鉄道ジャーナル 1992年6月号表紙。

この近辺の時期の鉄道ジャーナルは、もう「新幹線のぞみ」特集が続いており、こちらの表紙も300系新幹線電車デビューの華々しい表紙となっています。
「のぞみ号」について、一番詳しく書いてある号ですが、既に記事にしましたので、それ以外の鉄道シーンから、ピックアップしてみたいと思います。
300系のぞみ号の記事はこちら。
【新幹線のぞみ300系・山形新幹線登場】鉄道ジャーナル【1992年5月号】を振り返る - Middle Edge(ミドルエッジ)
オール2階建て通勤電車 215系登場!。
バブル経済は既に崩壊した1992年ですが、バブル経済の影響で土地が値上がりし、住宅地は遠くへ遠くへ、と広がっていた時代です。
遠距離から立って通勤し、クタクタになっていたサラリーマンにJR東日本が救世主を送ります。
それが、「オール2階建て通勤電車 215系」です。

オール2階建て通勤電車「215系」
215系近郊型電車 - 日本の旅・鉄道見聞録
先頭車と最後尾こそ、機器の搭載のため1階部分は座席がありませんが、10両編成オール2階建てという、おそらく日本初の通勤電車がこの年登場します。
座席数も、1編成1010席というすごい電車です。
「快速アクティー」の電車として憧れの電車に。
【迷列車で行こう 第1回】 東海道線 快速アクティー ( 鉄道、列車 ) - 管理人こうの趣味のページ—鉄道館 - Yahoo!ブログ
上のブログに快速アクティーの歴史が書いてあります。
東海道線という、日本で一番忙しい路線に、「アクティー」というしゃれた名前で登場した快速。
そこに、オール2階建てという度肝を抜く車両が投入されました。
JR東日本としては、熱海という一大観光地へ観光客を輸送する際に、競争相手となるのがJR東海の管轄である東海道新幹線だったので、新幹線への対抗の意味もあったかもしれません。あくまで個人的な想像ですが。
215系の魅力はなんといっても「2階席からの展望」。

華々しく登場した215系を報じる鉄道ジャーナル。
鉄道ジャーナル 1992年6月号 48、49ページより引用。
215系の魅力は、なんと言っても、2階部分からの展望です。
これは素晴らしいものがあります。
2階部分は、駆動部分(モータ等)から離れているので静粛性も高く、極上の旅気分を、普通料金のみ、時期によっては「青春18きっぷ」でも味わえます。
駅のアナウンスがまた秀逸。
快速電車ということもあるとは思いますが、215系の登場時は、駅のアナウンスで、「この電車は普通乗車券のみでご乗車になれます。」とわざわざアナウンスがありました。
ドアが開くと、みんな2階席の座席確保にダッシュです。
かなりの割合の人が、始発の東京駅から、終点の熱海駅まで乗りとおす人だったのではないでしょうか。
アクティーの半分は215系ではなかった。
これは記憶でしかないのですが、当時の時刻表には、215系のアクティーか、そうでないかが書いてあったようにも思えますが、時刻表をろくに調べないで、215系アクティーにルンルン気分で乗ろうとしたら、113系が、アクティーの字幕を出してやってきたこともありました。
113系はもちろん従来の車両で、2階建てではありません。しかもピカピカの215系と違って、いぶし銀の味わいの深い「湘南電車」ですので、「アクティー」という名前と、113系のオンボロさ、モータ音の轟音などとのギャップが激しく、乗っていながら思わず苦笑したものです。

113系快速アクティー。
国鉄113系電車 - Wikipedia
通勤電車には適合しなかった215系。
しかし、旅行としてたまに乗る乗客からは非常に愛された215系でしたが、いつも乗る用務客には215系はだんだん不評を買うようになります。
座席数を多くしたことで、ドアを113系の3つから、2つにしてしまったこと、さらに2階建てなので2階に乗るにも1階に乗るにも階段の昇り降りが必要なことから、すべての乗客の乗り降りが完了するまでに時間がかかり、215系は遅延のもとになります。

この階段が乗り降りのネックに。
鉄道ジャーナル1992年6月号 54ページより引用。
アクティーの運用から外される。
wikipediaによると、2001年には早くも快速アクティーの運用から外され、徐々に活躍の場を失います。
これだけ華々しく登場した車両だったのですが、JR東日本としてはとにかく大量の乗客をいかに速くさばくかが責務なので、215系は使い道がなくなってしまいます。
どこに座るにも階段があり、バリアフリー時代になり不都合が生じたことや、なおかつ、座っても乗客と乗客が向かい合わせになる「ボックスシート」だったことが、仇になってしまったのです。
215系に今乗るには??。
国府津セ215系NL編成運用表 [17.3.4改正] ( 鉄道、列車 ) - ずっきーの鉄道部屋 - Yahoo!ブログ
215系は今でも通勤専用電車である湘南ライナーで平日は毎日運用されていますが、前売りですべて売り切れてしまう湘南ライナーには、ライナー券を手に入れること自体が難しいと思われます。
土曜日・休日に運行される「快速ビューやまなし」が、今のところ唯一普通に215系に乗れるチャンスです。
しかしながら、快速ビューやまなしは、寒冷地である中央本線を通るため、冬場は運休になっています。
そして快速ビューやまなしが運行される観光シーズンは、特急料金が要らずに小淵沢まで行けるため、ものすごい混雑になります。
それだけ、215系の人気は今でも高いということです。
設計時には思いもつかなかった「欠点」が活躍の場をせばめた。
この「鉄道ジャーナル1992年6月号」の215系特集では、「なんと素晴らしい電車」と、「欠点」などまったく書かれていない(当然ですが)ことからも、この「2ドア」「階段」「ボックスシート」は、乗客の入れ替わりの激しい大都市では思いもよらず「無茶」がありました。
しかし、前にも書きましたように、普通乗車券だけで味わえる2階席の展望、そして静粛性は本当に素晴らしいものがある215系。
人気も高いので、JR東日本には何とかうまい活用の方法を考えていただきたいと思います。