『ガンプラり歩き旅』その28 ~ガンダムを「大地に立」たせた名脇役 EXモデルで登場!~

『ガンプラり歩き旅』その28 ~ガンダムを「大地に立」たせた名脇役 EXモデルで登場!~

ガンプラ! あの熱きガンダムブーム。あの時代を生きた男子であれば、誰もが胸高鳴り、玩具屋や文房具屋を探し求め走ったガンプラを、今改めて当時のキットから現代キットまで発売年代順に、メカ単位での紹介をする大好評連載の第28回は、「ガンダムのベッド」っていうか、そんな「アレ」です!


今、ガンダム、大地に立つ!

私、市川大河が、書評サイトシミルボンで連載している、 『機動戦士ガンダムを読む!』での、再現画像で使用しているガンプラを、 古い物から最新の物まで片っ端から紹介していこうというテーマのこの記事。

今回紹介するのは、『ガンダム』第1話『ガンダム大地に立つ』で、初登場したガンダムを搭載していた車両、通称「ガンダムトレーラー」のEXモデルをご紹介です!


ガンダムトレーラー 1/144 EXモデル 001 2001年7月 3000円

HGUCシリーズとは異なる、EXモデルシリーズ独特のパッケージ。写真でやはり第1話の名場面を再現している

うん、なんていうか、うん、ただのトレーラーだよ。うん、むしろそれ以下なんだけどね。
確か、大河さんの記憶が確かならば、『機動戦士ガンダム』(1979年)第1話『ガンダム大地に立つ』で、まだ搬入テスト前のガンダムが寝かせられてたトレーラーは、本当に平たい板一枚のトレーラーで、こんな『機動警察パトレイバー』(1988年)のレイバーキャリアみたいな、機体ホールドのメカメカしいデッキなんてなかったと思うんだけど、なんだこれは、いつもの「解像度アップ」か?

というわけで、今回のガンダムトレーラーは、HGUC 021 ガンダムの発売とタイミングを合わせたかのように、2001年の夏にEXモデルシリーズで発売された、EXモデル 1/144 ガンダムトレーラーを用意した。

キットを単純に完成させた状態。第1話ではなかったはずのカタパルトデッキが乗せられている

このEXモデルというシリーズは、ガンプラのメインストリームではないが、幾つかの特徴がある。

・一般販売ガンプラや、プレミアムバンダイ限定版などのような極端な打ち出し方ではなく、一般販売であるが明らかに通常ガンプラよりも、生産数も販売数も少なく、再販回数も少ない。代わりに価格設定が高めにされている。

・通常ガンプラシリーズに組み込めるほどメジャーなメカでもなく、プレバンでプレミアムが付くほどニッチ需要のあるメカでもない、中途半端なメカが商品化対象(少なくともモビル・スーツであれば、マイナーキャラでもプレバン送り程度でビジネスが帰結する)。

・主に戦艦や戦闘機、非人型メカが選ばれて、HGUCよりはMG的にハイディテールが施されて商品化される。

等の共通性がある。

デッキ付き完成状態に、HGUCガンダムを寝かせてみせた状態

EXシリーズのラインナップは、このガンダムトレーラーを一番手として、その後はドップやガンペリーといったサブメカや、ホワイトベースやムサイ、マゼラン、サラミス、アーガマなどの1/1700戦艦シリーズを組み入れていったが、おそらくコンセプトの中に「コレクション性豊かなHGUCを、サブメカ方面でカバーすることで、ジオラマ作りや小隊作りなどをアシストするカテゴリ」として用意されたものと思われる。

デッキを除いたガンダムトレーラー。これがテレビ第1話登場の状態

EXシリーズで発売されたサブメカの多くは、HGUCと絡ませやすいように1/144スケールだが、生産数を抑えたニッチ商品なので価格帯のハードルがやたらと高いのが特徴で、このガンダムトレーラーも、これ一台で3000円と、初期MGシリーズを軽く超えたところから価格帯がスタートし、やがてはHGUCのガンダムを収納できる1/144 ガンペリーや、『機動戦士Zガンダム』(1985年)に登場した宇宙戦艦用ドック、ラビアン・ローズの1/1700スケールキットなどは、6500円という馬鹿にならないお値段へと突入してしまった。

