『ガンプラり歩き旅』その32 〜ドムのキットにハズレ無し!……なのか?〜

『ガンプラり歩き旅』その32 〜ドムのキットにハズレ無し!……なのか?〜

ガンプラ! あの熱きガンダムブーム。あの時代を生きた男子であれば、誰もが胸高鳴り、玩具屋や文房具屋を探し求め走ったガンプラを、今改めて当時のキットから現代キットまで発売年代順に、メカ単位での紹介をする大好評連載の第32回は、この時期から絶好調だったHGUCから。ドム/リック・ドムをお送りいたします!


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私、市川大河が、書評サイトシミルボンで連載している、 『機動戦士ガンダムを読む!』での、再現画像で使用しているガンプラを、 古い物から最新の物まで片っ端から紹介していこうというテーマのこの記事。

今回紹介するのは、古くからガンプラファンの間で唱えられてる信仰(笑)に「ドムにハズレ無し。ゲルググに当たり無し」とまで言われた、そのドムの1/144平成版、HGUCのドム/リック・ドムのご紹介です!


ドム/リック・ドム 1/144 HGUC 059 2006年1月 1700円

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さてさて、いきなり難しい問題ではあるが。
「『機動戦士ガンダム』(1979年)に登場したモビルスーツ、ドムと、ドムの宇宙戦仕様のリック・ドムは、果たしてデザインは同じかどうか?」

これ、80年代のガンダムブーム、特に当時のガンプラブームのメディア展開事情とかメカマニアサイドの視点を知らないと、迂闊にYesともNoとも、回答が出来ないという難問なのよね。

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一応、“当時のアニメ制作公式設定的”には、“ドムとリック・ドムで、設定画は分けられてはいなかった”という事実は、まぁ大前提ね。
それは、初期にザクが量産型として登場したのと同じで、零細企業アニメだったガンダムでは、一度描いたドムの地上での活躍シーンも、そのままバンクで宇宙戦でも使いまわさなければいけなかったというのもあるし、当時の日本サンライズ(現。サンライズ)のガンダム班スタジオが、それこそ戦時中のような修羅場続きであったため、個々の才能の単発的発露(後述)演出はあっても、このタイミングで新型デザインの量産型モビルスーツを出せる余裕は(ジオン以上に)なかったのも事実。

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まぁもっとも、ガンプラブーム絶頂期のバンダイなんて、そういう意味ではちゃっかりしていて、ドムとリック・ドムが、名前こそ違えどデザインは一緒なのをいいことに、ガンプラ初動の1980年11月には、1/100で「ドム」をキット化しておいて、その後半年以上経ってから、1/144を「リック・ドム」として発売するというユニークなビジネスを展開。
イマドキならむしろコンパチか、二つのスケールで同じ金型で二つずつ出しても不思議はないが、当時は逆に、スケール違いで互いにネーミングを交換し合うことで、バンダイは「どっちも模型化はしました」というアリバイを得られたという発想の時代。
もちろん、アニメデザイン的にも模型の技術論的にも、ドムとリック・ドムの差異なんて認識は(当時は)ないわけなので、1/100をリック・ドムとして扱うユーザーも、1/144をドムとして組み立てるユーザーも、どちらも当たり前にいて、当時は誰も不思議に思わなかったという、そんなおおらかな時代背景がまずあって。
逆をいうと、あの熱狂的なガンプラブームにおいてさえ、明確なネーミング冠での、1/144 ドムと1/100 リック・ドムは、存在しなかったのである。

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つまり、今回紹介するHGUC ドム リック・ドムのコンパチキットは、「1/144スケールの無印ドム」としては、ガンプラ史上で初のキット化という、今更感漂ううれしくもない栄冠が付いてきたのである。

確かに、イマドキのガンダムファン、ガンプラファンの間では、ドムとリック・ドムは、正しく区別されているし、今回のHGUC版でも、ドムとリック・ドムのどちらを選ぶかで、組み立てるパーツは違ってくるというのは、一応“これも正解”なのである。

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「リック・ドムは、元のドムとは、スカートの形状や、スカート内のバーニアの存在など、細部デザインがいろいろ違う」は、ある意味で正しく、ある意味で後付けの嘘設定とも言い切れるのだ。
確かに、『機動戦士ガンダム』(1979年)後半のリック・ドム登場シーンでは、スカートや脚部フレア内部にバーニアが見えるカットが印象的に挿入されていて、それは劇場版『機動戦士ガンダム㈽ めぐりあい宇宙編』(1982年)では、さらに新作画部分でも強調されるのではあるが、これはそもそも、メカ作画を得意としていた、当時の原画マン、板野一郎氏の独断アイディア作画が発端であり、この当時はまだ公式設定ではなかった。この場合「公式設定ではない」とは、大河原邦男氏によるリック・ドム専用のデザイン画が存在していないという制作状況を指す。そういう線引きをしないと、「『機動戦士ガンダム』メカニックでは、連邦軍には、どうみても勇者ライディーンやダイターン3にしか見えないモビルスーツが、配備されて実戦投入されていた」などという与太話まで公式化しなければいけなくなる。

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やがて、多くのガンプラモデラー達が、この、板野氏の思い付きとお遊びに乗っかる形で、リック・ドムの作例で、ディティールとしてバーニアを追加装備させるお約束が出来上がっていったのである。
やがて、1999年にバンダイが、1/100 マスターグレード(MG)で、6月にドムを、10月にリック・ドムを、それぞれ別個の機体として発売した際、MS形式番号の変更とともに、正式にドムとリック・ドムとが、スカートの形(ここをドムとの差別化ポイントにしたのは、『機動戦士ガンダム㈽ めぐりあい宇宙編』の新作シーンで、リック・ドムを視認したカイ・シデンが「スカート付き」と表現したことから逆算されて設定されたと思われる)やバーニアの有無などで、両者が差別化されるに至った。

