『ガンプラり歩き旅』その45 ~HGUC最新版、10機目のガンダムと、ビーム・ジャベリン!~

『ガンプラり歩き旅』その45 ~HGUC最新版、10機目のガンダムと、ビーム・ジャベリン!~

ガンプラ! あの熱きガンダムブーム。あの時代を生きた男子であれば、誰もが胸高鳴り、玩具屋や文房具屋を探し求め走ったガンプラを、今改めて当時のキットから現代キットまで発売年代順に、メカ単位での紹介をする大好評連載の第45回は、この連載での紹介は10機目となる(発売順では9機目)のガンダムと、レアな武器・ビーム・ジャベリンです!


TV第1話『ガンダム、大地に立つ』でのガンダム初陣ザク撃破シーン。アムロとガンダムの戦いは、ここから始まった!

私、市川大河が、書評サイトシミルボンで連載している、 『機動戦士ガンダムを読む!』での、再現画像で使用しているガンプラを、 古い物から最新の物まで片っ端から紹介していこうというテーマのこの記事。

今回紹介するのは、HGUC REVUVE最新版の1/144 ガンダムと、雑誌『月刊ガンダムエース』に付録としてついてきた、1/144 ガンダム用武器セットにラインナップされていた、ビーム・ジャベリンの紹介です。

ガンダム 1/144 HGUC 191 2015年7月 1000円

ボックスアートの「TV第1話の飛翔シーンの再現」が、このキットがVer.kaでもお台場版でもなく、正しくアニメ版ガンダムのキットであることを主張している

またなのかガンダム!
なんどめだがんだむ!
テレビ版オープニング歌詞にあるように、どんだけ「甦れ」なのかガンダム!
1/144だけで、9個目(うち2個はイベント頒布品)の新規発売になるぞガンダム!

完成したHGUC 191 REVIVE版ガンダム。小顔でスマートながら、アニメの印象を損なっていない絶妙のバランス感覚

「これがプラモデルアレンジの、『機動戦士ガンダム』(1979年)に登場した、RX-78-2ガンダムです」は、1/144では少なくとも、アニメ版準拠でHGUC 021が、お台場実物大立像準拠でHG Ver.G30thが、究極系バージョンでリアルグレード(RG)が、「ガンプラ初心者のお子様向けです」ではGFT版が、それぞれ、可能な限りの住み分けで市場を形成していた……はず、なのであるが。

HGUC 191 REVIVE版ガンダムを使った名場面の再現。ランバ・ラルのグフとの一騎打ちで、斬り勝つアムロ!

先に擁護しておくと、確かにHGUC 021とHG Ver.G30thは、デザイン面では究極に差別化が図られていたが、こと可動という面では、HGUC 021はアニメデザインに、HG Ver.G30thは初心者向けキットというビジネスに、それぞれ縛られて、他のHGUCモビルスーツよりも可動範囲が狭かったのは事実。

再び宇宙へ出たホワイトベースを追撃する、コンスコン隊のリック・ドム部隊との対決!

無論、そういったアレコレを一緒くたに払拭する役割が、RGシリーズには価値があったのだが、如何せんRGは、価格帯が高いため、売り上げがHGUCほど望めないという、バンダイ的に“美味しくない状況”がある。その上で、ユーザーサイドから見ても、RGはむしろ可動とディティール、パーツの細かさ等で「やりすぎ感」があり(そういうのが好きな人にはたまらないというのが、まぁ趣味の世界のビジネスの難しさではあるが)、ライトユーザーには手を出し難い上、完成した後でも装甲パーツがポロポロ落ちるというケアレスミスも目立つという状況がかくありきであった。

無敵のガンダムのビーム・ライフルが、宇宙を切り裂く!

一方で、HGガンプラではこの時期、新素材KPSと共通ポリキャップを採用した、「共通フォーマットのローコストで、歴代主役ガンダムを次々と1/144でリメイクする」という、通称・HGオールガンダムプロジェクトが、2013年にスタートしていた。

覚醒したアムロは、思念兵器ビットさえも、サーベルで撃破してみせる!

