『ガンプラり歩き旅』その50 ~連載50回記念! 歴代1/144 ガンダム勢ぞろい! これが本当のオールガンダムプロジェクト!~

『ガンプラり歩き旅』その50 ~連載50回記念! 歴代1/144 ガンダム勢ぞろい! これが本当のオールガンダムプロジェクト!~

ガンプラ! あの熱きガンダムブーム。あの時代を生きた男子であれば、誰もが胸高鳴り、玩具屋や文房具屋を探し求め走ったガンプラを、今改めて当時のキットから現代キットまで発売年代順に、メカ単位での紹介をする大好評連載も、とうとう第50回を迎えました!


宇宙を駆けて今進撃する、10機のガンダム!

私、市川大河が、書評サイトシミルボンで連載している、 『機動戦士ガンダムを読む!』での、再現画像で使用しているガンプラを、 古い物から最新の物まで片っ端から紹介していこうというテーマのこの記事。

今回、50回記念ということで紹介するのは、『機動戦士ガンダム』(1979年)主役メカ・ガンダムの、歴代の1/144キットを全て紹介するという極めつけの特別企画です!

ずらり並んだ、歴代ガンプラのRX-78 ガンダム! 撮影ブースに収まりきらない列のボリューム!

さて、今回上の写真でエントリーされた、10機のガンダムに関して語る前に。
ガンダムのキットのバリエーションを語るのであれば、もっと数があるだろうという意見もあるだろう。
特に近年では、クリアーバージョンやメッキバージョン、東京ガンダムフロントでのみ販売された特別カラーバージョンや、成型色違いのガンダム、ガンキャノン、ガンタンクを揃えた「HGUC V作戦セット」という商品もある。

しかし、そういったバージョン違いまでカウントしていったらきりがない。
特に1/144 HG Ver.G30th ガンダム等は、タイアップのセブンイレブンカラーVer.など、25種類もバリエーション展開をしているので、そういった違いまで全部揃えていたら、この連載も同じキットの話ばかりで埋まってしまう。

全ガンダム、ビーム・ライフルで一斉射撃!(1機除く) もはや「ガンダム戦隊」ではなく『特攻野郎!ガンダムチーム』である

なので、今回この10商品を選ぶに当たって、筆者基準ではあるが明確にルールを設けた。

・アニメ版『機動戦士ガンダム』(1979年)主役のガンダムのキット化であれば、どんなアレンジの商品も今回のエントリーの中に入れる。明確にアニメ版『ガンダム』を原作としていなくても、例えばモチーフがお台場ガンダムであったとしても、他の映像、漫画作品のガンダムでなければエントリーに受け入れる。
なので、はっきりと原作が他にある『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』版のガンダムは、今回カウントしていない。

・金型流用のカラーバリエーション版やメッキ版、特別仕様版などはカウントしない。
明確に「その商品のために、金型がゼロから作られた」ガンダム単位でカウントする。例えば、HGUC 050 Gアーマー付属のガンダムは、HGUC 021 ガンダムの微改修版であり、そもそもHGUC 021 ガンダムが、Gアーマーを見越して設計されていたからこそのマイナーバージョンなので、今回は勢ぞろいにはカウントしていない。

それでは、歴代の10機のRX-78 ガンダムの1/144キットを、順を追って紹介していこう。
どのガンダムキットも、これまでの連載で一度は紹介しているので、今回は、『機動戦士ガンダム』テレビ版のオープニングで印象的だった決めポーズの

本編演出でもバンクで使用された、ビームライフルを撃つ決めポーズ!

このカットを、各ガンダム単位で再現した画像を、それぞれの解説の最後にお送りすることで、個々の味わいの違いを感じて欲しい。
それでは、1/144 ガンダム37年間の歴史の流れを、一気に駆け抜けてみよう!

