC版ゲルググ(右)との比較。あなたならどちらに軍配を上げる?

今回は成型色を活かして部分塗装。
基本的には、キットの色をベースに、指定どおりのマルーンとネイビーブルーで追加塗装していった流れになるのだが。
一つツッコミを入れるのであれば、Wikipediaでのリゲルグの項目で、その配色を「マルーンとネイビーブルー」と断言してある部分があり、ソースとしてこのキットの塗装指示書が提示されているのだが。
実際に塗装してみると分かるのだが、このキットの成型色は、ネイビーブルーはほぼ完璧にMrカラーのネイビーブルーそのままなのだが、赤の部分に関しては、マルーンを使うと少し色味の彩度が強すぎるのだ。
まぁ無粋な横やりはいれたくもないが、当たってるのか外れているのかも希薄な80年代のプラモの塗装指定を、Wikiで公式カラーリング言及してしまうのは、どうだろうかと思わざるを得ない・

また、実はこのリゲルグ。彩色見本画像とキットの塗装指示が、劇中の配色と異なっている。
アニメ本編では、襟元が本体と同じマルーンで塗られていて、バックパックのプロペラントタンクは逆にネービーブルーで塗られているので、それを大前提に細部塗装。

両肩バインダーの内側と、モノアイのレールは艶消し黒。
襟元や手首のレッドはマルーンで、スリッパや膝頭、バーニアなどはネービーブルーで、バーニアの内側はモンザレッドで、外側はファントムグレーでそれぞれ塗装。
ビームサーベルはイエローで、コクピットハッチはルマングリーンで、モノアイは付属デカールでそれぞれ彩った。

なにぶん昔のキットなので組立には苦しめられたが、第一期ブームピーク時のバンダイの、設計技術力の凄みのようなものも感じさせてくれる傑作キットであることは間違いないだろう。

市川大河公式サイト

関連する投稿


放送開始から40周年!『金曜ロードショー』の初代OP映像がまさかのプラキット化!!

放送開始から40周年!『金曜ロードショー』の初代OP映像がまさかのプラキット化!!

ホビー通販大手の「あみあみ」より、メーカー「スタジオシュウトウ」が展開する『金曜ロードショー プラキット』が現在予約受付中となっています。


「パックマン」45周年スペシャルモデル!Xboxなどに対応した「ワイヤレスコントローラー」が登場!!

「パックマン」45周年スペシャルモデル!Xboxなどに対応した「ワイヤレスコントローラー」が登場!!

アコ・ブランズ・ジャパンより、アメリカのゲーミングアクセサリーブランド「PowerA(TM)」(パワーエー)の「パックマン」45周年スペシャルモデルの新商品『ワイヤレスコントローラー for Xbox Series X|S - パックマンSE』が発売されます。


7年ぶりの再販!「機動戦士ガンダムZZ」より『エルピー・プル』のフィギュアがリニューアル版になって登場!!

7年ぶりの再販!「機動戦士ガンダムZZ」より『エルピー・プル』のフィギュアがリニューアル版になって登場!!

ホビー通販大手の「あみあみ」にて、メーカー「メガハウス」が展開する『エクセレントモデル RAHDXシリーズ G.A.NEO 機動戦士ガンダムZZ エルピー・プル Re. 完成品フィギュア』が現在予約受付中となっています。


50周年記念!『1/700スケールプラモデル 宇宙戦艦ヤマト[放送50周年 庵野秀明プロデュース版]』が発売決定!!

50周年記念!『1/700スケールプラモデル 宇宙戦艦ヤマト[放送50周年 庵野秀明プロデュース版]』が発売決定!!

バンダイナムコフィルムワークスより、『宇宙戦艦ヤマト』のTV放送50周年を記念し『1/700スケールプラモデル 宇宙戦艦ヤマト[放送50周年 庵野秀明プロデュース版]』が発売されます。


仮面ライダーのバイクアクションが楽しめる!新仕様のガシャポン®『@CTION RIDE 仮面ライダー』が登場!!

仮面ライダーのバイクアクションが楽しめる!新仕様のガシャポン®『@CTION RIDE 仮面ライダー』が登場!!

バンダイ ベンダー事業部より、仮面ライダーのコレクションフィギュア『@CTION RIDE(アクションライド)仮面ライダー』(1回500円・税10%込、全4種)が発売されます。


最新の投稿


世界が熱狂!葛飾商店街×『キャプテン翼』コラボ「シーズン2」開催!新エリア&限定メニューで街を駆け抜けろ!

世界が熱狂!葛飾商店街×『キャプテン翼』コラボ「シーズン2」開催!新エリア&限定メニューで街を駆け抜けろ!

葛飾区商店街連合会は、2025年10月10日より『キャプテン翼』とのコラボイベント「シーズン2」を亀有・金町・柴又エリアで開催。キャラクターをイメージした限定メニューやスタンプラリーを展開し、聖地巡礼と地域活性化を促進します。


キン肉マン愛が英語力に!超人たちの名言・名場面で学ぶ『キン肉マン超人英会話』発売

キン肉マン愛が英語力に!超人たちの名言・名場面で学ぶ『キン肉マン超人英会話』発売

人気アニメ『キン肉マン』の「完璧超人始祖編」の名言・名場面を題材にした英会話学習書『キン肉マン超人英会話』が、2025年11月29日(土)にKADOKAWAより発売されます。超人たちの熱い言葉を通じて、楽しみながら実用的な英語表現をインプットできます。TOEIC満点保持者やプロレスキャスターなど、豪華プロ集団が監修・翻訳を担当した、ファン必携の英語学習本です。


【カウントダウン】あと2日!古舘伊知郎&友近「昭和100年スーパーソングブックショウ」いよいよ開催迫る!豪華ゲスト集結の東京国際フォーラムは「昭和愛」で熱狂へ!

【カウントダウン】あと2日!古舘伊知郎&友近「昭和100年スーパーソングブックショウ」いよいよ開催迫る!豪華ゲスト集結の東京国際フォーラムは「昭和愛」で熱狂へ!

開催直前!TOKYO MX開局30周年記念「昭和100年スーパーソングブックショウ」が10月16日に迫る。古舘伊知郎と友近がMC、豪華ゲストと共に贈る一夜限りの昭和ベストヒットに期待高まる!


ギタリスト 鈴木茂「BAND WAGON」発売50周年記念ライブを東阪ビルボードで開催!

ギタリスト 鈴木茂「BAND WAGON」発売50周年記念ライブを東阪ビルボードで開催!

ギタリスト 鈴木茂が、『鈴木茂「BAND WAGON」発売50周年記念ライブ~Autumn Season~』を11月13日にビルボードライブ大阪、16日にビルボードライブ東京にて開催する。今回は、1975年にリリースされた1stソロアルバム「BAND WAGON」の発売50周年を記念したプレミアム公演となる。


【1965年生まれ】2025年還暦を迎える意外な海外アーティストたち!

【1965年生まれ】2025年還暦を迎える意外な海外アーティストたち!

2025年(令和7年)は、1965年(昭和40年)生まれの人が還暦を迎える年です。ついに、昭和40年代生まれが還暦を迎える時代になりました。今の60歳は若いとはと言っても、数字だけ見るともうすぐ高齢者。今回は、2025年に還暦を迎える7名の人気海外アーティストをご紹介します。