『ガンプラり歩き旅』その56 ~イデオン編・4 アオシマ 究極のイデオンへ! 2つの決定版1/600 イデオン!~

『ガンプラり歩き旅』その56 ~イデオン編・4 アオシマ 究極のイデオンへ! 2つの決定版1/600 イデオン!~

ガンプラ! あの熱きガンダムブーム。あの時代を生きた男子であれば、誰もが胸高鳴り、玩具屋や文房具屋を探し求め走ったガンプラを、今改めて当時のキットから現代キットまで発売年代順に、メカ単位での紹介をしてきた『ガンプラり歩き旅』。 今回は全8回で、ガンプラブームと共にロボットプラモブームを牽引した、『機動戦士ガンダム』(1979年)の日本サンライズ・富野由悠季監督の次作品『伝説巨神イデオン』(1980年)のアオシマ製プラモデル群から、現代に至るまでのイデオンフィギュアを、追いかけてみたいと思います!


1/600シリーズのその後については後に譲るが、まず先陣を切った「1/600 イデオン」に投じられた「アオシマの本気」には、凄まじい狂気にも近いすごみが込められていたのである。それを今回はまずは表層的にお伝えしてみたい。

そもそも、冷静に考えてみよう。
題材は、1980年放送の合体スーパーロボットなのだ。
作品の理念やテーマがどれだけ高尚であれ、富野由悠季監督招聘前段階で、玩具メーカーのトミーと、日本サンライズと、メカデザインのサブマリンが用意しておいたのは「自衛隊の戦車とタンクローリーと幼稚園バスが、それぞれ敵が現れればSF戦闘メカに変形し、さらにその3機が合体してロボットになる」というデザインであったのだ。

続いてBメカ。ソル・バニア状態。車体の前面が地面に擦れてしまうのは、デザイン上仕方がないらしく、そこを回避できたソル・バニア立体物は存在しない

さらに、これは『機動戦士ガンダム』のガンダムにも言えるのであるが、この、70年代後半から1980年にかけて、合金玩具として売られるテレビのロボットまんがのDX合金トイが、アニメでのデザインや変形や合体を、精密な部分まで劇中通りに正確に再現することは、旧ポピーの村上天皇のデザインと、それによるDX超合金の一部にあったに過ぎず、その他大勢の、ガンダムのコア・ファイターシステムを含めて、テレビの合体ロボットまんがの合金トイのほとんどは、ある程度テレビの設定やディテールをディフォルメして、商品化しやすく単純化することが大前提の当たり前の時代であった。

そしてCメカ。ソル・コンバー状態。見事なまでの箱メカを、実は湖川ラインを隠し持ちながら、シンプルに、そしてディテールの欠損なく立体化されている

というか、むしろ玩具会社サイドで、玩具用のデザインが先にあって、主従であればそちらが主であり、アニメ版デザインはあくまで、それを基にアニメの世界観に馴染ませるためにブラッシュアップが行われた結果であり、そのプロセスでは必ず「アニメの嘘」「二次元の嘘」が入ることは絶対正義である。
しかし、エンドユーザー、それも玩具ではなくアニメ作品の方から入ってきたファンにとっては、アニメ画面のメカニックが全てであり、アニメ画面でのプロポーションやディテールが「正解」なのであったのだ、まだこの時代までは。

要するに、まず第一に重要なことを明言してしまえば。
アニメ作品『伝説巨神イデオン』作中で描かれていたソル・アンバー、ソル・バニア、ソル・コンバーという3種の車両メカからの、イデオ・デルタ、イデオ・ノバ、イデオ・バスタへという3種のSFメカへの変形、そしてそこからのイデオン合体状態への変形と、それらの合体したイデオンというファクターを、アニメのイメージやスタイルやディテールを損なうことなく、整合性を伴って成立させることは、三次元ではそもそも“不可能”なのだ。

Aメカのイデオ・デルタ状態。主翼が小さい印象だが、差し替えではなくちゃんと変形なのでこの大きさになる。肘のスライドも差し替えではなく軸移動変形で、シルエットも上手くまとめられている

それは、この時期既に、同じコンセプトトイで、メインスポンサーのトミーが主力商品として発売していたデラックス合金玩具『奇跡合体 イデオン』の、「ミラクルチェンジ」システムを伴う3段変形合体を経たイデオンへの、大胆な玩具的アレンジや切り捨てを見ても明白ではある。そこから37年を経て、現代のテクノロジーや技術論で挑戦した、バンダイの「超合金魂 イデオン」や「バンダイスーパーミニプラ イデオン」などが、共に個々にコンセプトを違えながらも、意欲的に最新の技術を惜しみなく投入しながらも、決して「アニメ版の3機3形態」の完全再現と「アニメ版のイデオンの変形・合体プロセス」「フルアクションするイデオン」の再現を両立できていない現実が、それを証明している。

