
ハンマ・ハンマのフレキシブルアームからのビームがジュドーを襲う!
私、市川大河が、書評サイトシミルボンで連載している、 『機動戦士ガンダムを読む!』での、 再現画像で使用しているガンプラを、 古い物から最新の物まで片っ端から紹介していこうというテーマのこの記事。
今回紹介するのは、『ガンダムZZ』劇中で、初めて合体完成したガンダムZZと戦い(そして撃墜された)最初のネオジオンモビル・スーツ、ハンマ・ハンマの1/144 旧キットを紹介します。
ハンマ・ハンマ 1/144 6 1986年8月 800円(機動戦士ガンダムZZ)

フレキシブルアームを伸ばして突き進むハンマ・ハンマのボックスアート
今日は皆さんに残念なお報せがあります……。
というのも、この1/144 旧キットのハンマ・ハンマ、野心的なデザインはともかく、ガンプラとしての出来はというと……。前回のR・ジャジャとほぼ同時に「やっちまったなぁ」としかいえないという。
『機動戦士Zガンダム』(1985年)『機動戦士ガンダムZZ』(1986年)の、第二期ガンプラブームで、1/144キットのワースト3を選べと言われれば、いきなり2連続で前回のR・ジャジャと、このハンマ・ハンマがワンツーフィニッシュで入ることは絶対的に確定事項というレベル。

完成した旧キット1/144 ハンマ・ハンマ
これ、決してその2つをデザインした、出渕裕氏のせいではないのは、なんか近年ガンプラで始まった新シリーズで、1/100で「Refineに今まで恵まれてなかったモビル・スーツを、MGより簡素化して出す」という名目で「Re」というカテゴリが新設されたんだけど、このハンマ・ハンマも2017年7月には、そのRe1/100でキット化されていて、そちらは出来も良く、フルアクションも可能で、プロポーションも絶妙というハイレベルな商品に仕上がってるところからもご理解いただけると思う。

劇中、ルー・ルカの乗るコア・ファイターを襲うハンマ・ハンマ
なら大河さんの『ガンダムZZ』イメージ再現画像用アイテムも、そのRe1/100版を使えばよかったじゃないかって言う話もあるんだけど、コスト的な意味合い以上にね、真面目に大河さんのワンルーム、1/100 ガンプラを置けるようなスペースがないんですよ!
ただでさえ、ハンマ・ハンマなんて大型MSの1/100なんで、撮影ブースでライティングが追い付かないっすよ!

正面から見た完成キット
それにReはHGUCとはコンセプトも違うので、HGUCならまだギリギリ旧キットと並べて画を作っても絵になるけど、これ以上の(キットコンセプト的に)混成部隊になっちゃうのはまずかろうというのと、旧キットであればミドルエッジ世代の皆さんでもたぶん(おそらく辛い記憶や口惜しみなのだろうが)このキットへの想いを分かち合えると判断した次第。

サイドビューとバックビュー。無数にあるバーニアをしっかり別パーツ化したり、スカートアーマーの分割など、これでも頑張っているのは分かるのだが……
一応、以下Wikipediaから、ハンマ・ハンマに関する記事を抜粋する。
Wikipedia ハンマ・ハンマ
要するにこのハンマ・ハンマという機体。『ガンダムZZ』における、真の主役メカ・ZZガンダムが、最初に戦う敵モビル・スーツなのである。
当初から予定されていたとはいえ(とはいえ、ZZガンダムメカデザイン決定までのドタバタ修羅場続きはもはや伝説と化している)、この時期の富野サンライズアニメが、真の主役メカは途中から登場するのが定型化していたとはいえ、さすがに前作で主役を張ったZガンダムで、半年近くも新番組を引っ張り続けるわけにもいかず、結構早々と登場したZZガンダム。
その新主役ガンダム初登場で、やられ役になるネオジオンのモビル・スーツとあらば、再現画像側としても用意しないわけにはいかない。

