
RGガンダムが立った大地は、お台場か? サイド7か!?
今回紹介するのは、ガンプラの歴史を新たに塗り替えたとも言われている、RGシリーズから、先週に引き続きガンダムの紹介になります! ……っていうか、みんなそろそろ、1/144 ガンダムに飽きてない?
ガンダム 1/144 RG 2010年7月 2500円

高級感溢れるパッケージであると同時に、商品の完成形をただ佇まわせているだけという、自信に溢れたデザイン!
RG! リアルゴールド! それまでは大塚製薬のオロナミンCの独占市場だった、安価栄養ドリンク市場に、コカ・コーラボトラーズが1981年に参入発売した、大人のための栄養ドリンク! ミドルエッジ世代ならみんな飲んだはず! ……ちぃいいがぁああううぅっ!
RG! レイザーラモンRGは、レイザーラモンHGと共にコンビを組んでいたお笑い芸人で、プロレスラーとしても活動している、1974年生まれのタレントで、まさにミドルエッジ世代である! ……ちぃいいがぁああううぅっ!

見よ! これが誰もが驚愕した1/144 RGガンダム
解像度なのだよ、解像度!
もうね、ガンプラもこの時点で30周年を迎えて、なんか一旗あげなくちゃって機運が高まって。だからお台場に1/1 ガンダムも立てました、それを基にした1/144 HG Ver.G30thも発売しました! しかし、バンダイ的にはジレンマがずぶずぶ残り火を燻ぶらせていたのだ。

アドバンスドMSジョイントのフレキシブルな動きで、過去になかった多彩なポージングが可能に!
要するに、30周年記念の1/144 HG Ver.G30thは、見た目ほどには組み立ても可動も複雑ではなく、ライトユーザー、出戻りユーザー目当てで、30周年を機に今一度ガンダムを手にしてもらおう的なアイテムとして仕上がったわけだが。
むしろ、その30年間、ガンプラを、バンダイを、しっかりと支え続けてきてくれたヘビーユーザーでは、1/144 HG Ver.G30thでは正直「物足りない」と思わせてしまうことは、1/144 HG Ver.G30th開発前からバンダイホビー事業部は、恐らく感づいていたのだろう。

上半身のUP。この情報量の高密度感!
ここへきてバンダイは、既存のHG、MG、PG、FGというそれぞれのスケールの、それぞれのシリーズとは別個に、究極(なんどめだなうしか)の1/144を目指すというコンセプトを掲げ、リアル・グレード(RealGrade=RG)というカテゴリシリーズを新たに立ち上げ、その1作目にRX-78 ガンダムを当然選んだのである。
リアル・グレードとは?
それは、1/144の大きさの中に、バンダイの既存の技術と新技術を詰め込んで、百戦錬磨のプロ級モデラー達をも唸らせる、究極のガンプラ、という意気込みを託したブランドである。
基本構造としては、ABS樹脂とPP(ポリプロピレン)で構成された「アドバンスドMSジョイント」というフレームが既に半完成品状態で用意されていて、そこへ外装パーツをはめ込んでいくことでガンダムが完成するのだが、この作業とパーツ数が半端じゃなく細かい。

腰部のUP。V字マークが別パーツなだけではなく、白一つとっても多段構造なのが分かる
それも、パーツが細かいというだけではない。
小さいサイズに、巨大なモビル・スーツの存在感を詰め込むために、全ての装甲が無数のパーツに分けられているだけではなく、同じ白や青でも、少しずつ色味を変えた成型色で構成されていて、しかもそれら外装が、四肢を動かしたときなどに、フレームと連動してスライド可動するという代物。
もちろん、基本的な色分けは完璧で、目の周りの黒や赤、腰のふんどしのVの字マークのイエローまでもが色分けされているのは当たり前で、プラスアルファとして、今も書いた装甲の多段色分けが付加されている。

