はじめに
ファーストガンダム世代が大人になり、物作りを始め、ガンダムワールドにリアリティーを持ち込んだのが「ガンダム・センチネル」という作品だったのではないでしょうか?この作品の中で設定されていたのがZプラスという機体のシリーズでした。Sガンダムを始め、この先RX-0「ユニコーンガンダム」までを本来の意味でのファーストガンダムシリーズと考えるとその隙間を見事に埋めてくれたのがこの作品ですね。勿論公式に設定されています。
今回はMSZ-006 Ζプラスのヴァリエーションのご紹介です。
Zプラスは基本的にTMS(可変機)である為、勿論、それぞれがWRモードがあります。しかし元来の意味でのWRというのは大気圏への再突入の際、マッハ20もの超音速から起こるショック・ウェィヴ(衝撃波)を機体下面部に集中させ、波乗りのように飛行することが目的の機構です。しかし、これがいつの間にかその名残が習慣となり、高速巡行形態のことをWRモードと呼ぶようになったものです。この点は是非ご理解いただきたく思います。

Ζ plus C1
Gundam Sentinel Special Edition 大日本絵画
元々は、『モデルグラフィックス』別冊『GUNDAM WARS PROJECT Ζ』で表紙として描かれたものが、ガンダムセンチネルでC1型が3機登場し、SガンダムとFAZZ3機による6機編隊を組んでいるところから細かく設定されていったようです。ZガンダムのWR形態が有用であり、配備したいところだったのですが、余りにもZガンダムのコストが高すぎて実現できないところから、廉価版として開発されたとの設定になっているようです。しかし、この機体でも安いものではなく、少数が量産されたというところでしょう。しかし驚くほどヴァリエーションが多く、プランのみで終わった機種や文字設定のみで画稿のないものもあり、これから新たに画が起こされるにはあまりにも時間がたちすぎていて(約30年)幻のままで終わりそうな感が否めない機体も含めてご紹介したいと思います。
MSZ-006A1(MSK-006)
ΖプラスA1型

ガンダムセンチネルヴァージョン

WRモード

機動戦士ガンダムUCヴァージョン
地上用MSは行動範囲という点では非常に限られた範囲に絞られていることが当たり前だったものが、このZプラスという機体の登場で、単独でも何百キロも離れた地点まで移動が可能になったということから、このA1型の持つ意味はとても大きかったといえるのでしょう。 TMSの開発が盛んになるにつれ、空戦能力が求められてくるようになると、いささか見劣りがしてしまうのは、大気圏内専用としてのTMSの最初の機体と考えれば致し方の無いところではないでしょうか。それでも予算の少ないカラバにとってはコストパフォーマンスも考えれば増産もうなずけるところでしょう。実際、機動戦士ガンダムUCの0096では現役として登場していますし、(あっけなく撃破されていましたが)MSとしての性能がしっかりしていれば、十分運用に耐えられるものだったのでしょう。
MSZ-006A1
ΖプラスA1型試作機(アムロ・レイ専用機)

ガンダムセンチネルヴァージョン

WRモード
この機体の持つ意味は実戦のそれではなく、あくまでテスト用+アムロ・レイという生ける伝説を考えた、プロパガンダ的意味合いが大きかったのでしょう。「空戦能力向上機」としてのデータ収集の為、2回のみアムロ・レイが搭乗したとされていることからも、想像できてしまいます。A1型からの改修で2機ほど造られれ、その後はC型やD型の開発母体として改装され続けたと資料にあり、実戦には投入されていないはずです。
MSZ-006A1B
ΖプラスA1B型

WRモード
D型の開発が結構早く進んだことや、予算的の問題で・・・これは少数でも生産されただけでも、良しと考えるべき機体でしょう。
MSZ-006A2
ΖプラスA2型


WRモード
この機体もテスト用としてみるべきだと思います。後述のC1/2型もそうですが最大の特徴といえる頭部メガキャノンが大気圏内では減衰率が高すぎることから、この機体の意味が薄れてしまったというのが決定的に量産されなかった原因だったと思います。
MSZ-006A3
ΖプラスA3型

モデルグラフィックスで設定されたものの、文字設定だけで画像はありませんでした。せっかく設定されていたので、どなたかデザイナーが画を起こしてくれると嬉しいのですが・・・
MSZ-006B
ΖプラスB型


WRモード
複座式の機体のため、MSモードでも頭部の形が違っています。無論WRモードでも奇抜な感じに仕上がっていますね。当時、カラバにはTMS操縦の経験があるものは居なかったわけで、シュミレーターだけでは変形時の複雑Gなど実際の機体で経験する必要があったのは当然のことだったのでしょう。
MSZ-006BN
ΖプラスBN型