この、オールガンダムプロジェクトでは、主に『機動戦士ガンダムF91』(1991年)のF91や、『機動戦士Vガンダム』(1993年)のヴィクトリーガンダムや、『新機動戦記ガンダムW』(1995年)のTV版ウィングガンダムゼロなど、過去に1/144ではリメイクされていないガンダム達を中心に商品化が進んだ。

ア・バオア・クーでの最終決戦に、出撃していくアムロのガンダム!

一方での、HGUCのREVIVEという「Ver.2商法」と、一方でのオールガンダムプロジェクト。その狭間で“HGUCブランド”で“オールガンダムプロジェクトの各ガンダムと並んで違和感のない”しかも“救世主のような新素材・KPSを駆使した新型”で“気軽に買える価格帯”で“手軽に作れ”て“ディティールも可動も優れ”ている、そんなRX-78-2ガンダムの決定版を、という目論見から、今回紹介するHGUC 191 ガンダムが誕生したのだ。

そのア・バオア・クーで、シャアのジオングと雌雄を決する時が来た!

とりあえず、今回のガンダムは、その2つのシリーズのうちのどっちなのだと問われれば、一応はHGUCナンバーなので、REVIVE版ということになるらしいが。

今、決戦の時! 片腕を失いつつもガンダムのライフルが、宿敵シャアのジオングを狙う!

細かいことはこの辺にして、実際のキットを見ていこう。
見た目のデザインに関しては、肩アーマーや四肢などは、HG Ver.G30thやRGなど近年の定番アレンジの流れを汲みつつ、顔やボディの流線面などに関しては、HGUC 021版の直系とも言えるアニメ版に忠実な面もあるという、悪く言えばどっちつかずではあるが、逆に考えればオールインワンを目指した「ガンダムの正解」としては、一番2010年代では多数派の領域ではないだろうか?

完成したキットのポージングの幅が広いことが、この一枚の写真からも分かっていただけると思う

もはや、安彦版VSカトキアレンジの時代も終わったのだ(それを象徴するかのように、同時期から劇場版展開も始まった、安彦良和氏漫画原作アニメ『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』(2015年)のモビルスーツデザインが、カトキハジメ氏であったりする)。

顔のUP。カメラアイと黒い隈取はシールだが、赤い部分は今回は赤で別パーツ化されている。面構えもなかなか安彦画的

さて、このHGUC 191 REVIVE版ガンダムのキットとしての解説に移るが。
さすがに、35年間の間に、様々な試行錯誤を繰り返してきたRX-78 ガンダムの現行最終版だけあって、非常にバランスの良い仕上がりになっている。

腰の捻り、膝の曲がり具合、肩のスライドなどで、こんなポーズも曲線美のようにばっちり決まる

ここで言うバランスとは「解像度の設定」「アニメ作画版への忠実度とデザインリファインの両立」「キットとしての作り易さと色分け」「可動領域とパーツ数と価格」等の要素が、過不足なく過去のどのキットよりも、平均して割り振られている印象があるという意味である。

バズーカも、肘関節の折りたたみ角度の深さに加え、グリップ部分が稼働するので、自然に構えることができる

先にこのキットの弱点を挙げてしまえば「手首のバリエーションは豊富だが、左手首・武器持ち手がないという一点のみが惜しかった(最終決戦バズーカ2丁持ちがキットのままだと再現できない)」「肩のボールジョイント接続が、他のガンダムとは違った狙いがあるので(後述)、前方へ向けての引き出し可動が出来ない」「スカートアーマーの分割は良いのだが、リアアーマーだけ固定なので、脚を後方に向けて踏ん張るポーズが取れない」ぐらいか。

シールドを背中に背負っての、ビーム・ライフル両手構えも余裕

「小顔で細身、脚長なプロポーション」はREVIVEリファインの共通特徴だが、ガンキャノンや百式などのREVIVE版は、そこを受け入れられるかどうかでかなり採点が人によって違ってくると思われる。

