6番目のガンダムキットは、2009年7月に発売された、1/144 HG Ver.G30th ガンダム。これを今回は「Ver.G30th」と呼ぶ。
お台場1/1ガンダムのスケールモデルでありながら、ディテールはハード、構造はシンプル
ガンダム放映30周年を記念して、お台場に建造された1/1ガンダムを基準にスケールモデルとして作られたガンダム。
そのため、アニメ版ガンダムとは一線を画すデザインリファインが施されている。
これ以降、お台場1/1ガンダムをベースにした1/144 ガンダムは、3種類が発売されることになる。
カメラアイの目つきなど、バランスはかなり高いレベルにまとまっている頭部
クリアやメッキ、タイアップなどで、ガンダムキット最多の25種類のバリエーション展開をしたことからも、バンダイが様々な意味で、この時期「お台場ガンダム」とこのキットを、21世紀ガンダムリファインデザインのスタンダードにしようとしていたことが分かる。
可動範囲は広いが、肘や膝などは一軸関節
可動範囲は、HGUC 021より動く部分もあるが、基本関節構造はあまり進化していない。結果的にはHGUCの基本フォーマットが、二重関節が基本装備に移行していくので、結果的には過渡期の商品に留まってしまった。
お台場ガンダムに、安彦作画ポーズは無理があるか?
一時的とはいえ、このキットが1/144 ガンダムプラモのスタンダードになった史実は事実である。ただ、Ver.G30thというネーミングからして、バンダイが意地で盛り上げようとした結実である可能性も否定できない。
歴代1/144 ガンダムキット7番目は、2010年7月に発売された、1/144 リアル・グレード ガンダム。これを今回は「RG」と呼ぶ。
問答無用の解像度! 追従不可能なハードディテール!
Ver.G30thと同じく、お台場1/1 ガンダム立像をベースに、Ver.G30thとは真逆に、徹底した緻密なパーツ構造と組み立て難易度、驚愕の可動範囲で差別化を図った究極のリアル・グレード(RG)の名は伊達ではない。
この頭部の、何が一番すごいといえば、口元の「への字口」までもが、塗装でもディテールでもなく、開口されていることだろう
付属のコア・ファイターの尾翼の白部分以外、追加塗装が一切必要ない色分けといい、関節が可動するたびに、連動してスライドする装甲といい、1/100のマスター・グレード最新版のフォーマットを、さらに緻密化させて1/144に詰め込んだ、誉め言葉として過剰仕様のキットとなった。
お台場ガンダムには装備されていなかった、ライフルとシールドも装備!
結果として、可動させるたびにはがれやすい外装や、組み立てプロセスで破損が起きやすい、組み立てそのものの難易度がもたらすストレスが半端ないなど、問題点も数多く発生したが、ガンプラ30周年を記念しての、試金石的な挑戦と技術アピールとしては、充分成功したガンダムプラモであったといえる。
同じポーズでも、この解像度とハードディテールのガンダムがとると迫力が違う!
良い意味で、「初代HGガンダムの、20年ぶりのリメイク」要素が満載のRGであったが、意欲とコンセプトの高さに、今一歩量産生産品の完成度が追い付ききれなかったという弱点まで初代HGを踏襲する形になってしまったが、むしろこのキットの発売自体は、さらにここから20年後の2030年には、どんな1/144 ガンダムが発売されるか。そこに思いを馳せるのもありだろう。
8番目のガンダム。2015年5月から、ガンダムフロント東京で、ガンダムファクトリーイベントで頒布された1/144 ガンダムを、今回は「GFT」と呼ぶ。
すがすがしいまでの棒立ち感
どういう角度で考察しても解説しようにも、この特別企画のネタ枠、ボケ担当になるしかないのがこのキットの宿命だが、ほぼ関節可動ゼロ前提の簡易ガンプラとして捉えた時には、さすがに「3つめの『1/144 お台場ガンダム』」でもあるからか、立ち姿自体のシルエットは悪くない……ぐらいしか誉めるところがみつからない。
スケールモデルとして考えた時、「全く可動しない」「何もオプションがない」は、そもそものお台場ガンダムのスペックでもあるので、それを忠実に立体化したという好意的解釈をすれば、このキットに何も問題はない……とも言えないこともない。
あとほめるとすれば、歴代ガンプラトップクラスの「組み立てやすさ」か。
どうやらガンダムの顔らしい……というところまでは判別できるのだが……
この連載用に用意できたのがクリア版だったこと自体は、筆者の責任でもあるのだが。それを差っ引いても、このGFTは、まずは頭部だけは入場者全員に無差別爆撃で配布される前提だったので、コストを考えての色分け完全無視だったのかもしれない。
もしくは、ガンプラファクトリーに参加せずに、ミニ胸像として持ち帰った時には、単色の方がデスクトップアイテムとしては収まりが良いというのもあったかもしれない。
ただ、この写真からも薄っすら感じ取れるが、このキットもさすが最新版だけあって、顔の造形自体は、初代やGAと同じ分割であるが、造形クオリティと細部のディテールはなかなかレベルは高い。
信じられるか……? これで、精一杯全身の可動箇所を駆使して、動かしてポーズをつけてみたんだぜ?
