「if もしも」とは?

1990年から始まり好評を博していた「世にも奇妙な物語」の姉妹番組(スピンオフ)として、1993年4月から半年間(2クール)放送されたオムニバスドラマです。
「if もしも」と同じ世にも~の姉妹番組である「大人は判ってくれない」は、オムニバスドラマという共通点があるだけで、ストーリーテラーも別の人だったのに対して、「if もしも」は、基本、世にも~と同様のミステリードラマが多く、ストーリーテラーも同様のタモリが務めている。
1時間で基本3話の世にも奇妙な物語に対して、if もしもは、途中でAパターンとBパターンとの分岐点に遡ってのストーリーで1回1話構成。
基本はA、Bどちらかがハッピーエンド、もう片方がバッドエンドだが、回によっては違う意味での両方ハッピーエンドと言うストーリーもあった。
オープニングの名セリフが話題に

「if もしも」には必ずオープニングで語られる名セリフが。結構、考えさせられる深い言葉で、当時話題になりましたので、紹介します。
『if もしも・・・人が皆、孤独な旅人であるとしたら、貴方はやがてある二股の分かれ道に突き当たるのです。右に行くべきか左に行くべきか貴方は大いに迷う。あるいはうっかり気付かなくて通りすぎてしまう。かくして現在の貴方があるわけですが、ひょっとして別の道を選んでいたほうが幸せになれたかもしれないのです。もしも、こっちを選んでいたら・・・if もしも・・・』
この言葉を耳にして、「あの時・・・」と自分の人生をなぞらって想像してしてしまったものです。
全話多くの人が思い当たるAとB
自分が、自分の周りの人がきっと悩んだであろうAパターンとBパターン。どのストーリーも多くの人が思い当たるようなものばかりでした。
第1回 結婚するなら金持ちの女かなじみの女か
第2回 彼女がすわるのは左のイスか右のイスか
第3回 あるフェミニスト課長の秘書選び 美人かブスか
第4回 イジメっ子と親友・どちらの同窓会に行くべきか
第5回 セールスマンの大災難 不幸を呼ぶのは右手か左手か
第6回 噂好きの団地・引越のあいさつは安物か高級品か
第7回 完全犯罪 双子の美人姉妹 生き残ったのは姉か妹か
第8回 この夏、あなたにピッタリの髪型は?ロングかショートか
第9回 「別れましょう」か「結婚しましょう」か
第10回 結婚して子どもを生みますか?就職して出世をめざしますか?
第11回 神がくれる幸運、分割でもらうか、一括でもらうか
第12回 緊急事態!飛行機で行くか?新幹線で行くか?
第13回 花を愛するか、宝石に生きるか
第14回 両親が離婚したらパパをとるか?ママをとるか?
第15回 誘拐するなら男の子か女の子か
第16回 打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?
第17回 人生ゲーム 残された2通の遺言状
第18回 もう一度生まれ変わるとすれば25歳か18歳か
個人的には、最終回(第18回)のAパターンとBパターンは考えさせられた記憶が残っています。
日本ドラマ史に残る名作も誕生
全18回のなかでも、特に名作と名高いのが第16回「打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?」。脚本・演出を担当した岩井俊二らしい圧倒的な映像美と、単なる選択肢ではない視点の面白さで放送終了後も語り草となっている。
あらすじ:小学生の典道と祐介は無二の親友。いつも一緒の二人だが、実は二人とも同級生のなずなのことが密かに好きだった。そんな折、なすなが両親の離婚により引っ越してしまうことに。しかし、典道と祐介はその事実を知らないなか、プールで勝った方と駆け落ちしようと競争を行う・・・。
この作品は、高く評価をされ、岩井俊二の名が一気に有名になっただけでなく、オムニバスドラマの1話としては異例の日本映画監督協会新人賞を受賞した。
1995年に映画化
if もしも内での、このストーリーが放送終了後も数多くの反響を受け、2年後の1995年にディレクターズカットとして映画化までされました。
古きフィルム撮影のように見せるノスタルジック溢れる岩井俊二の世界観は、大きなスクリーンにピッタリで映画もヒットとなりました。

2017年 アニメ映画化
典道の声の役に菅田将暉、祐介役に宮野真守、なずな役に広瀬すずと、旬のメンバーを声優に迎えたアニメ映画版が、時を経た2017年にアニメ映画として帰ってきます。名作は時代が違っても色褪せないものです。
if もしもは若手脚本家の登竜門に
戸田山雅司
第1回「結婚するなら金持ちの女かなじみの女か」脚本担当
出演:保阪尚輝、白島靖代、鶴田真由、豊原功輔
第5回「セールスマンの大災難 不幸を呼ぶのは右手か左手か」
出演:薬丸裕英、石田太郎、白竜、仲本工事
第11回「神がくれる幸運、分割でもらうか、一括でもらうか」脚本担当
出演:渡辺徹、岡田眞澄、今井雅之

【主な作品】
・お金がない(1994年フジテレビ)
・科捜研の女(2001年テレビ朝日)
・相棒(2005年テレビ朝日)
・スペシャリスト(2013年テレビ朝日)
蒔田光治
第3回「あるフェミニスト課長の秘書選び 美人かブスか」脚本担当
出演:草刈正雄、武田久美子、山下容莉枝
第6回「噂好きの団地・引越のあいさつは安物か高級品か」
出演:国生さゆり、宮川一朗太

【主な作品】
・リング~最終章~(1999年フジテレビ)
・TRICK(2000年テレビ朝日)
・ブラッディ・マンデイ(2008年TBS)
・Mrブレイン(2009年TBS)
君塚良一
第13回「花を愛するか、宝石に生きるか」脚本担当
出演:佐野史郎、増田恵子、小野寺昭、森口瑤子

【主な作品】
・ナニワ金融道(1996年フジテレビ)
・コーチ(1996年フジテレビ)
・踊る大捜査線(1997年フジテレビ)
・踊る大捜査線 THE MOVIE(1998年映画)
・課長島耕作(2008年フジテレビ)
・誰も守ってくれない(2008年映画)※監督も務める
岩井俊二
第16回「打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?」脚本・演出担当
出演:山崎裕太、奥菜恵、反田孝幸、麻木久仁子、蛭子能収、ランディ・ヘブンス、小橋賢児、桜木研仁、山崎一、深浦加奈子、田口トモロヲ、石井苗子、酒井敏也、中島陽子


【主な作品】
・リリイ・シュシュのすべて(2001年映画)監督・脚本・編集
・花とアリス(2004年映画)監督・プロデュース・脚本・編集・音楽
・花とアリス殺人事件(2015年映画)監督・製作・企画・プロデュース・原作・脚本・編集・音楽
まとめ
Aパターンと、Bパターンと同じキャストで同じロケ地で2パターン撮影しなくてはいけないのですから、普通のドラマより何倍も撮影が大変でしたでしょうね。予算もかかったでしょうから、バブル期であった当時だからこそできたドラマなのかもしれません。