バックパックはアニメの変形合体どおりにBメカのメインキャタピラが左右合わさる構造だが、その結果バックパックの形状がアニメ版イデオンとは異なってしまっている
基本、どのキットでも、成型色の赤や白がカラーリングと合致している場合はその成型色を活かすが、手首袖や胸や脛のラインやふんどし部分の白はGXクールホワイト。赤はキャラクターレッド。上半身の胸、脇、腹部、グレンキャノンやイデオ・ノバフロントのグレーはMSファントムグレー。「合体ロボット イデオン」の波動ビーム砲と、1/600 イデオンのイデオン・ガンや、イデオンのカメラアイとイデオ・バスタの機首と、ソル・コンバーの機首のブルーはキャラクターブルー。下半身のふんどし周囲や両膝両側、足首の両側のパーツや、両腕のキャタピラの動輪などのグレーはニュートラルグレー。イデオンの拳や膝アーマーは、ブルーFS15044。
自立できる範囲で、動かせる関節を全て動かしてポージング。3機3種3段変形合体を再現した上でこの可動は、今の目で見てもレベルが高い設計である
脛の両外側のスリットや足首、イデオ・ノバのメインフロントウィンドウ、イデオ・デルタのウィングのメイン等はブルーFS15050 ブルーインパルスカラー。3つあるイデゲージはルマングリーン。イデオ・ノバのサブウィンドウはデイトナグリーン。イデオ・ノバのフロントライトやソル・コンバーのウィンドウはスカイブルー。イデオ・バスタの主翼の二色目のブルーはエアスペリオリティブルー。基本的には全イデオン、このレシピで塗装してある。
アオシマ イデオン プロポーションタイプ 1/600 1982年9月 700円
発売当時のパッケージ。分かりやすいレベルで、ミサイル一斉発射ポーズをアピールしている
後年の再販版のパッケージ。より、劇画・油絵絵画チックに変更され、ハイエンドな印象をかもしだしている
イデプラの、1/600シリーズが、大型重機動メカや、逆に小型戦闘機にまで商品化が及んだ先で、ついに劇場用映画版『伝説巨神イデオン 接触篇 発動篇』(1982年)が公開されようというタイミングで、この「アオシマ版大型イデオンキットVer.3.0」とでもいうべき1/600 イデオン プロポーションタイプが発売されたのであった。
完成した1/600 イデオンプロポーションタイプ。こうして見ると設定画のバランスには近い
ガンプラで言えば1/100サイズ。既にそのサイズでは、シリーズスタート時に「1/600 イデオン(波導ガン付)」が発売されていたが、それは上でも書いたように「アニメ劇中の、全ての変形・合体ギミックを再現する」という意欲作であり、その目的の限界論の部分で、切り捨てられた要素も多かった。
頭部。ゴーグル部分がやや狭いので、表情がきつく見えがちか
それらの多くは、足首や肘、肩、腰などの可動である。先行していたガンプラは、そこを徹底的に商品単位でブラッシュアップし続けることで、市場リードの主要因であったことがアオシマにも理解できたからか、この商品はあえて今一度、主役のイデオンを、同じ1/600で、今度は「関節可動アクション」に徹底的にこだわって、ゼロから再設計されたイデプラなのである。
横から見た完成状態。やはり少し薄い印象。上腕部のキャタピラは、変形機構がないがモールドされている
後ろから見た完成状態。今回は無変形キットのため、バックパックの形は設定画に忠実に造形されている。かかとのグレーパーツも別パーツ化されており、足首の可動を妨げない
なので、この商品は「イデオン プロポーションタイプ」という商品名を与えられながらも、決して完成品のプロポーションそのものが、初期1/600と比較して、劇的に向上しているというわけではなく、確かに3機合体変形の無理を仕込まなくて良い分、他の合体系イデオンプラモデルが共通で抱えていた「両腕が長すぎる」呪縛からは解き放たれたものの、拳はここでも小さすぎ、全シリーズのイデオンに共通したトップヘビー過ぎる全身バランスはここでも健在。
合体版(左)とプロポーションタイプ(右)の比較。合体版の腕の大きさを、短所と捉えるか武骨な迫力と捉えるかで、プロポーションタイプの評価は変わってくる
胸と肩幅の広さも悪目立ちするスタイリングで、とてもじゃないが、プロポーションに関しては、先の合体変形タイプの方がカッコいいというオチが付いてしまっている。
横から見た比較。腰から足へかけてのライン取りで、プロポーションタイプはかなり湖川ラインの再現性が向上している