バックから見たRGガンダム。バックパックの立体情報量などが更に高密度でハイクオリティさを醸し出している
なので、そのパーツ数も、要する組立工程も組み立て時間も、半端なく忍耐と努力を要する代物。
確かに大河さん、初代『機動戦士ガンダム』登場のメカのガンプラで「解像度を上げる」という概念が苦手で、ディテールなどが凝ったガンプラでも、これまではシミルボンの『機動戦士ガンダムを読む!』再現画像に登場する可能性のあるガンプラに関しては、極力塗装処理などで「解像度を下げる」方向で統一する作り方をしてきた。
しかし、それはこの連載を読んでいる人にとって「市川大河ってガンプラ作りが下手なんじゃないの?」「解像度をわざと下げたって言ってるけど、高度なガンプラになると、解像度が上がった商品仕様のままでは作れないんじゃないの?」という誤解を生んでしまっているかもしれない!

もちろん、シールドを背中にマウントすることも、ライフルのフォアグリップが可動して、両手で構えることも可能!
いかん、いかん! いかぁあん! それではいかんのだ!
ちゃんと筆者にも、イマドキのガンプラをイマドキ風に作れるところは、見ておいていただかなくてはならない!
その上で。
『機動戦士ガンダムを読む!』再現画像制作も終え、むしろこの『ガンプラり歩き旅』の連載が「この際だから、1/144で発売されたRX-78 ガンダムは、全部紹介しちゃおうよ」へとシフトしていったとき、絶対にこのRGガンダムは外せない、ガンプラの歴史の句読点だと、がっぷりよっつに向き合う覚悟を決めたのだ!
今回だけはアニメカラー塗装は無視!
RGの成型色を活かしつつ、その上で関節や武器類のディテール部分は、キットのパーツが持っている情報量を、さらに上げる方向で、メタリックのカラーや墨入れで解像度を強調していくのだ!
バックパックにつけられる意味不明の「手すり」も含めて、今回ばかりはとことん、RGのルールに従ってモデリングを行ってみる!
RGガンダムは、1/144 HG Ver.G30th以上に1/1お台場ガンダムのスケールモデルを目指しており、1/144 HG Ver.G30thでは再現できなかった、お台場ガンダムの細かいディテールやパネルラインなども丁寧に再現してある。
このキットの発売時期が、ちょうど1/1ガンダム立像が、お台場潮風公園版から東静岡へと移設された時期であるので、デカールもその両方を再現する仕様が同梱されていて、徹底的にそこは拘って作られている。

こうして素手で、佇んでいる姿を下から見上げると、まさにお台場の1/1ガンダムを思い出させてくれる
なので筆者も、慎重かつ丁寧に作業を行わなければならない。
このRGガンダムは、RGシリーズの第1弾ということもあり、まだ技術的な蓄積も無い状態からのスタートであったので、アドバンスドMSジョイントに対する、プラ装甲パーツのはめ込み強度がしっかり精査されておらず、組み立て中も完成後の可動時にも、あちこちの装甲がポロポロ外れて落ちて、ストレスが溜まること請け合いである(笑って請け合えるレベルではないが)。

今回用に特別に作ったコラージュのもう一枚。
しかし細かい! っていうか、これなに? 米粒に写経する修行!?
よく、最近のガンプラの組み立てをして「出来の良いアクションフィギュアの、工場ライン工員を、金出してやらされてる気分だ」と揶揄る声も聞こえてくるが、RGガンダムがもたらす、パーツの小ささと組み立ての難易度と細やかさは、もはや完成品フィギュアのライン工ってレベルじゃねーぞ! 蟹工船だよ、蟹工船!
誰が、1/144サイズで、ガンダムの頭のバルカン砲まで別パーツにしろって言ったんだよ!
もはや、このRGガンダムがもたらすプレッシャーは、既に模型製作の“それ”ではない!

