小室哲哉が楽曲提供した意外な歌手を振り返る【90年~92年】

小室哲哉が楽曲提供した意外な歌手を振り返る【90年~92年】

先日、音楽業界からの引退を表明した小室哲哉。TKといえば、90年代に「小室ファミリー」を率いて一時代を築いたことで知られていますが、その活動期間において「えっ、この人も!?」というアイドル・タレントのプロデュース及び楽曲提供も、実は数多く手掛けているのです。そこで今回、1990年~1992年ごろに小室哲哉がプロデュースした意外な歌手を何人かピックアップし、紹介していきたいと思います!


宮沢りえ『NO TITLIST』‐1990年2月15日リリース

当時人気絶頂だった宮沢りえとTKの蜜月は、言うまでもなく、りえのデビューシングル『ドリームラッシュ』によって紡ぎだされました。楽曲のみならず、ジャケ写に衣装、プロモーション手法にまで口を出すという、後の盟友・YOSHIKIもびっくりなトータルプロデューサーぶりを発揮した結果、セールス的に大成功を収めたがために、りえ陣営から高く評価されたのでしょう。

作詞:川村真澄 作曲・編曲:小室哲哉

NO TITLIST

Amazon | ノンタイトリスト | 宮沢りえ | J-POP | 音楽

この宮沢りえ二枚目のシングル『NO TITLIST』で作詞を担当したのは、『ドリームラッシュ』、渡辺美里の『My Revolution』でもTKとタッグを組んでいた川村真澄。

ポジティブソングの代名詞みたいなマイレボと、「今だけ 今のために 生まれてきたはずだから♪」と歌っていた『ドリームラッシュ』、そして「誰かのまねをしたくはない 感じたことしか表現できない♪」と宣言する『NO TITLIST』に見られる個人主義・自分らしさ賛美の川村による歌詞は、いずれも、後にTKが華原朋美の楽曲などで綴った「女の子の自分探し的歌詞」に通じるエッセンスを含んでいます。そう考えると、90年代後半にJKの代弁者となったTKの作詞面に、川村が多大な影響を与えたことはほぼ間違いないでしょう。

田中美奈子『夢見てTRY』‐1990年5月9日リリース

その神がかり的手腕によって、くすぶっているB級~C級アイドルをピカピカのスターへと生まれ変わらせる「音楽界の野村再生工場」的役割を担っていたことが、TKブランドの錦の御旗化、ひいては小室ファミリーブームへとつながっていたことを踏まえると、既に一定の市民権があるアイドル・歌手の作詞・作曲・プロデュースをつとめていた90年代前半は、いわば、TKにとってブレイクスルー前夜期といえるでしょう。有能な音楽プロデューサーではあるものの、無から有を生み出す“カリスマ”ではなかった時代です。

作詞・作曲・編曲・プロデュース:小室哲哉

夢みてTRY

Amazon | 夢みてTRY | 田中美奈子, 小室哲哉 | J-POP | 音楽

しかし、そこは後の時代の寵児。既にTM NETWORKのフロントマンとして実績十分だった彼は、この90年代前半も、時代を駆け抜ける助走とばかりに、秀逸な佳曲を次々と生み出していきます。

この当時文化祭クイーンで、瞳に1億円の保険をかけたことでも話題になったアイドル・田中美奈子のサードシングル『夢見てTRY』も軽快なメロディといい、キャッチーなサビといいなかなかの良曲です。

郷ひろみ『空を飛べる子供たち~Never end of the earth~』‐1990年6月1日リリース

1986年3月、芸能活動を休止して単身ニューヨークに渡り、1年弱滞在した郷ひろみ。2002年にも再びNYで充電期間を設けるなど、米国に対してことさら思い入れの強いひろみは、1990年6月に27枚目のオリジナルアルバム『アメリカかぶれ』を発表。TKは同作のラストを飾るナンバー『空を飛べる子供たち~Never end of the earth~』という、秋元康が作詞した謎にスケールの大きなタイトルの曲における作曲・編曲を担当しています。