まずは、1980年7月に発売された、最初の1/144 ガンダム。これを今回は「初代」と呼ぶ。

初代1/144 ガンダム

全てはここから始まった。
バンダイは既にベストメカコレクションシリーズを展開し始めていたとはいえ、スーパーロボットアニメのプラモデル化全盛期を知る者からすると、オリジナル合体要素も、ゼンマイ歩行もスプリングパンチ発射ギミックもない、プロポーションと可動優先のアニメロボットのプラモデルは、この1/144 ガンダムが大きなインパクトを与えたと言い切れる。

初代にして、完成度の高い顔

この初代の優れたところは、ガンプラの始祖としてのパイオニアという冠だけではなく、その顔の造形が、1980年の初代にして、その後のHG以降までの、どんなガンダムバリエーションガンプラと比較しても「安彦良和顔」だということも挙げられる。
成型色は白オンリーで、全塗装必須だが、このキットで、初めて「プラモデルを塗装する」という行為を覚えた、当時の少年も多かったであろう。
初代にして偉大なガンダムである。

さすがに初代ゆえにポーズが固いが、1980年のロボットプラモが、ここまでのポーズが出来る方が凄かったのである

さて次は、1981年9月に発売された、1/144 Gアーマーのキット付属版の1/144 ガンダム。こちらは今回の記事では「GA版」と呼ぶ。

Gアーマー版なので、シールドを2枚装備している!

パッと見は初代と同じだが、顔の造形や肩の接続方式などが根本から変えられており、構造やサーベルの角度などが、Gアーマーに合せて再設計され、いわば「1/144 ガンダムVer1.5」とでもいう存在なので、今回の勢ぞろいに参加させた。
初代との、ギミック的な違いは、Gアーマーと各種変形合体するために、上半身と下半身で分割できるようになっていることと、Gアーマー時にシールドがしっかり腕にロックされるように、肘に固定するフックと、拳の外側に刺すピンが追加されていること。

分割されるGA版のボディは、合体させればしっかりロックされる

シールドは、肘と拳の外側の、2か所でホールドされている

初代(左)とGA版(右)の比較

こうして並べてみると、胸のダクトの角度や、ふんどしのV字マークの位置や角度など、さまざまな違いが見受けられ、GA版が新規造形であることが確認できる。

GA版の顔

惜しむらくは、GA版はカメラアイが左右に長く細いため、アニメ劇中の作画への似せ方は、初代よりも退化してしまったことか。

初代同様、上腕にロール軸回転可動がないので、このポーズが精一杯

続いては、1990年3月に発売された、初代1/144 HGガンダム。これを今回は「初代HG」と呼ぶ。

色分けが成型段階からされているガンプラも、HGの冠をつけたガンプラも、これが最初のキット

このキットも既に連載で紹介済みだが、一つ言い足せることは、「全身フレームに装甲」という組み合わせと「スカートがプレートアーマーとして分割」という要素は、ガンダムでは『機動戦士Zガンダム』(1985年)、サンライズロボットアニメでは、その前年の『重戦機エルガイム』(1984年)で、メカデザイナーの永野護氏が、ロボットアニメに持ち込んだ設計概念であるということ。
このキット以降、『機動戦士ガンダム』のモビル・スーツのガンプラも、デザインリファインされる時は、それらの要素が主流になっていく。

バックパックにバーニアが付いた最初のガンダム

「半完成済みのフレームに、装甲を被せていく組み立てスタイル」は、20年後のリアル・グレードのガンダムにも受け継がれているが、フレームの可動強度に弱点があるという難点も、そのまま受け継がれている。

初代HGの顔

マスクの出来は、今でも通用するクオリティの高さだが、キット自体が絶版になってしまったこと自体が惜しい。

まだ少しポーズが固い?

