キャッチが頭にのこる、言葉のちからで、メロディを借りて
前回は食べ物のCMで、記憶に残るものを列挙しました。
キャッチには、その使われていることばそのものの力もありますが
その時代の背景や風潮にマッチしているほど
起きた出来事や記憶と結びつくのではないかと思います。
今回は食べ物以外のCMで、特に記憶に残るものを並べてみました。
美しい方はより美しく、そうでない方はそれなりに
富士フイルムの1980年のCMです。
樹木希林と岸本加世子のとぼけたやりとりがツボですね。
富士フイルムは写真フィルムのトップメーカーです。
1968年に「お正月を写そう」というCMで
長らくトップだったさくらカラー
(現コニカミノルタ、現在はフィルム事業から撤退)を抜きました。
その後さくらカラーが、価格は上げずに20枚撮りフィルムを24枚撮りにして
欽ちゃんの「4枚増えてどっちがお得」のCMで盛り返し
フジカラーも24枚撮りに変更、デッドヒートを演じていましたが
やはり「お正月を写そう、きれいな晴れ着を写そう」というCMは
イメージ強かったですね。
「お正月を写そう」以外にも、富士フイルムは季節ごとにCMを出していて
樹木希林と岸本加世子ペアのシリーズはどの季節にも出ていました。
2013年に一旦降板した綾小路さゆりですが、2015年に復活します。
これは2017年の最新CM。
富士フイルムは写真フィルム以外にも
エックス線写真・映画用フィルム、印画紙、現像装置、複写機
最近では化粧品や健康食品も手掛ける、大企業になりました。
あ、それから
「フィルム」じゃなくて「フイルム」なんだそうですよ。知らなかった。
芸能人は歯が命
歯磨き剤アパガードのCMです。
たしかに芸能人は歯が白いわ、と
改めて気がついたコピーです。
アパガードはもともと通信販売の商品だったそうです。
東ちづると石田純一で1度「白い歯が好き」というCMをうち、
それなりに売り上げていたのですが
大手が美白歯磨きに参入してくるという噂を聞きつけて、つくられたCMがこれ。
APAGARD History

アパガードの誕生秘話とその変遷
APAGARD History
たしかに芸能人の歯は白いしきれいだし
乱杭歯の人もいないよね。
黒澤明の「どん底」で、中村鴈治郎が長屋の大家六兵衛を演じるために
歯を全部抜いちゃった、というエピソードがありますが
一般人を描く映画やドラマで、白いきれいな歯、というのは
あまりリアリティはないですよね。
亭主元気で留守がいい
キンチョー「タンスにゴン」のCM。1986年。
キンチョー(KINCHO)は、大日本除虫菊株式会社って言うんですよ。
知ってました?
どこかの町の「婦人部」の例会。
たぶん町内の地区会館の1室で、子どもは走り回るし卓上にお菓子とお茶は出てるし。
リアルな情景の中で語られる「亭主元気で留守がいい」。
当時は意味がわからなかった「亭主元気で留守がいい」今ならわかる - Middle Edge(ミドルエッジ)
演じているのはもたいまさこと木野花。
どちらも1980年代に小劇場で活躍した、知る人ぞ知る女優さんですね。
もたいまさこはこのCMで知名度を得て、
その後の「やっぱり猫が好き」に主演しますし
木野花はドラマにも多数出演、「あまちゃん」でメガネ会計ババアやってました(笑
キンチョーは他にもインパクトのあるCMが多くて
花火をバックに出る「金鳥の夏、日本の夏」とか
「ハエハエカカカ、キンチョール」「どんとぽっちい」など
けっこうアクティブにCMを作っているんですよね。
最近はちょっと、さびしいかな?
