今回はまず、アオシマのイデオン模型化への歴史や、イデオンプラモデルシリーズの流れなどを、ガンプラの流れと比較しながらその経緯を追いかけてみたいと思います。
画像は、ガンプラブームと、イデオンプラモデルシリーズをそれぞれ代表した、1/144 ガンダムと1/810 イデオンの、未塗装素組のキットの比較画像と、アオシマのデオンプラモデルの開発史のコラムで、当時を思い出していただこうという趣向です!

「白いモビル・スーツ」ことガンダムと、「深紅の巨神」ことイデオン! 今、夢の競演が!
今回からの番外編で紹介していくのは、シミルボンでもその流れで『伝説巨神イデオン』の作品紹介をするので、その『イデオン』に登場した、主人公ロボットイデオンの様々な立体を中心に、敵役の重機動メカ等も含めてイデオンの立体物歴史を俯瞰していきたいと思います。

1982年当時。「『ガンダム』から『イデオン』へ」のキャッチフレーズが目立った新聞広告から
この『ガンプラり歩き旅』連載第1回で記したように、ガンプラ第1号の「1/144 ガンダム」が、バンダイベストメカコレクションのシリーズの一つとして発売されたのが、『ガンダム』が放映終了してから半年を迎えようとしていた1980年7月。
『ガンダム』劇場版製作が発表されるのはその3か月後の10月で、この辺りからガンプラブームも『HOW TO BUILD GUNDAM』が発行された1981年7月へ向けてグングン加速していった。
しかし、そのガンダム・ガンプラブームと並行する形で、1/144 ガンダムが発売される直前から、ガンダムの日本サンライズ制作、ガンダムの富野由悠季監督で、1980年5月より『伝説巨神イデオン』のテレビ放映がスタートしたのだ。
『ガンダム』と『イデオン』の作品的な比較や詳細は、シミルボン『機動戦士ガンダムを読む!』での論に譲るが、ことプラモデル、模型化的には、この時期、運命を左右する「ねじれ」が生まれたのである。

「あの頃」の模型店の棚でひときわ人気を博していた、二大ロボット300円プラモのパッケージアート
そもそも、合金玩具的にはクローバーがメインスポンサーだった日本サンライズ・富野由悠季監督・名古屋テレビの路線『無敵超人ザンボット3』(1977年)『無敵鋼人ダイターン3』(1978年)は、共に模型化の権利を、ガンプラのバンダイではなく、青島文化教材社(以下・アオシマ)が取得して、実際の作品内でのメカニック設定より玩具アレンジを強くした、しかし、創造性と完成度の高いパズル的ギミックを盛り込んだマスコミ玩具模型を発売しており、その流れでは当然『ガンダム』も、アオシマが商品化するという下敷きは出来ていた。

素組のまま完成させた、1/144 ガンダムと1/810 イデオン
しかしここまででは、ザンボットもダイターンも、アオシマ当時のテレビロボットプラモデル王道のミニ合体シリーズなどで商品化していただけで、特にそれ以上の踏み込んだ商品展開をしているわけではなかった。
アオシマは、70年代中盤の『スーパーロボットマッハバロン』(1974年)や『電人ザボーガー』(1974年)などの頃から、幼児層が少ないお小遣いでも買える値段のミニキットを、いくつか買い集めることで完成するオリジナル合体形式のプラモデルを一つの主流にしており、それはマニアには有名な『アトランジャー』『宇宙空母レッドホーク』等の、原作のないオリジナルアオシマメカプラモにも顕著であった。

