【創業した者、されたモノ】光栄をつくりだした男、シブサワ・コウの野望と名シリーズ作品

【創業した者、されたモノ】光栄をつくりだした男、シブサワ・コウの野望と名シリーズ作品

《川中島の合戦》から始まり、《信長の野望》《三國志》などヒットシリーズを生みだすこと数十年。《光栄》をつくりだした男はいかなる野望の持ち主だったのか。【創業した者、されたモノ】第5弾。


はじめに

 シブサワ氏がこういった野心をもっていたというのは、やや意外に思える。

 そもそもシブサワコウという存在自体が謎めいた存在だった。
 誰だかわからないのに、光栄のゲームのスタッフロールには必ずと言って良いほど最初に登場する人物。それがシブサワ・コウであった。

 昔に比べると、今はだいぶシブサワコウについての情報が明かされている方であろう。
 コーエーテクモホールディングス社長という肩書で、2017年にはついに以下のような本も登場した。

シブサワ・コウ「0から1を創造する力」

シブサワ・コウ 0から1を創造する力 | シブサワ・コウ |本 | 通販 | Amazon

 今回はこの資料を中心に、シブサワ・コウがつくりあげた名シリーズ作品と、いくつかの逸話をご紹介しようと思う。

たった1台のパソコンが野望を支えた

信長の野望

Amazon.co.jp:信長の野望|オンラインコード版_ダウンロード_ アマゾン ゲーム

 《光栄》の創業は1978年のことである。と言ってもこの時点ではゲームメーカーとしてゲームを売るどころか、ゲームをつくってすらもいなかった。
 光栄は染料工業薬品の販売業だったのである。
 当然、《三國志》も《信長の野望》も《川中島の合戦》も無かった。

 そんなある日のこと、かねてよりパソコンを欲しがっていた氏に家族はパソコンをプレゼントしてくれた。

 今の時代ならば、どのソフトもパソコンに搭載することは難しくないだろう。
 だがシブサワ氏がパソコンを入手したのは1980年。
 ようやく家庭や個人のもとにパソコンがやってきていた時代である。

 シブサワ氏はプログラミングの勉強と実践を重ねながら、昼は業務用のソフト作りに精をだし、夜は夜でべつの《遊び》に精をだしていたという。

 彼が言うところの《遊び》が、すなわち《ゲーム開発》のことであった。

 こうしてつくられたのが上杉謙信と武田信玄を題材にしている《川中島の合戦》であった。そしてその後、1983年には第1作となる《信長の野望》も世に出てくることになる。

 言わばこの1台のパソコンは、シブサワ氏のゲーム好き、歴史好き、信長好きと、その野望というパズルを支えた大切なピースだったわけである。

なぜ信長だったのか?

 織田信長の戦術、戦略、そして何より経営の技に関しては他の大名を圧倒していると思わせる部分が多い。
 もちろん信長には残虐な行為や冷酷さを感じさせる逸話もあるが、シブサワ氏はその部分は好きではないと語っている。

 歴史上の人物のとらえ方は大きくふたつある。《肯定》と《否定》である。
 これはいわゆる歴史あるあるで、「後世の歴史家の評価は分かれる」「人によって好みが分かれる」といったあたりの表現は銀河英雄伝説ファンでなくても聞いたことがあるだろう。

 織田信長は、そういう二面性の強い人物であった。
 だが二面性と残虐性が強い人物ということは、裏を返すと功績も大きいという部分がある。
 三國志における曹操もそういった類の人物のひとりだろう。

 もうひとつややこしい問題がある。
 歴史上の人物は、一定以上年代が経っていると《創作》されていることが多いのである。
 あるいは頭の良さを、あるいは残虐性を、あるいは優しさを、苛烈さを、その人物の何かしらの要素を強めるために、後世の人物たちは良かれ悪かれ彼らを《脚色》するのである。

 これら《二面性》《脚色性》の迷路にはまりこむ人は多い。
 だがシブサワ氏は、この迷路を脱して「好きなところが好き。だが全てが好きなわけではない」という落ち着いた視点に立つことができたようである。

 熱狂するわけでもなく、冷めすぎるわけでもない。
 絶妙な好意と情熱と理性が発揮されたからこそ《織田信長》という像から『信長の野望』がつくりだせたのかもしれない。

原点にして頂点? 信長の野望(初代) - Middle Edge(ミドルエッジ)

