日本を代表する歴史小説作家だった司馬遼太郎
産経新聞社記者として在職中に、『梟の城』で直木賞を受賞。歴史小説に新風を送る。代表作に『竜馬がゆく』『燃えよ剣』『国盗り物語』『坂の上の雲』など多くがあり、戦国・幕末・明治を扱った作品が多い。
数ある歴史小説の中には大人気となったものも多く、本稿ではなかでもテレビドラマ化されたものについてまとめることとしたい。
新選組血風録
1962年に新選組副長土方歳三を主人公とした長編『燃えよ剣』を発表した司馬遼太郎は、同年5月から12月に「小説中央公論」で新選組を題材とした15編の短編を連載した。これが1964年に中央公論社から短編集『新選組血風録』としてまとめられた。
各話ごとに異なる実在と架空の隊士が主人公となり、主に土方歳三と沖田総司がストーリーの主要登場人物となり構成されている。局長の近藤勇も多く登場するが、土方、沖田に比べるとやや脇役的存在となっている。隊士の中では斎藤一と山崎烝も登場回数が多い。
司馬が最も脂が乗っていた時期の作品で、巧みな文章とストーリー構成、キャラクター造形で高い評価を受け、新撰組物の定番小説として非常に長い間版を重ね、現在に至るまで書店に並び、愛読されている。
読者が多く影響力が強いために、この作品に描かれているのがそのまま史実の新選組と受け取る読者も少なくないが、これはあくまでも大衆小説であり、小説とするために史実を意図的に変えているもの)や、根本的に架空のストーリーも含まれている。
近藤、土方、沖田、斎藤、井上などの人物像も、あくまでも小説の登場人物としての性格設定である。
1965年
1965年 制作NET 主演:栗塚旭、島田順司
1960年代のモノクロ作品で、全話ビデオソフト化され、DVD化もされている。俳優は東映所属の俳優だけではなく、劇団くるみ座や東京芸術座などから起用している。
土方歳三を演じた栗塚旭、沖田総司を演じた島田順司、斉藤一を演じた左右田一平は彼ら3人を主要キャストで起用した『俺は用心棒』も制作・放送されシリーズ化された。
司馬の原作以外にオリジナルのストーリーも含まれている。原作にはない新選組の没落と近藤の死もあり、最終回は箱館戦争での土方の死となっており、『燃えよ剣』の要素もある。
当初、司馬遼太郎は東映によるテレビドラマ化に難色を示していた。東映が映画化した『新選組血風録 近藤勇』の改変に不満を持っていたためだった。
それを説得するため、プロデューサーの上月信二は土方歳三に扮した栗塚旭と共に司馬へ挨拶に行くと、それを見た司馬が「土方そっくりや!」と絶賛し、ドラマ化が決定した。
1998年
1998年 テレビ朝日 主演:渡哲也
渡が演じる近藤勇が主人公でストーリー構成の中心となっており、土方と沖田がストーリーの中心だった原作とは雰囲気が違う。近藤の人物像も文武を共にわきまえた完璧な君子像で、大器だが間の抜けたところや俗物的な性格がある原作の近藤像とはかなり異なる。
初回は2時間スペシャルで池田屋事件(ただし山崎烝の出自にまつわるエピソードではない)。原作からは「芹沢鴨の暗殺」「沖田総司の恋」「鴨川銭取橋」「長州の間者」「油小路の決闘」などがドラマ化された。
芹沢は主題歌を歌った松山千春が演じている。男色を扱った「前髪の惣三郎」もドラマ化された。最終回は年末の12月30日に2時間30分拡大スペシャルで放送されたが、ドラマとしては条件が良くない昼間(15:00 - 17:30)の放送だった。
最終回の時間の半分は総集編で、最後のエピソードは沖田の死を暗示する「菊一文字」。新選組の没落と近藤、土方の死まで描かれたが、この部分は非常に駆け足で5分程度だった。
2011年
2011年 NHK 主演:永井大
竜馬がゆく
『竜馬がゆく』(りょうまがゆく)は、司馬遼太郎の長編時代小説。幕末維新を先導した坂本龍馬(竜馬)を主人公とする。
「産経新聞」夕刊に1962年6月21日から1966年5月19日まで連載し、1963年から1966年にかけ、文藝春秋全5巻で刊行された。1974年に文春文庫創刊に伴い全8巻で刊行、単行・文庫本ともに改版されている。