私はコレで、会社を辞めました
マルマン 禁煙パイポ。1984年ですね。
もともとマルマンの前身はライターの製造販売をしていた会社でした。
1971年にゴルフクラブの製造を始め、メタルウッドの製品が売れて急成長します。
金属加工業の強みを活かし、世界初のガスライター、電子ライターを開発
1984年、この「禁煙パイポ」が生まれます。
1984年にテスト販売を始めた禁煙パイポですが、CMの内容が女性団体から抗議を受けるのではないかと懸念があり、小指を立てないバージョンも念のためつくられました。
小指を立てた男性は当時東京都の職員。
有名になってしまって仕事に差し支えるほどだったそうです。
「私はコレで会社をやめました」は、1985年の流行語大賞大衆賞に選ばれています。
だいじょうブイ!
武田薬品工業 アリナミンV1 1990年のバージョンです。
今の武田コンシューマーヘルスケア株式会社(長っ)の製品ですね。
そもそもアリナミンって何なのよ。
と思って調べてみましたわ。
カラダが疲れを感じる、というのは、エネルギーを自分でうまく作れなくなる
ということで、その時には
3大栄養素(糖質・脂質・たんぱく質)と一緒に、ビタミンB1を摂るといいそうです。
ただ、食物から摂るB1は吸収されにくく壊れやすい。
アリナミンに入っている「ビタミンB1誘導体 フルスルチアミン」は、
ビタミンB1の吸収を助け、結果的に疲労回復になる、ということらしいです。
フルスルチアミンはアリナミンの「A」にも「EX」にも「V」にも入っていて
吸収を助けるB群の種類と数によって、商品ラインナップが異なるそうです。
へー。そうなんだ。

ボディビルダーだったシュワちゃん
このCMの頃のシュワちゃんは、
ターミネーター、プレデター、トータル・リコール等の映画主演で
めちゃくちゃ売れてた時ですね。
当時は外人スターが日本のCMに出るだけで、話題になった頃。
マイケル・J・フォックスも「カッコ~インテグラ」なんて言ってました。
「シュワちゃん」という命名は淀川長治さん。
この13年後に彼はカリフォルニア州知事になるわけですね。
あっ、「ダイジョウブイ」をググると「おやじギャグの一種」って出てくるよ(笑
せき、こえ、のどに、浅田飴
浅田飴 1983年ごろかな?
永六輔さんの唯一のTVCMと言われています。
今の人は永六輔って言っても知らないんだろうなあ。
放送作家で、作詞家で、TVやラジオのパーソナリティで、随筆家でもある。
本当に「マルチタレント」のハシリの方です。
作曲家中村八大との「六八コンビ」
(もしくは坂本九との「六八九トリオ」)は知らなくても
「上を向いて歩こう」「見上げてごらん夜の星を」「こんにちは赤ちゃん」
は知ってるよね。
映像は見つからなかったのですが
おそらく1970年の浅田飴のCMは
「うどん」を「うろん」と発音する地域がある(福岡? 大阪?)が
そこに行けば「咳、声、のどに、浅田飴」は
「せき、こえ、のろに、あさらあめ」になる
って内容のものだったと思います。
く~るまにポピー、ポピー(エコー
ダイヤケミカル グレイスメイトポピー 1981年
出ているのはオール阪神・巨人。
この当時は第一次漫才ブームのころ。
東京から撤退していた吉本興業が、再度東京事務所を開いて
フジテレビの「THE MANZAI」で関東にブームを起こした頃ですね。
ただ、このブームの中心にいたのは
たけしの「ツービート」や「B&B」、やすきよなどで
オール阪神・巨人はあまり関東圏では名が知られていませんでした。
なので、この「くーるまにポピー」の人と
時々TVで正統派漫才をしている「オール阪神・巨人」が
なかなかイコールにならなかった記憶があります。
「車にポピー」でおなじみの【グレイスメイトポピー】、発売から30年、もちろん今でも売ってる! - Middle Edge(ミドルエッジ)
車に芳香剤を置く、という発想も
このCMを通じて知った方も多いのじゃないかと思います。
チャーミーグリーンを使うと、手をつなぎたくなる
ライオン チャーミーグリーン 1984年
ライオンは1973年に「チャーミー」という台所洗剤を出しています。
その後「手肌にやさしい」という触れ込みで「ママローヤル」という商品を
1979年に発売します。
この「チャーミーグリーン」は1984年。
「手をつなぎたくなる」というキャッチは
当時の台所洗剤が、どんだけ手荒れを起こしてたんだ! という様子が
逆の視点で見えてきちゃいますね。
とにかくこのおじいちゃんおばあちゃんが可愛すぎる!