上腕ロール可動軸は当然装備しているので、過去のガンダムよりはアニメに近いポーズになったが、肩のスウィング可動がないので、ライフルの角度が調整できない画像になった。

ガンプラガンダム4代目は、1999年7月に発売された、1/144 FGガンダム。これを今回は「FG」と呼ぶ。

写真だけでは分からないが、これも初代同様、商品の成型色は白だけである

FGは、ガンプラが本格的にカトキハジメ氏のデザインアレンジを、別機体扱いではなく、リファインとして採用し始めた時代の代表的な商品例となった。

意外と顔だけを見ると、正統派的なガンダム顔である

カトキハジメ氏アレンジのガンダムは、肩アーマーのアレンジや、胸の黄色いダクトが、形状変化と共に独立して別パーツ化しているところなどが特徴で、しかし、RX-78 ガンダムのVer.kaのガンプラは、未だ決定版がないということもあって、このFGにも根強いファンは多い。

FGの可動箇所と範囲は、初代準拠レベルである

しかし、初代と比較した時に、上腕ロール軸が追加されたことによる、ポージングの幅の広がりは意義が大きく、賛否両論別れるが、このキットを徹底的に作り込むことで、オンリーワンの「1/144 RX-78 ガンダム Ver.ka」が作れるという意味では、ユーザーを試すキットとしても、趣は深いだろう。

単独の画像として見れば、格好良いガンダムである

肩のスウィングがないと、どうしても限界は出てしまう。
可動に拘って手を加えるか、ディテールや細部にこだわって改造するか。作る人が選ぶ楽しさがあるキットではある。

ガンダムキット5作目は、2001年5月に発売された、1/144 HGUC 021 ガンダム。これを今回は「HGUC 021」と呼ぶ。

満を持してHGUCに登場したガンダム!

FGとは真逆に、極力アニメでのデザインやシルエット、バランスを尊重したリファインをされたガンダム。
可動面など、今の最先端基準からすると厳しい部分も目立ってきているが、そのバランスの良さから、今でもこのキットをオールタイムベストに推す古参ファンも少なくない。

カメラアイ周りのシール処理が目立つが、アニメ準拠の男前の顔造形

この頃には既に、「ガンダムの顔」の造形と再現性は最高レベルにまで達しているので、後は好みの問題での選択が主になってくる。
後は技術的な問題では、カメラアイ周りの色分けを、色分けパーツとシールで、どのようなアプローチで再現するかの問題ぐらいだろう。

最新のモデルほど可動はしないが、アニメ劇中のポーズ再現であれば十分なアクションが可能

可動範囲も、箱型デザインや当時の技術論から逆算すると、相当動く出来にはなっている。今の目で見てもそん色はないだろう。最新版REVIVEキットのアレンジなどに違和感を覚える人にはこれがお勧め。頭身なども、いわゆる「安彦プロポーション」の究極であるともいえる。

今回の再現画像の中で、最高の出来を誇る仕上がりの一枚

安彦プロポーションの完全再現ゆえに、テレビ版ガンダムを再現する時は一番しっくりくるのがこのキット。
シミルボン『機動戦士ガンダムを読む!』再現画像でも、『機動戦士ガンダムⅡ 哀・戦士編』(1981年)までの殆どでは、このキットを使用している。

6番目のガンダムキットは、2009年7月に発売された、1/144 HG Ver.G30th ガンダム。これを今回は「Ver.G30th」と呼ぶ。

お台場1/1ガンダムのスケールモデルでありながら、ディテールはハード、構造はシンプル

ガンダム放映30周年を記念して、お台場に建造された1/1ガンダムを基準にスケールモデルとして作られたガンダム。
そのため、アニメ版ガンダムとは一線を画すデザインリファインが施されている。
これ以降、お台場1/1ガンダムをベースにした1/144 ガンダムは、3種類が発売されることになる。

カメラアイの目つきなど、バランスはかなり高いレベルにまとまっている頭部

クリアやメッキ、タイアップなどで、ガンダムキット最多の25種類のバリエーション展開をしたことからも、バンダイが様々な意味で、この時期「お台場ガンダム」とこのキットを、21世紀ガンダムリファインデザインのスタンダードにしようとしていたことが分かる。

可動範囲は広いが、肘や膝などは一軸関節

可動範囲は、HGUC 021より動く部分もあるが、基本関節構造はあまり進化していない。結果的にはHGUCの基本フォーマットが、二重関節が基本装備に移行していくので、結果的には過渡期の商品に留まってしまった。

お台場ガンダムに、安彦作画ポーズは無理があるか?