もうフォローするのも暖簾に腕押しという気もしないではないが、このGFTの場合の「可動」は、あくまで「分割されたパーツを組み立てる際の接続方式のオマケ」でついてくる機能でしかない、ということは強調しておきたい。
あくまでも「ガンダムフロント東京来訪記念グッズ」なのだ。
「お台場ガンダムの1/144」としては、ありとあらゆる意味でRGとは対極にある記念品である。
もはや、なんのポーズを目指してこの画像が作られたのかも分からないレベル。ライフル自体そもそも持っていないし……
多くを望んではいけない……。むしろ何も望んではいけない。
FG版とも違って、これをベースとして徹底改修して、クオリティを上げようとする猛者もいるまい。
なにせGFTがコンセプトにした「1/144のお台場ガンダム」の究極版は、先にRGが存在してしまっているのだから……。
歴代1/144 ガンダム9番目は、2015年7月に発売された、1/144 HGUC 191 REVIVE ガンダム。今回はこれを「REVIVE」と呼ぶ。
2018年現在。様々な意味でバランスが取れた、決定版の1/144 ガンダム!
「オールガンダムプロジェクト」と「REVIVE」という、2つのコンセプトの流れで、リメイクされた最新版HGUC 1/144 ガンダム。
リファインデザイン自体は、HGUC 021とRG、テレビアニメ版とお台場ガンダムの折衷という辺りか。
しかし、逆にその足し算が功を奏したのか、全体的なフォルムや印象は、小顔で細身ではあるが、劇場版『機動戦士ガンダムⅢ めぐりあい宇宙編』(1982年)に登場したガンダムに近くなっているので、筆者は『めぐりあい宇宙編』の再現の殆どを、このガンダムを使って行った。
最新版のガンダムの顔。目つきがHGUC 021よりも若干優しくなっている
最新キットになるたびに進化する、顔のパーツの分割や色分けだが、1/144 ガンダムの場合、途中にRGという化物が流れにあるため、一概に時系列的に1作ごとに進化、というわけにはいかないが、カメラアイ下の赤い隈取も別パーツ化されるなど、HGUC版の範囲では、HGUC 021より進化していることは確かである。
より進化した関節構造で、RGほどハードルが高くなくても、RGに近いレベルでポージングが可能!
新素材・KPSのマテリアル能力を身に着けたREVIVEは、RGほどの複雑緻密なパーツ構成を築かなくても、RG準拠の可動範囲能力を誇る。
webなどでは、その小顔と細身さには批判も上がっているわけだが、そういう意味ではHGUC 021もまだ充分入手可能なのだから、そちらを選べばいい。HGUC 021の可動の限界は、技術論の進歩ではなく、アニメ版のシルエットを尊重した結果の必然的な限界論に近いので、どうしても「どちらを選ぶか」が迫られるのはユーザーであり、その両者を併合した1/144 ガンダムを望むには、いずれ起きるだろう、バンダイの設計技術のワンランクの進化を待つべきだろう。
肩のスウィングが上方に向かっている機構が、このポーズにピッタリ見合っている
この後最後に紹介する「組立体験会Ver.」が、GFT同様のイベント限定簡易番外編である事実を前提とするならば、このキットが今現在の最新型のスタンダード1/144であると言い切れる。
オールガンダム10機勢ぞろい。最後を飾るのは、2016年8月から各模型店やイベントなどの「ガンダム組立体験会」イベントで頒布されている1/144 ガンダム。これを、今回は「組立体験会Ver.」と呼ぶ。
ぱっと見には、REVIVE版とあまり変わったところが見えない
むしろ、REVIVE版と完成見栄えを変えずに、とことんコストや難易度を下げて、組立体験用の廉価版として設計したわけで、その素組の完成形としては、バンダイサイドの様々なアイディアや苦肉の策や技術上昇がうかがえるキットになっている。
簡易キットながら、かなり色分けもされている頭部。やはり「メインカメラの赤もパーツ色分け」が売りだろう
頭部の造形自体は、さすがにRGやREVIVEにはかなわないが、アンテナ中央の赤いブロックなども別パーツ化されている。しかし、ここは筆者など大人には嬉しい分割だが、ガンプラ組立未体験の子どもには、少し難しいのではないだろうか?
