21世紀の1/600 イデオン、2つ見参!
今回の番外編で紹介していくのは、シミルボンでもその流れで『伝説巨神イデオン』の作品紹介をするので、その『イデオン』に登場した、主人公ロボットイデオンの様々な立体を中心に、敵役の重機動メカ等も含めてイデオンの立体物歴史を俯瞰していきたいと思います。
前回までの、80年代イデプラ全盛期のアオシマから、ガラッと四半世紀の時を経て、現代に新たに生まれ落ちた「1/600 イデオン」を、今回は2つ紹介します。
やまと EXTRA Story Image Mechanics! 伝説巨神イデオン 2005年3月発売 6090円
やまとESI版イデオンのパッケージ。ブリスターの幅が前後に深いので、箱のボリュームはかなりのもの
まず紹介するのは、フィギュアメーカーのやまとが、2005年に「EXTRA Story Image Mechanics!」という完成品ロボットアクションフィギュアシリーズからリリースしたイデオン。
早逝した天才佐藤"ロボ師"拓氏造形による究極造形のイデオン!
同シリーズからは『冥王計画 ゼオライマー』(1988年)のゼオライマーなども発売していたことからも分かるように多彩な商品枠で、このイデオンの原型制作は、ロボットフィギュア原型界に、その人ありと呼ばれた故・佐藤"ロボ師"拓氏。
残念ながら佐藤氏は早逝されてしまったが、氏の芸術的な作品は商品として今もこうして我々が手にできるというのは僥倖だなぁと、富野台詞で感慨深く思ってみたり。
ESI版イデオンのリアビュー
実際の現代版1/600 イデオンフィギュアの出来の方は、写真を見てもらえば分かるとおりに、アニメ版としては完璧な出来栄えと言える、さすが佐藤氏。
ESI版イデオンのサイドビュー
フィギュアの素材がPVCだったり、変形も合体も出来ない上に、オプションは両手の平手のみと、仕様としては寂しくも感じるが、その仕様が逆に、このフィギュアのコンセプトを浮き彫りにさせている。
ブリスターに入った状態。オプションパーツは平手のみ
つまり、変形や合体というギミックに揺らぐことなく、このフィギュアは、全身の関節を駆使して、如何に「あのアニメ版『イデオン』でイデオンが様々な名シーンで構えてたポーズを再現できるか」。そこだけをストイックに追求したフィギュアなのだ。
故・佐藤"ロボ師"拓氏造形による、独自のアレンジが趣深いイデオンの顔
時代的には、ロボットフィギュアはこの時期、一方でバンダイの「超合金魂」シリーズが、「ロボットの、アニメ中の全てのギミックとオプションと可動」を網羅しようという豪華商品で邁進し、その一方で海洋堂のリボルテックシリーズが、サイズは小ぶりながら、全身のポージングアクションに絞り込んで商品化を展開していた中。
やまとと佐藤氏は、イデオンの商品化に当たり、超合金魂でも、リボルテックでもない「かつてのアオシマ版と同じスケールで挑むイデオンのでかさ」と「アニメ作画版への忠実さ」と「劇中のアクションの再現」の三要素に絞り込んで、見事に一体のフィギュアに魂を注ぎ込んだのだ。
ESI版イデオンの上半身の自然なポーズ。全関節が計算されつくして配置されている
さらに時代を進めば、翌年、2007年にはバンダイから、超合金魂でもイデオンは発売されたが、その変形ギミックと完成度の兼ね合いは、完全変形とも完全再現とも言い切れず、重厚さとギミックの多さだけは大迫力で伝わってきたものの、究極とは言い難い「あれもこれも」な半端な出来に終始してしまっただけに、今でもこの、やまとESI版イデオンの価値は色あせてはいない。
合体ギミックを排除したため、上半身も、胸、腹部、腰で、三段階で自在に可動できる
ESI版イデオンは、多少顔つき(ゴーグルの形)にアレンジは見られるが、少しでも手を抜くと、ただの四角い箱の積み重ねにしかならないイデオンのデザインを、見事に二次元から抽出した立体構造で構成し、あまつさえ微妙な湖川友謙ラインをも再現している。イマドキの完成品フィギュアだからすごいのではない、佐藤氏原型だからすごいのだ!
