『ガンプラり歩き旅』その54 ~イデオン編・2 アオシマ「機動合体」「合体巨神」合体ロボットのイデオン!~

『ガンプラり歩き旅』その54 ~イデオン編・2 アオシマ「機動合体」「合体巨神」合体ロボットのイデオン!~

ガンプラ! あの熱きガンダムブーム。あの時代を生きた男子であれば、誰もが胸高鳴り、玩具屋や文房具屋を探し求め走ったガンプラを、今改めて当時のキットから現代キットまで発売年代順に、メカ単位での紹介をしてきた『ガンプラり歩き旅』。 今回は全8回で、ガンプラブームと共にロボットプラモブームを牽引した、『機動戦士ガンダム』(1979年)の日本サンライズ・富野由悠季監督の次作品『伝説巨神イデオン』(1980年)のアオシマ製プラモデル群から、現代に至るまでのイデオンフィギュアを、追いかけてみたいと思います!


アオシマが児童向けプラモ中心だった時代のメインシリーズ「合体ロボット」のイデオンから3種。イデオン自体は3種共通仕様

私、市川大河が、書評サイトシミルボンで連載している、 『機動戦士ガンダムを読む!』での、再現画像で使用しているガンプラを、 古い物から最新の物まで片っ端から紹介していこうというテーマのこの記事。

今回の番外編で紹介していくのは、シミルボンでもその流れで『伝説巨神イデオン』の作品紹介をするので、その『イデオン』に登場した、主人公ロボットイデオンの様々な立体を中心に、敵役の重機動メカ等も含めてイデオンの立体物歴史を俯瞰していきたいと思います。
今回は、まずはアオシマが『イデオン』放映終了直前に、児童・幼児層向けに発売した、オリジナル合体玩具風イデオンプラモデル(以下「イデプラ」)をご紹介。 ここでは3つのキットを紹介しますが、実際の商品ではイデオン自体はどれも同じ金型を使っていて、1つ目と2つ目が同時にリリースされて、その2つの商品を統合した3つ目が、一年後にリリースされたという商品です。

アオシマ 合体ロボット 合体巨神イデオン 1981年1月 700円 ノンスケール

3機のマシンが合体するプレイバリューを前面に推し出したボックスアート!

アオシマ 合体ロボット 機動合体イデオン 1981年1月 700円 ノンスケール

こちらは、イデオンの全身に追加された武装をフルに活用した状態の箱絵

アオシマ 合体ロボット イデオン 1982年1月 1000円 ノンスケール

「合体巨神」「機動合体」全てのパーツが入ったフルセットのボックスアート

Amazon | 1/600アオシマ 伝説巨神イデオン A・B・Cメカ+波動ガン | おもちゃ | おもちゃ

アオシマが、1981年のガンプラブーム初動期に、それまでの児童層路線プラモから、アニメ設定準拠プラモへの過渡期として、ガンプラ(の1/100)を仮想敵にして送り出したカテゴリが、この「合体ロボット」シリーズである。

「合体ロボット」シリーズは『イデオン』だけにとどまらず、既に放映が終了していた『無敵超人ザンボット3』(1977年)『無敵鋼人ダイターン3』(1978年)等の、アオシマが版権を持つ過去富野監督作品からも商品がリリースされている。

当時のアオシマの販促チラシより。オリジナルのアトランジャー、マッハバロンの金型改造のドライガーなどもラインナップされている

アオシマはそれまでにも「ミニ合体ロボット」「おやこ合体」シリーズを主軸としてロボットプラモデルの商品化を進めてきたが、ミニ合体ロボットシリーズが、あくまでアオシマ独自のデザインセンスで、テレビ設定を無視した4分割による4機合体のギミックプラモデルであったのに対して、合体ロボットシリーズは、変化球的要素はありながらも、テレビ作品内設定を取り込んだ商品であることがまず挙げられる。

その上で、イデオン、ザンボット、ダイターン、それぞれ3種とも、基本となるロボット形態の同一金型で、ギミックの異なる2つの商品を売るビジネスプランが建てられたのだ。