ビーム・サーベルは、個人的には少し長すぎるパーツを選択したなと思ったが、ハッタリは効いているので、これはこれで悪くはない

筆者は個人的には、劇場版『機動戦士ガンダム』3部作で、2作目まではテレビ版のカットの方がそれなりに多かったのに対して、3作目『機動戦士ガンダムⅢ めぐりあい宇宙編』(1982年)では、キャラ、メカ問わず殆どのシーンで新作画が目立ち、その際安彦作画監督は、流れるような描線とシルエットでガンダムを描いていたことを踏まえ、再現画像でも一部可動範囲が必須なカットを除き、『機動戦士ガンダムⅡ 哀・戦士編』(1981年)再現までは、HGUC 021版ガンダムを用いておいて、『めぐりあい宇宙編』では、徹底的にこのHGUC 191 REVIVE版を使用することで、再現の画像の印象にギャップを持たせることにした次第である。

バンダイ製アフターパーツの「次元ビルドナックル(丸)」の、左手武器持ち手(M)を使うことで、ア・バオア・クー最終決戦のバズーカ2丁持ち仕様を再現

このキットの評価で、次に賛否が分かれたのが、成型色の白に関してである。
他の、これまでのリメイク版RX-78 ガンダムと違って、成型色の白が、ややグリーンがかっているところを指摘する声が多かった。

しかし、元々アニメのガンダムは、光が当たってる白い部分は純白で塗装されているが、特に劇場版用新作画カットなどで、影に当たる部分は、やや緑がかった色で描画されていて、なので1/144 ガンダムも、一番最初のキットなどは随分と成型色もグリーン寄りで、その上でさらにその彩度をグリーンに寄せた形で、ジムの色設定画成り立っているのだというのは、80年代からのガンダム者では当たり前の基礎知識である。

筆者は、webで酷評されているほどには成型色は気にならなかった。肘関節はいつものようにクールホワイトで塗装したが、御覧のように、さしたる違和感もない

なので、筆者的にはこの成型色も何も問題はなく、むしろ胸のブルーがさらに淡く、アニメ本編のスカイブルーに近くなってくれた事の方が嬉しかった。
もっとも、キット制作にあたっては、他のガンダムキットと統一するために、胸部青はMSライトブルーで塗装してある。

その上で、上記した肩関節の問題。
このHGUC 191 REVIVE版が、オールガンダムプロジェクトでもあるという話は前半で語ったが、オールガンダムプロジェクトでは、共通仕様のポリキャップが使用されており、それはPC002と呼ばれている。

肩ブロックを外した部分のUP。ボディ側に見えているポリキャップがPC002の2番

PC002の2番のポリキャップは、共通して各ガンダムの肩関節に使用され、主にボールジョイントで肩アーマーを受け止めながらも、ボディ側に設置されたボールジョイント自体が前方へスライドして、正面で両手を絡めやすくする効果を生むのだが、このHGUC 191 REVIVE版の場合は「あえて」そのスライド方向を、“前”へ向けてではなく“上”へ向けて設置してある。

この2番のポリキャップの取り付けが、他のガンダムとは違うので、肩アーマーを真上近くまで持ち上げることができるのだ

これは過去のガンプラでは再現が難しかった「ラストシューティングポーズ」を、無理なく再現できるようにとの配慮からの設計と思われる(余談だが、全ガンダムで、同じPC002を使用して構造成立させるオールガンダムプロジェクトだったはずが、HGUC 177 ∀ガンダムでは、いきなりそのレギュレーションが破られてしまっていた)。

逆にこのキットのセールスポイントを挙げていくのであれば。
その肩の他でも、肘と膝が二重関節でほぼ折りたためる状態まで動かせ、腰も首もダブルボールジョイントで、全身がグリグリ可動する。

