一風変わった時代劇『SF サムライ・フィクション』
ミュージックビデオ(MV、PV)の世界で活躍した中野裕之監督が手掛けた異色の侍映画、それが『SF サムライ・フィクション』でした。

DVD
"ファンキーな時代劇"と称されるように、従来のチャンバラ映画とは毛色の異なる時代劇に仕上がっていました。
ロックミュージシャンの布袋寅泰が出演するなど注目されました。また、その布袋は同作の音楽を担当し、ロックが一風変わった映画の世界観をよりソリッドに印象付けてくれました。主題歌のタイトルは「SAVE ME」。
『SF サムライ・フィクション』あらすじ
中野裕之 プロフィール
ミュージック・ビデオ界のクロサワの異名を持っていた中野裕之監督。
1958年1月22日生まれなので、現在還暦を迎えています。出身は広島県で、早稲田大学商学部を卒業しています。
大学卒業後は、テレビ局のCM業務部でCM制作にかかわる一方で、「どんぶり5656」や「AV GARDEN」など、主に深夜番組で宮沢章夫、中島らも、竹中直人らと共に多くのコントを制作していました。

中野裕之監督
テレビ局退社後は、日本初のミュージックビデオ(MV、PV)制作会社「タイレルコーポレーション」を1987年に設立。
さらに1990年に手がけたディー・ライト(Deee-Lite)のデビュー曲「Groove Is In the Heart」が全米4位の大ヒットを記録するなど、業界で風雲児的な活躍をしていきます。
この作品で、アメリカMTVアワード日本人初のノミネート(6部門)するなど海外でも実績を残しました。
日本のアーティストでは今井美樹、GLAY、Mr.Children、小泉今日子、サザンオールスターズ、観月ありさといったビッグネームの作品を制作しています。
1993年に“見る側にピースな気持ちにさせる映像の追求”を目的に「ピースデリック設立」。PV制作の一方で、本稿で特集している『SF サムライ・フィクション』の映画製作に関わりました。
中野裕之と布袋寅泰の関係
『SF サムライ・フィクション』では、監督と出演者の関係で作品に関わった中野裕之監督と布袋寅泰ですが、PVでは傑作を残しています。それが布袋寅泰の10枚目のシングル「スリル」でした。
オリコン1位を獲得したハードなロックで、「べビべビベイベー」の歌詞も印象的な一曲です。
江頭2:50のテーマ曲にもなっている事から、今もテレビなどで聴く機会が多い同曲。
中野裕之監督が手掛けたこのPVも、江頭2:50に負けず激しい内容となっています。
スタートからチカチカと色鮮やか過ぎるカラフルな映像で、疾走感が表現されています。布袋寅泰の持つ無骨さと新しい領域へと挑戦し続ける姿勢までもが内包されたかのような秀逸なPVでした。
ちなみにジャケットで布袋が着用している革ジャンはクロムハーツの物だそうです。
90年代後半から2000年代はじめにかけて映画”以外”の出身監督が増えてきた
1998年公開の同作。この頃からCMなどの出身映画監督が増えてきました。
望月峯太郎の漫画を実写化した1999年の映画「鮫肌男と桃尻女」では、CMディレクター出身の石井克人がメガホンを取るなどしています。
石井監督は岸部一徳と木村拓哉が絶妙な掛け合いをしたコメディタッチの「CM富士通FMV」を手掛けています。
また、クリエイター=オブ=ジ=イヤー史上最年少受賞し、アコムのCM「むじんくん」を制作するなど、CM業界で知られる存在であった多田琢も、2004年に映画「SURVIVE STYLE 5+」で企画・原案・脚本を担当しています。
作品データ
監督 中野裕之
脚本 斉藤ひろし
俳優 吹越満、布袋寅泰、風間杜夫、緒川たまき等
公開 1998年(平成10年)
配給 シネカノン
時間 111分
90年代末は徐々に邦画に新しい風が吹き始めた頃で、実験的でシュールな作品が増えていきました。その一角を担った『SF サムライ・フィクション』。
同作は布袋寅泰以外にも、藤井フミヤや藤井尚之、ピエール瀧、高木完など、ミュージシャンが多数出演している事でも話題となりました。まだご覧になっていない方は是非ご覧下さい。皆だいぶ若いと思います笑
オススメの特集記事
布袋寅泰の『スリル』イントロを聴くとあの”黒タイツの男”が頭に浮かんでしまう! - Middle Edge(ミドルエッジ)
もう一度聴きたい!BOØWY唯一の布袋ボーカル曲「DANCE CRAZE」 - Middle Edge(ミドルエッジ)