一時的とはいえ、このキットが1/144 ガンダムプラモのスタンダードになった史実は事実である。ただ、Ver.G30thというネーミングからして、バンダイが意地で盛り上げようとした結実である可能性も否定できない。

歴代1/144 ガンダムキット7番目は、2010年7月に発売された、1/144 リアル・グレード ガンダム。これを今回は「RG」と呼ぶ。

問答無用の解像度! 追従不可能なハードディテール!

Ver.G30thと同じく、お台場1/1 ガンダム立像をベースに、Ver.G30thとは真逆に、徹底した緻密なパーツ構造と組み立て難易度、驚愕の可動範囲で差別化を図った究極のリアル・グレード(RG)の名は伊達ではない。

この頭部の、何が一番すごいといえば、口元の「への字口」までもが、塗装でもディテールでもなく、開口されていることだろう

付属のコア・ファイターの尾翼の白部分以外、追加塗装が一切必要ない色分けといい、関節が可動するたびに、連動してスライドする装甲といい、1/100のマスター・グレード最新版のフォーマットを、さらに緻密化させて1/144に詰め込んだ、誉め言葉として過剰仕様のキットとなった。

お台場ガンダムには装備されていなかった、ライフルとシールドも装備!

結果として、可動させるたびにはがれやすい外装や、組み立てプロセスで破損が起きやすい、組み立てそのものの難易度がもたらすストレスが半端ないなど、問題点も数多く発生したが、ガンプラ30周年を記念しての、試金石的な挑戦と技術アピールとしては、充分成功したガンダムプラモであったといえる。

同じポーズでも、この解像度とハードディテールのガンダムがとると迫力が違う!

良い意味で、「初代HGガンダムの、20年ぶりのリメイク」要素が満載のRGであったが、意欲とコンセプトの高さに、今一歩量産生産品の完成度が追い付ききれなかったという弱点まで初代HGを踏襲する形になってしまったが、むしろこのキットの発売自体は、さらにここから20年後の2030年には、どんな1/144 ガンダムが発売されるか。そこに思いを馳せるのもありだろう。

8番目のガンダム。2015年5月から、ガンダムフロント東京で、ガンダムファクトリーイベントで頒布された1/144 ガンダムを、今回は「GFT」と呼ぶ。

すがすがしいまでの棒立ち感

どういう角度で考察しても解説しようにも、この特別企画のネタ枠、ボケ担当になるしかないのがこのキットの宿命だが、ほぼ関節可動ゼロ前提の簡易ガンプラとして捉えた時には、さすがに「3つめの『1/144 お台場ガンダム』」でもあるからか、立ち姿自体のシルエットは悪くない……ぐらいしか誉めるところがみつからない。
スケールモデルとして考えた時、「全く可動しない」「何もオプションがない」は、そもそものお台場ガンダムのスペックでもあるので、それを忠実に立体化したという好意的解釈をすれば、このキットに何も問題はない……とも言えないこともない。
あとほめるとすれば、歴代ガンプラトップクラスの「組み立てやすさ」か。

どうやらガンダムの顔らしい……というところまでは判別できるのだが……

この連載用に用意できたのがクリア版だったこと自体は、筆者の責任でもあるのだが。それを差っ引いても、このGFTは、まずは頭部だけは入場者全員に無差別爆撃で配布される前提だったので、コストを考えての色分け完全無視だったのかもしれない。
もしくは、ガンプラファクトリーに参加せずに、ミニ胸像として持ち帰った時には、単色の方がデスクトップアイテムとしては収まりが良いというのもあったかもしれない。
ただ、この写真からも薄っすら感じ取れるが、このキットもさすが最新版だけあって、顔の造形自体は、初代やGAと同じ分割であるが、造形クオリティと細部のディテールはなかなかレベルは高い。

信じられるか……? これで、精一杯全身の可動箇所を駆使して、動かしてポーズをつけてみたんだぜ?