ゼータガンダムに向かって、ビーム・サーベルを振り上げて突進するハンマ・ハンマ!
このハンマ・ハンマ、デザインの方は。
確かに80年代半ばのバンダイでは手こずる面構成をしているかもしれない。
直線と曲面が交錯して異形のシルエットを作るデザインなので、いかにこの当時の出渕氏が挑戦的にモビル・スーツデザインに挑んでいたのかが分かる。
一方で、ギャン系の漢らしい騎士モビル・スーツを、深紅に染めてセクシィ女性士官のキャラ・スーンを乗せ、一方で、ある意味女性的な「開いた花弁」を思わせるハンマ・ハンマを、結果的にマシュマーのパーソナルカラー的立ち位置を得た「濃淡のグリーン」で彩り、優男の専用マシンにするというアイディアは、出渕デザインの逆をいったのだろうが、アニメの画的には功を奏した。
しかし、模型、ガンプラでの再現となると、R・ジャジャは「関節が、肘と開脚以外何も曲がらないデクノボー」と化してしまったわけだが、ではハンマ・ハンマ方はどうであっただろうか。

顔の造形は悪くない。口の部分も開口されていて立体感も損なわれていない
まず、パーツ分割に関しては、その努力は認めよう。
このキットは『ガンダムZZ』1/144シリーズでも、特に大きい方に入るので、パーツ分割が大味に感じられがちだが、肝心の部分ではスラスターを別パーツにしたり、複雑なスカート周りを最小限のパーツ割で再現しようとするなど、努力のほどはよく伝わってくる。

ランナー状態。写真映りは白に近いが、ザクに近い薄いグリーンのランナー2枚とポリキャップ
色分けは、この時期のレギュレーションが「1キット、成型色2色」ゆえに、赤やグレー、黄色やピンクなど足りない色数は数えきれないが、メインの濃淡の緑は、パーツの分け方は頑張っている。
もっとも、薄い方のグリーンがこの場合、あまりにも薄すぎて、成型色のままだとアニメイメージとかけ離れてしまうのではあるが……。

ランナー状態。ボディをメインにした濃いグリーンのランナー1枚と、フレキシブルアーム再現用のスプリングとチューブ
そんなことより大問題なのは。
ざっと見た完成形のシルエットが、いきなり「コレジャナイ」感を悪鬼のオーラのように醸し出している点だ。
一応パーツ単位では間違えた配列はないのだが、とりあえずプロポーション的に一番に言えることは、上半身が大きすぎて、下半身のスカートがボリュームが足りていない、いわゆるトップヘビー。お前はアオシマのキットか!?
ガンダムメカ史的には、こういった「花弁と巨大メカの融合」って言うのは、やがては『機動戦士ガンダムF91』(1991年)のモビル・アーマー・ラフレシアで理想の形に落ち着くのではあるが、この時期ではまだ早かったか、がんばっていることは伝わっては着ているのだが……という印象以上のことが言えない。

脚部の可動範囲。左が閉じた状態で、右が開いた状態。間違い探しか!?
オマケに、頑張る角度が(かなり確実に)間違っていたものだから、このキット、R・ジャジャとは違った方向で「全部の関節にポリキャップを仕込んでるのに、いざ完成してみると、殆どどこも動かない」をやってみせてしまった。
肩は、花弁の肩アーマーがあるからそれ以上動かせず、脚の開脚もスカートがアーマー型なので全く活かせず、膝も殆ど曲がらず、まともに可動するのは肘とクローぐらい。

脚部の可動範囲。股関節の前後はともかく、膝が……曲がってるのか?これ。
しかし、この肘がまた曲者で、この時期、80年代中盤から90年代に入る頃合いまでは、なぜかバンダイのアクションフィギュア系の仕様は「肘は内側に曲がれば正解」を基準にしていくことになる。
これは次作『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』(1988年)キットでも取り上げていくのだが、ガンプラでその傾向は、前作『Zガンダム』の1/220シリーズから始まっていたが、『ガンダムZZ』と同年の『聖闘士星矢』(1986年)の主力玩具商品「聖闘士聖衣大系」等でも、拳が固定なので、肘は内側に曲がるのが正解で、肘ロールはあるものの、あくまでそれはオマケギミック扱いであった。

肩はここまでしか上がらない
なのでこのハンマ・ハンマでも、肘は内側には(少しだが)曲がるのだが、前方に向かって曲げることが出来ない。
なので、今回は肘の曲がる方向をカスタムすることにした。
簡単だ、上腕の、肘関節軸をホールドしているリング部分をモーターツールカッターでカットして、90度角度を変えて、軸が前後に可動する位置で再接着すればいいだけ。
逆に肘は外側、内側には曲げられなくなるが、どちらかを選ぶのであれば絶対に前後可動の方が自然なポーズになるので、今回は放映当時以来の不満点を、人生2度目のハンマ・ハンマキット制作で解消してみることにした。