空を飛べる子供たち~Never end of the earth~
作詞:秋元康 作曲・編曲:郷ひろみ

(アルバム『アメリカかぶれ』に収録)

アルバム『アメリカかぶれ』

Amazon | アメリカかぶれ | 郷ひろみ, 難波正司, 秋元康 | 歌謡曲 | 音楽

中山忍『ホタル』‐1990年6月1日リリース

30代を過ぎてから2時間サスペンスの犯人役ばかりやっている女優・中山忍も、ティーネイジャーの頃はアイドル歌手として活動していました。TKが手掛けたのは、サードアルバム『箱入り娘~このままじゃいられないわ』に収録された『ホタル』『僕がむかえにいくよ』。ちなみにこの2曲の編曲は、コラムニスト・ナンシー関から「絵に描いたような小室の腰巾着」と揶揄された久保こーじがつとめています。

ホタル
作詞:坂元裕二 作曲:小室哲哉 編曲:久保浩二 

(アルバム『箱入り娘~このままじゃいられないわ』に収録)

アルバム「箱入り娘~このままじゃいられないわ」

Amazon | 箱入り娘~このままじゃいられないわ | 中山忍 | J-POP | 音楽

観月ありさ『TOO SHY SHY BOY!』‐1992年5月27日リリース

90年代前半は「アイドル冬の時代」と呼ばれています。たしかに、CoCoやribbon、C.C.ガールズ、桜っ子クラブなどが相次いでデビューしたものの、いずれも小粒な印象で、ムーブメントを起こすまでに至っていないから、そう言われても致し方ありません。

しかし、純粋なアイドルは希少種になるも、一昔前の上戸彩、今の広瀬すず、有村架純のようなアイドル女優的ポジションのタレントはむしろ売り手市場であり、宮沢りえ・牧瀬里穂と共に、「3M」と呼ばれていた観月ありさもその一人でした。

作詞・作曲:小室哲哉 編曲:小室哲哉、COZY

TOO SHY SHY BOY!

Amazon | TOO SHY SHY BOY! | 観月ありさ, 小室哲哉, 辛島美登里, 村瀬恭久, COZY, カラオケ | J-POP | 音楽

純粋なアイドルにとって歌は重要なセールスツールですが、演技が本業のアイドル女優にとっての歌は単なる余技に過ぎません。そのため、TKとしても自由に時の売れっ子アイドル女優・宮沢りえ、そして観月ありさを自分色に染め、“調教”することができたのです。この観月4枚目のシングル『TOO SHY SHY BOY!』も、後にTRFで存分に追及することになるダンスフロア志向を垣間見せています。

(こじへい)

関連する投稿


西本智実&三浦祐太朗が出演!山口百恵作品オーケストラ公演『ノスタルジー2025』のセットリストが発表!!

西本智実&三浦祐太朗が出演!山口百恵作品オーケストラ公演『ノスタルジー2025』のセットリストが発表!!

山口百恵の作品をフルオーケストラで演奏する真夏の音楽の祭典「西本智実『ノスタルジー』with三浦祐太朗-山口百恵名曲集2025-」(新制作版)が開催されます。


【1955年生まれ】2025年に70歳!今も若々しい人気男性・女性歌手たち!

【1955年生まれ】2025年に70歳!今も若々しい人気男性・女性歌手たち!

2025年(令和7年)は、1955年(昭和30年)生まれの人が古希を迎える年です。ついに、昭和20年代生まれの人は全員が70歳以上となり、昭和30年代生まれが70歳代を迎える時代になりました。今の70歳は若いとはと言っても、数字だけ見ると高齢者。今回は、2025年に70歳となる意外な有名歌手13名をご紹介します。


女子を主役にした『ぼくらの七日間戦争』!?息子の宗田律が書き上げた新作!!

女子を主役にした『ぼくらの七日間戦争』!?息子の宗田律が書き上げた新作!!