肘関節の二重構造は、殆ど折りたためる状態まで、肘を曲げることが出来る

なので、バズーカを構えた状態を横から見ても、自然に肩の部分がマッチするようにポーズが決まる

足首は左右開脚への接地性が少し悪いが、逆にそこが気になるぐらいには、股関節の開脚や前後への動きも、スカートアーマーの独立可動(前部スカートアーマーは、中央で切り離すことで、左右独立で可動が可能になる)と相まって、ほぼRG準拠ぐらいには、可動範囲は広がっている。

膝の関節も二重構造で、両脚を膝までそろえても、伸ばした左脚と畳んだ右脚で、ここまで角度に差が出る

肩アーマーと肘の可動範囲の恩恵で、腕がすごく自然に、バックパックのサーベルまで手を伸ばすことが出来る

成型色分けも、カメラアイ下の赤い隈取も赤パーツになったため、トサカのメインカメラとカメラアイ周囲の黒い縁取り、そして頭部バルカンと腰ふんどし部のV字マークの黄色ぐらいが、追加塗装が必要な程度である(筆者はそこでもちろん、自分ルールで「手首は濃緑色」「武器とバックパックはミディアムブルー」「四肢の関節はクールホワイト」を追加した)。

ボディもボールジョイントを2段で内蔵しているため、微妙ながら胸を反らしたり、屈んだりが可能な構造になっている

全体のディテールや解像度も過度になっておらず、むしろそこは既出のRGや上記した『ガンダム ORIGIN』版キットとの住み分けを配慮してか、あっさりめに刻まれているだけで、これまでの『機動戦士ガンダム』版HGUCの各モビル・スーツキットと並べた時には、遜色や解像度の格差が起きないように抑えられている。

簡単に要約すると、このHGUC 191 REVIVE版は、「パーツ数と色分け、解像度やコストを抑えつつ、可動とポージングは領域をほぼ維持できた、廉価版RG ガンダム」という側面も持っている。
なによりも、ここまでの可動範囲とプロポーションと色分けが完成しているガンダムのHGUCが、税抜き1000円ジャストという価格設定に収まること、それ自体が一つの技術革新ではないだろうか?

新時代のスタンダード1/144 ガンダムのポテンシャルの高さ

また、シルエットやディテールの縛り的に「お台場1/1 ガンダム」から解放されて、改めてアニメ版へ回帰した部分というのは、この時点での選択としては正しかったのではないだろうか。

付属オプションは、両平手、右武器持ち手、ライフル、シールド、サーベル、バズーカだが、ライフルとシールド、サーベル(の長さ)は、HGUC 021版よりも大きめに作られていて、これもまた、原作アニメ劇中で、厳密に大きさが定まっていなかったことを踏まえれば、細身シルエットに対しては、より強調されて装備が見えるという部分では悪くないと筆者は思っている。

ビーム・ライフル。スコープの黄色い部分は成型色で別パーツ化。フォアグリップはもちろん可動式で、過去のものより大きめに造形されている

ハイパー・バズーカ。HGUC 021版付属のより、むしろディテールがすっきりしているのだが、逆にアニメ版に印象が近づく結果となった

シールドは、両腕の肘のハードポイントに軸接続する方式と、グリップを拳で掴む方式と、ホールド方法が2種類から選べる

また、パーツの合わせ目も、脛裏とヘルメットなどには残るものの、前腕や肩の段落ち接続やボディ前後の張り合わせ等は、逆に「そういう接続ライン」として処理がされていて、その応用で太腿などの分割ラインも、ほぼパネルラインとして認識できるので、素組のまま完成させてもほぼ合わせ目が気にならない最新仕様が採用されている。

HGUC 021版(左)との比較。どちらもどちらにもない良さを持っている、一長一短だが、選択肢の幅があること自体が素晴らしい

確かに、HGUC 021版の方が、がっしりとしたボディが大河原設定画や劇中の武骨な印象に近い、肩アーマーがちゃんと四角形(HGUC 191 REVIVE版では7角形)である、同スケールのコア・ファイターが付属している、等の長所もあるが、逆を言えばそれこそ、RG版やHG Ver.G30th等、そこへ今後展開のORIGIN版など、今となってはそれぞれの1/144 ガンダムが共存して商品ラインナップに揃っているのだから(これからも……のはず)、ガンダムファン個々が、好きなガンダムを選び取っていけばいいとは筆者は思う。