「子ども向けロボットまんが」のロボットの模型化に、革新をもたらしたバンダイの1/144 ガンダム
この、ミニ合体シリーズに言える大きな特徴としては、アオシマは一方でウォーターラインシリーズなどのスケールモデル模型メーカーの老舗でもあったので、合体シリーズの一個一個のデザインと出来は、ネタかと思うほどにトンデモな商品センスが多いのであるが、いざシリーズを集めて合体させた時の完成度は、ガンプラを先どること数年、既にマッハバロンなどの時代から、プロポーション、ギミック、アクションフィギュアとしての完成度などが高く、つまり他社に先駆けアオシマは、バンダイのガンプラに拮抗できるだけのスキルと経験値を、既に70年代中盤から蓄えていた、というのが、今回の番外編連載のカギになってくるのである。
アオシマのミニ合体シリーズは、定価が100円、接着剤要らずと、徹底的に幼児・児童層に的を絞って展開されていて、実は『ガンダム』に関しても、当初の視聴率の低迷さから、『ガンダム』版権窓口でもあった創通エージェンシーからアオシマへ向けて商品化の打診があったと聞く。

ガンプラブームを追従すべく、アオシマが決定打として送り出した、1/810 イデオン
しかし、アオシマサイドとしても泥船に乗るメリットがあるわけでもなく、様子見をしていたところ、『ガンダム』は当初の予定よりも早く打ち切られることが決まったため、アオシマ的にはむしろ日本サンライズとのパイプは大事にしておきたいというビジョンから、『ガンダム』終了後に始まる『無敵ロボ トライダーG7』(1980年)と『イデオン』の、2つの模型化版権を両方獲得したという経緯がある。
もちろんアオシマは、それまでの慣習に倣い、イデオンもトライダーも、ミニ合体シリーズを中心に商品化計画を進めたわけであるが、そこでバンダイが、『ガンダム』放映終了後に模型化権利を取得。
1/144 ガンダムが出荷されたそのタイミングで、まさにアオシマは『イデオン』と『トライダー』のミニ合体シリーズを、それぞれ4種、一個100円で発売展開を開始し始めたのであった。

1/810 イデオンの内部構造。完成後の可動領域に大差はないが、内部構造に対するアプローチの仕方が、ガンプラと全く異なることがこれで見てとれる
ガンプラの開発・発売、そしてブームの経緯に関しては、隅々までこの連載で記してきたので、軽いおさらいだけを書くが、ガンプラ開始までにバンダイもバンダイで、ベストメカコレクションというマスコミ玩具模型シリーズで、アニメや特撮のメカを、スケールモデルとDX超合金の、長所を兼ね備える仕様で商品化する経験値を積んでおり、ガンプラもそのシリーズの枠内から始まったためか、瞬く間にガンダムのプラモデル、ガンプラは、その売り上げとブームを急上昇させていった。
やがてガンプラが、1/144 シャア専用ザク、1/144 グフ、1/100 ガンダム、1/100 ドム、1/1200 ムサイ、1/1200 ホワイトベースと、シリーズの初動ラインナップをそれぞれのスケールで揃え始めていた1980年末、アオシマイデオンは、改めてアニメメカ設定をとりいれて、児童層とスケールモデルをそれぞれ意識し始めた黎明期のモデルの双方のイデオンプラモデルを送り出した。

1/810 イデオンの腕は、肩回転軸こそシンプルだが、ブロックの組み合わせに見える腕の曲がり角度は、ガンダムよりも広い
一つは「アニメスケール 1/420 イデオン(1000円)」、そしてもう片方は、ノンスケールで発売されたポケットパワーシリーズの「ソロシップイデオン(500円)」「Xメカイデオン(500円)」(この2つはイデオン本体を構成するほとんどの部品に共通ランナーを使っているため、年明け1981年初頭には、部品が統合されて「イデオン スペシャルデラックス(1000円)」という1つの商品も発売された)を、それぞれクリスマス商戦用に送り出してきたのだ。
この時点ではまだ、アオシマのイデオンプラモデルの戦略は、「『ガンダム』のプラモデルが売れているらしいから、アニメのロボットプラモは売れるらしい」以上には、なかなか照準を定められないでいた。