確かに、イデプラもここへくるまでの経緯で、児童向け玩具模型から商品展開が始まりながらも、ティーンズ向けアニメプラモデルへの脱皮を図ろうとし続けた苦心の跡は、このキットの完成状態にも随所に見えている。
バックショットの比較。後ろから見ると、やはり肩幅の広すぎさが明確に感じ取れてしまう
内側、外側の両方に向けてスウィングできる肩関節や、内部フレームを再現した肘関節の内側や、全身にポリキャップを装備している点など、同時期のガンプラを先どっている技術設計能力は至るところで確認できる。
成型色も、いさぎよいまでに白一色で、さぁどうぞモデラーの皆さん、ご自由に塗装くださいという気概はひしと感じ取れるし、股関節が開く、足首の自由度と接地性も高いなど、評価すべきところもたくさんある。
関節可動はかなり進化している。肩関節が外側にも内側にも曲がるだけではなく、肘関節にもロールが仕込まれている
値段も700円と、1/100 ガンプラレベルで抑えられていて、これまでの1/600 イデオン(波動ガン付)が1600円という高価格帯であったことを因数分解すると、旧1/600は、3段階の複雑な合体変形を全てこなさなければならない構造ゆえパーツ数も多く、結果、イデオン・ガンを抜きにしても、Aメカ(400円)、Bメカ(400円)、Cメカ(500円)と、それぞれ別売りでも1/144ガンプラ1個並みの価格が必要だった。
それを今回は、関節可動ポーズアクションに特化した、非変形合体モデルということで、700円という価格に抑えられたことと、徹底したモデラー志向で設計を展開したことが、このキットの強い個性になっている。しかし上でも書いたように、商品名で謡っている「プロポーション」に関しては、残念ながら向上どころか退化してしまったという辺りが、このキットが今一歩「イデプラの伝説」になりそこねた要因であろう。
しかし、謳い文句だったミサイル一斉発射ポーズは、いざ完成したキットに構えさせようとしても、ここまでが限界……
また、このキットが伝説になり損ねた最大の要因としては、イデオンのアクションポーズの中で一番印象的なポーズであり、このキットのパッケージアートにもなっている「全方位無限ミサイル一斉発射」ポーズが、「頑張りは認めるものの、まったくそのポーズがとれていない」という点が挙げられるのではないだろうか。
もっとも確かに、「全方位無限ミサイル一斉発射」は、ガンダムにおける「ラストシューティング」にも似た、全編を象徴するメカニックポーズではあるが、同時にどちらも「アニメの嘘」が凝縮された屈指の名ポーズでもあり、2017年を迎えて、ようやく出揃ってきた、現代版イデオンのプラモデルやフィギュア、超合金魂などでも、それぞれアクションギミックやジョイント位置を駆使して、なんとか再現してみせなければ商品アピールが出来ないとされているのが「全方位無限ミサイル一斉発射」でもあることも事実。
足首の関節が、人間的に動くイデプラは、アオシマではこれだけだが、接地性はあまりよくない。また、膝の曲がり角度は合体版の方が深く曲がる
当時のアオシマは、ガンプラをはじめとしたバンダイや、同時期の『超時空要塞マクロス』(1982年)の、有井や今井のバルキリーなどの技術水準と比較しても、このイデオンの肩と腕の「木材のような角形直方体の腕が、肩に対して垂直で伸びている」デザインを前にして、そこに外側、内側両方へと肩が開くギミックを仕込むこと自体、かなりの先進性は伺えるのではある。
しかし哀しいかな、80年代のバンダイのガンダムが、最後まで「ラストシューティング」を再現できなかったように、このアオシマ渾身の「アオシマ版大型イデオンキットVer.3.0」を以てしても、“「全方位無限ミサイル一斉発射」的なポーズ”をとらせることは出来ても、「アニメで見たあのポーズ」とは、程遠い仕上がりになってしまったことは仕方ないとはいえ、ビジネスの結果としてはマイナスに働いた。
この時期では珍しく、差し替えの平手がついてくる。手首の差し替えはガンプラでも初期には観られなかった仕様なので、ポリキャップ使用ともども、アオシマの先進性が垣間見える
問題のプロポーションも確かに、アニメ劇中の湖川作画ラインとは全く異なるものの、決して存在性そのものまで否定されるレベルの劣悪品には陥ってはいない。
おそらく、の域を出ないが、おそらくこのキットの腿と肩を伸ばし、胴体を上下左右を切り詰めるだけで、かなり劇中のイメージに近づくのではないだろうか?