この際だから、ライフルの右側の肉抜き穴の大胆さは「このガンダムのライフルは“こういうデザイン”なのだ」と解釈するのもありかもしれない
この組立体験会Ver.の、単独紹介の時にも書いたが、なんともこのキットの、こと可動に関するパーツ分割や可動箇所設定のバランスが、独特というか、正直な言い方をしてしまうと「変」である。
無難なポーズを取らせておけば気にならないのだが、いざカッコよいポージングをさせようとすると、下手をするとFGにも負けてしまう部分もある。
もっとも組立体験版Ver.に、通常の商品と比較したアレコレを望むのも野暮というものか。GFTから格段に進化した仕様を、素直に誉めておくべきかもしれない。
肩が上がらないウィークポイントが、一番浮き彫りになってしまうポーズ
基本的なスペックは悪くないとは思うが「肩アーマーがボールジョイントでは上がるのに、内部の上腕接続部分がアーマーと一体化して動かない」は、仮にFGで起きていたとしても批難が集中していただろうダメ仕様。
まぁそこもやはり「これはあくまで“組立体験会Ver.”だから」で、大人の余裕で暖かく見守ってあげるべきだろう。
と、改めて1/144 ガンダムの歴代10機の全てをざっと流れで紹介してきたわけだが。
ここであくまでお遊びで、10個の1/144で、野球チームのスターティングメンバ―を考えてみようと思う。
あくまでお遊びなんだけど(笑)
1 初代(一)
うん、ネタっぽいけど、1番はやはり初代だろう。確実に塁に出れる1番が理想だ。
2 FG(遊)
FGは、ギミック的には中程度だが、作り手の手練を要する技巧派だ。長打は狙えないが、塁に出た1番を確実に二塁に送ることも、代わりに自分が塁に出ることも選べる。
3 Ver.G30th(中)
一時期は4番を狙えた好打者。ディテールの解像度では今でもRGに次ぐハイレベルを誇り、クリンナップの切り込み隊長を務められるだろう。
4 REVIVE(三)
現行最新版のスタンダードHGUC。リファインデザイン、ディテール、可動範囲の広さの三拍子は、野球で例えるなら走攻守に秀でた、まさにチームを代表する4番バッターだといえるだろう。
5 HGUC 021(二)
ここぞという場面では、どの歴代ガンダムよりも、原作アニメに近い表情を見せられるベテラン。可動範囲も、クリンナップに相応しい広さを誇る。
6 初代HG(左)
かつての4番打者。成績は落ち、故障も多いが、そもそものポテンシャルは高い。クリンナップにもないギミックがあるなど、意外性のあるところも見せる。
7 組立体験会Ver.(右)
基本スペックは悪くない新人なのだが、新人なのに、肩に致命的な故障を抱えているので、守備はライトを任されている。しかし、他の要素ではいろいろポテンシャルは高い。
8 GA(捕)
打撃や基本スペックは高くはないが、シールド2枚装備など、捕手としての守備力は高い。構造が単純で古くはあるが、逆にポロリは起こさない鉄壁の捕球力。ガンプラ界の古参でもあるので、数々の敵に詳しい。
9 RG(投)
名実ともに、歴代1/144 ガンダム界のエースピッチャー。球速、球種、技巧、全てにおいて究極を誇る、登板すれば負けなしのメジャーリーグ級。しかし、守備に関しては弱いことと、繊細な構造をしているために、毎試合フル登板というわけにはいかないので、エースとしてここぞという試合でマウンドを担う。
補欠 GFT
うん……。できることなら、ピンチやレギュラーの故障が起きないように、祈りながらベンチを温め続けていて欲しい。ただ、そこにいるだけでベンチから相手チームを威圧するだけの役目であれば、意外に役に立つ一面も持つ。
そして次は、ガンダム本体ではなく、各キットの武装装備を比較してみよう。
サイズやディテールの違いなど、時代ごとの解釈やコンセプトの差異が伺えて面白い。
ビーム・ライフル
ビーム・ライフルは、時代と共に徐々にサイズが大きくなっていくことが明確だが、初代とGAは、1パーツ構成なので、小さめに作られていたというのが現実論だろう。実はアニメ本編でも、シーンによってサイズがまちまちだったことも理由として考えられる。
初代の「拳の穴に、グリップ代わりのピンを刺して握らせる」のポロリの多さに、すかさずGAはピンを長くして対応したり、FG以降のカトキアレンジが、その後のビーム・ライフルの基本シルエットのベースになったり、Ver.G30th以降は、ポージングの時のライフルの取り回しを考慮してか、グリップ後ろのボリュームが細くアレンジされ直されたり、デザインと造形の変換を見渡すことが出来る。