もうフォローするのも暖簾に腕押しという気もしないではないが、このGFTの場合の「可動」は、あくまで「分割されたパーツを組み立てる際の接続方式のオマケ」でついてくる機能でしかない、ということは強調しておきたい。
あくまでも「ガンダムフロント東京来訪記念グッズ」なのだ。
「お台場ガンダムの1/144」としては、ありとあらゆる意味でRGとは対極にある記念品である。

もはや、なんのポーズを目指してこの画像が作られたのかも分からないレベル。ライフル自体そもそも持っていないし……

多くを望んではいけない……。むしろ何も望んではいけない。
FG版とも違って、これをベースとして徹底改修して、クオリティを上げようとする猛者もいるまい。
なにせGFTがコンセプトにした「1/144のお台場ガンダム」の究極版は、先にRGが存在してしまっているのだから……。

歴代1/144 ガンダム9番目は、2015年7月に発売された、1/144 HGUC 191 REVIVE ガンダム。今回はこれを「REVIVE」と呼ぶ。

2018年現在。様々な意味でバランスが取れた、決定版の1/144 ガンダム!

「オールガンダムプロジェクト」と「REVIVE」という、2つのコンセプトの流れで、リメイクされた最新版HGUC 1/144 ガンダム。
リファインデザイン自体は、HGUC 021とRG、テレビアニメ版とお台場ガンダムの折衷という辺りか。
しかし、逆にその足し算が功を奏したのか、全体的なフォルムや印象は、小顔で細身ではあるが、劇場版『機動戦士ガンダムⅢ めぐりあい宇宙編』(1982年)に登場したガンダムに近くなっているので、筆者は『めぐりあい宇宙編』の再現の殆どを、このガンダムを使って行った。

最新版のガンダムの顔。目つきがHGUC 021よりも若干優しくなっている

最新キットになるたびに進化する、顔のパーツの分割や色分けだが、1/144 ガンダムの場合、途中にRGという化物が流れにあるため、一概に時系列的に1作ごとに進化、というわけにはいかないが、カメラアイ下の赤い隈取も別パーツ化されるなど、HGUC版の範囲では、HGUC 021より進化していることは確かである。

より進化した関節構造で、RGほどハードルが高くなくても、RGに近いレベルでポージングが可能!

新素材・KPSのマテリアル能力を身に着けたREVIVEは、RGほどの複雑緻密なパーツ構成を築かなくても、RG準拠の可動範囲能力を誇る。
webなどでは、その小顔と細身さには批判も上がっているわけだが、そういう意味ではHGUC 021もまだ充分入手可能なのだから、そちらを選べばいい。HGUC 021の可動の限界は、技術論の進歩ではなく、アニメ版のシルエットを尊重した結果の必然的な限界論に近いので、どうしても「どちらを選ぶか」が迫られるのはユーザーであり、その両者を併合した1/144 ガンダムを望むには、いずれ起きるだろう、バンダイの設計技術のワンランクの進化を待つべきだろう。

肩のスウィングが上方に向かっている機構が、このポーズにピッタリ見合っている

この後最後に紹介する「組立体験会Ver.」が、GFT同様のイベント限定簡易番外編である事実を前提とするならば、このキットが今現在の最新型のスタンダード1/144であると言い切れる。

オールガンダム10機勢ぞろい。最後を飾るのは、2016年8月から各模型店やイベントなどの「ガンダム組立体験会」イベントで頒布されている1/144 ガンダム。これを、今回は「組立体験会Ver.」と呼ぶ。

ぱっと見には、REVIVE版とあまり変わったところが見えない

むしろ、REVIVE版と完成見栄えを変えずに、とことんコストや難易度を下げて、組立体験用の廉価版として設計したわけで、その素組の完成形としては、バンダイサイドの様々なアイディアや苦肉の策や技術上昇がうかがえるキットになっている。

簡易キットながら、かなり色分けもされている頭部。やはり「メインカメラの赤もパーツ色分け」が売りだろう

頭部の造形自体は、さすがにRGやREVIVEにはかなわないが、アンテナ中央の赤いブロックなども別パーツ化されている。しかし、ここは筆者など大人には嬉しい分割だが、ガンプラ組立未体験の子どもには、少し難しいのではないだろうか?