平成に復刻された、3種のアオシマ合体ロボットシリーズ

実際には、ザンボットでは、ザンブル、ザンベースは共通で、そこで胸部と頭部を構成するメカが、ザンボット完成形態重視のザンバードである「無敵合体」と、簡易的にザンバードにも変形できるザンボエースが代わりに用意されている「超人合体」という2商品に別れていた。

これがダイターンになると、ダイターンはロボット形態の他に、戦闘機形態のダイファイターと、戦車形態のダイタンクとの、3形態に変形するメカなのだが、やはり同じダイターンの同一金型パーツに対して、ダイファイターへの変形パーツを付属させた「戦闘合体」と、ダイタンクへの変形パーツを付属させた「重機合体」との、2つの商品が展開したのだ。

共に、一年後には2種パーツを統合させた「合体ロボット」冠でザンボット3、ダイターン3のフルセット版がそれぞれ発売しなおされるのであるが、その法則性(アニメのギミックを2分割して、AセットとBセットの2種を同じロボット金型で別売りして、一年後にA、Bを統括した「合体ロボット」版を売る)を、まんまイデオンでやったのが、今回紹介する3種類のイデプラなのである。

共通素体となる、完成形のイデオン

つまりこういうことである。
共通のイデオンのロボット構成パーツに対して「合体ロボット 合体巨神イデオン」では、腕、上半身、下半身を、それぞれソル・アンバー、ソル・バニア、ソル・コンバーに見立てられる、簡易変形風(「風」なところがポイント)パーツが付属する。

「合体巨神イデオン」での、車両形態3種の合体メカ状態

それに対して「合体ロボット 機動合体イデオン」では、(企画段階でデザインされていた)イデオンの両肩に仕込まれた内蔵兵器や、イデオン・ガンのような武装パーツが付いてくる。

全身武装型のパーツが追加された「機動合体」版の完成形

そして、それら簡易変形風パーツと、各武装パーツの両方が同梱されたのが、3つ目の「合体ロボット イデオン」である、といったコンセプトなのだ。

「合体巨神」「機動合体」双方のパーツが揃った「合体ロボット」版完成形

このコンセプトはアオシマのサンライズロボットプラモデルシリーズではその後も継承されて、『イデオン』終了後の、名古屋テレビ・サンライズ枠の『最強ロボ ダイオージャ』(1981年)で発売された「合体ロボット」版ダイオージャでは、こちらでも2種の「合体」版がまず発売されたが、実は合体要素はどちらも皆無で、本来であれば合体するはずの3機のロボットのミニサイズキットが付属された「最強合体」と、劇中でダイオージャが使用した、多彩な武器パーツが付いた「王者合体」がそれぞれ販売され、同じように後発の「合体ロボット ダイオージャ」で、その両方の付属品がすべて入った仕様で発売されるパターンが踏襲された。

しかし、『イデオン』と同年に作品放映と商品展開が同時進行だった『無敵ロボ トライダーG7』では、『イデオン』と同じくポケットパワーやミニ合体シリーズは展開しても、この2種合体ロボットシリーズの商品展開はされなかった。

それでは、「合体ロボット」版イデオンキットの方を3つそれぞれに解説していこう。
まずは、3種のキット共通となる、イデオンの素体そのものについて。

このイデオンは、まだガンプラのスケール概念の影響を受けてなかったタイミングでの商品化であったので、ノンスケール扱いではあるが、実際のキットの頭頂部までの高さは22㎝。イデオンの身長105mで計算すると、スケールはおよそ1/478になる。次回以降に紹介する、アニメスケール1/420 イデオンと、統一1/600スケールイデオンの、ちょうど中間サイズといったところか。

合体遊びが前提の仕様なので、全身の関節を駆使してポージングしても、これぐらいしか関節は稼働しない

パーツの成型色は、赤、紺、白と、意外とアニメの塗り分けに近く、当時のガンプラよりも未塗装完成後の再現度はアニメに近い。
しかも、キットには、脚部や胸部、腹部の白ラインや、ゴーグルの青、膝頭と脛外側の紺を補完するシールも付属しているので、肩脇ブロックの赤と、全身のグレー部分、イデゲージのグリーンを抜かせば、ほとんどアニメに近い塗り分けが素組で完成する。

