『ガンプラり歩き旅』その24 ~さすがゴックだ、なんともないぜ!(ないのか!?)~

『ガンプラり歩き旅』その24 ~さすがゴックだ、なんともないぜ!(ないのか!?)~

ガンプラ! あの熱きガンダムブーム。あの時代を生きた男子であれば、誰もが胸高鳴り、玩具屋や文房具屋を探し求め走ったガンプラを、今改めて当時のキットから現代キットまで発売年代順に、メカ単位での紹介をする大好評連載の第24回は、ジオン水陸両用モビルスーツから、ゴッグの紹介です!


今、水面から現れんとする、ジオンの水陸両用MSゴッグ!

私、市川大河が、書評サイトシミルボンで連載している、 『機動戦士ガンダムを読む!』での、再現画像で使用しているガンプラを、 古い物から最新の物まで片っ端から紹介していこうというテーマのこの記事。

今回紹介するのは、長い腕と卵型ボディが印象強い、ジオン水泳部の一角を担う、ゴッグのHGUCです!


ゴッグ 1/144 HGUC 008 2000年3月 800円

HGUCゴッグのボックスアート。戦闘で傷ついた細かいダメージが装甲のあちこちに見られるゴックがまたカッコいい!

「さすがゴックだ! なんともないぜ!」

よくわからないがすごい自信だぞ、水中用卵型モビルスーツ、ゴッグ!
映画版『機動戦士ガンダムⅡ 哀・戦士編』(1981年)では、ほとんど出番が削られて、ホワイトベースはベルファストでは、ミハルを乗せて出港しただけになっちゃったもんだから、資料では「ジオン初の、メガ粒子砲搭載モビルスーツ」のはずなのに、全く活躍の場が与えられなかったぞゴッグ!
テレビ版でさえブーンとかいうキャラに「ゴッグよりズゴックの方が宛になる」とか、言われちゃってたぞ、ゴッグ!
しかも、第26話登場以降、ビームライフルで打ち抜かれて撃破されるカットがバンクで何回も使いまわされたんで、ガンダムとかGブルとかガンキャノンとかに、次から次へとビーム砲で打ち抜かれる最期が続いたゴッグ!

完成したゴックの全身。アニメデザインとイメージを、上手く今風のディテールに落とし込んでいる

しかも、本放映時までは、その名称が「ゴッ“ク”」であったのに(アニメ劇中での登場人物たちの呼び方や、『機動戦士ガンダムⅡ 哀・戦士編』パンフレットの紹介などに明記)、いつの間にやら「ゴッ“グ”」にされてしまっていたゴッグ!
この辺のエピソードは、なんか初期昭和ウルトラシリーズの「ゾフィ」や「ガヴァドン」「サドラ」に通ずるものがあるが、普通に考えて他の水陸両用モビルスーツが「ズゴック」「ゾック」「ゾゴック(本編未登場)」とかなんだから、そりゃ語尾は“ク”だよねと思うところなんだが、なにがどうして変わったのか、分からないままのゴッグ!

ベルファストの街で、暴れまくるゴック!

というわけで今回は、水陸両用モビルスーツとしては劇中で初登場して、水中推進を感覚的に印象付ける流線形のボディや、伸縮する腕や、格闘戦用に有利な長い爪、その両腕を伸ばしかがむ印象的な戦闘態勢などから、重厚かつ柔軟で、フリーキーなシルエットを強調して描かれたゴッグの、2000年発売のHGUC版プラモデルキットの紹介である。

ゴックと言えば誰もがすぐ思い出す、ハイパーハンマーを鷲掴みにしてみせるこのカット!

このキットの発売時期、諸事情が山積みの『機動戦士ガンダム』(1979年)映像群から、劇場版三部作のDVDがまず先行して発売されて、それらは5.1サウンドを言い訳にして、音声部分が隅から隅まで改悪された“別物じゃねぇか”代物として、今では忌み嫌われ黒歴史化している「特別版」なのではあるが、一応最初の『機動戦士ガンダム』としては初のDVDソフトであるため、バンダイも連動して、この「アニメデザインを極力尊重しながら、可動や情報量の問題点だけをリファインした1/144究極版ガンプラ」を謳った1/144 HGUCシリーズで、『機動戦士ガンダム』登場モビルスーツを、ガンキャノンとギャンからスタートして、ズゴック、ガンタンクと、次々と新商品で市場をにぎわせ続けていたのである。

さすがゴックだ。ヤラレっぷりも派手だぜ! ドタマからビーム砲を撃ちこまれて全身を貫かれるバンクショット!