この際だから、ライフルの右側の肉抜き穴の大胆さは「このガンダムのライフルは“こういうデザイン”なのだ」と解釈するのもありかもしれない

この組立体験会Ver.の、単独紹介の時にも書いたが、なんともこのキットの、こと可動に関するパーツ分割や可動箇所設定のバランスが、独特というか、正直な言い方をしてしまうと「変」である。
無難なポーズを取らせておけば気にならないのだが、いざカッコよいポージングをさせようとすると、下手をするとFGにも負けてしまう部分もある。
もっとも組立体験版Ver.に、通常の商品と比較したアレコレを望むのも野暮というものか。GFTから格段に進化した仕様を、素直に誉めておくべきかもしれない。

肩が上がらないウィークポイントが、一番浮き彫りになってしまうポーズ

基本的なスペックは悪くないとは思うが「肩アーマーがボールジョイントでは上がるのに、内部の上腕接続部分がアーマーと一体化して動かない」は、仮にFGで起きていたとしても批難が集中していただろうダメ仕様。
まぁそこもやはり「これはあくまで“組立体験会Ver.”だから」で、大人の余裕で暖かく見守ってあげるべきだろう。

と、改めて1/144 ガンダムの歴代10機の全てをざっと流れで紹介してきたわけだが。
ここであくまでお遊びで、10個の1/144で、野球チームのスターティングメンバ―を考えてみようと思う。
あくまでお遊びなんだけど(笑)

1 初代(一)
うん、ネタっぽいけど、1番はやはり初代だろう。確実に塁に出れる1番が理想だ。

2 FG(遊)
FGは、ギミック的には中程度だが、作り手の手練を要する技巧派だ。長打は狙えないが、塁に出た1番を確実に二塁に送ることも、代わりに自分が塁に出ることも選べる。

3 Ver.G30th(中)
一時期は4番を狙えた好打者。ディテールの解像度では今でもRGに次ぐハイレベルを誇り、クリンナップの切り込み隊長を務められるだろう。

4 REVIVE(三)
現行最新版のスタンダードHGUC。リファインデザイン、ディテール、可動範囲の広さの三拍子は、野球で例えるなら走攻守に秀でた、まさにチームを代表する4番バッターだといえるだろう。

5 HGUC 021(二)
ここぞという場面では、どの歴代ガンダムよりも、原作アニメに近い表情を見せられるベテラン。可動範囲も、クリンナップに相応しい広さを誇る。

6 初代HG(左)
かつての4番打者。成績は落ち、故障も多いが、そもそものポテンシャルは高い。クリンナップにもないギミックがあるなど、意外性のあるところも見せる。

7 組立体験会Ver.(右)
基本スペックは悪くない新人なのだが、新人なのに、肩に致命的な故障を抱えているので、守備はライトを任されている。しかし、他の要素ではいろいろポテンシャルは高い。

8 GA(捕)
打撃や基本スペックは高くはないが、シールド2枚装備など、捕手としての守備力は高い。構造が単純で古くはあるが、逆にポロリは起こさない鉄壁の捕球力。ガンプラ界の古参でもあるので、数々の敵に詳しい。

9 RG(投)
名実ともに、歴代1/144 ガンダム界のエースピッチャー。球速、球種、技巧、全てにおいて究極を誇る、登板すれば負けなしのメジャーリーグ級。しかし、守備に関しては弱いことと、繊細な構造をしているために、毎試合フル登板というわけにはいかないので、エースとしてここぞという試合でマウンドを担う。

補欠 GFT
うん……。できることなら、ピンチやレギュラーの故障が起きないように、祈りながらベンチを温め続けていて欲しい。ただ、そこにいるだけでベンチから相手チームを威圧するだけの役目であれば、意外に役に立つ一面も持つ。

そして次は、ガンダム本体ではなく、各キットの武装装備を比較してみよう。
サイズやディテールの違いなど、時代ごとの解釈やコンセプトの差異が伺えて面白い。

左列上から、初代 GA 初代HG FG HGUC 021。右列上からVer.G30th RG REVIVE 組立体験会Ver.