WRモード
MSZ-006BN Zeta Plus BN | The Gundam Wiki | FANDOM powered by Wikia
MSモードよりもWRモードを重視していると思われます。上空からの攻撃のためのA1型からの換装実験機で何機製造されたかの記録は見つかりませんでした。全体的にカラバのZプラスの見方というのは空中での行動を重視している気がします。
MSZ-006C1
ΖプラスC1型
![全高 21.11m
頭頂高 19.86m
全長 24.9m(WR・標準装備時)
(ビーム・スマートガン装着時:36m)
本体重量 36.18t
全備重量 77.04t(標準装備時)
(ビーム・スマートガン装着時:86.77t)
装甲材質 ガンダリウムγコンポジット
出力 2,070kW
推力 18,600kg×4
12,400kg×4
(総推力)124,000kg]
センサー
有効半径 17,000m(標準装備時)
(ビーム・スマートガン装着時:21,000m)
武装 バルカン×2
大腿部ビームカノン×2
ビーム・サーベル×2
ビームスマートガン
その他 姿勢制御バーニア×8](/assets/loading-white-036a89e74d12e2370818d8c3c529c859a6fee8fc9cdb71ed2771bae412866e0b.png)

リア ヴュー

ウエーブ・ライダー モードWR
「ガンダム・センチネル」でα任務部隊にSガンダム、FAZZと共に編隊を組み物語中、重要な役割を背負っていた機体です。WRモードでの形状がビームスマートガンを組み込んでいるため、他のZプラスと明らかに違って見えるのが特徴ですね。本来の意味でのWRとして大気圏再突入可能なスペックが最後の1機の生還を可能にしています。
ただ、Zプラスの開発はカラバとAE社の共同開発からスタートしていたはずなんですが、この機体は地球連邦軍が運用しているというのがどういういきさつだったのかは判りませんでしたね。この機体の開発が始まった時点ではティターンズは健在であり、ペズンの反乱もグリプス戦役の最中に起こっていたはずですので・・・
MSZ-006C1/2
ΖプラスC1/2型
![全高 21.11m
頭頂高 19.86m
全長 24.9m(WR・標準装備時)
(ビーム・スマートガン装着時:36m)
本体重量 36.18t
全備重量 77.04t(標準装備時)
(ビーム・スマートガン装着時:86.77t)
装甲材質 ガンダリウムγコンポジット
出力 2,070kW
推力 18,600kg×4
12,400kg×4
(総推力)124,000kg]
センサー
有効半径 17,000m(標準装備時)
(ビーム・スマートガン装着時:21,000m)
武装 バルカン×2
大腿部ビームカノン×2
ビーム・サーベル×2
ビームスマートガン
ハイメガキャノン(テスト型)
その他 姿勢制御バーニア×8](/assets/loading-white-036a89e74d12e2370818d8c3c529c859a6fee8fc9cdb71ed2771bae412866e0b.png)
この機体も地球連邦軍が運用していますが、特にカラバが使用していたA2型の頭部に換装しているところが何故そう言う改修が可能だったのかがよく呑み込めないところがあります。いずれにせよ宇宙用の機体であるところから頭部メガキャノンの意味合いはうなずけるところがありますし、後のZZにデータが反映されたことでしょう。
MSZ-006C1[Bst]
ΖプラスC1Bst型(ハミングバード)

ガンダムセンチネル小説版ヴァージョン MSモード
MSZ-006C1[Bst] Zeta Plus C1 "Hummingbird" | The Gundam Wiki | FANDOM powered by Wikia

WRモード
あのMSA-0011[Bst]PLAN303Eディープストライカーと編隊行動可能な超高速WRと言った機体だったのですね。いづれにしてもそれだけの高速で敵に突入すれば直進方向にかかる慣性をどうやって制御して旋回、運動性能を確保するのかは大変問題があったはずです。まさに一撃離脱のみを考えた結果MSモードを犠牲にせざるを得なかったのではないでしょうか?
MSZ-006C4
ΖプラスC4型

MSモード
Gundam Sentinel Special Edition 大日本絵画

WRモード
Gundam Sentinel Special Edition 大日本絵画
大気圏の境目ともいえる微妙な空域が主戦場となる機体で、本来のWR形態を具現化した云わば局地戦闘機のような役割を考えていたのではないでしょうか?引力からの脱出と大気圏の再突入を繰り返すような戦闘があり得るのかどうかは疑問ですが・・・
MSZ-006D
ΖプラスD型