こちらは1/144 ガンダムの腕の構造。肘は意外と曲がらない。角度で言えば45度ぐらいが限界か
アニメ作品としての『伝説巨神イデオン』は、『ガンダム』以上に作品内容が難解で、対象視聴者層が高年齢層に設定してある作品だ。
なので「アニメスケール 1/420 イデオン」が、アニメでは描かれなかった武装を内蔵しながらも、ディテールやプロポーション、クリアパーツの使い方などにスケールモデルテイストを盛り込んできた仕様なのは、決してガンプラブームの影響とばかりは言い切れなかった。
実際1/420 イデオンには、ものすごく中途半端な、アニメの合体を「イメージさせるギミック」がプラスされていた。

1/144 ガンダムと1/810 イデオンの腕だけを比較してみる。イデオンの肘は90度近く曲がる構造で、肩も双方それなりに広がる。ボディへの固定方式は、ガンダムの方がプラスチックの摩耗対策が講じられている
しかし、1/420 イデオンは完成すると全長25㎝であり、ガンプラでは1/60スケールに相当するが、ほぼ同時期にバンダイが、やはりクリスマス商戦用に発売してきた1/60 シャア専用ザクが2000円であったことを考えると、1/420 イデオンの存在感とギミックの多さ、そして1000円という安さは、後のイデオンプラモコンセプトの展開を考えると、大きなフックになっていたと考えることは妥当だ。
また、1/420 イデオン(当時小売り向けカタログ表記商品名「ニューイデオン」)には、バンダイの「ベストメカコレクション」に対抗して、その時販売展開寸前までこぎつけていた、アオシマの「アニメスケール」シリーズの冠がいちはやく記されているが、これは完全にティーンズ対象のアニメロボットプラモという商品カテゴリを対象にもたないアオシマでさえ、そろそろ業界全体がガンプラブームを無視できずにきていた証拠でもある。

「開脚ができない」という点では1/144 ガンダムと同じだが、この1/810 イデオンの股関節の構造概念は、これ以前にも以降にも見られない、珍しい発想である
その『ガンダム』を、追従し追い越すだけの作品ポテンシャルがあるコンテンツは、1980年というこの時期まだ『伝説巨神イデオン』しか存在せず、ガンプラユーザーの中軸の、ティーンズに対する求心力を蓄えた作品もまた『イデオン』しか存在しなかったのは事実であっただろう。
アオシマは、1981年明けすぐに、『イデオン』のメインスポンサーでもあるトミーが『奇跡合体』の冠で挑戦し、しかし完全には再現しきれていなかったイデオンの3機変形合体を、あくまで児童層のスキルでも簡易的に雰囲気を再現できる「合体ロボット 合体巨神イデオン」と、その一方でイデオンのイデオンガンや、全身に内蔵された武装を、アーリーデザインやイメージからディフォルメ再現した「合体ロボット 機動合体イデオン」を、それぞれ700円で発売(この2つもイデオン本体を構成するほとんどの部品に共通ランナーを使っているため、1年後の1982年1月には部品が統合され「合体ロボット イデオン」として1000円で再発売された)。
しかし、アニメ『伝説巨神イデオン』は、視聴率の不振から、その直後に打ち切りで放映終了を余儀なくされた。

こちらは1/144 ガンダムの股関節。前後に軸でボディに固定するV字型パーツは、ガンプラモデラーには懐かしい。現行キットでも、この構造概念の発展形で股関節が成り立っているガンプラもある
一方のガンプラは、そのタイミングでとうとう真打登場の1/60 ガンダムを発売してきており、アオシマは続いて、おやこマシンシリーズとマイクロプラモデルシリーズでイデオンの幼児向け商品を展開。
と同時に、バンダイのガンプラに対抗すべく、かねてから準備を進めていた、ティーンズ層向け「アニメスケール」正式シリーズ化の販売を、『イデオン』放送終了後の1981年2月から、一気に展開し始めた。
その作りと可動ギミック等は、先行したバンダイよりもまだまだ拙いものの、合体等のギミックは排除で、アニメーションに近いプロポーションとポージングをという、1/144 ガンプラ模倣路線で企画された。