ビーム・ライフル

ビーム・ライフルは、時代と共に徐々にサイズが大きくなっていくことが明確だが、初代とGAは、1パーツ構成なので、小さめに作られていたというのが現実論だろう。実はアニメ本編でも、シーンによってサイズがまちまちだったことも理由として考えられる。
初代の「拳の穴に、グリップ代わりのピンを刺して握らせる」のポロリの多さに、すかさずGAはピンを長くして対応したり、FG以降のカトキアレンジが、その後のビーム・ライフルの基本シルエットのベースになったり、Ver.G30th以降は、ポージングの時のライフルの取り回しを考慮してか、グリップ後ろのボリュームが細くアレンジされ直されたり、デザインと造形の変換を見渡すことが出来る。

上から、旧武器セット 初代HG HGUC 021 Ver.G30th REVIVE RG

ハイパー・バズーカ

ハイパー・バズーカは、初期1/144にはガンダムのキットには付属しておらず、1/144 武器セットの方に用意されていた。
1/144 武器セットは、完全にスケールモデル感覚で商品化されたため、10年後の初代HGでは本体と一体化していたラックがしっかり別パーツ化されていたり、肝心のガンダムの持ち手は穴が開いているだけなのに、グリップもしっかり設定どおりに作られていたり、アニメ版を正解とする前提であれば、現代でも通用する作りである。
むしろ、こと1/144に関してはバンダイは、モビル・スーツ本体はどんどん進む技術革新に合せて、完成後の合わせ目が目立たないパーツ分割を見せてくれるが、こと付属武器に関しては、頑なにモナカ分割を続けているので、実はこの写真に出てくる6つの1/144 ハイパー・バズーカのうち、合わせ目処理をしなくてよいのは、最下段のRG用だけだったりする。
一見すると、時代と共に大型化していっているように見えるが、初代が小さく見えるのは長さだけで、口径の太さは初代HGとHGUC 021では初代より細くなっていくプロセスを一度辿り、Ver.G30thからはまた太くなっていくという流れがある。
また、時代とデザインの変換が色濃く表れているのが、グリップとマガジンのデザイン部分。ガンダムが肩に担いで構える前提を意識して、グリップが可動式になっているのは、REVIVEとRGのハイパー・バズーカだけである。

上から、初代 初代HG FG HGUC 021 REVIVE RG

ビーム・サーベル

初代では、パトレイバーの電磁警棒か、道路工事の警備員の誘導灯のようだったビーム・サーベルも、こちらもメカとは違う意味で、立体デザインする時の正解がないという部分で、立体表現の進化が目まぐるしかった付属武器であった。
初代HGでは、成型自体は白パーツのままだが、形状はビームのふくらみと尖りを意識した、イマドキの形状に近く進化している。
このキットが出た90年代初頭辺りから、主に1/100の方のサーベルはクリアパーツで、1/144の方は白成型で、というバリューの差別化が始まっていて、しかしFGの白成型は、初代の原点回帰をコンセプトにしているので、狙ってやったことと考えられる。
「1/144」の「ガンダム」の「ビーム・サーベル」がクリアパーツになるのは、HGUC 021からで、その後は(写真には入っていないが)Ver.G30thのビーム・サーベルが「お台場1/1 ガンダムの、実体型サーベルのスケールモデル」を狙ったからか、わざわざ白成型で付属していただけで、後の1/144 ガンダムのサーベルは全てクリアパーツで作られている。
デザインリファインは、柄の部分のディテールが、各ガンダムで異なる程度だが、むしろ商品化されるたびに巨大化していくビーム部分の方が眺めていて面白い(笑)
ガンプラのビーム・サーベルは、いくつかの(ランナー種で区分けするならSBナンバーの)大きさや形状の規格があって、それを各モビル・スーツの柄の系と組み合わせて商品にするのだが(ビーム部分や柄の形状が著しく異なる一部のモビル・スーツを除く)、例えばREVIVEのビーム・サーベルはSB-13という、通常の1/144で最も多用されている規格があてがわれているが、RGのサーベルだけはロストナンバーで、あきらかに1/100サイズ用の物が多色ランナーに付属している仕様になっている。