イデオンパンチ! 全身に仮想筋肉と骨格があるのでポージングが自然になっている
すごいというのはもう一つ。
このフィギュアには、合体や変形をしなくてよい分、様々なところに可動軸が設けられていて、それはイデオ・ノバであれば合体時に畳替えし的展開変形をする、Bメカの肩脇ブロックの内側にもフレキシブルジョイントが設けられているのだが。
ここが変形しなくて良いぶん、可動軸を仕込めばかなり自由度が高い動きを可能にするので、腕を振り回す演出の見栄えがよくなるだけではなく、イデオンファンが夢見た「無限ミサイル一斉発射ポーズ」の完璧に近いポーズをとらせることも可能!
合体変形機構がないので、肩ブロックも前方に向けて角度が付けられ、引き出し関節がなくても腕を前方に深く曲げられる
スーパーミニプラ版の項でも改めて書くが、イデオンファンにとって「無限ミサイル一斉発射ポーズが再現できるイデオンフィギュア」は、長年の夢(と、アオシマの夢見た奇跡)でもあったので、このフィギュアの登場は鮮烈なインパクトをもたらした。
ESI版の可動範囲を駆使して再現した、無限ミサイル一斉発射ポーズ
また、近年のフィギュアの世界でありがちな逸話になるが。
上でも書いたがこのフィギュア、オプションと呼べるものは両手の平手以外ついていない。そう、誰もが欲しがる、イデオンフィギュアには付属していて当たり前のはずの、肝心のイデオン・ガンが付属していないのだ。
無限ミサイル一斉発射ポーズが実現されておきながら、イデオン・ガンが付属していないというのは、著しく画竜点睛を欠く印象を与えるが、実はそこには裏技があった。
ESI版イデオンを使った、第一話の名ポーズ
最初にも書いたが、このフィギュアのスケールは1/600。その昔、アオシマが合体版とプロポーションタイプの、2種のイデオンを出したイデプラと同じスケールなのだ。
そしてその上で、当時アオシマは、グリップ握り拳付きのイデオン・ガン(商品名「波導ガン」)を単体で発売していた……。
そこで佐藤氏(もしくは発売元のやまと)は、わざと、アオシマ製「波動ガン」付属の拳の接続ピンの太さと、このフィギュアの手首の接続部分の太さを一致させることで、四半世紀ぶりに、アンティークトイ化していたアオシマの「波導ガン」を、最新の究極イデオンフィギュアに持たせることが出来るギミックを、予め商品に仕込んでおいたのだ!
ESI版イデオンに、四半世紀の年を経たアオシマ製イデオン・ガンを握らせることができる
確かに、この大きさでイデオン・ガンが付属させれば、商品価格はさらに跳ね上がるだろう。その上で、80年代当時のアオシマのイデオン・ガンは、今の目で見ても遜色がない仕上がりをみせていた。だとしたら、ユーザーは、このイデオンにイデオン・ガンを握らせたければ、中古価格でもそうは高くなかった(フィギュア発売当時)アオシマの「波動ガン」を買ってきて作り、握らせればいい。
再現画像より。ソロ・シップ甲板からイデオン・ガンを撃つイデオン!
こういった裏技や遊び心は、近年でもメーカーやブランドの垣根を越えて存在しており、同じキャラクター、同じ作品のメカ同士が、全く関係ない商品同士で組み合わせられたり、オプションパーツが使いまわせたりする例は少なくない。
なので今回は筆者も、当たり前の前提でこのフィギュアに、アオシマの「波導ガン」を握らせることにした。
クライマックスの印象的な、壮絶なイデオンVSアディゴ群!