KADOKAWAより、「ぼくら」シリーズ最新作『ぼくらの秘密基地』(原案:宗田理、文:宗田律、絵:YUME、キャラクターデザイン:はしもとしん)が現在好評発売中となっています。


東京・渋谷で「NEO平成レトロ展」が開催!平成のエスパーアイドル「Chi☆Q」の大地守と久間一平が公式アンバサダーに!!

東京・渋谷で「NEO平成レトロ展」が開催!平成のエスパーアイドル「Chi☆Q」の大地守と久間一平が公式アンバサダーに!!

東京・西武渋谷店A館2Fイベントスペースにて、“平成レトロ”の魅力を集めた展覧会「NEO平成レトロ展」が開催されます。


深夜の台本なしガチトーク番組『TOKYO SPEAKEASY』が放送中!酒井法子、イジリー岡田、水道橋博士らが出演!!

深夜の台本なしガチトーク番組『TOKYO SPEAKEASY』が放送中!酒井法子、イジリー岡田、水道橋博士らが出演!!

TOKYO FM/JFNにて、秋元康プロデュースによる深夜のガチトーク番組『TOKYO SPEAKEASY』が月曜~木曜25:00~26:00に放送中です。


最新の投稿


ギタリスト 鈴木茂「BAND WAGON」発売50周年記念ライブを東阪ビルボードで開催!

ギタリスト 鈴木茂「BAND WAGON」発売50周年記念ライブを東阪ビルボードで開催!

ギタリスト 鈴木茂が、『鈴木茂「BAND WAGON」発売50周年記念ライブ~Autumn Season~』を11月13日にビルボードライブ大阪、16日にビルボードライブ東京にて開催する。今回は、1975年にリリースされた1stソロアルバム「BAND WAGON」の発売50周年を記念したプレミアム公演となる。


【1965年生まれ】2025年還暦を迎える意外な海外アーティストたち!

【1965年生まれ】2025年還暦を迎える意外な海外アーティストたち!

2025年(令和7年)は、1965年(昭和40年)生まれの人が還暦を迎える年です。ついに、昭和40年代生まれが還暦を迎える時代になりました。今の60歳は若いとはと言っても、数字だけ見るともうすぐ高齢者。今回は、2025年に還暦を迎える7名の人気海外アーティストをご紹介します。


吉田沙保里  強すぎてモテない霊長類最強の肉食系女子の霊長類最強のタックル その奥義は「勇気」

吉田沙保里 強すぎてモテない霊長類最強の肉食系女子の霊長類最強のタックル その奥義は「勇気」

公式戦333勝15敗。その中には206連勝を含み、勝率95%。 世界選手権13回優勝、オリンピック金メダル3コ(3連覇)+銀メダル1コ、ギネス世界記録認定、国民栄誉賞、強すぎてモテない霊長類最強の肉食系女子。


消えた回転寿司チェーンの記憶──昭和・平成を彩ったあの店はいまどこに?

消えた回転寿司チェーンの記憶──昭和・平成を彩ったあの店はいまどこに?

昭和から平成にかけて、全国各地で親しまれていた回転寿司チェーンの数々。家族の外食、旅先の楽しみ、地元の定番──いつしか姿を消したあの寿司屋は、なぜ消え、どこへ行ったのか。本記事では、現在は閉店・消滅した地域密着型の回転寿司チェーンを、当時の特徴やSNSの証言とともに記録として振り返る。


【歌謡曲】ありえないシチュエーション!歌詞がおもしろくて笑ってしまう歌謡曲5選!

【歌謡曲】ありえないシチュエーション!歌詞がおもしろくて笑ってしまう歌謡曲5選!

昭和の歌謡曲には、現代ではお蔵入りしてもおかしくないほど、ありえないシチュエーションを描いた詞が数多くあります。その中には、残酷な人物像や露骨な情景描写もあり、思わず笑ってしまうような歌詞もありました。今回は、筆者の独断と偏見で、歌詞がおもしろくて笑ってしまう歌謡曲を5曲ご紹介します。