初代の1/144と、最新普及版のHGUC 191 REVIVE版の両雄を前列に、歴代オール1/144 ガンダムキットの勢ぞろいビーム・ライフル構え。やはり歴史を感じさせてくれる絵巻図に見える壮観さ。

以上、今回は駆け足で、1/144 ガンダムの全キットを揃えてみたわけだが、こうして俯瞰してみると、時代単位の「正解」や「デザインの流行」や「バンダイの技術水準の高まり」が見えて面白い。
初代HGを除き、今回紹介したガンダムはどれも絶版にはなっていないので、今回の記事を見て、お気に入りのガンダムを見つけたら、ぜひ手にとってみてはいかがだろうか(もっとも、むしろ初代HGはヤフオクやAmazon等でまだ売ってるところを見かけるが、GFTや組立体験会Ver.の方が、入手難易度は高いかもしれない)。

ガンダムがガンダムである以上、まだまだ時代と共に、変節と進化を繰り返していくのだろう。
それを見守っていくのも、ガンプラマニアの楽しみなのである。

市川大河公式サイト

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人気アニメ『キン肉マン』の「完璧超人始祖編」の名言・名場面を題材にした英会話学習書『キン肉マン超人英会話』が、2025年11月29日(土)にKADOKAWAより発売されます。超人たちの熱い言葉を通じて、楽しみながら実用的な英語表現をインプットできます。TOEIC満点保持者やプロレスキャスターなど、豪華プロ集団が監修・翻訳を担当した、ファン必携の英語学習本です。


【カウントダウン】あと2日!古舘伊知郎&友近「昭和100年スーパーソングブックショウ」いよいよ開催迫る!豪華ゲスト集結の東京国際フォーラムは「昭和愛」で熱狂へ!

【カウントダウン】あと2日!古舘伊知郎&友近「昭和100年スーパーソングブックショウ」いよいよ開催迫る!豪華ゲスト集結の東京国際フォーラムは「昭和愛」で熱狂へ!

開催直前!TOKYO MX開局30周年記念「昭和100年スーパーソングブックショウ」が10月16日に迫る。古舘伊知郎と友近がMC、豪華ゲストと共に贈る一夜限りの昭和ベストヒットに期待高まる!


ギタリスト 鈴木茂「BAND WAGON」発売50周年記念ライブを東阪ビルボードで開催!

ギタリスト 鈴木茂「BAND WAGON」発売50周年記念ライブを東阪ビルボードで開催!

ギタリスト 鈴木茂が、『鈴木茂「BAND WAGON」発売50周年記念ライブ~Autumn Season~』を11月13日にビルボードライブ大阪、16日にビルボードライブ東京にて開催する。今回は、1975年にリリースされた1stソロアルバム「BAND WAGON」の発売50周年を記念したプレミアム公演となる。


【1965年生まれ】2025年還暦を迎える意外な海外アーティストたち!

【1965年生まれ】2025年還暦を迎える意外な海外アーティストたち!

2025年(令和7年)は、1965年(昭和40年)生まれの人が還暦を迎える年です。ついに、昭和40年代生まれが還暦を迎える時代になりました。今の60歳は若いとはと言っても、数字だけ見るともうすぐ高齢者。今回は、2025年に還暦を迎える7名の人気海外アーティストをご紹介します。