ビーム・ジャベリン 『月刊ガンダムA』付録『TEAN'S O.D WEAPON Ver. HGUC 1/144 ガンダム対応武器セットA』2015年9月

『月刊ガンダムエース』付録の箱の表面。この手のお約束で段ボールに印刷のパッケージだが、タイトル的にも写真的にも、1/144初となるビーム・ジャベリンの存在感を一番に打ち出している。

テレビ版の『機動戦士ガンダム』のガンダムの活躍の再現で、地味で出番が少ないながらも、なくてはならないビーム・ジャベリンは、KADOKAWAの月刊ガンダム漫画雑誌『月刊ガンダムエース』の2015年 09月号に付録としてつけられた『TEAN'S O.D WEAPON Ver. HGUC 1/144 RX-78-2 ガンダム対応武器セットA』の中に含まれたものを、キットそのままに使用した。

セットの中のビーム・ジャベリンを完成させた図。パーツ構成は単純で、塗装も墨入れの他は、先端をピンクで塗装しただけ

まずは、このセットの解説から。
このセットは、前回のMSハンガー同様に、雑誌付録のガンプラ用アフターパーツである。
セットは二つ、AとBがあり、その違いは、Aにはビーム・ジャベリンとスーパー・ナパーム、Bにはガンダム・ハンマーが付属しており、後は成型色が異なるだけで、メインの武装パーツは共通している。

この付録メインの武装パーツは、二連装キャノン、シールド&ビームサスマタという組み合わせで、これらの装備は、当時『月刊ガンダムエース』で連載されていた漫画『ガンダムビルドファイターズA』に登場する装備であった。

パッケージの裏面。ここで他の多彩な武装パーツが紹介されている

ちなみに、ここで付属してくる二連装キャノンとシールドを、あえて接続して左腕に装着した状態は、あきらかに80年代初頭のガンプラブームの中で生み出されたオリジナルガンダム機体・フルアーマーガンダムへのオマージュで構成されている。
もっとも、これらの武装パーツは、アニメ展開もしていた『ガンダムビルドファイターズ』(2013年)の商品展開のレギュレーションに基づいており、他の様々なアタッチメントやバックパック、各武装に装着しての、バラエティ豊かな遊び方が前提として存在し、ビームジャベリン、スーパー・ナパーム、ガンダム・ハンマーなどの、マイナー過ぎるチョイスは、その「イマドキのガンプラ遊びの流れ」に、筆者たちオールドファンを巻き込もうというプレゼンが透けて見える商品構成と言えた。

ジャベリンパーツを取り去った「後は要らないジャンクパーツ群」。右上にビーム・ライフルのパーツ一式も見えるが、これはHGUC 191 REVIVE版ガンダムに付属しているものと同じ

筆者の再現画像では、スーパー・ナパームを抱えたカットは再現せず、ガンダム・ハンマーもHG Ver.G30th付属の物で撮影をしたので、ここからは、唯一の入手目的であったビーム・ジャベリンについて、少し解説を加えたいと思う。

第11話『イセリナ恋の後』再現画像より。イセリナのガウ攻撃空母にジャベリンを刺そうとするガンダム

ビーム・ジャベリンは、論理的にはビーム・サーベルのリミッターを解除して、サーベルの柄の部分が延長され、その先端にメガ粒子が三叉状態で展開する武器。
ビーム・サーベルがあくまで剣であったり刀であったりする殺陣の武器とするのであれば、槍の演出や効果を狙った武器として設定された。
『機動戦士ガンダム』第11話『イセリナ恋の後』で、ビーム・サーベルのメンテナンス中にアムロが用法を発見し、実戦で使用したという形で初登場した後、何度かビーム・サーベルの応用兵器として登場し、第21話『激闘は憎しみ深く』では、投擲武器としても使用され、ハモンが乗るギャロップを撃破した。