微妙に片足に重心をかけたようなポーズも、明確な筋肉的な流れで表現してしまう、それがRG!
その結果のギミックに解説の流れを変えれば。
四肢はもちろん二重関節で動き、先ほども書いたが、上腕や太腿、脛などの外装のパーツも、四肢の動きに合わせてスライド可動する。
首も肩も腰もぐにゃぐにゃ動き、ついでにそれらのパーツがポロポロ外れやすい。

あえて細部塗装まで施した肘関節のフレーム。質感をあげるだけでここまでのリアリズムに達する!

膝の関節も、あえて見えにくい装甲がかぶった箇所に、ゴールドでワンポイントの塗装処理。目立たせればいいわけではないところが大事
手首も、手のひら、親指、人差し指、その他の指と、4パーツに別れて構成されていて、しかも、それらの指が第2関節まで可動して、いざ武器を持つ際は、武器からスライドしてくるアタッチメントを、手のひらの穴に刺して握らせるので、武器のポロリは殆どない。その代わり! 指がポロポロ外れまくるけどな!

ランナー状態で既に完成している手首だが、指が外れやすいので扱いは慎重に!
カメラアイは、アニメでは黄色く、既存のガンプラではここをクリアイエローのパーツで成型することがセオリーだったが、RGガンダムではまず、イエローパーツでカメラアイが作られて、その上に無色のクリアパーツを被せる謎の手間仕様! さらにそこにデカールを貼ることも可能な仕様になっている。

バストショットのアップ。各パーツの別部品感と、色味のコントラストが絶品である
背中の方も、バックパックはサーベルの基部で動いたり、バーニアが個別でボールジョイントで動いたり(驚くなよ? そのバーニアの上にある、ミリ単位のフィンまで可動するんだぜ)、要するにこのRGガンダム、普通にガンダムで、人が考えて動きそうなところは全部動く上に、普通に人が考えても動くとは想像できない部分まで全部動くという素敵謎仕様!

みんな大好きバックパック。こうして見ているだけでは、動くとは思えないところまで可動する!
だって、1/144のガンダムの足で、つま先まで独立可動しちゃうんだぜ!?
これって、自由度が高すぎて、逆にポージングして飾ろうという人に対して、与える選択肢が多すぎて大渋滞を起こしかねない、実際事故渋滞みたいな完成度を誇る究極さなのである!

当然ディテールが密集しているソールパーツ! この上で、つま先までがフル可動!
また、RGガンダムに用意されている武器は、ライフル、バズーカ、サーベル、シールドの、過不足ない4点セットだが、バズーカのモノトーン色分けこそ、テレビシリーズの初期はそうだったねと納得が出来るが、ライフルはなぜかグレーと白のツートンで、なんか「コレジャナイ」という気分にはさせられてしまうが、そこはそれ、ガンダム本体の色の情報量のビッグバンに、多少なりとも合せなければバランスが取れないというのも道理。
どうせお台場ガンダムは、ライフルを持っていなかったしね。

RGガンダムのビーム・ライフルは、グレーと白のツートンに

ライフルは、スコープがイエローであるだけではなく、スコープ中央がちゃんとグレーに!

ハイパー・バズーカも、ディテールとデカールで高情報量に!
もっとも、1/1ガンダムが後に握ることになるビームサーベルは、このRGガンダムにも付いているが、こちらはクリアパーツ部分で、1/100共通仕様の物を使っているためか、1/144のガンダムに持たせると、若干オーバースケールに感じてしまうかもしれない。

ビーム・サーベルを振るうRGガンダム!

サーベル刀身は1/100のパーツなので、多少サイズが大きいか
また、オールドファンのツボを抑えてるといえば、ビームライフルやサーベルが、シールド裏にマウント設置できたり、このキットには、1/144のコア・ファイターが、HGUC 021同様に付属するが、嫌な予感はしてたが、このコア・ファイター、ちゃんとしっかり、コア・ブロックに変形するだけではなく、RGガンダムの腹に収まりやがるぜ! しかも、コア・ファイターを別個に飾りたい人向けに、非変形型のコア・ブロックまで用意している周到さ!

ビーム・ライフルを設置できるシールドの裏だが、ここもディテールがびっしりだ!

