高度成長期の日本を支えた無名の人々に焦点をあてた『プロジェクトX』ナレーションや中島みゆき「地上の星」が印象深い

高度成長期の日本を支えた無名の人々に焦点をあてた『プロジェクトX』ナレーションや中島みゆき「地上の星」が印象深い

NHK総合において2000年3月から放送されたドキュメンタリー番組『プロジェクトX』。田口トモロヲの淡々としたナレーションや中島みゆきによる主題歌『地上の星』が強く印象に残っている。


NHKのドキュメンタリー番組『プロジェクトX』

NHK総合において2000年3月から2005年12月まで放送されたドキュメンタリー番組。正式名称は『プロジェクトX〜挑戦者たち〜』。

火曜日21時15分からの放送で、特別編4本を含み191回もの回数放送された。

タイトルバック

20世紀最後の年に始まったドキュメンタリー番組。
終戦直後から高度経済成長期まで日本の発展を支えた産業や文化など、様々な分野において、それらが世に出て、支持を受けるまでに直面した困難を、どのように克服し成功に至ったかを紹介する内容だった。

自動車や家電、重厚長大産業、地図に残る公共事業(ハコモノ、橋梁)などが多く扱われた。無名の日本人主人公と、それに従い支えた多くの人々による挑戦と努力、そしてその成果の紹介がテーマであった。

一方で、無名とは言えない本田宗一郎や毛利衛が登場する回もあった。

NHK放送センター(本部)

「組織と群像の知られざる物語」にスポットを当て、当時不況真っ只中の日本人に向け、自分たちの底力を信じ、鼓舞するような演出が魅力的だった同番組。

公共放送であるNHKが、企業の宣伝につながる表現の排除を崩し、特定の企業の内部にまで迫った取材は当時新鮮であり、後に似たようなドキュメンタリー番組の出現や連続テレビ小説での特定の企業の創業者をモデルとした作品が多く生まれるきっかけになったとも言われている。

『プロジェクトX』の流れ

・冒頭。古い映像などをテーマソングが流れる中、短いカットで写す。キーワードが表示される。

・番組序盤。プロジェクトを成し遂げようとする主人公(複数)の境遇が描かれる。再現ドラマ(俳優はセリフを喋らない)が挿入されることもある。

・番組中盤。プロジェクトはいよいよ佳境に入るが、困難が彼ら・彼女らを襲う。それを克服する過程が描かれる。このあたりでスタジオに放映当時に存命の主人公もしくは主人公の近縁者がゲストとして登場し、司会からインタビューを受けて当時を回想する。

司会を長らく務めたNHKアナウンサー・国井雅比古さん(現在はフリー)

・番組終盤。プロジェクトは成し遂げられる。ドキュメンタリー映像が終わった後でスタジオに画面が戻る。
司会から主人公が労いの言葉をかけられる。プロジェクトの成果物がスタジオに運ばれ、主人公が感慨深げにそれを手に取る。

・エンディング。成功した主人公達のその後の栄光の人生が簡単に描かれた映像と共に、中島みゆきの「ヘッドライト・テールライト」が流れ、スタッフロールで終了。

どんなテーマがあった?

放送2回目の日本ビクターのVHS開発を取り上げた「窓際族が世界規格を作った〜VHS・執念の逆転劇〜」をはじめ、フェアレディZ制作秘話やスクールウォーズのモデルにもなった伏見工業高校ラグビー部の活躍、あさま山荘事件における機動隊のエピソード、コメディ調に描いたウォシュレット開発秘話などがあった。

2000年5月に放送された三原山噴火による緊急事態のなか行われた、伊豆大島の島民脱出プロジェクト『全島一万人 史上最大の脱出作戦』なども印象深い。

田口トモロヲの淡々としたナレーション

「リーダーの〇〇は言った」「〇〇達は日の当たらない研究をコツコツと続けていた」「だが、最悪の危機が襲った。・・・バブル崩壊」など、淡々とした口調でのナレーションが話題にもなった同番組。ナレーターを務めたのは、俳優・田口トモロヲであった。

俳優としては、数々のピンク映画やアダルトビデオに出演する一方で、非常に地味な人物もこなす名脇役の田口トモロヲ。同番組でのナレーションでは、落ち着きのある雰囲気が重厚な内容にマッチしていた。

田口トモロヲ本人は ”内容にちゃんと重みがあるので、それを正確に伝えるのが僕の役目。そのためにはシンプルにやるのが一番だと思っています。”とコメントしている(NHK名作選 みのがしなつかしより抜粋)。

また、同番組の人気が最も高かった頃、田口トモロヲが映画の撮影中に、たまたま横を通った同番組のファンから、「あんたねー、こんな下らない仕事なんかしないでナレーションに集中しなさいよ」と延々とお説教を受けたとインタビューで語っている。

田口トモロヲ プロフィール

1957年11月30日生まれ。東京都武蔵野市出身。
身長165cm、体重 60kg。

学生中からアングラ演劇、自主映画などに係わっていた。1983年に代々木公園で見たじゃがたらのライブに影響され、パンクバンド「ガガーリン」を結成している。

1989年に放映された実話ドラマ『シャボン玉の消えた日』で、自らも尊敬する植木等役に抜擢され演じたのを皮切りに、同時期に主演した塚本晋也監督の劇場映画『鉄男』が話題を集め世間から注目されていく。

2003年映画監督業へ挑戦し、『アイデン&ティティ』を撮影した。

【受賞歴】
・1996年度:日本映画プロフェッショナル大賞功労賞受賞
・1997年度:毎日映画コンクール男優助演賞受賞
・2009年度:新藤兼人賞・銀賞受賞(監督作「色即ぜねれいしょん」)

田口トモロヲ

主題歌は中島みゆき『地上の星』中高年男性の支持を得て大ヒット

同番組の主題歌『地上の星』とエンディングテーマ『ヘッドライト・テールライト』を中島みゆきが担当。
その奥深く神々しいまでの歌声が、番組で取り上げた技術者らがひたむきに努力する様子をより際立たせ、感動的に映し出した。

オリコンシングルチャートでは、中高年男性の支持を得て、100位以内通算183週(連続174週)、同チャート初登場以来1位獲得まで130週はいずれも現在までの最長記録である。

また、同曲は1994年のドラマ「家なき子」の主題歌でもあった「空と君のあいだに/ファイト!」に次ぎ、中島にとって2番目の売り上げとなっている 。

『地上の星/ヘッドライト・テールライト』

中島みゆきは2002年の第53回紅白歌合戦に出場し、同番組の舞台の一つでもある黒部ダム(黒部川第四発電所構内)からの中継で『地上の星』を歌唱した。
それまで出場を辞退し続けていた中島みゆきの出場は放送前から注目を集め、登場シーンは最高瞬間視聴率となった。

また、『プロジェクトX』の最終回では中島がスタジオに出演し、NHKの歌番組でそれまで歌われなかったエンディングテーマの「ヘッドライト・テールライト」を初披露している。

世間の認知度が上がり、「タモリ倶楽部」などでパロディの題材にもなった

他にも「ココリコミラクルタイプ」で、「プロジェクトA」というパロディコントがされたり、バウバウの松村邦洋は、田口のモノマネで自身の半生を振り返るという持ちネタがあったりと、当時誰もが知る番組であり、その特徴的な作りがよくネタにされていた。

番組はその後、過剰な演出などの問題もあり、2005年に終了した。
同番組の雰囲気を継承した後継番組が、翌年1月から放送されている「プロフェッショナル 仕事の流儀」である。

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