特に、前腕や脛の曲面の取り入れ方などは、かなり劇中の作画版に近くなっている。
1/600 合体版と比較すると、頭頂高は確かに同じだが、プロポーションタイプの方が小顔化している分、ボディのボリュームはプロポーションタイプの方があるのだが、1/600 合体版の方の両腕が膨大なので、全体的には合体版の方が大きく見える。
自然で無難なポーズを付けさせて、煽りで撮ってみると、結構かっこいいイデオンに見える。単純な出来・不出来の問題ではないらしい
その他、1/600 合体版では合体変形のギミックの都合上、ハの字に開く以上の関節ギミックが活かせなかった股間も、同時期の1/100 ガンプラシリーズのように開脚も出来るようになっており、足首もイデオンキットで初めて「足首を軸にした可動」が可能になっている。
その上で、プレイバリューとしては、先行して独立販売されていた『1/600 波導ガン』が、握り手ごとこのキットの手首に装着させることが出来る仕様で、新キットの手首接続部が設計されており、そこは高額の1/600 イデオンを分割販売した初期戦略の恩恵ともいえた。
まず、1/600 合体版、プロポーションタイプ、双方とも、イデオン・ガンを構える際には、通常の手首を外すだけではなく、腹部のイデゲージのシャッターが開いて、コネクタが露出しているプレートと、パーツを交換する必要がある。
1/600 合体版の、イデオン・ガンエネルギーチューブコネクタ付きプレートの交換
そこへ、イデオン・ガンから伸びたエネルギーチューブを差し込んで、イデオン・ガン発射状態の完成である。
このシチュエーションは、後の現代版1/600 フィギュアでは、どこも再現していなかった拘りだ。
イデオン・ガンを構える1/600 合体版イデオン
同じ差し替えプレートパーツは、もちろんプロポーションタイプにも、専用のパーツが用意されている。
プロポーションタイプの、イデオン・ガンエネルギーチューブコネクタ付きプレートの交換
イデオン・ガン付属の手首は少しプロポーションタイプの手首ジョイントよりも太いので、はめ込む際には少し系を削った方が良いかもしれない。
イデオン・ガンを構えるプロポーションタイプイデオン
やはり、イデオンにはイデオン・ガンがないと画竜点睛を欠くことになる。
現代の2000年代のフィギュアでも、やまとの1/600 イデオンフィギュアには、このイデオン・ガンの手首がはまり、構えさせることが出来る仕様で作られている。
アオシマ決定版、2大イデオンのイデオン・ガン揃い構え!
結論を言えば、この1/600 イデオン、特に合体版は、1982年時点のアニメロボットプラモデルとしては、最高峰レベルの技術が投入され、イデオンというデザインの中に可動ギミックを惜しみなく詰め込んだ傑作ロボットプラモデルには仕上がっているが、他社商品のクオリティも上がり続ける中、求められたハードルが高すぎたためもあって、相対的に厳しい目で見られたために、アニメロボットプラモデル史には、栄光を刻み込むことが出来なかった佳作キットであるということである。
(取材協力 青島文化教材社)
市川大河公式サイト