『ガンプラり歩き旅』その27 ~足なんて飾りです。偉い人には分からんのです~

『ガンプラり歩き旅』その27 ~足なんて飾りです。偉い人には分からんのです~

ガンプラ! あの熱きガンダムブーム。あの時代を生きた男子であれば、誰もが胸高鳴り、玩具屋や文房具屋を探し求め走ったガンプラを、今改めて当時のキットから現代キットまで発売年代順に、メカ単位での紹介をする大好評連載の第27回は、ジオン最終開発モビル・スーツ、シャアの最終決戦兵器・ジオングです!


ガンダムVSジオング。今、決戦の時!

私、市川大河が、書評サイトシミルボンで連載している、 『機動戦士ガンダムを読む!』での、再現画像で使用しているガンプラを、 古い物から最新の物まで片っ端から紹介していこうというテーマのこの記事。

今回紹介するのは、直前に主役メカ・ガンダムが発売された直後の、ラスボスメカ・ジオングのHGUC版のご紹介です!


ジオング 1/144 HGUC 022 2001年6月 1800円

ガンダムとの最終決戦をバックに、迫りくるジオングのパッケージアート!

「足は付いてない」「あんなの飾りです! 偉い人にはそれが分からんのですよ」

あぁあ! 言っちゃったよ!
富野監督、最後だと思って名もなきキャラに、最終兵器みたいな台詞を言わせちゃったよ!

リック・ドムの編隊を引き連れて、ア・バオア・クー防戦のために、今出撃するジオング!

「宇宙空間で戦闘をする機動兵器に、そもそも足なんて必要なのか」って。
“ロボット漫画で、それを言ったらお終い”を、でかでかと言わせちゃったよ!
また、このジオングに乗るシャアとアムロの最終決戦では、過去のロボット漫画であれば、致命傷になるだろう「主人公ロボットの頭が吹っ飛ぶ」を(実際、マジンガーZやゲッターロボでこれが起きたら、主人公が即死する)「まだだ! たかがメインカメラをやられただけだ!」とアムロに言わせて平然とさせたり、その衝撃演出で、視聴者がなんとか「あぁそうか。ガンダムシリーズのロボットのコックピットは、みんな胸にあるんだっけな」と安堵した次の瞬間、首なしガンダムのビームがジオングの胸を貫くんだけど、残念、ジオングだけは、コックピットは頭でしたっていう、三段オチみたいなこの虚を突く怒涛の展開が「あぁもう、オールドタイプにはついていけまへん」的な醍醐味だった、ロボット漫画としてのガンダムのラストクライマックス。

スタイリングも色分けも完璧なHGUC ジオングには専用スタンドが付く

どれもこれも、上でも書いたけど、ガンダムが最終回で、もう後のこととか考えなくていいんで、ロボット漫画の禁じ手とかツッコんだら負けな部分とかを、かなぐり捨てて全部出し切っちゃおうという富野節が炸裂で、まぁ当の冨野監督だって、この後もロボットアニメの総監督自体は、まだまだやっていくんだろうという自覚があっただろうけれども、視聴率も悪く、スポンサーの玩具も打ち切り決定直前まで鳴かず飛ばずだったガンダムが、その後35年以上続くコンテンツに化けるとはいささかも思わなかっただろうからか、『機動戦士ガンダム』(1979年)最終回は、ロボット漫画としては、やりたい放題、確信犯的にいろんな意味で「この後は続けようがない」終わり方をして、むしろドラマ的にはハッピーエンドを迎えたわけなのだけれども。

ボディから首にかけて三か所の可動ポイントの設置によって、ここまで反らし姿勢がとれるのが売りのポイント

その後は、なんだかんだで狂騒的に盛り上がったガンダムブームの果てで、冨野監督も続編制作だけは断固として拒み続けられてきた流れがあったのだが、関連企業の商売の前には、表現者の稔侍なんてものはいとも軽くあしらわれ、「ロボット漫画のソーカントクをやってみせるのも、オシゴトですから!」と割り切った冨野監督は、6年後の『機動戦士Zガンダム』(1985年)からはしれっと、「飾りに過ぎないはずの足」が生えた、新型モビルスーツがうじゃうじゃ飛び交う世界を描くしかなく、その代償として「『機動戦士ガンダム』最終回のエンディング、あの時みんなが共有した、ニュータイプの希望の未来なんて、一瞬の幻想でしかなかったんだ」を、まぁやらざるを得なかったわけですわ。

というような「メタ的ガンダム論」はさておき、ジオングだジオング!