キットに付属してくるシール。胸の白ラインなどは今の模型製作においても、そのままマスキングシールとして使えそう

同じイデオンキットを3つも作るのもおよそ面倒な上に、見ている方も退屈だと思うので、「機動合体」をシールだけ補完(ゴーグルのシールだけは経年劣化で使えず)で、「合体巨神」を、あえて3種メカを1/600と比較するために未塗装も含めてシールも使わず、「合体ロボット」版をシールとフル塗装で、それぞれ組み立てて仕上げてみた(使用パーツは入れ替えてある)。

イデオン本体のパーツで、二つのバージョンの差し替えは肩ブロックのみ

色分けの面で、両肩脇ブロックだけがアニメの赤とは異なる白で成型されていて目立つのは、「合体巨神」と「機動合体」で、そこが2つのキットではそれぞれ別々のギミックを持つブロック(「機動合体」では「イデオンミサイル砲(キットの箱の解説ではグレネードミサイルが出し入れ可能で発射できるギミック)」が付いていくるので、ボディの赤ランナーではなく、商品個別の白ランナーに配置されているため。

左のグレネード付が「機動合体」版。右のデザイン準拠肩が「合体巨神」版。「合体ロボット」版には双方のパーツが付属する

完成した「合体巨神」版イデオン。肩脇ブロックを抜かせば、パーツ段階での色分けも、時代と子ども向けであることを考えるとなかなか優秀である

このシリーズの「イデオンとしての出来」は、イマドキの視点で判断すると辛いものがあるが、当時のレベルとしては決して酷評される出来ではないということが言い切れる。

「合体巨神」箱横の作例と解説。解説はともかく、塗装見本が素敵にアニメと違って派手すぎる(笑)

さて、「合体巨神」での3種車両メカへの分離変形は、車輪やコクピットブロックなどのパーツの追加が玩具的過ぎるとはいえ、ストレスなく劇中イメージにかなり近い(ソル・バニアの両肩脇ブロックを除く)変形がおこなえることは評価すべきである。

3機の車両形態のコクピットパーツも、後の1/600に近い高レベルでディテールが作り込まれており、両肩ブロック非変形のソル・バニアでも、コクピットパーツだけを前方にせり出させる構造にすることで、シルエット的にはアニメ版に近づけられている。

まずは 、ソル・アンバー

また、イデオン形態当初から腕や足の後方に仕込まれていた可動タイヤなどは、それぞれの車両形態がコロ走行できるようにとの、あきらかに児童向けのギミックなのだが、アニメデザインにある車輪以外は、あまり目立たないようには配慮はされている。
あえて目立たせてある車輪としては、ソル・バニアの車輪が両肩脇ブロックの下部に付いていたり、さらに分割されたバックパックに付いていたりと、この辺りはなかなかにアニメに忠実。

メカ形態用パーツを外したところ。前後の青パーツがソル・アンバーのディテールになると同時に、両腕を繋ぐストッパーになってる当たりが、発想の巧さ

一方で分割変形に関しては、ソル・バニアの両肩脇ブロック以外は、ソル・アンバー変形時の前腕の180度折りたたみや、ソル・コンバー変形時の両脚のスライドギミックなど、丁寧にアニメ設定準拠の変形が再現されている。

続いてソル・バニア

特に、ソル・コンバーの足首パーツなど、前部半分が90度折りたためる仕様のイデオンキットは、他にも珍しくないが、このキットでは足首全体が可動こそしないものの、脛パーツと別になっている構造なのは(両側から挟んだ脛を止めるストッパー用パーツなのだとしても)なかなか優秀だと言える(もっとも、足裏は完全に空洞で、そこは脱力させられるが)。

ソル・バニアでは「機動合体」と「合体巨神」で両肩脇ブロックを差し替えるため、合体で肝心の後部への展開ギミックが再現できないが、その分追加パーツでコクピットを先方へ伸ばすことで、シルエットを変形後に近づけてある辺りはさすが!