ガンプラモデラーであれば誰もが記憶しているように、股関節の開脚は1/144 旧ザクや、1/144 ドダイYS付属パーツなどから改善される発展性があった。イデオンの股関節を開脚可能にするには、根底から構造を変えなければならない
まずは、自社が保有する日本サンライズロボットアニメの、どれがポストガンダムとして需要があるかが、アオシマ自身にも絞り込めていない段階だったので、アニメスケールシリーズ展開開始と同時に、バンダイのベストメカコレクション同様に、箱サイズ統一規格で無理矢理アニメ設定に対するスケールを付加した、1/920 ダイターン3、1/460 ザンボット3、1/440 トライダーG7、そして1/810 イデオンを、300円という初期ガンプラ1/144と同じサイズ、価格でシリーズ展開開始。

両者の脚を比較してみる。膝の曲がり角度はイデオンの方が上だが、ガンダムの劇中再現の、流れるような安彦ラインを、無粋に分断することなくどの角度でも成立させたガンダムの側の方がすごいか
しかし、時代は一年前のガンプラブームを忠実になぞるかのように、『イデオン』も『ガンダム』同様に、テレビ放送打ち切り終了直後からファンの声が大きく響くようになっており、「バンダイが模型化版権を所有するアニメなどのメカを、統一サイズで商品化していたベストメカコレクションが、やがてガンプラ一色に塗り替えられていった」一年前のバンダイの現象そのままに、アオシマのアニメスケールもまた、イデオン以降は他作品を差し置いて、『イデオン』に登場する敵重機動メカや戦艦ソロ・シップ等、イデオン関連のメカで占められるようになっていった。

1/144 ガンダムの方の脚部は、膝こそ70度前後にしか曲げられないが、足首の可動が上手くフォローして、どんなポーズを付けても違和感のないラインを築いている
ベストメカコレクションのガンプラと、アニメスケールのイデオンプラモデルの、顕著な違いは2つあって。
一つはなぜか、アオシマのアニメスケールでは、並み居るメカ群を差し置いて、No.7からNo.10までを、コスモやシェリル、ギジェやカーシャなど、8人のキャラクターの固定ポーズフィギュア模型がいち早く商品化されているのだ。
これはガンプラが、アムロやシャアのキャラクターをガンプラ化する「キャラコレ」よりも半年早い商品戦略である。

それに対して1/810 イデオンの脚は、それこそ昭和のロボット的に「折れ曲がる」だけだが、ふくらはぎの「湖川ライン」は、実は他のキットの方でより忠実に再現されている。ちなみに、足首は爪先しか動かないので、接地性にメリットは与えない構造
それは多分、『イデオン』という作品が『ガンダム』以上に、メカよりも人間ドラマに比重を置いていたことを前提にした、アオシマの判断があったからであろうし、実際に『イデオン』は、SFメカ戦としては優れた演出は多々あったが、なにせ味方メカがイデオンとソロ・シップしか存在しない作品世界なので、『ガンダム』のようなミリタリーメカロマン色とは、ちがったテイストに仕上がっていたことも関係しているだろう。
そして、その「ガンダムとは違うメカ戦テイスト」の象徴が、敵の量産型や試作型の、数々の重機動メカの設定の独自性であった。
『ガンダム』は、敵味方両軍兵器を双方大量に駆使しての戦争という構造が尊重されたため、一部のモビル・アーマーを除けば多くのモビル・スーツが同じスケールで肩を並べることができたが、『イデオン』では、『ガンダム』とは戦闘ビジュアルの趣向を変えるためか、毎回登場する敵の重機動メカが、イデオンとほぼ同サイズというメカが割と少なく、物によってはイデオンの数倍もボリュームがあるメカもあれば、イデオンから見た時に、小動物か虫にしか見えない敵メカが群れを成して襲ってくるという画面作りも多かった。