まずは左手の指からメガ粒子砲!

と言いつつ、もひとつ枕話であるが、『機動戦士ガンダム』は昔から、映像ソフトの権利がいろいろややこしく、これだけのビッグタイトルにも拘わらず、テレビシリーズのDVD-BOXが発売されたのは2006年と、かなり遅かった。

続けて右手の5本指からも、ビームが炸裂する!

一方、HGUCでの『ガンダム』モビル・スーツの商品化は、初期でこそガンキャノンとギャンが初動を飾ったが、その後はむしろ、2001年2月 019 シャア専用ズゴック 4月 020 ジム 5月 021 ガンダム 6月 022 ジオングと、2001年に集中している。
これは、テレビシリーズに先駆けて、『ガンダム』劇場版三部作が初めてDVD化されたタイミングでの、連動効果を狙ったことはあきらかだろう。

頭部の口にあたる箇所からも、大口径のビーム砲が撃ち出される!

しかしこの時発売された映画版DVDは「特別版」と呼ばれ、映像自体は当時のままだが、こと音声の方は「5.1チャンネル対応にすべく、SEや声優さんたちのアフレコを完全新録!」が売りであったのだ。オリジナル声優さんたちの新録に関しては甲乙つけがたい部分はあるかもしれないが、実は5.1チャンネルもなにも、口実にしか過ぎないのではないかというぐらい、他の音声、特に挿入歌や主題歌の扱いが、原典の映画版の感動を台無しにする壊し方をしていて、結果的にはこの「特別版」は、当時ファンの間で物議を醸しだしてしまった。

そして両手はブラウ・ブロ方式の有線サイコミュで、オールレンジ攻撃を可能にする。死角なし!

やがて2007年には、改めて劇場公開当時の音声での劇場版DVDが発売しなおされてことなきを得るが、HGUC『ガンダム』アイテム続々発売展開は、そんな映像ソフト事情はガン無視して、この時期続々と1stガンダムのモビル・スーツ群の新作HGUCが発売され続けたのである。

両腕を失っても、腰に2門のビーム砲がまだある!

というわけで、ようやくHGUCジオングに関してであるが、ここまで気合の入ったジオングの1/144というものに、出会える日が来ようとは、僥倖の一言に尽きた。
色分けはほぼ完璧(どんだけ完璧かというと、頭部耳部分のロケットノズルが、ちゃんと赤い本体は赤パーツで、黄色いノズルだけ黄色い別パーツで再現されているほど)。

最終的には、コクピットのある頭部だけでも戦闘が可能! ジオンの、シャアの、最後の意地がガンダムを狙う!

とりあえず、箱を空けていきなり驚かされるのは、まぁパーツの抜きの技術論が向上したせいか、突然ゴロンと、巨大なスカートが1パーツで丸々転がりだしてくる辺りが、もう最初からクライマックス的で感動すら覚えるレベル。
しかもジオングのスカートって、裏から見るとハート形をしているので、大河さん世代は無駄に不二家のハートチョコを思い出させられて、まだ平和だった70年代のバレンタインドリームが脳裏をよぎることこの上なし。

キット頭部は、モノアイこそシールだが、他の色分けはほとんどパーツ単位で完璧に仕様ができている

大型MSにしては表面ディテールがあっさりし過ぎているという指摘もwebでは見かけるが、そこはマスターグレード(MG)シリーズとの住み分け。
機体表面モールドやディテールの密度的には、このジオングは決して前後のHGUC版ズゴックやジム、ガンダム等と違和感を覚えるような演出はされておらず、むしろこのアッサリ感が「これですよ、これ!」と言いたくなるという。