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なので、今回のHGUC版でも、後部スカートパーツと、(MG版以降の新解釈としての)バックパックスラスターの大きさなどで、ドムとリック・ドムを選択区別している。

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ものすごく余談だが、ドムとリック・ドムの違いが、微細なディティールだけではビジネス上弱いと思われたからか、近年ではプラモデルや完成品フィギュアの商品では、ドムではなくリック・ドムには、ビームバズーカなる、アニメ本編では観たこともない武装がつけられることで、ドムとの差別化を図っているが、その珍妙な武装に関する詳細な解説は、いずれ「シャア専用リック・ドム」の項目で触れる予定なので、とりあえず今この場では「そんな代物は存在しない」前提で話を進める。

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キットの出来の方は、古来(笑)からガンプラ界隈では有名なことわざとして「ドムにハズレなし。ゲルググに当たりなし」というのがあるように、今回もまた、素晴らしい出来である。
肘こそ二重関節ではないものの、この2006年というタイミングで、キットにはABS樹脂が一切使われていない優秀設計。
しかも、特に腕部などは、パーツ分割が巧みで、後で消さなければならないような合わせ目が、ほとんど出ない仕様になっている辺り、さすが2015年になってなお、ドムR35なる架空設定のドムバリエーションに金型が流用されるだけのことはある名作。
両手はそれぞれ、サーベル用の穴が開いた握り拳と、右手はバズーカ握り手、左手は表情豊かな平手の4種類と、この辺りは興が乗ってきたHGUC全盛期の典型的な布陣。

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頭部なども、元の設定では動かすことも不可能っぽかったデザインが、動力パイプ内臓の内部メカと外部装甲という概念で分割されて、上手く上を向いたり横を向いたりできる構造アイディアは、1999年に発売された、1/100 MG版ドムからの転用であり、いかにMG版ドムがポテンシャルが高かったかの証明にもなっている。

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オマケにこのドムでは、モノアイレールを包む赤いパーツのカバーが、もちろん別パーツな上に、簡単に外せて、中のモノアイの位置を変えられるギミックが付いている。

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ジオン系モビルスーツのHGUCで、モノアイ部分が動かせるギミックが付いている物も今では珍しくないが、変更ギミックの簡単さと、余計なギミック用パーツが露出しない高度なバランスは、このドムがやはり一つの頂点だったのかもしれない。

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今回は、そんな優秀なキットを二つ用意して、ノーマルのドムとリック・ドムの二種類にそれぞれ組み立てた。
これは、バンダイへというよりも、本放映当時にリック・ドムの差別化を、率先して取り入れてくださった、板野一郎氏への敬意の意味を込めてである。

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さて、お次はカラーリング、色の問題である。
一番悩んだのが、ドム系基本装備のバズーカ、ジャイアントバズの色味である。
一応『ガンプラり歩き旅』では、武器系の色はミディアムブルーで統一するという方針を打ち立ててはみたものの。
手元にある資料やDVDのキャプチュア画面を見ると、うんミディアムブルーにはさすがに見えない。やはりこれだけはグレー系で塗られているように見える。
しかし、ありがたいことにキットの方の武装類は、ほんのりミディアムブルーがかったグレーで成型されている。この辺は、先行したHGUC 032 シャア専用ザクなどを踏まえている。
なので、ジャイアントバズはキットのままの成型色で行くことにした(決して手抜きではない)。

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また、このHGUC版ドムのボディカラーの紫に関して、ネットのモデラー諸氏の一部からは、色味が少し赤すぎないかという意見も散見したが、自分の目で確認してみたところ、『機動戦士ガンダムⅢ めぐりあい宇宙編』などの作画では、今回のHGUC版の成型色と極めて近いことが確認された。

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まぁ、そんなこんなで、武器もボディもキットのままを採用しているのだけれども、今回は、意外と細かく塗装をしておりますですよ。
例えばドムの、各部の黒いアーマーは、アニメ彩色では、概ね裏側が赤で裏打ちされているのだけれども、今回のキットでは、“裏地の赤”は肩アーマーでしか再現されてない。

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しかも、その肩アーマーも、結構無理をして、黒いパーツと赤いパーツの二重構造に仕立てたものだから、アーマー内部の赤いゾーンに、黒パーツのパーツ接合用縦長ピンが3本露出しちゃってるし、逆に赤パーツの内壁で、ボディとの接合面を構成していて、しかも露出しちゃっているので、そこが赤く見えると興ざめしちゃう。
なので、腰のスカート周りと脛の裾のフレア内部をキャラクターレッドで塗装。
肩アーマーの内部の黒い接続ピンもレッドで塗って、代わりに肩アーマーのボディ接続面を黒で塗装しておく。
また、やはりキャラクターレッドで、バックパックやスカート内部や裾の中のバーニアの内側を塗装。
肘と膝の関節は、もはやお約束どおりに、ドムの四肢の色のガンダムカラーUG08 MSパープルで塗装する。

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モノアイやジャイアントバズのスコープや、胸の拡散ビーム砲口は、キット付属のシールで再現。
完成して改めて「ドムにハズレなし」を実感できる、傑作ガンプラである。

市川大河公式サイト

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