そんな中で、初作『機動戦士ガンダム』から、HGUC 5機目のラインナップとなったのがこのゴッグ。
旧1/144では、デザイン上殆どポーズを付けられるに至らなかった可動に目を付け、脚部では特に開脚と接地性に焦点を絞り、腕部では、特定の肘関節を設けず、腕を構成するジョイントブロック一つ一つにABS製ボールジョイントを仕込み、それらの連続性とシルエットで、腕の角度をコントロールするという試みが(先行したズゴックに続いて)とられた。

なのでジャブロー攻略戦でも、ガンキャノンにドタマから撃ち抜かれて撃破されます、ゴック!

今回は、旧1/144とは違って肩アーマーも可動。アイアンクローも10本の指すべてが可動し、腰も、そして頭部も回転可動するという徹底仕様。
その上で、パーツ分割でほぼ色分けは完璧(モノアイレールの頭部ベースだけ、ブルーグレー成型色で、しかも材質がABS樹脂というのは頂けないが、一応黒いシールは付属してある。この辺りはHGUC ゲルググの項でじっくり語る予定)。
様々な意味で、20年の技術差を体現しようとした試みの跡が伺える。

HGUCゴックの腕の可動範囲

しかし、旧1/144では見事に伸縮を再現していた腕のギミックを廃し、可動の方向へ振った決断力は評価するが、片腕3か所あるボールジョイントを全てギリギリまで動かしても、腕全体がなんとなくカーブしている以上の印象を与えず、しっかり曲がる域まで達していない(ズゴックにはまだあった「明確に曲がる肘」がないため)。
股関節の開きと足首の接地性は高いが、膝の曲がり角度は二重関節なのに90度に満たない。

キットのゴックは、腹部と首にジョイントが仕込まれているが、デザインが邪魔をして、可動範囲はこの程度が限界

腹部と頭部には、回転軸が設置してはあるものの、デザイン上回転軸に対してクリアランスが取れず、結局腹部も頭部も30度前後しか左右に振れない。
腹部のボールジョイントは前屈も出来る構造だが、やはりデザインとクリアランスの限界で、ほんの少し下を向くだけで限界がきてしまう。
結果的にHGUC ゴッグは、全身にくまなく可動ジョイントを仕込みながらも、パーツ同士の干渉やクリアランスとデザインの問題で、ほとんど可動域が死んでしまっているという、残念な仕上がりとなってしまった。

脚部の開脚と接地性は良い。特にスリッパの開脚に合せた設置可動の良さには、さすがHGUCと唸らされる

腹部があまり前屈出来ないので、ゴッグの印象的な、「『あしたのジョー』の矢吹丈両手ぶらり戦法のようなポーズ」が取れないし、両手の可動範囲が狭いので、ガンダムハンマーを鷲掴みにするポーズも取りにくい。

前屈姿勢に関してはむしろ、そのポーズ優先でデザインが改めて練りこまれた、出渕裕氏デザインの『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』(1989年)のハイゴッグが、後に2003年にHGUC版が発売されているが、今回のゴッグの問題点は、ほぼぞちらで解決してしまったので、今後ゴッグのREVIBE版発売は難しいと思われる。

指は、両手10本の指が全て根元から可動するので、手の表情付けは申し分なし。付け根の隙間が気になるという意見もあるが、動かないより百万倍マシ

とりあえずこのHGUC版ゴッグ、確かにアニメのデザインには忠実だし、20年前の旧1/144からの技術革新のアピールには成功しているが、むしろガンプラの現在進行形のテクノロジーを知っている者からすると、いろいろガッカリ感は否めない。
2000年時点のガンプラの技術力で、ゴッグという素材をあてがわれれば、もっとあれもこれも出来ただろうにとの残念さが、強く出てしまうアイテムに仕上がっているのだ。
なまじ、腹部や頭部にまで関節を仕込んで、腕などはABSのボールジョイントで節単位で全てを独立接続にしたにもかかわらず、それらのギミックのほぼ半分が、死んだ結果というのはいただけない。

色分け、可動、共に旧キットからは大幅な進歩を遂げたHGUCゴック

塗装の方は、キットの状態で殆ど色分けが成されているので、こちらは膝関節のグレーを足の色と似せる手法をとれば、アニメのゴッグにより近づく(幸い、ゴッグには肘関節という概念がない)。
なので、膝関節部をサンディブラウンで、あと、頭部のモノアイレールを艶消し黒で塗装した。
細かい塗装でいえば、腹部メガ粒子砲(パーツ成型色は赤)の中央は、指定だとピンクだが、劇中での塗装に準じて白で塗装。腹部脇の両サイドのミサイル発射管はミディアムブルーで塗った。

うむ、20年で進歩を遂げた技術が、一見上手く組み込まれつつも、微妙に空回りしてしまったという、しかし、物がゴッグだけに、あまり問題が取りざたされなかったという、二重にも三重にも物悲しいキットの話になってしまったという(笑)

市川大河公式サイト

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