両手、10本の指が根元から全て別個に可動するので、ポージングの時の表情付けも自由自在

またこのHGUCジオングは、パーツの合わせ目処理が極力出ない方向でパーツ分割がされていて、パチ組で完成させてもかなりの満足度が得られる出来に仕上がっている。
ガンプラのMGシリーズなどでは、現代ではもう、実機体を想定したパネルラインやパーツ分割概念以外で、不要な「プラモデルだから」の合わせ目は全くない設計がスタンダードになりつつあるが、それはHGUCにも影響を与えてきていて、この時期トリッキーなパーツ分割による合わせ目の表面への露出を避ける構造へのエスカレートが始まっており、このジオングでもメインボディ以外では、顔や腕部では処理すべき合わせ目が皆無という快挙を成し遂げている。

ハート形のスカート内部。バーニアは全てポリキャップ接続で、フレキシブルに可動する

キットの特徴としては、劇中のオールレンジ攻撃を再現するために、前腕と頭部がABS樹脂ジョイントで、本体から外せるようになっており、なおかつ有線サイコミュだった腕は、リード線で肘と繋げてフレキシブルに飾ることが可能。
ただ、長さ的には両手をフルにオールレンジ攻撃っぽく見せられるほどには尺が足りないので、『機動戦士ガンダムⅢ めぐりあい宇宙編』(1982年)クライマックスの、アムロのガンダムとのニュータイプ同士の熾烈な超絶バトルを再現したい人は、別個で3㎜の黒いリード線を購入して(Amazon辺りだと、柔らかいリード線と硬いリード線が選べるので、ここはもちろん後者で)、そちらに付け替えるというのはアリかもしれない。

有線サイコミュの腕のオールレンジ攻撃状態再現。ちなみにこの長さのワイヤーは、筆者が独自に購入したリード線を用いている

旧キットでは、腕を肘に繋げるワイヤーが、完全な金属棒となっていたので、オールレンジ攻撃もまっすぐしか伸びず、また前腕を上腕に装着した段階でも、肘関節がまったく可動しないという辺りが残念ポイントだったわけだが、今回のHGUCではその辺りは当然リベンジクリアしているのだが、デザイン上の問題か、肘間接が45度ほどしか曲げることが出来ず、ここはこのキットの一番の弱点と言えるだろう。

また、このキットには専用のスタンドがつくが、それ以外でも、ボディ本体が、腹部と胸部で「反り返り」方向へ可動させることができ、劇中でメインの姿勢だった「前方へ向けて反ってるポーズ」が再現可能になっているところもポイントが高い。

他にも細かい可動としては、大型キットということもあり、指が左右とも、親指あわせて10本が別個に、根元からフレキシブルに可動。逆に指の造形自体に緩いカーブが最初から固定でついているので、指ビームを発射する時のスパルタンさは弱まるが、それでも通常シーンで指が全て可動するという仕様は、飾るときの表情付けにはとてもありがたい。

肘の可動範囲や指の曲がり具合など、惜しいところも多いが、このサイズでのジオングとしてはベストキットと言い切れよう

あと、スカート内のバーニアも7基全てが基部で可動するが、メインの大きなツインバーニアの基部は、通常モビル・スーツの脚部の股関節のようなボールジョイントの設置になっており、ここは明確に、後のキット展開において、脚付のパーフェクトジオングを想定した構造であることが明白だったのだが、2017年現在、HGUCでパーフェクトジオングはまだ発売されていない。

仮に今後パーフェクトジオングが発売されるのだとしたら、おそらくジオング本体そのものがリファインされ、リニューアルキットとして新発売された上で、それのバリエーションとして(おそらくプレバン限定で)の商品化であろう。

HGUCジオングの塗装についてだが、上でも書いたようにパーツ段階での色分けは優秀だが、唯一、腰左右のメガ粒子砲発射孔だけは黒パーツの中で埋もれていたので、MSパープルで塗装しておいた。

完成したジオングと、直前に発売されたHGUC 021 ガンダムとは、並べさせても相性が良く、発売時期もコンセプトも技術も同時期なのだから当たり前と言ってしまえばそれまでだが、35年前に『めぐりあい宇宙編』に胸を熱くさせた世代であれば、この組み合わせが一番「満たされる」のではないだろうかとしみじみ思う。

市川大河公式サイト

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