Bメカのイデオ・ノバ状態。ソル・バニアからの基本形態に変化がない分、各所に展開したフル武装パーツの豪華さが目立つ。ちなみに変形で登場する前キャタピラも、接地力はない

現代の、特に「駿河屋の乱」で、これらイデプラを手に入れた、主に「リアルタイムの『イデオン』ブームや、イデプラのマスコミ玩具界での貢献度を知らない層」がネットをポータルにして、現代のガンダムの「最初からアニメデザインどおりに模型化する前提でデザインが練られてるメカ」のガンプラと比較して、嘲笑しているという図式があり得るのである。

むしろ、80年代初頭ガンプラブーム渦中にあったバンダイは、主に「その問題」にぶち当たったのは、1/100 ガンダムのコアブロックの腹部と、1/144 Gアーマーの各形態分離変形だけであり、前者はクローバーの合金玩具処理方法をそのままディテール面でブラッシュアップするだけでガンプラ第1号を乗り切り、後者はむしろ「Gブルのコアブロックパーツ」「Gスカイ時のコア・ファイターの尋常ではない大きさ」等、アニメ作品内の二次元の嘘を威風堂々と再現することで、アニメ合体ロボットのプラモ化に対する、一つの回答を提示してみせた(極論を言ってしまえば、Gスカイ時のコア・ファイターが仮に変形できたとしても、ガンダムの腹部や、Gブルのコクピットの大きさには収まらないことが明確である時点で、嘘を嘘として割り切っている作りなのである)。

Cメカのイデオ・バスタ形態。箱型車両から大型爆撃機風メカへの変形を、機首と巨大なウィングを差し替えにすることで、見事にシルエットが変わっている。

一方で、アオシマが見せた本気こそが、この1/600 イデオンには詰まりきっている。
この1/600 イデオンは、この連載で以前書いた記述に基づけば、1/420 アニメスケール イデオンに続いて「アオシマ版大型イデオンキットVer.2.0」と言い切って良いクオリティに仕上がっている。
これまでのイデプラには、殆どに封入されていた、クリアパーツもシールもデカールもない、完全塗装仕様のイデオンの1/600キット。
「テレビまんがに登場する、スーパーロボットの模型化」というコンセプトに当たっての、これまでに自社が築いてきた、玩具アレンジやスプリングミサイル発射ギミックや、その他オリジナル要素などの独自スタンスを全て捨て去り、とことんストイックに、しかも“完璧”を目指してこの商品は開発された。

過去の「ミニ合体ロボット」や「合体ロボット 合体巨神」「おやこマシン」「ポケットパワー」等にあった、アニメにないギミックや、合体の整合性をとるためのオリジナルデザイン補助パーツや追加ディテールをほぼ廃し、その上でこれまでの商品でオミットしてきたディテールや各形態のパーツを、徹底したアニメ用メカデザインの検証から算出して、余す事なく(多少はあったが)パーツとして用意した。
無論、それらを駆使しての3機3種変形合体は、実際の商品仕様としては、差し替えや合体後の余剰パーツの山にはなるが、むしろ逆転の発想で、確かにこのキット完成品の変形・合体プロセスは、ありとあらゆる余剰パーツの山を築いたかもしれないが、この商品は1981年というタイミングと技術レベルで、イデオンの3機3種変形合体を、ほぼ完璧に再現した商品だったのである。
この英断と実行力は、同時期のバンダイのガンプラでも成すことは出来ず、後に追従した各社のリアルロボット路線のどの模型化でも、同等のギミックを仕込むことが出来なかった快挙であった。

商品名は「波導ガン」で、劇中ではイデオン・ガンと呼ばれていた。300円キット一つ分のボリュームは、巨砲武器に相応しい。ロゴ入り専用スタンドも嬉しいオマケ

余談だが、現代の最先端技術導入のイデオン商品で「あくまでも差し替えを極力しない方針で、イデオンの3機3種変形合体を再現する」は、バンダイの「超合金魂 イデオン」がチャレンジしており、「差し替えもパーツの後付けもアリアリでも、イデオンの3機3種変形合体の、各形態のアニメ風スタイルの正確性を目指す」は、やはりバンダイキャンディトイ事業部の「スーパーミニプラ 伝説巨神イデオン」が挑んでいるが、前者の超合金魂イデオンは、二次元の嘘が各形態のシルエットやディテールに祟るという意味では、イデオ・デルタの水平翼の小ささや、イデオ・バスタの機首の全くアニメデザインに似てなさ加減などは、むしろトミーの「奇跡合体 イデオン」に近いレベルで終始してしまっており、一方こちらはこの連載でもとりあげるがスーパーミニプラ版イデオンは、各形態は確かにアニメデザインに忠実だが、差し替えやパーツの後付け箇所が、このアオシマ1/600 イデオンよりも多く、既に「それ」は、変形ではないよねという領域にまで達してしまっているのも事実。