優秀ついでに言及するならば、足首サイドの四角いインテークも、しっかり別パーツだったりするところもポイントが高い。

ソル・コンバー

まとめとして「合体巨神」に関して言えることは、ソル・バニアの変形に惜しさは残るものの、値段と当時の技術レベルからくるコストや、対象となる児童の組み立てやすさなどを考慮すれば仕方ないのも理解は出来る。それを踏まえてもなお、なかなか侮れないクオリティには仕上がっているというべきだろう。

ソル・コンバーへの変形はかなり本格的。肘までの脚の伸び縮みも、前足首の折りたたみも完全再現。コロ走行用のタイヤもオプションで付いてくる


では、「機動合体」の、武装用パーツを換装したキットの構造論を展開していこうと思うのだが、これは文章でいろいろ書くよりは、「機動合体 イデオン」箱のサイドに描かれた、イラストによるこのキット独特の、イデオンの数々の武装の説明をまず見てもらった方が早いと思われる。

うん、ロケットパンチだよね。懐かしいよね

まずは、誰もが失笑するしかないツッコミどころが、いきなりの「イデオンパンチ」つまり、ロケットパンチの登場だろう。
これはまぁ、70年代の合金玩具全盛時代から、80年代終盤までのロボット玩具界隈を体感していないと理解できない怪現象(笑)なのであるが、少なくともこの商品が発売された80年代初頭までは、ロボット玩具といえば猫も杓子もロケットパンチ装備がディフォルトであり、それは原作アニメのロボットの設定に関係なく、合金玩具やプラモデルには、ほぼ必須といっていいレベルでついてきたオプション装備なのである。

実際にスプリングでロケットパァアアンチ!(by石丸博也)

もちろんその始祖は『マジンガーZ』(1972年)のロケットパンチと、それを玩具でスプリング発射で再現した、超合金マジンガーZの大ブレイクの恩恵ゆえなのだが、「機動合体」箱脇で書かれた説明を読んだ上での「105mの身長を誇るイデオンの拳であれば、飛んでくるイデオンパンチは拳の直径は18m前後はあるはずで、それで『5mの鉄板も打ちぬける』って、武器としては貧弱過ぎないか?」というツッコミは、ここ絶対に必要だろう。

え? それってソル・コンバーの変形ギミックでは?

また、あたかも武装ギミックのように書かれてる「レグ・アブソーバー」だが、これは「合体巨神」での、脚部のソル・コンバーへの変形ギミックが、共通パーツゆえに残っているだけを武装と言い切っているだけ。

思った通り、「合体巨神」と脚のパーツ構成が同じなだけの「水増し武装」

そもそもこれを、解説書のとおりに理解納得して、百歩譲っても「防御能力」であって、これはどう好意的に解釈しても、武装でも「機動」でもない(というか、この商品のネーミングの「機動」って単語って、どう考えてもガンダムからぶんどってきてるけど、いいんだろうか……)。

肩両脇の「グレネードミサイル」と、へその部分に突き刺して発射する、謎の「波動ビーム砲」! いかにもアオシマオリジナル設定っぽいが……?

むしろ、この「機動合体」で重要なのは、肩両脇パーツが開いて現れる「グレネードミサイル」と、唯一のオプション武装「波動ビーム砲」の存在だろう。

スプリングで肩脇のブロックがガシャっと開いて、さらにそこで現れた「グレネードミサイル」からスプリングでミサイルがポンッ!と飛び出す、子どもが大好きな仕様

イデオンパンチ、グレネードミサイル、波動ビーム砲、どれも「機動合体」ではスプリングで発射ギミックが付いているが、実はイデオンパンチとレグ・アブソーバー以外は、意外とデタラメなギミックではない。

波動ビーム砲は、腹部に接続する以外でも、腕に持たせたり、イデオンパンチを飛ばした跡の穴に刺したりして装備することもできる

これら「アニメスケール以前」のイデプラは、アニメ放送前に揃えられたメカニック資料を基に模型化されているわけだから、デザインの細部やギミックが、実際にアニメ本編と違った場合でも、それはアニメ実制作でオミットされただけで、初期設定には残っていたパターンも少なくないのだ。

個人的には、イデオンが、肩のブロックから水色のグレネードミサイルを展開していて、腹にイデオン・ガンをぶっ刺してる仕様。これって実は、アニメクランクイン前のイデオンの、正式武装の再現なんじゃないかと(イデオン・ガンがアーリーデザイン版なのも踏まえて)。
富野監督なら「肩脇ブロックからミサイル砲がデゲデーンと現れる」→「全身無限ミサイル装備」「イデオン・ガンは腹にぶっ刺して発射します」→「イデオン・ガンのエネルギーチューブコネクトが腹部にある」の変更ぐらいやりそうだし。