いつの間にか消えた「歴史三部作」の謎

チンギスハーン・蒼き狼と白き牡鹿IV

Amazon | KOEI The Best チンギスハーン・蒼き狼と白き牡鹿IV | ゲームソフト

 《歴史三部作》のうち、《信長の野望》と《三國志》はシリーズ10作をゆうに超える人気シリーズとなっており、現在も人気は維持されている。
 一方で《蒼き狼と白き牡鹿》は4作品まではつくられてものの、5作品目がつくられることはなかった。なぜか。

 その理由は意外にも「キャラクターのイメージ」にあると本書では語られている。
 日本や中国など主に国内で覇を唱えていた信長、三國志の登場人物達とは異なり、チンギス・カンは国外にも覇を唱えていった人物である。

 すると何が起こるか。海外の人々がチンギス・カンに対し、《多くの国を征服した侵略者》というイメージをもってしまっているのである。するとゲームの代名詞であるチンギス・カンに好意的になれないという問題が発生してしまう。
 これが原因で《蒼き狼と白き牡鹿》は海外での売上が伸びなかったらしい。

 海外でも順調に売れた《三國志》と《蒼き狼と白き牡鹿》のその後を分けたのがキャラクターイメージであることは少し意外と言えば意外である。

三國志

Amazon.co.jp:三國志|オンラインコード版_ダウンロード_ アマゾン ゲーム

荒れに荒れたファミコンソフト『信長の野望 全国版』

信長の野望 全国版

Amazon | 信長の野望・全国版 | ゲームソフト

 開発段階からして逸話が存在している。

 これである。
 後にゲーム業界は《メモリー拡張パック》《ディスク交換システム》《1のデータを2に引き継げる(コンバータ)》などのシステムを実装していくが、いずれも1990年代、ゲーム機黄金期と呼べる時代のことであろう。

 さらに流通の点でも一悶着あった。
 当時、ゲームソフトを流通させたいと思った場合はソフトメーカーが全国の会社をまわって営業をするのが一般的であったが、資金、時間、営業員にまだ余裕の無かった光栄は逆に各位を1箇所に集めるという方法をとったのである。

 さらに取引内容も手形ではなく半金前払いという現金払いを条件にしたということも当時は型破りな方法であったらしい。


 様々な《型破り》ポイントがあったファミコンソフトとしての『信長の野望 全国版』だが、最終的な売上としては50万本を記録した。
 1981年の『川中島の合戦』が1万本の売上だったのに対し、1988年にはその50倍である数値を叩き出したのであった。

「人類の半分は女性だ!」 これも光栄ならではの発想『アンジェリーク』

 そんなご時世でありながら、シブサワ氏の奥さんは強く主張していた。

 そこで生まれたのが『アンジェリーク』。
 開発には女性を主力としたゲーム開発チームを組み臨んでいる。

 たしかに、漫画というジャンルにおいては昔から少年漫画がある一方で少女漫画がその世界を形成していた。
 インベーダーゲームやアクションゲームが流行しているなか、「大人でもじっくりと遊べるゲームをつくりたい」というのが『川中島の合戦』が生まれた理由だった。
 そう考えると「男性向けゲームがこれだけ存在しているなら女性向けゲームが存在していても良い」と考えるのは、当然と言えば当然のことのように思える。

 だが、時代は少なくともそうは言っていなかった。
 この発想をすることができた人物と、その発想を採用することができた人物、そしてそれらを実際にモノにできる開発チームがなければ『アンジェリーク』は生まれなかったのだろう。

アンジェリーク

Amazon | アンジェリーク | ゲームソフト

関連する投稿


レトロゲーム配信サービス「プロジェクトEGG」より『トラぶるCHASER 第1話』『3Dテニス』が配信スタート!!

レトロゲーム配信サービス「プロジェクトEGG」より『トラぶるCHASER 第1話』『3Dテニス』が配信スタート!!

レトロゲーム関連の復刻・配信ビジネスなどを行うD4エンタープライズが運営するレトロゲーム配信サービス「プロジェクトEGG」にて、新規コンテンツ『トラぶるCHASER 第1話 トラブルは空から未来から(PC-9801版)』『3Dテニス(MSX版)』の配信がスタートしました。


『オホーツクに消ゆ』と北海道紋別市がコラボ!ゲームに登場するシーンを使用したアクリルジオラマが「ふるさと納税返礼品」に!

『オホーツクに消ゆ』と北海道紋別市がコラボ!ゲームに登場するシーンを使用したアクリルジオラマが「ふるさと納税返礼品」に!

ジー・モードより、推理アドベンチャーゲーム『北海道連鎖殺人 オホーツクに消ゆ ~追憶の流氷・涙のニポポ人形~』の世界観を再現したオリジナルグッズが、北海道紋別市のふるさと納税返礼品として提供されます。


抜群のスタイルで💦世の脚光を浴びた『広田恵子』現在は?!