1/810 イデオン(に限らず殆どのイデオンプラモデル)が優れていたのは、ガンプラがともすればおざなりにしていた「足の裏のモールド」を、300円サイズからいち早く取り入れていたことだろう
なので、いきおい箱サイズ統一のアニメスケールプラモデルシリーズも、そこでのスケール縮尺が一致するものが一組も存在せず、メカスケールとしては1/30のガタッカから、プラモデル史にそのスケール故に名を刻み込んだ、1/20000のバイラル・ジンまで、千差万別のシリーズとなってしまった。それはつまり、シリーズを買いそろえて並べても、何一つスケールが合ってない状況には、モデラー達は満足しないという反応が立ちふさがってしまい、ガンプラの1/144という発想が如何に偉大かが、その後のイデオンプラモデル展開の重要課題継続案件となったのである。
やがて、1981年の年末を迎える直前。
ガンプラはGアーマーを含めて、アニメ登場モビル・スーツの1/144キット化をほぼ出し尽くし、イデオンのアニメスケールも、ギド・マックやアブゾノール等の、超巨大重機動メカしか残らなくなったタイミングで、『伝説巨神イデオン』の劇場版映画化が決定。
そこでアオシマは満を持して、これまでにアニメスケールシリーズで発売したメカの全てを含んだ、アニメ登場全メカの1/600統一スケール模型化企画を立ち上げた。

若気の至り。今から20年近く前に、ガンプラのZZガンダムやザクⅢやマラサイ、そして1/600 イデオンを駆使して、漫画家の長谷川裕一氏がコミックアンソロジーで描いた、タイトルもズバリ『機動戦士VS伝説巨神』(コミックスタイトル『逆襲のギガンティス』)を、立体で再現してみたことがある。メガゼータもスザクもジオン改修版イデオンも、結構作り込んである
この1/600シリーズとアニメスケールシリーズとの関係は、単純なガンプラの1/144と1/100の差異の模倣に陥らない覚悟と気合が込められていたことが、そのシリーズの幕開けの、もちろん主役のイデオンが、まず先陣を切って、1600円という過去のイデオンプラモデル群最高額で発売されたことでも伺える。
この1/600 イデオン。今ではモデラー諸氏の評価は低いかもしれないが、アオシマが初めて、自社のスケールモデルの部署のスタンスとクオリティで、アニメ版のイデオンのプロポーション、3機3段階変形、3機合体の完全再現に挑んだ傑作キットである。
これまでの自社イデオンプラモデルにありがちだった、アニメにない余計なギミックやパーツを今回は一切排除し、むしろ、アニメ劇中で登場したイデオンの要素を余すところなく全て盛り込む勢いで、メインスポンサートミーの合金玩具でさえ中途半端に終わった、イデオンの3段変形3機合体を、差し替え、余剰パーツの嵐といえども、各形態に最大限共通のパーツを用いて、二次元の嘘の塊だった、イデオンの変形と合体の再現に突き進んだ金字塔のような商品に仕上がったのである。

驚くなかれ。これらが80年代のアオシマから、現代のバンダイまでを含めて、集めまくったイデプラコレクションの集大成である。今回の特集では、これらの全てのキットの全貌を明らかにしていく!
これはある意味、1/420 イデオンのリメイク、今でいうVer.2.0とも言えて、実はここでアオシマが拘りぬいた変形やディテールの一部は、時代を越えて技術論的に全てを凌駕しているはずの、2017年バンダイスーパーミニプラ版イデオンよりも、設定に忠実な部分も少なくない。
無論、元から物理的、三次元的に無理がある変形や合体なのだから(現代で、完全変形を謳った、超合金魂版のイデオンですら、様々な変形プロセスがアニメ版とは異なっている)、この時代、この時期のアオシマが、まがりなりにも3機のメカの3段変形と、3機合体を成し遂げられた脅威は、実はこれは同時期のガンプラにおいても類を見ない快挙であった(こういった、個々のイデオンプラモの評価や紹介は、今回の番外編連載でじっくり展開していく)。
3機3段変形合体1/600 イデオンを成功させた(と言いきっていいだろう)アオシマは、『イデオン』の劇場版へ向けて、良い意味で暴走を初めて止まらなくなっていく。