オプションで付属してくる「波動ビーム砲」

例えるなら、ガンダムで言えば、クローバーのDX合金玩具が構えてた巨大斧も、実は没デザインでは存在していたのだ。
『イデオン』でも、イデオン自体が『マジンガーZ』以降の由緒正しいスーパーロボットであるため、ガンダムと差別化するために、戦う時は、シリーズ前半は殆ど「殴る」「蹴る」で敵ロボと戦うわけで、シリーズ展開が始まってから、マジンガー系のリアル換骨奪胎で、全身に内蔵武装たるミサイル発射装置が埋め込まれ、やがては究極の手持武器「イデオン・ガン」が装備されるのだが、このプラモデルの「グレネードミサイル」は、マジンガー的内蔵武器として、初期デザインから「イデオンミサイル砲」としてメカニック内部図解でデザインされていた武装なのだ。

同時期の、トミーのイデオン玩具に描かれていた内部透視図でも、イデオンの内部に、劇中描写以上の「必殺兵器」の数々が内蔵されていることが描かれている

だからグレネードミサイルに相当する同じパターンの武装が、1/420 アニメスケール イデオンなどにも付属されるのだが、一方でこのキットの波動ビーム砲も、実際のアニメに登場したイデオン・ガンの、没デザインを基にパーツがデザインされているのだ(この後登場発売されていく1/420と1/810のアニメスケール イデオンには、イデオン・ガンに相当する武装はついてこない)。

テレビ版オープニングより。画面に背を向けてイデオン・ガンを撃つイデオン

テレビ版オープニングより。アーリーデザイン版イデオン・ガン

「波動ビーム砲」と酷似したデザインの、没版イデオン・ガンは、『伝説巨神イデオン』オープニングのクライマックスで、イデオンが背中を見せながら撃ってみせるカットなどで確認が出来る。

こうした解析をすれば、この波動ビーム砲が由緒正しいオプションであることが分かるだろうが、この「機動合体」でも、「合体」という単語をアリバイ化させるためか、波動ビーム砲は、「手に持つ」「外した拳の代わりに手首に刺す」の他に「腹部のイデゲージの穴に刺して合体し、腹部から正面へ向けて伸びている装備状態」が説明書で紹介されている。

その図はまさに、『イデオン』本編で、イデオン・ガンをエネルギーチューブで腹部に接続して撃つ描写の雛形とも言えるわけで、ここでイデオン・ガンの演出のリアルな変節を伺うことも可能なのだ。

「イデオン・ガンを、腹部に装着」という意味ではアニメ本編と共通している

そういう意味では、プレイバリューは3機合体を再現した「合体巨神」の方が高いと思われがちだが、スプリング発射ギミック好きでなくても、イデオンというスーパーロボットの完全再現を手にするためには、少なくとも波動ビーム砲(イデオン・ガン)の存在は不可欠であるので、やはり「合体巨神」「機動合体」の両方を揃えるか、双方のパーツが統合された「合体ロボット イデオン」を購入することがお勧めである。

「合体ロボットイデオン」両者のキットを融合したベストチョイス完成状態

こうして、3種の同型イデオンを3プロセスの完成形で見比べてみると、「70年代フォーマット」のロボットプラモとしては、決して子供騙しの悪い例ではないことが分かる。

イデオンの頭部は、カメラアイがゴーグルなので、どのキットでもあまり不出来な物はない。個々のキットで顎の処理で個性が別れるぐらいか

イデオンのプロポーション自体は、アオシマイデオンキットに共通する、トップヘビー(上半身が大きすぎ、下半身が貧弱)が目立つが、逆に言えば肩が上方に突き出ているなどの、イデオン独自の異質なシルエットを鑑みると、案外頑張っているプロポーションには見える。

もちろん「機動合体」パーツもあるので、「波動ビーム砲」がついてくる

可動の方も、70年代のアニメロボットのプラモデルなどでは、電池内蔵電動歩行ギミックが主流で、可動に配慮されたロボットプラモが殆どなかった時代の延長上で見れば、アオシマの合体ロボットシリーズのどれもが、合体を主軸に謳っておきながらも、可動を両立させようという姿勢自体が真摯であり、今回の「合体ロボット イデオン」では、車両3形態への変形ギミックが優先されているので、その関係で肘が180度曲がるという利点もあれば、ギミックを伸縮だけに限定したために曲がらない膝などの弱点もある。