考えてみよう。
イデオンの3機3種変形合体を1アイテムでこなすのであれば、トミーの奇跡合体以上、バンダイの超合金魂以下の枠内に収まる範囲でしか、物理的にパーツもディテールも構成できないはずだ。
しかし、この1/600 イデオンは、「イデオ・デルタ時の主翼のパーツが小さい」「イデオ・ノバ時のボディ後部が左右に開かない」「イデオ・バスタ時のメインコクピットのデザインやフロントウィンドゥの形状がアニメ設定と異なる」等々、確かに諸々のウィークポイントを抱えながらも「1981年」の「アオシマの技術と経験値」で、致命的な破綻を呼ぶことなく、3機3種変形合体を完遂している究極イデプラなのである。

Aメカ合体形態。両腕を繋ぐフレームが、実際に模型同士を合体させる時に有効になる。フレームの色が白かグレーかは悩むところ

特に、ソル・アンバー時のコクピット周りのスロープは、超合金魂版やスーパーミニプラ版でさえ、きっちり角度をつけることができなかったが、このキットでは大胆な後付けパーツゆえとはいえ、それがソル・アンバーの先端の左右のパーツのロック機能も兼ねて、完全にアニメのシルエットを再現している(ここは既に技術的に成功していた「合体巨神 イデオン」での経験値ゆずりであろう)。

ソル・アンバーでの、手首に付く白い極小パーツが謎移動するのは、これは差し替え以外で再現することは物理的に不可能だし、主翼と垂直尾翼の大きさも、収納に拘った超合金魂版とも、差し替えに拘ったスーパーミニプラ版とも異なり、収納と差し替えを併用することで、ギリギリバランスとギミックの両立的満足感を与えてくれる。

その上で、ソル・アンバーからイデオ・デルタへ変形する際の一番のギミックポイントの「前腕ブロックの軸回転座標ずらし」も、後発アイテムが取り入れるよりいち早く、金属シャフトを使うことでスライドする方式を(既にこの設計思想は、「アオシマ版大型イデオンキットVer.1.0」であった1/420 イデオンで、試行されているが)完成させていた。

Bメカ合体形態。両脇肩ブロックのどんでん返し的変形が、絶妙なクリアランスで再現されている。

そしてBメカ。
確かにBメカは2次元の嘘の塊で、ソル・バニア時もイデオ・ノバ時も、車体の前部が後部より低く設定されるので、底部をこすってしまう角度になってしまうが、それは後のバンダイ版の2種でも同じ結果を迎える。その上で、2種のフロント部分のルックス的差別化の差し替え(奇跡合体や超合金魂では伸び縮みするギミック)を、スーパーミニプラ版よりもむしろ差し替え形状を最小限に抑え、変形前後の共通性はアオシマ版の方が高められている。

イデオ・ノバ時の左右ボディ展開がないことは上でも書いた残念ポイントだが、むしろイデオ・ノバ時を真後ろから見た時には、まるっきり合体接続部分としてパーツが分割されている超合金魂版や、やはりCメカとのボールジョイント接続用の穴がぽっかり空いたスーパーミニプラ版と比較しても、一長一短で決して一方的にアオシマ版が劣っているとは言い切れない。

付属追加パーツにしても、グレンキャノンのディテールでは劣るが、アンテナの細かさやシャープさでは、PL法の縛りがなかったころのアオシマ版の方が、パーツに精密感がある。

Cメカ合体形態。脚の伸び縮みは、内蔵されたスプリング機能によって、設定どおりに伸縮する。その上で、膝関節はしっかり曲がるというテクニカルな構造

さらにCメカ。
ソル・コンバー状態での車輪の付き方は、歴代の合体変形イデオンアイテムの中でも、このアオシマ版がもっとも自然なシルエットでCメカサイドに収まっている。
タイヤパーツを外した後のカバーのフォローも忘れてない辺りや、スーパーミニプラ版ではスルーされてしまった「つま先のバーニアとシャッター」の付け替えも、アオシマ版ではとことん丁寧に行き届いている。

スーパーミニプラ版では「接続部分のポイントをずらす」ことで脚の長さを長短差し替えていたが、アオシマ版はテレビイメージの尊重から、スプリングを内蔵したストッパーを使うことで、実際にアニメどおりに腿が伸縮した。

イデオ・バスタのウィングや機首も、超合金魂のような変形への拘りを躊躇なく切り捨てて、差し替えパーツにしたあたりは英断で、だが実は、この主翼の色分けガイドラインとしてのディテールは、アオシマ版、スーパーミニプラ版ともにアニメ版とは異なっていて、完全変形を目指した超合金魂版はもっと異なっている。

機首も含めて、ここは36年の時を経て、アオシマ版とスーパーミニプラ版が引き分けとなる。

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