垂直尾翼以外、色分けもほぼ完璧な1/144 コア・ファイター!
それだけじゃないぞ! この1/144 コア・ファイター、キャノピーはちゃんと開くわ(さすがにアムロは乗ってないが)、着陸脚は着脱可能だわ(さすがに収納式ではないが)、垂直尾翼は差し替え抜き差し仕様ではないわ、もはや、尋常ではない熱気と魂が、このキットには込められているといっても過言ではないだろう。
決して嫌味ではない、いや、誉めてる。誉めてるんだけど、なんか手放しで誉めたら怖いような気がしてくるのもまた事実なのがこのRGガンダムの凄みなのである!

1/144でコア・ブロックに完全変形!
ここまでを踏まえて思い出すのは、「基本のフレーム(アドバンスドMSジョイント)は既に出来ており、そこへ装甲を張り付けていく組み立て法」といい「1/144サイズながら、コア・ファイターがコア・ブロックに変形してガンダムの腹部に収まる」「シールドの裏にビームライフルがマウント出来る」等のギミックの再現といい、つまり要するに、このRGガンダムは、1990年にガンプラが10周年で(当時の)渾身を込めた、初代HGガンダムの、正気の沙汰とは思えない、謎の正統派後継リベンジ・リメイクモデルという側面も持っているのだッ!
初代1/144 ガンダムから30年、初代HGガンダムから20年。
バンダイの技術力がどこまで進化を遂げたのか。
肝心の、モデラーサイドの技術力底上げを文字通り棚上げにしてまで、バンダイがガンプラ史に刻み込みたかった「ガンプラ30周年記念究
極モデル」RGガンダムは、ガンプラの全ての始まりとなった、初代1/144 ガンダムと同じ7月24日に発売された。

手足は可動する時に、フレームの伸縮に合せて外装の装甲がスライドするシステムを採用
これはもう、横溝正史推理小説レベルの怨念というか、七代祟るレベルのバンダイの拘りの結実であるといっても過言ではない。
確かにこのキットは、ポロリが多い、組み立て難い、ABS樹脂のバカ(笑)等々、難点も弱点も問題点も多い仕上がりになったかもしれないが、現状のバンダイが、1/144のガンダムに込められる技術水準としては、問答無用の最高峰を誇るキットにはなった。

1/144 RGガンダムと、付属品の全て
RGシリーズは、このRX-78 ガンダムを皮切りに、いつものように調子にのっちゃったバンダイが、シャア専用ザクとかを挟みつつ、ゼータガンダムやガンダムMK-Ⅱ、フリーダムガンダムやデスティニーガンダム、ウィングガンダム等、ガンダム系を中心に商品展開していき、その中では今回のRGガンダムで見られた難点を解消したり、さらに増したりしながら商品展開を続けていくことになるのだが、中には「RG シャア専用ズゴック」のように「お前はズゴックじゃない! 一応記号論的にはズゴックかもしれないが、お前なんか俺の知ってるズゴックじゃない! っていうか、お前その細かい装甲で、水力抵抗とかどうすんだよ!」等の、ツッコミどころ満点の異色作キットまで送り出すシリーズに、2017年現在は育っている。
今回の製作では、装甲や外装はキットの成型色を活かし、付属のリアリスティックデカールをフルに活用することで全体の解像度と情報量を追加。
アドバンスドMSジョイントの露出間接部分は、塗料の乗りにくいPP製だが、素材を破損しないように、ガンダムマーカーのメタルカラー等でジョイントやシリンダーを緻密に塗装し、商品見本に負けない完成状態を、本気を出して目指してみた。

まさに「究極の1/144 ガンダム」が今ここに!
完成してしみじみ思うのは「うん。やっぱりこれは『お台場ガンダムの模型』であって、俺の再現画像で、HGUCのザクや、旧1/144のマゼラアタックとは絡ませられないわ。バンダイってすげぇなぁ」であった。
市川大河公式サイト