各地の若夫婦もいい踊りしてますが、全部この二人に持ってかれてるところが
このCMのほほえましいところだったりします。
おじいさんとあばさんが手をつなぐ♪チャーミーグリーンのCM - Middle Edge(ミドルエッジ)
おしりだって、洗ってほしい
すみません。有名だしあちこちで書かれてるしで
「またかよ」と言われそうですが
キャッチの秀逸さを語る上で、このCMは欠かせない!
言わずと知れたTOTOウォシュレット 1982年
戸川純のあのすっとぼけた声とハの字眉の顔、それから青い絵の具。
その上にかぶさる「おしりだって、洗ってほしい」。
そうだよね、おしりも洗ってほしいよね、おしりさんごめんよ
と思わずうなずいてしまう説得力。
トイレの都度、おしりを洗うという発想と
それを使った後のさっぱり感、快感。
このCMは、その使用感が確実に後押しをしたことで、永久不滅のCMになりました。
もう日本人は温水洗浄便座のない世界には戻れないんです(笑
後続他社製品もふくめて「ウォシュレット」と言ってしまうほどに。
「おしりだって洗ってほしい」TOTOウォシュレットを爆発的なヒットに導いた戸川純のCM - Middle Edge(ミドルエッジ)
きれいなおねえさんは、好きですか
とにかく初代「きれいなおねえさん」水野真紀がきれい!
ナショナル フェリエ 1992年
もっとも、「くるくる」カールドライヤーの方でも
別の方が「きれいなおねえさん」になっているので
同時期に複数の方が商品別に出ていた気がします。
でも水野真紀の美しさは格別でした。女性から見てもドキドキした。
「好きですか」と聞かれたら。はい。もう(笑
男性の目線ありきのCMなので、
フェミ団体からなんか文句が来そうなもんなんですが
女性から見ても「好き」なら、それはもう問題ないんじゃないですかねえ。
「きれいなおねえさん」でwikiがつくられてるのも笑えます。
わたし、脱いでもすごいんです
また別の意味でドキドキしたCM。
エステサロンTBC 1995年
「カオだけで世の中渡って行けると思ってない?」という
意地悪な面接官(女性!)の問いに対し
「カオもいいけどカラダもいいのよ」とドヤ顔で返す、
いやあ渡世の仁義ですわ。メンチ切ってますわ。
この前のTBCのCMでは、坂井真紀が
「ぜったいきれいになってやる」と息巻いていたんですが
未完の「きれい」ではなく、ここでは既に完成した「きれい」があって
それを「どうよ」と見せつける傲慢な強さ。
バブルがはじけたあとの日本にない強さです。
だからこそ、このキャッチは「おおっ」と反応されました。
あの人は今!「私脱いでもすごいんです」のCMで有名になった『北浦共笑』 - Middle Edge(ミドルエッジ)
昼間のパパは、男だぜ
世のパパたちをほっこりさせた、あのCM。
清水建設 1990年
清志郎の声と、ちょっとセピアかかった画像がいい味出してる。
作詞は糸井重里だったんですね。
このCMのキャッチは「人がつくる、人の場所。」なんですが
それよりも清志郎が歌う「昼間のパパは、男だぜ」が
大きな設備を作るパパたちの真剣な顔と重なって、かっこいいCMになりました。
最近の大成建設の「地図に残る仕事」とならんで、
ゼネコンらしい、スケールの大きさを感じさせる、すてきな言葉だと思います。