アニメ『機動戦士ガンダム』劇中より。全体の形状や色合い、タイヤの数など正確にキット化されていることが分かる

同じような「正規商品ラインナップではない少数生産」「需要があまり見込めないメカを、ガレージキット感覚で商品化」「その代わり高額」という共通点としては、バンダイは過去にも90年代に、リミテッドモデルシリーズ(以下・LM)という商品枠を設けていた時代があった。
LMはEXモデル以上にコスト軽減を前提にしていて、金型も簡易型を使い、素材も通常のプラスチックとは異なるなど、かなりガレージキット寄りのスタンスがLMにはあったが、今回のEXモデルは、もうちょっとガンプラユーザーに課するハードルを低くして(いや、価格ハードルは充分高いんだけど)、シリーズを展開しようとした姿勢が伺われる。

アニメ『機動戦士ガンダム』劇中より。運転席などの形状が把握できる

余談だが、『ガンダム』同様、放映後に社会現象を起こすなど誰も予知していなかったからか、『新世紀エヴァンゲリオン』(1995年)は当初メインスポンサーがSEGAだったので、正規版権のプラモデルが存在しなかったのだが、こちらも『ガンダム』同様、嗅覚が鋭いバンダイが隙間を縫って模型化版権を取得。しかし一応保険をかける意味でLMシリーズで、一連のエヴァのキットが発売されたのも懐かしい話である。

アニメ『機動戦士ガンダム』劇中より。黄色いシートをかけられたガンダムが乗せられている

上の画を、HGUC ガンダム、アムロのフィギュア、今回紹介したEXモデルのガンダムトレーラーで再現した画像

だが、この手の「意図的傍流商品」って、なかなか定着しないのも道理。
それでも90年代最後半から2000年代のミニフィギュアバブルの頃の食玩やガシャみたいに、コストと売値が小商売レベルで済む輪の中であれば、いろいろな挑戦が出来て、その中から予測不可能のスマッシュヒット商品も生まれるのだけれども、EXモデルシリーズに課せられた命題は、過去のLMシリーズ同様「ニッチなマニアがいつまでも、出せ出せとしつこく要求してくるタイプのメカを、一応需要を叶える形をとりつつ、ユーザーに『え。こんなものまで商品化するのか!?』と驚かせて、むしろうるさいガンプラユーザーを喰ってかかれ」という、HGUCシリーズ立ち上げの逸話でも書いた「いつものバンダイのアレ」だったのである。
だからだろう。シリーズ第1弾に選ばれたのは「いったい誰がいつ、こんなもののガンプラ化を要求したって言うんだ」とリアクションするしかない、80年代ガンプラ社会現象の渦中でも、多分商品化候補にすら上がっていなかったであろう「第1話で、たまたまガンダムを乗せてただけの、総出番数カットのトレーラー」という、狙い過ぎなチョイスでEXモデルシリーズは始った。

アニメ『機動戦士ガンダム』劇中より。ガンダムへ向かうアムロ。ここから全ての物語が始まる

上の画を再現した画像。ガンダムトレーラーが最適な舞台装置になってくれている

確かにこのガンダムトレーラー。
これ一台あれば、誰もが思いつく『ガンダム大地に立つ』の名シーンを簡単に再現できる。というか、そのシーンを再現する以外に使い道がほぼ皆無な代物を、3000円というマスターグレードレベルの価格で売り出してきた辺り、確かにこの時期バンダイグループ(系列会社のバンプレスト含む)は、ミニフィギュアや食玩やプライズ商品で「マ・クベの壺」とか「テム・レイ回路」とか、正気の沙汰とは思えない商品化を連発していたので、それと比較すればまぁまともな選択肢なのかもしれないとは思わせられる。

アニメ『機動戦士ガンダム』劇中より。まさにガンダムが大地に立つ瞬間。トレーラーの脇にある梯子などが確認できる

しかし、冷静に考えればやっぱりこの商品化チョイスと価格設定の強気さは正気じゃなかったわけで、EXシリーズはその後『ガンダム』の戦艦やルッグン、シーランス、サムソントレーラーから、『機動戦士ガンダムSEED』(2002年)の戦艦群まで、出オチのようなメカから、落ち葉拾いまで、無軌道に商品化を続けた結果、そんなシリーズの定期ファンが定着するはずもなく、2007年に35番目のシリーズ商品「MP-02A 駆逐モビルポッド オッゴ」を発売して終了する。