第21話『激闘は憎しみ深く』再現画像より。迫ってくる、ハモンのギャロップに向かってジャベリンを投げようとするガンダム

しかし、ビーム・ジャベリンは、ガンダムハンマー、Gアーマーと共に、スポンサー玩具メーカーのクローバーによる要請で出されたものであったので、劇場版では、Gアーマー、ガンダムハンマーと共にその存在を最初からなかったことにされたので、劇場版しか観たことがない人には、まったく未知の武器であるとも言えた。
テレビ版で、ハモンのギャロップを破壊するシーンでは、ガンダムがビーム・ライフルを撃つ新作画が挿入された。

これはシミルボンの『機動戦士ガンダムを読む!』でも触れたが、『ガンダム』は、超人気コンテンツでありながら、映像のソフト権利が複雑で、ビデオソフトもDVDも、まずは劇場版がかなり映像ソフトビジネスとしては遅いタイミングで発売されて、さらに数年経ってからようやくテレビシリーズが発売されるという流れが多い。

ビーム・ジャベリンの先端のビーム部分。球体の上下と、三又の、合計5パーツから構成されている

そして『ガンダム』は、映画版の出来がすこぶる良く、作画に至っては3作目辺りになると、比較にならないぐらいに劇場版のクオリティが高い(=テレビ版の作画が酷い)ため、ともすると「劇場版三部作だけ観ておけば『ガンダム』に関してはほぼ大丈夫」という誤解を招きやすいことも手伝って、特にテレビシリーズのLDソフトと、レンタル用のビデオソフトが販売される1998年(そう、20周年まで、テレビシリーズは全話ビデオが発売されていなかったのだ)までは、テレビ放映の家庭用ビデオ録画版を持っている人以外は、劇場版を観るしかなかったのだ。

そうなると、メカ的にもストーリー的にも、ブラッシュアップとしてのパラレルになっているテレビ版と劇場版では、自然と劇場版が正史扱いを受けるようになっていき、そうなると必然的に、Gアーマーやビーム・ジャベリンや、ジオンのモビル・スーツ、ギャン等は、まるで最初からなかったかのような扱いが、特にガンプラや関連商品の世界ではまかりとおってしまった。

ジャベリンの柄の部分。アニメ設定に忠実なディテールが彫られている

劇場版のLDソフトが発売された直後に展開が開始されたHGUCで、そのトップバッターが、ガンキャノンとギャンだったのも、あえて「HGUCは、どんなマイナーなモビル・スーツだろうと、要望があれば商品化します」アピールを狙った感があったものと思われる。

今回紹介するビーム・ジャベリンも、まだ劇場版が上映開始されるタイミングの、1981年4月に発売された、1/144 武器セットでは、ヒート・ホークやハイパー・バズーカ、ザクの三連ミサイルポッド等と共に、拙いながらもラインナップには入っていた。
しかし、その後の劇場版正史扱い至上主義の流れの中では、Gアーマーと共に、ロストテクノロジー、オーパーツ化されたという感覚は否めない。
ただ、Gアーマーに関しては、『機動戦士ガンダムZZ』(1986年)のGフォートレスからガンダムZZへの変形が、「Gアーマーがガンダムになる」という裏コンセプトを持っていたり、隠れたファンや需要はあったのだが(しかし今度は、2006年になって、劇場化された『機動戦士Ζガンダム A New Translation -星の鼓動は愛-』のラストが、『ガンダムZZ』の始まりに繋がらないという新たなパラレルを生んでしまったのも皮肉な結果だった)、あくまでガンダムマニアのGアーマーへの認識は「玩具会社に登場を強制された、ガンダム世界には似つかわしくない合体玩具メカ」という域を出ず、完成品フィギュアや立体物が、1990年代からぽつぽつ出始めた時も「あえて“あの”玩具デザインをリアルにしてみせる」や、ネタ的要素での商品化が多かった。