普段は腹部の穴にはイデゲージパーツが差し込まれているが、それを抜いて

そこに波動ビーム砲を装着できる

その変形ギミックの恩恵で、両足をハの字型に広げて立つことは出来るが、その他のポージングギミックは、肩と首の軸回転ぐらいのものか。

武装含め、塗装を施すと、初期ガンプラの1/100程度には見栄えはリアルである

しかし「機動合体」と「合体巨神」を併せることで、3種車両形態への、簡易的ながらも変形合体と、イデオンの内蔵武器と没デザイン版イデオン・ガンが揃うわけで、そういったアレコレを考え合わせると、この「合体ロボット イデオン」は、イデプラの「アオシマ版大型イデオンキットVer.0 プロトタイプ」とも言えるのではないだろうか。

「合体ロボット」版イデオンの後ろ姿。車両メカ用の車輪ディテールや、コロ走行用の車輪がむき出しだったり、この辺りはまだ玩具的であるが、膝の裏のライン等は、湖川ラインをうまく再現している

電動歩行ギミックではない「アニメ劇中どおりの合体ギミックロボットプラモデル」の大型版としては、過去に既にバンダイの『超電磁ロボ コン・バトラーV』(1976年)などが先行していたが、コン・バトラーVの場合は、あくまで5機のバトルマシンが個々に商品化されて、それらを全機集めて合体させるとロボットになるという仕様であって、そちらの出来も素晴らしいものではあったが、バトルマシンのプラモデルを5個揃えるというのは、当時の子どもには随分経済的な難易度が高かったことは確かだった。

脚の裏がごっそりと丸空きなのが、このキットの一番のがっかりポイントか

イデオンの場合、ロボット形態から車両形態への変形は、デザイン的にそれほど難易度が高いわけでもないことも味方したというのもあり、一番ハードルが高いソル・バニアの車体の変形をばっさりオミットしたことで、簡易的な再現が可能になったというのはある。

塗装したソル・アンバー。キャタピラディテールもしっかり塗装

塗装したソル・バニア。やはりコクピットの追加パーツが、まるでしっかり肩脇ブロックが変形移動したかのようにシルエットを変えてくれている

塗装したソル・コンバー。コロ走行用タイヤが左右に出過ぎだが、全体の雰囲気は悪くない

それでも、ソル・アンバー形態で左右の腕を繋ぐために、車体前部のスロープや後部のブロックがパーツ追加されていたり、ソル・バニアやソル・コンバーのコクピットパーツや車輪パーツが別パーツ化されているだけではなく、脚部にはサイドに車輪列が最初からモールドされているなど、細かい点も意外にも気配りが成されているのである。

3機のメカが、今合体の時!

また、このキットは今で言うスナップフィットを採用していて、接着剤がなくても幼児層にも組み立てることが出来る仕様になっている。
そのはめ込み組み立て方式は、イマドキのガンプラと比較することは出来ないが、なかなか当時の技術論の枠の中では巧みに、挟み込んだパーツを固定するパーツが、出来る限り余剰ディテールのようには見えない工夫もされており、シールによる彩色の補完もかなり細部までフォローしており、後のイデプラ展開を語るにおいては、外せない佳作キットに仕上がっているといえよう。

イデオン、合体完了! 派手なアクションポーズは取れないが、ギミックは満載で楽しめるキットである。

簡易的でありながらも3種に分離変形するギミックと、作中では没になってしまったが、デザイン段階では組み込まれていた内蔵武装と、没デザイン版のイデオン・ガン。

「合体ロボット イデオン」の全パーツの塗装済み。再評価が待たれるアオシマ独自のキットである

そういう意味では、他の「ザンボット3」「ダイターン3」と同程度には、アニメに準じたプラモデルとしての完成度を誇った「合体ロボット イデオン」は、その後続いていくイデプラの試金石として、まずは先陣を切ったのである。


(取材協力 青島文化教材社)

市川大河公式サイト

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