劇中ではガンダムだけではなく、こうしてガンキャノンなども搭載して移動していた

EXシリーズ終了間際の2006年からバンダイは、EXシリーズの概念にさらに「既存のミリタリープラモデル要素を組み込むため、今までは小サイズでしか発売できなかった兵士用武装を、1/35スケールで超精密再現して商品化する」というコンセプトを足しっぱなしにした「HG U.C. HARD GRAPH」というシリーズを展開開始。
そのHG U.C. HARD GRAPHシリーズも、果敢に1/35スケールでジオン兵やコア・ファイターまでキット化させたかと思えば、当たり前のように数点の商品化で行き詰った挙句、いきなり既存のHGUC版ザクや陸戦型ガンダムキットの色替えに、オマケパーツやオマケキットを付属させてみたりと、見事な迷走をみせてくれて、2009年にはたった3年の短い生涯を終えてみせてくれた。

話をガンダムトレーラーEXモデルキットに戻せば。
確かに一方で「これ一つあるだけで、ガンダムファンの誰もが胸に刻み込まれた、ガンダム初起動のシーンが再現できる」というバリューはあるにはあるのだが、考えてもみてほしい。
そもそものガンダムトレーラー自体が、別にその後レギュラーで活躍するガンペリー的な立ち位置メカでもなければ、Gアーマーのような、当時商品化前提で設置されたガンダムサポートメカでもないのだ。
非情だが現実をいえば、『ガンダム』制作当時においてガンダムトレーラーは「第1話だけに登場する、ガンダムを乗せたトレーラー」それ以上でも以下でもなく、言ってしまえば書割り背景みたいな存在なので、一応設定画は存在するが、非常にシンプルかつ分かりやすいレベルで「ガンダムを乗せるトレーラー」が、70年代後半のSFアニメ基準で設定画を起こされているだけで、車輪らしきものや運転席らしきものも配置されているが、実際に『機動戦士ガンダム』第1話で登場したトレーラーには、このキットでメイン情報量を担うカタパルトデッキのようなハイディテールな代物どころか、寝かせたガンダムを固定しておくバーもアームもない、トレーラーの上面は「ただの平たい土台」でしかないのだ。

いくら「これさえあれば、ガンダムの初登場シーンを再現できます!」でも、さすがにアニメ版そのままの造形品だけでは、腕に覚えのあるモデラー辺りからは「ふざけるな。これだったらプラ板積層削り出しで、自作できるわ。なんでこんなもんに3000円も出さなきゃいけないんだ」と言われるだろうし、かといってそこでいつもの「解像度を上げる」ディテール追加を行ってしまうと、そもそもがシンプル過ぎるデザインだけに「これはそもそもなに? どこがガンダムと関係あるの?」という代物になってしまう。
それでなくとも、シリーズ初弾なので、このキット一つで「EXシリーズとは」をユーザーに印象付けなければならない。
そこでバンダイが攻めに出た手段とは?

完成品を後方の角度から見た図。アニメで描かれていた三連車輪や梯子など、情報量は的確で過不足はない

「メインの構造を、平たい土台のアニメ版トレーラーと、EXモデルオリジナルのジャッキアップデッキとの二層構造にする」だった。
このキットは、だから、デッキ部分がトレーラーに固定されるようには仕様が出来ておらず、デッキは完成したトレーラーの上に乗せるもよし、乗せないもよし。その上で、トレーラー自体は極力『ガンダム大地に立つ』で描かれた設定画や作画版に忠実に立体化しつつ、今風ハイディテールな要素を全部デッキに詰め込んで、それをオプション扱いすることで、デッキを用いれば今風の、用いらなければ1979年作品に準拠した、個々の需要に準じた「ガンダムを乗せるトレーラー」が出来上がるという案配に落ち着いた。

なんというかもう、頓智みたいだねという感想しか出てこないのだが、大河さんとしては『ガンダム』再現の上で、このアイテムの存在はありがたい小道具として重要なので手に入れて、そのまんま『ガンダム大地に立つ』再現で使用したというお話。
一応キットは成型色はパーツ単位で大まかにはわけられているので、今回はそのまま組んで、塗装も車体側面の三つの丸を黒く塗ったりした程度。
なんていうか、バンダイさんもいろいろ苦労した上で、なかなかクレバーな商品仕様に着地したけれども、結局は「ものすごく、買う人を選ぶ商品」になってるよなぁとしか言えない。
出オチだよね、やっぱこれ……。

市川大河公式サイト

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