抜群のスタイルで💦世の脚光を浴びた『広田恵子』現在は?!

高校時代からモデル活動を始め1986年に「カネボウ・スイムウエアイメージモデル」として脚光を浴びた広田恵子さん。現在は家族で〇〇を組んで活動している・・・。


完璧・無量大数軍の一人「完肉」の称号を持つキン肉マン『ネメシス』が、SpiceSeedキン肉マンシリーズに登場!!

完璧・無量大数軍の一人「完肉」の称号を持つキン肉マン『ネメシス』が、SpiceSeedキン肉マンシリーズに登場!!

ハイクオリティフィギュアの製造・販売で好評を博している株式会社SpiceSeed フィギュア事業部より、キン肉マンシリーズのフィギュア『ネメシス』が発売されます。


懐かしの名作が勢揃い!特製クリアしおりが貰える書店フェア「藤子・F・不二雄 S(すこし)★F(ふしぎ)な世界」が開催!!

懐かしの名作が勢揃い!特製クリアしおりが貰える書店フェア「藤子・F・不二雄 S(すこし)★F(ふしぎ)な世界」が開催!!

藤子・F・不二雄による名作の数々を紹介する書店フェア「藤子・F・不二雄 S(すこし)★F(ふしぎ)な世界」が、8月7日(木)より全国のフェア参加書店にて順次開催されます。


最新の投稿


福岡の食のテーマパーク「直方がんだ びっくり市」が50周年!大盛況で幕を閉じた「半世紀祭」をレポ

福岡の食のテーマパーク「直方がんだ びっくり市」が50周年!大盛況で幕を閉じた「半世紀祭」をレポ

1976年の創業から50周年を迎えた福岡県直方市の「直方がんだ びっくり市」にて、2026年4月17日から19日までアニバーサリーイベント「半世紀祭」が開催された。銘柄牛が50%OFFになる「肉袋」や名物セールの復活、地元ヒーローの参戦など、半世紀の感謝を込めた熱気あふれる3日間の模様を振り返る。


『メタルスラッグ』シリーズ30周年記念プロジェクト始動!新作開発や特設サイト、記念映像が一挙公開

『メタルスラッグ』シリーズ30周年記念プロジェクト始動!新作開発や特設サイト、記念映像が一挙公開

アクションゲームの金字塔『メタルスラッグ』が2026年4月19日に誕生30周年を迎えた。株式会社SNKはこれを記念し、シリーズの再燃・リブートを掲げた記念プロジェクトを始動。新作ゲームの開発を含む多彩な企画の推進や、歴史を振り返る記念映像の公開、特設サイトの開設など、世界中のファンへ向けた展開が始まる。


山下達郎ソロ・デビュー50周年記念!JOURNAL STANDARDとコラボした限定Tシャツが発売

山下達郎ソロ・デビュー50周年記念!JOURNAL STANDARDとコラボした限定Tシャツが発売

ソロ・デビュー50周年を迎えた音楽界のレジェンド・山下達郎とJOURNAL STANDARDが特別なコラボレーションを実現。1stアルバム『CIRCUS TOWN』収録の名曲「WINDY LADY」をテーマにしたTEEがリリースされる。音楽史に刻まれた名盤の空気感を纏える、ファン垂涎の記念アイテムが登場だ。


中山美穂の伝説が蘇る!全175曲収録の完全保存版Blu-ray BOXが6月17日発売決定

中山美穂の伝説が蘇る!全175曲収録の完全保存版Blu-ray BOXが6月17日発売決定

中山美穂のコンサート史を凝縮した5枚組Blu-ray BOX『Miho Nakayama Complete Blu-ray BOX~Forever』が2026年6月17日に発売される。1986年の初公演から98年までを網羅し、全編HD・オーディオリマスタリングを敢行。未発表ライブ映像やMVも初収録した、ファン必携の記念碑的作品だ。


俳優・水谷豊の真実に迫る著作『YUTAKA MIZUTANI』発売!監督としての人生と秘められた過去を解禁

俳優・水谷豊の真実に迫る著作『YUTAKA MIZUTANI』発売!監督としての人生と秘められた過去を解禁

俳優・水谷豊の著作『YUTAKA MIZUTANI』が発売される。「傷だらけの天使」や「熱中時代」、そして「相棒」と、各時代でトップを走り続ける彼が、自らの監督作品を通じて「誰も知らない本当の水谷豊」を明かす。サイン本お渡し会や、代表作『青春の殺人者』の50周年記念Tシャツ発売など、ファン必見の情報が満載だ。