せっかくなので、今回紹介したHGUC 191 REVIVE版ガンダムに持たせてみる。これは突進をイメージしたポージング

しかし、LDソフト化以降は、ようやくガンダムマニア諸氏も、テレビと映画がそれぞれ独立しつつも、そこに上下の差異はないパラレルであることを受け入れはじめ、2006年にテレビ版DVD-BOXが発売される直前期には、2004年にHGUC 050 で、DVD発売後の2009年にはMG 121で、それぞれGアーマーが発売され、その存在価値の帰結的完全な復権を果たしたのである。

ここまでなぜ、Gアーマーの話題を長々書いたかというと、「テレビ版では描かれていたが、劇場版では存在が抹殺された」メカや小道具という意味では、ギャンや耐熱フィルムと、Gアーマーやビーム・ジャベリン、そしてハイパー・ハンマーなどは少し立ち位置が違うからである。
しかし、ギャンもGアーマーも四半世紀の時を経て復権を果たしたが、ビーム・ジャベリンとハイパー・ハンマーはそれでも鬼子で水子のままであったのだ。

そこで、今回のビーム・ジャベリンの(雑誌の付録とはいえ)正規バンダイの商品化である。
未だ、ハイパー・ハンマーは、1/100でこそ、それこそGアーマーのキットにオマケとして付属してきた(これだけで、これら「クローバーメカ」のガンプラでの扱いがお判りいただけると思う)が、未だ1/144では、1981年の武器セットの物を使うしか選択肢はない。

向かってくる敵を、ジャベリンで迎撃せんとするシーンをイメージ

一方でビーム・ジャベリンは、やはりこちらも1/100では、2008年に発売された、MGガンダムVer.2.0に付属されていたが、1/144ではどのガンダムにも付属されず、今回のガンダム対応武器セットAで、34年ぶりの正式キット化となったという流れである(なんの因果か、とことん歴史は残酷なのか。この商品のバリエーションであるガンダム対応武器セットBに付属するのは、ハイパー・ハンマーではなく、ガンダム・ハンマーの方であった)。

この商品に含まれているビーム・ジャベリンの方に話題を移せば。
確かにビーム・ジャベリンといえば、先端の球状三又ビームがなければ「ただの棒」でしかないわけで(実際、1981年の武器セット版は、あまりにも短い「ただの棒」だったので、今回はさすがに使えなかった)、しかし、このセット版では、雑誌の付録のコストの問題からか、クリアパーツが使えないので、白の成型色のままのプラパーツで、ビーム部分が形成されている。
傍目には、ちょっと柄の長いチュッパチャプスのようにも見える滑稽さがあるが、少なくとも筆者の使い道の場合は、ビーム部分はクリアパーツであろうと非クリアであろうと、結局は上からフォトショップでピンクを描画してしまうので関係がない。

こうして手に握らせたままだと、やはり少し長すぎると感じてしまうが、逆にそれが存在感でもある

その上で、柄部分に丁寧に刻み込まれた「ジャベリンならではのディテール」を、丁寧に墨入れしていくだけで、充分「ビーム・ジャベリンとして」のアイデンティティ、存在価値には繋がった。
多少、アニメ劇中設定よりも柄が長すぎる印象もあるが、これはこれで、柄が短すぎた81年武器セット版の反動だと思えば微笑ましいというとほめ過ぎか。

どちらにしても、筆者がやっているような再現画像は、こうした「ちょっとした小道具」があるかないかで、ずいぶんと仕上がりの印象が違ってくるのでありがたい。

この付録セットは、今でもヤフオクでは安価で見かけるので、手持のガンダム(イマドキのHGやRGなら、どれでもこれを握ることは出来る)に、ビーム・ジャベリンを握らせて、イセリナやハモンの悲劇に思いを馳せたい人には、是非お勧めの小道具である。

市川大河公式サイト

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