概要

『クレイジー・クライマー』ファミコン版
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体一つで高層ビルの外壁を登るクレイジーなクライマーを操り、最上部を目指すアクションゲームです。最大の特徴はレバーを2本使う独特の操作系でしょう。
命綱無しに生身の人間が高層ビルを登るという荒唐無稽の世界観、他に類を見ない操作体系、斬新なアイデアから高評価を得た、レトロアーケードゲームの名作です。
システム
基本的な操作とシステム
入力デバイスはレバー2本のみです。右レバーで主人公の右腕を、左レバーで主人公の左腕を操作し、ビルの窓サッシをつかんで登っていきます。
屋上に出現するヘリにつかまるとステージクリア。途中、妨害されて落下すると1ミスになり、残機を1つ失います。
右レバーを上に上げると右腕を上げ、左レバーを上に上げると左腕を上げます。
上の段のサッシを掴んでレバーを下げる=腕を下げると体が持ち上がります。これを繰り返せば主人公は1段づつ登っていくことが出来ます。逆にサッシを掴んだ状態で腕を伸ばし下の段を掴んで上の手を下げれば一段だけ降りられます。二段連続で降りることはできません。ステージ開始時に4段登っているため、これによって地上に降りることが出来なくなっています。
レバーを左右に入力すると腕を左右にずらすことができ、片手ずつ隣の部屋のサッシをたぐり寄せれば左右移動ができます。
操作を誤って、両手がサッシから離れるとそれだけで落下してしまいます。通常は片手がサッシから離れている状態でサッシを掴んでいる手を離すことはないのですが、登る操作が速すぎると手を滑らせることも。
屋上まで登ればクリアとなります。その際に、画面上部から飛来するヘリコプターを掴めばボーナス得点が入ります。
一定時間ヘリコプターを掴めないでいると去ってしまい、ボーナス得点が得られません(クリアにはなります)。また、時間経過や落下物への接触でボーナス得点が初期値の半分になると登頂失敗となります(次のステージには進めます)。
様々な妨害物
窓サッシ
窓は時間経過により開いたり閉じたりします。完全に閉じていると窓をつかむことが出来ないため、両手とも窓を閉められると落下してしまいます。
落ちてくる物
落下物は植木鉢・瓶・鉄骨・鉄アレイとさまざまなものがあります。これらに接触した際、片腕が開いていると落下してしまいます。両手ともサッシを掴んでいればセーフですが、この時体勢が崩れ片手を離してしまいます。このため、体勢を立て直す間もなく連続ヒットすると落下してしまいます。特に連続ヒットしやすい鉄骨や鉄アレイは危険です。
ステージ最初の鉄骨や鉄アレイは耐えられる可能性もありますが、一定以上の階に到達すると振ってくる鉄骨や鉄アレイに接触すると問答無用で落下するようになります。
植木鉢などを落とす人は閉じた窓と同じ扱いで、人が出ている窓は掴むことができません。また、エリアによって、同時に出てくる人の最大数は決められています。
落下物に接触するとボーナス得点が初期値の1%だけ減少します。連続ヒットするとその回数だけ減少していきます(連続ヒットの場合は大抵落下しますが…)。
看板
上階から落ちてくる巨大看板に接触すると条件問わず落下してしまいます。
電飾看板から出ている剥き出しの電線に接触すると運次第で落下します。電飾看板自体は通過可能です。
ゴリラ
道中、巨大なゴリラが出現。定位置に陣取ってパンチを繰り出すだけですが、殴られると運次第で落下します。
鳥
鳥が出現し卵や糞を落としてきます。卵と糞は落下物と同じ扱いですが、鳥は一定階層に到達するまで画面上を周回するので非常に厄介です。
その他
ビルはところどころ穴があいていたりくびれていたりするため、そういうところでは主人公が選べるルートが狭くなり、障害物回避が難しくなります。
たまに風船が飛んできて、掴まると主人公をある程度上昇させてくれます。
一度ミスすると、そのエリアの障害物は消え、窓サッシだけが開閉するようになります。鉄骨や鉄アレイ、看板の落下があるエリアでミスをした場合、それらの落下もなくなります。このため、同じエリアで連続ミスするようなことは起こりにくくなっています。
実際のゲーム画面
ツッコミ所はたくさんあると思いますが、あまり深く考えてはいけません。
当時のゲームは面白ければ何でもアリだったのです。
一応、販促チラシの設定ではビル火災から逃れるために屋上を目指していることになっているのですが、それはそれで辻褄が合わない部分が多いです……
評価点
その稀有な操作デバイスからくる体感的直感的な操作方法が非常に気持ち良いです。
リズム良く左右のレバーを上へと入力するだけで登っていくというシンプルな操作方法なのでとっつき易く、障害物もたいてい(ここ重要)何かしら対処方法があるため、コツさえつかめば誰でも遊ぶことが出来ます。
「たいてい」というからには、そうでない場面にも遭遇します。鉄骨や看板が逃げ場のない場所で落下してくるなど…。
当時では珍しかった音声合成も採用しており、上手く登れないときに聞こえる「ガンバレ」という声援や、物がぶつかった時の「イテッ」「アレー!」などの声が印象深かったです。
レバーを2本使うゲームは非常に珍しいです。本作および続編以外では、1983年の『リブルラブル』や1984年の『空手道』などそれぞれ独自の操作性を持った極々少数のゲームに限られます。
問題点
ニチブツのみならずこの頃のゲーム業界ではよくある事でしたが、BGMが全て(おそらく)無断使用楽曲でした。子象の行進、ドラえもんのうた、ピンクパンサーのテーマ、しらけ鳥音頭など。これらは2018年現在でも著作権保護期間内の楽曲です。
移植版ではほぼ全てサウンドが変更されているため、無断使用の可能性は高いです。ただし、鳥出現時のBGMとして使われる「しらけ鳥音頭」は移植版等でJASRACから許諾を得て使用されています。
ラストステージ4面では場合によって進行方向をすべて埋め尽くす即死看板が降ってくるなど、運ゲー化する場面があります。
…実は8面分のデータが入っていたらしいのですが、バグで全4面ループになっています。面数表示も4面クリアで1面に戻ります。移植版でもバグは解消されず、全4面ループのままです。
もしかしたら仕様なのでしょうか…?
総評
本作は他に類を見ない一品物のゲームです。単純操作で解りやすいことも相まって大ヒットを記録しました。看板や鉄骨が外壁スレスレを頻繁に落下する高層ビル、窓枠にしがみついている生身の人間に植木鉢を投げ落とすその住人など、まさにクレイジーな世界観で多くの人の記憶に残る一作となりました。
本作と『ムーンクレスタ』のヒットを受けて、日本物産はただのコピーメーカーから1人前のゲーム開発企業へと成長していったのです。
移植について

『クレイジー・クライマー2000』パッケージ裏
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本作はさまざまな機種に移植されていますが、前述の通り、全てサウンドは変更されています。また、レバー2本による操作感覚の完全再現に成功した移植はプレイステーション版からでした。
本当は続いて移植版について詳しく書きたいところですが、今回はアーケード版のみの紹介にとどめておきます。大量になって大変なので(笑)。