肘の可動範囲。軸方向を90度変えてカスタムしたので、一応前へ向けて45度は曲がるようにした。これだけでもポーズの自然さがぐっと違ってくる
この後で解説するが、ハンマ・ハンマギミックのメインである有線式アームの再現で、結局キットをもう一つ購入したので、そちらの片腕をノーマルで組むことで、カット単位で腕を差し替えれば、左右への可動をしているようにも見せられる。

手首(?)部分。ここだけは、クローが3本独立可動したり、中央の3連ビーム砲口が回転したりと、無駄にギミックが充実している
さて、今も書いたが、今回のハンマ・ハンマの、キットとしての一番の売り要素は、やはり有線式アームのギミック。
旧『ガンダム』のブラウ・ブロやジオングのように、前腕が肘から外れて、有線で繋がったまま自在にオールレンジ攻撃をするという武装だが、ハンマ・ハンマの場合は肘と手首で二段階で伸縮するので、手首は差し替えだが肘は結局、収納通常状態か、伸ばした状態かのコンパチになってしまう。
なので今回は、キットをもう一つ用意して、有線が伸びた状態の腕を別個に組むことで、撮影時に差し替えて演出するようにした。

さいわい、肩の付け根がポリキャップ軸接続で抜き差し可能なので、腕を複数用意すれば演出にも幅が出せる
キットでは肘と前腕をスプリングとリード線、前腕と手首をリード線でつなぐ構造だが、保持力は共にゼロに等しい。
その上で、やはりこの時代ならではレベルで、せっかく伸びた有線アームも、伸び加減が微妙に短くて迫力に欠ける。
なので、肘と前腕を繋ぐスプリングを、2キット分、2つ連結して、その中に針金を通すことにして、前腕と手首を繋ぐリード線の真ん中にも、一本針金を仕込んで、可動可能なようにしてみた。

オプション一覧。2キット分あるので、腕が4本使えるとあって、1本は(左右腕は共通なので)内側に向けて曲げる時用、1本はフレキシブルアーム、残った1本はサーベルを持たせた状態で手首を固定した。下はシールド
余ったもう一本の腕は外・内側可動のギミックを残しつつ、簡単に差し替え可能な手首にはビーム・サーベルを握らせて固定させる。
このキット、なにぶん手首が三本爪しかないので、サーベルを握れないことはないのだが保持力が弱く、またカッコよく握れないので、いっそ余った手首に接着したという次第。

シールドとサーベルを装備した状態。この図では結構カッコよく見えるのではないだろうか?
完成してみると、当時感じたほどに出来が悪いというわけではなく(感覚がマヒしてる?)、キットのパーツ構成も工夫の跡は見られるが、もうちょっと俯瞰で全体のシルエットを把握してほしかったなというのが正直なところ。
首は接着仕様なので動かないが、頭部の下顎の部分の形状が独特なので、おそらく取り付け軸にポリキャップを仕込んでも可動仕様にするのは難しいだろう。
全身のパイプやバーニアの別パーツ化は、さすがバンダイといったところか。

フレキシブルアームを伸ばした状態。アームに保持力は全くない
なんにせよ、ディジェもハンマ・ハンマも、Reで1/100でリファインキットが出されると、なかなか1/144の方ではリファインされない法則があるので、今回はこれで妥協することにした。

イマドキのフィギュアっぽく、補助スタンドを使用すれば、フレキシブルアームが攻撃をしているように飾ることは可能
塗装は、メインの濃いグリーンは、キットの指定どおりにグリーンと濃緑色を混色して、ランナーと同じ色になるように調色。
薄いグリーンの方は、キットの色味に不満を感じたので、量産型ザクのメインのグリーンを使用した。
後は、関節と足首を、ミディアムブルー+モンザレッドで塗装、パイプ類とサーベルビーム部はイエロー、シールド中央部とバーニア内部はモンザレッド、外側はファントムグレー、暗い部分は艶消し黒、モノアイと胸部の丸と四角はピンクで塗装した。
シールド中央のジオン紋章は、さすがに手塗りで上手く描く自信はなかったので、リゲルグで使わなかったデカールをもってきている。大きさ的に若干モールドより小さいが、拙い筆遣いで手書きで描くよりは見た目が良いだろう。

腕をキット2つ分使った、カスタム完成したハンマ・ハンマを構成する全パーツ
なんにせよ、いろいろな意味で実験と挑戦が失敗に終わったキットだけに、こちらも組んでいて、他の旧キットよりも数倍精神的に疲れてしまったという(笑)
市川大河公式サイト