『ガンプラり歩き旅』その55 ~イデオン編・3 アオシマ アニメスケールシリーズの誕生!~

『ガンプラり歩き旅』その55 ~イデオン編・3 アオシマ アニメスケールシリーズの誕生!~

ガンプラ! あの熱きガンダムブーム。あの時代を生きた男子であれば、誰もが胸高鳴り、玩具屋や文房具屋を探し求め走ったガンプラを、今改めて当時のキットから現代キットまで発売年代順に、メカ単位での紹介をしてきた『ガンプラり歩き旅』。 今回は全8回で、ガンプラブームと共にロボットプラモブームを牽引した、『機動戦士ガンダム』(1979年)の日本サンライズ・富野由悠季監督の次作品『伝説巨神イデオン』(1980年)のアオシマ製プラモデル群から、現代に至るまでのイデオンフィギュアを、追いかけてみたいと思います!


しかし、今書いたように、イデオンの両腕からイデオ・デルタへの変形は、このキットでもほぼ完璧に再現できているのだが、それはイデオンの両肩に、ヒンジで追加された、白の延長パーツ(パーツナンバー61から64)が、普段は肩の後方に折れ曲がって隠れている物が、ヒンジで前に置き上がってきてイデオ・デルタの機首を構成するからなのであるが、先に書いたようにこのキット単独では、イデオ・デルタへの変形は組み立て説明書では言及されていない。

1/420 イデオン組立説明書より。肩パーツの組立

そうなると、『イデオン』のアニメや合体変形設定を見た事がない人が、説明書のまま組み立てると、この61から64のパーツを、上へ向けて突き出させたまま肩を組み立ててしまうことになる。

1/420 イデオン組立説明書より。この図の指示だと、知識のない人は、肩パーツのイデオ・デルタ機首を伸ばしたまま胴体に接続するのが正解だと思ってしまう

筆者は、このキットを組むのは、実は今回が初めてなのだが、実際のキットを手にする以前、まだそれが「光るイデオン」での3機変形合体構造のテスト版だと知らなかったころに、ネットでこのキットの画像検索をしてみると、素組の人から、丁寧なディテール追加や塗装、プロポーション改修までしているような凄腕モデラーまでもが、皆この、イデオ・デルタ機首用の白いパーツをそのまま肩の延長部として扱ってる作例や紹介が殆どであった。

肩の白いブロックは、イデオン時にはこうして後ろへ倒しておくのが正解

もともと「1/420 イデオンは、イデプラの中でもプロポーションは良い方」と聞いていたのに、ずいぶんとまぁ肩の上方突き出しだけは無意味に長いなぁと思っていたのだが、筆者がこのキットの隠れコンセプトを知らない代わりに、ネットでこのキットの作例をアップしている多くの人が「そもそもイデオンを知らない」のだと、今回実物を手にしてようやく理解できた。
これも一つの、「駿河屋の乱」の功罪と言えるだろう。

1/420 イデオンの可動範囲。腕も脚もこの程度まではアクションが出来る

閑話休題。
このキットには「アニメスケール」というシリーズ名が冠されていて、同じ大型「アニメスケール」では、『無敵超人ザンボット3』等もラインナップされているが、その後アオシマがイデオン関係のプラモデルで展開した同名のプラモデルシリーズは、300円の箱スケール統一シリーズ、ガンプラでいうところの1/144だけでともいえた。

1/420 イデオンの腕は、肩関節も肘関節も自重に負けてしまうので、ポーズを付けて飾るときはかなり大胆な位置づけが必要

キットのボックスアートは、初期は描きおろしのセル画バージョンであったり、パッケージのいたるところに「アニメ」「ANIME」と書かれてあったり、しかもその「アニメスケール」のロゴが、露骨に当時急激に発行部数を伸ばしていた徳間書店のアニメ雑誌『アニメージュ』のロゴとそっくりであったりと、いろいろと「当時」がその商品外観からも伺える。

1/420 イデオンの脚部ライン。意外と湖川ラインが再現されている

キットの出来の方は、その後のイデプラでは捨て去られるような良質のアイディアの部分もあり、一方ではまだまだ玩具テイストの処理から抜け切れていない部分もある。
なかなか一言で言及するには難しい。しかし決して失敗作ではなく、筆者がこのキットを「アオシマ版大型イデオンキットVer.1.0」と呼ぶにはそれなりの理由がある。

まずは、全身のディテール、パネルラインモドキなどは、「合体ロボット」シリーズや「ポケットパワー」シリーズとは一線を画して、あきらかにガンプラに影響を受けた、ティーンズ志向のテクスチュアで構成されている。

変形の名残か、脚はこの時期のロボットプラモでは珍しく、八の字に開いて立つことが出来る

しかし、上記でも書いたように、このキットもまた「3機合体ギミック」を目指した痕跡があるので、そこが玩具っぽくも感じてしまう人も少なからずいるだろう。

また、玩具的要素としては(3機合体のイデオ・ノバ形態にも影響してくるのだが)全身のあちこちのカバーが開いて、中からほぼアニメ演出描写とは関係のないレーザーやビーム砲が出現してくるのだが、このキットのギミックのほとんどが、合体の名残とこの隠し武装ギミックとに費やされ、ポージングがほぼおろそかにされているのも、合体ロボット版からアニメスケール、1/600版への過渡期と呼べるキットの理由かもしれない。

全身のハッチフルオープン状態。全身内蔵武装の塊のイデオンをうまく表現している

ここでふっと気づかされるのは、前回紹介した「合体ロボットイデオン」シリーズは、簡易的ながらも、ソル・アンバー、ソル・バニア、ソル・コンバーの、3種の車両形態への分離変形合体をギミックとして備えていた。
それに対して、今回のこの1/420 イデオンは、イデオ・デルタ、イデオ・ノバ、イデオ・バスタの、3種の飛行戦闘メカ形態への分離変形合体を、簡易的ながらも再現している。

これらの全身武装は、玩具的アレンジのアオシマオリジナル設定のように見えるが……

イデオンの合体・変形は、当時としても複雑を極めたシステムだったが、これらの技術的蓄積と布石が、後の1/600 イデオンを生み出したのかもしれない。

太ももから展開してくるビーム砲

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