それら、イデプラ(一部完成品フィギュア含む)の箱の山。イデオン、イデオン、イデオン、イデオン! どんだけイデオンが好きなんだ俺は!
1/600シリーズは、アニメスケールへのモデラーファンからの批判を倍返しする勢いで、どんな巨大な重機動メカも、どんな小さな戦闘機メカも、意地でも1/600でキット化し続け、例えば小型重機動メカ・アディゴが2個セットで300円だったかと思えば、劇場版が公開された1982年7月には、ザンザ・ルブ1500円、ギド・マック1000円、ガルボ・ジック1300円、アブゾノール1000円と、大型キットが集中して発売されたりした。
そして、ロボットアニメとプラモデルの連動ブームがピークを迎えた1982年9月には、アリイ、今井の『超時空要塞マクロス』(1982年)、バンダイの『戦闘メカ ザブングル』(1982年)、タカラの『太陽の牙ダグラム』(1981年)などの群雄割拠の真っただ中で、アオシマは「1/600 イデオン プロポーションタイプ」という、いわゆる「大型イデオンキットVer.3.0」を送り出した。

イデオン集合写真を俯瞰角度から。今回からしばらく、ガンプラと並行宇宙のように展開された、イデオンのプラモ、通称“イデプラ”の魅力を伝えていきたいと思っている
この、1/600 イデオンプロポーションタイプは、既存の1/600 イデオンが、合体と変形のために犠牲にしていたポーズアクションをメインのコンセプトとして再現するモデルとして、無変形合体の仕様で設計、生産された商品である。
皮肉にも、商品名でアピールしているプロポーションそのものは実は向上しておらず、むしろ旧1/600の方が劇中イメージに近いとはいえ、このVer.3.0の、フルアクション可動への拘りは職人的で、首や腰の可動、腕の絞り可動、前腕ロールの追加など、バンダイが同様のコンセプトで1/100 ガンダムを事実上リファインした、1/100 パーフェクトガンダム(1400円)の発売が1984年12月であることを考えれば、どれだけアオシマの先進性がバンダイに勝るとも劣らないものであったかが分かるだろう。
結果、ガンダムブームの影響で、ガンダムの柳の下のドジョウをとばかりに、兵器メカが敵味方乱舞するメカロボットアニメは、この時期大量に制作放映されたが、統一スケールで、登場メカの殆どをプラモデルで商品化できるまでにビジネスが展開した事例は、バンダイのガンダムの1/144 1/100と、タカラのダグラムの1/72の他は、アオシマのイデオンの1/600ぐらいしかなかったのが、80年代ティーンズ向けロボットアニメブームの現実であった。

1/144 ガンダムと1/810 イデオン。あの狂乱のロボットプラモブームは、この両雄が突破口を開いて、初動を牽引していった時代であったということを、覚えている者は幸せである。心豊かであろうから……
なので今回の『ガンプラり歩き旅』番外編イデオンシリーズは、この時期アオシマが発売した「イデオンそのもののプラモデル」を中心に、特に1/600にスポットを当てて、現代でもそのスケールで発売されたイデオンたちと、時空を超えた競演を記してみたいと思う。
アオシマのイデオンプラモデル商品群は、児童層向けからティーンズ向けへと、突然シフトしたわけではなく、徐々にスライドしていった歴史があるだけに、なかなか興味深い旅になるのではないだろうか?
今後の展開を乞うご期待!
(取材協力 青島文化教材社)
市川大河公式サイト