各関節の可動領域。ポージングした時のラインの繋がり方。可動ギミックの仕込み方。そもそもの立体物としての二次元の産物の再現性。
それらを踏まえるとこのESI版イデオンは、合体、変形こそ出来ないが、解釈の方向性次第では「イデオンのアクションフィギュアの頂点」の座を、2018年現在でも失っていない金字塔商品ではないかと、筆者は思っている。
バンダイキャンディトイ 1/600 スーパーミニプラ イデオン 発動篇 2016年10月発売 4800円
イデオンのメカデザイナー、樋口雄一氏によるボックスアートの渋みが輝くバンダイ版!
さて、とうとう今回の番外編企画の目玉でもあり、現在容易に入手できるイデオンアイテムの中では、組み立てやすさ、再現度、可動、色分け、どれも最高峰のバランスで構築された、イデオンプラモの紹介に入ろうと思う。
恒例の角度の立ち姿。まさにバンダイマスターグレード版イデオン!
そもそも、バンダイという企業は一枚岩ではなく、事業部単位でしのぎを削り合ってメーカー全体が稼働している。
主にガンプラなどを扱うホビー事業部が花形事業部だが、通好みというアイテムは、結構キャンディトイ事業部が、食玩扱いで出していたりもする。
食玩とは、読んで字のごとく、そもそもは昭和の大昔のグリコキャラメルのように、キャンディやキャラメル、ガムなどがメインで、付属してくるオマケはオマケなりの出来とボリュームだった。
さすがバンダイの最新技術投入グレード。ポーズアクションはMGガンプラ並みにしっかり決まる
しかし近年、ガムがアリバイ程度の一個入りで、メインはどう見てもプラモデルやフィギュアで、しかも大型で高額の商品が目立ってきている。
「玩具」「模型」と「食玩」を分け隔てるのは、法律的には流通ルートの問題が大きく、社会通念的には互いの商品の流通ルートがかぶらないため、キャンディトイ事業部は、ホビー事業部が部署気風として商品化しないようなアイテムやキャラを、ガンプラとは違った製造法や構造概念で商品化するようになってきている。
バンダイ版イデオンの頭部UP。額のイデゲージとゴーグルはクリアパーツ
この「スーパーミニプラ」という商品も、一応アリバイ的にはガムも入っているし、ブラインド方式の売り方をしているので、商品概念としては昭和のビックリマンチョコやBIGワンガムと同じという言い訳は成り立つが、『勇者王ガオガイガー』(1997年)や『戦闘メカ ザブングル』(1983年)等、ホビー事業部のリメイク路線から外れた、好事家のツボを直撃する、驚きの商品化とボリューム、クオリティで、今のホビー業界でも目が離せないブランドに育っている。
ここからは、3機3種の各形態。変形合体プロセスは次回詳細に解説するが、まずはこれはソル・アンバー
思えば『ガオガイガー』も今回紹介する『イデオン』も、放映時期の版権は、タカラやトミー、アオシマ等がメインスポンサーとして所有していて、バンダイのその時々のメイン商品とはライバル関係にあったアイテムばかりである。
Aメカの攻撃形態、イデオ・デルタ
この辺りの「今は全部商品化権がバンダイに集まるのだな」は、超合金魂やフィギュアーツなどにも言えることだが、この一極集中状況には賛否両論があるだろう。
Aメカの合体形態。両腕を繋ぐバーがグレー彩色なのは、イデオン・ガンと共に成型色の限界からきていると思われる
今回紹介するスーパーミニプラ版イデオンは、一言で言えば「マスターグレード イデオン」とでもいうべき位置づけの商品。
Bメカ車両形態のソル・バニア。青や緑の複雑なカラーリングはシール補完
一応食玩扱いなので、数箱に別れて商品が売られているが、実際には「通常版」が3個セット、「発動篇」が4個セットで売られていて、その違いはこの後書き記すが、どちらもセットでユーザーが選べて、ダブりやかぶりが出ないように配慮されている。
「通常版」は、3個なのでもちろん、それぞれにソル・アンバー、ソル・バニア、ソル・コンバーとなるキットが一つずつ入っていて、3個合わせれば、イデオンになるという仕様は当然と言えば当然。