MSモード
電撃HOBBY MAGAZINE 2002年4月号

WRモード
Gundam Sentinel Special Edition 大日本絵画
WikipediaではMS形態画稿は無いとのことでしたが「電撃HOBBY MAGAZINE 2002年4月号」で模型作品例として画像がありましたので出典させていただきました。AE社に対する要求スペックはA1型の操縦性とC型のパワーを併せ持つことが条件であったようで、この機体は見事にその要求を満たしていたようです。しかしながらコストはそれなりにかかってしまう機体だったようで少数の生産としか記録がありませんでした。
MSZ-006E
ΖプラスE型

EWAC仕様機ともなれば高価になるのは当たり前なのでしょうが、おそらく形状も他のZプラスとはかなり違ったものになっていたのではないでしょうか?他の機種にもEWAC仕様機があるものがありますが、それぞれ原型からはかけ離れたものになっていましたから。
MSZ-006R(RGZ-006)ΖプラスR型
ΖプラスR型

こんなところにリ・ガズィの原形があったんですね。この機体、非変形機で正確にはZプラスと呼んでいい物かどうかよくわかりませんね。まぁC1型の流用品と考えればそういえなくもないのでしょうが・・・そもそも実戦投入の予定は全く無かった機体でしょうからあくまでも実験機としての扱いなのでしょう。このR型からの流用ということでリ・ガズィのプロトタイプが3機制作されていますので最もR型に近いと思われる機体をご紹介させていただきます。

RGZ-91Re-Gz(x2)
モデルグラフィックス2002年3月号
(MSZ-006C?)ΖプラスCX型


WRモード
モデルグラフィックス2002年3月号
C型のプロトタイプといったところでしょうか。正式にカラバや地球連邦軍からの依頼があって製造されたものでは無いのでしょう。(型式番号が無いことからも想像できます)しかしこの機体の制式採用機C1型が地球連邦軍の所属となっているところを見ると、連邦軍の意向がかなり強く反映していたことがうかがえます。
MSZ-006P
Ζ>(ゼータプロンプト)

「機動戦士ガンダム ムーンクライシス」で登場した機体です。この作品自体が公式設定が細かく設定される前の物なので、現在の公式なものとは別の解釈がされている部分が大きいようです。
(型式番号無し) ΖプラスS2型

「電撃ホビーマガジン」のオリジナルストーリー「ソロモンエクスプレス2 THE MYSTERY OF PSYCHOMMUN-SYSTEM」で登場した機体でした。モビルスーツをビットとして考えるところなどはとても面白い発想ですよね。しかしビットといえばサイコミュ・システムをニュータイプがコントロールするというのが前提だったはず。そしてコントロールする機体(装置?)は何を使用する予定だったのでしょう?テスト段階で全て失われてしまったことで、計画は頓挫しているのでしょうが、何か気になるところだと思いませんか?
WAVE RIDER FLEET

WAVE RIDER FLEETの各機種
モデルグラフィックス2002年3月号
ここからは宇宙世紀0090年にアナハイムのキャルフォルニア事業部 (AECD) が構想した、全機種をTMSのみに統一した部隊構想「WAVE RIDER FLEET(Ζプラス戦爆連合)」に基づく宣伝用の機体群を続けてご紹介いたします。実際には採用されなかった構想なので、実際には製造されていませんし、連邦軍の正式な型式番号ももっておらず、張りぼてのようなダミーが制作されたとの資料はありますが、結局はプランのみで終わっているはずです。
AECD-model756-S
Ζプラス・サベイランス

AECD-model755-D
Ζプラス・ドミナンス

MSモード
モデルグラフィックス2002年3月号

WRモード
モデルグラフィックス2002年3月号
AECD-model757-H
Ζプラス・ハウザー


WRモード
『モデルグラフィックス』2002年3月号
AECD-model744-P
Ζプラス・ペネトレーター

MSモード
『モデルグラフィックス』2002年3月号

WRモード
『モデルグラフィックス』2002年3月号
最後に・・・
いかがだったでしょうか?今回はアニメ版では登場しなかった機体たちばかりです。主に「ガンダム・センチネル」で設定されたものが中心でした。馴染みのない機体たちだったかもしれません。しかし、この後、リ・ガズィや「機動戦士ガンダムUC」で登場するリゼルなどもこの機体たちの中からの発展形です。Zガンダムは「プロトZ]と呼ばれるようにあくまで試作機でニュータイプのためのワンオフの機体ではありません。(実際、ZZではルー・ルカがメイン・パイロットを務めています。)量産機として時代の主力をなしていくのはこのZプラスだったのです。ガンダムの派生型を考える上で絶対に外せないシリーズであったのです。その辺から今回の記事を書いてみましたが、多くの皆様には「へぇー、こんなのもあったんだ。」ぐらいに読んでくれていれば幸いです。
次回は今まで書き残してしまった機体たちを拾いながら、次世代のガンダムについて書いていこうかと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。