司馬の代表作であり、世間一般でイメージされる竜馬像はこの歴史小説で作られたと言ってもよい。
これまでに、大河ドラマの他に、民放各局でも何度かテレビドラマ化されている。とりわけ萬屋錦之介は中村錦之助時代から、この作品の「竜馬像」に惚れ込み、中村玉緒や弟の中村嘉葎雄等とも、初版刊行まもない時期に舞台公演をしており、司馬自身の「楽屋訪問」や「打ち上げ」での写真もある。
1968年
1968年 NHK 主演:北大路欣也
明治百周年を記念して制作された、大河ドラマ初の司馬遼太郎原作ドラマ。近代日本の扉を大きく開いた青年・坂本龍馬の生涯を描いた作品。
前年の『三姉妹』に続く幕末ものであり、『独眼竜政宗』『武田信玄』以前では、同じ時代の作品が2年続いた唯一の例であった(ただし、『独眼竜政宗』『武田信玄』は広義の戦国時代を舞台としてはいるが、前者は安土桃山時代、後者は狭義の戦国時代を舞台としており、正確には同じ時代の作品ではない)。
また、前年の大河ドラマの登場人物が主人公になった例としては、現在も唯一である。大河ドラマとしては、最後のモノクロ作品である。大河ドラマで初めて、短期ながら当地(高知)ロケが行われた作品でもある(1968年3月)。
1982年
1982年 テレビ東京 主演:萬屋錦之介
1978年、東京12チャンネル(現・テレビ東京)の当時の中川順社長が「チャンネルイメージを上げるようなデカイことをやりたい」と〈12時間時代劇〉構想をブチ上げたのを始まりとする。
あまりのリスキーな構想に消極論が社内の大勢を占めたが、中川社長が後へ退かず、結局社運を賭けた大イベントとして実行に移された。
翌1979年、東京12チャンネルの開局15周年記念の一環として映画『人間の條件』を12時間に亘り放送、翌1980年も映画『宮本武蔵』を一挙放送した。その反響の大きさから、1981年からはいよいよオリジナルドラマの制作に乗り出し、同年『それからの武蔵』を放送、以降はテレビ東京オリジナルの「12時間超ワイドドラマ」(放送時間も同日の12時から24時までの12時間)を放送する様になった。
1997年
1997年 TBS 主演:上川隆也
2004年
2004年 テレビ東京開局40周年記念 主演:市川染五郎
燃えよ剣
『燃えよ剣』(もえよけん)は、司馬遼太郎の長編歴史小説。新選組副長土方歳三の生涯を描く。
1962年(昭和37年)11月から1964年(昭和39年)3月にかけ『週刊文春』に連載され、単行本は新潮社で上下巻にて刊行、現在は新潮文庫上下巻(改版2007年)で重版している。
多摩時代から新選組結成、各地での戦闘、そして箱館戦争において土方歳三が戦死するまでが、「喧嘩師」の生涯として描かれている。
1970年
1970年 製作:NET・東映京都テレビプロ 主演:栗塚旭
国盗り物語
国盗り物語』(くにとりものがたり)は、司馬遼太郎の歴史小説。斎藤道三編・織田信長編の、二編構成からなる。
1963年から1966年にかけて『サンデー毎日』に連載。新潮社で、1965~67年に全4巻と前・後編2巻の単行本(新版は1991年)で刊行。新潮文庫全4巻で多数重版している。『司馬遼太郎全集. 10・11』(文藝春秋)にもある。
一介の油売りから身を起し美濃一国を手に入れた斎藤道三、道三の娘婿であり、尾張一国から天下布武を押し進めた織田信長を主人公とした作品。
連載当初は道三の生涯のみを扱う構想で、題名の「国盗り物語」は道三の生涯にちなんでいる。編集部の意向を受けて連載は続けられ、道三が主役の斉藤道三編では美濃一国を手にするまでの争いだったが、信長が主役となる織田信長編では信長編と銘打ちながらも、道三の甥にあたる明智光秀がクローズアップされ、光秀の視点で信長が語られている。
信長の前に立ちはだかる敵対勢力も武田信玄、石山本願寺、毛利家など名だたる大大名や一大勢力になり、天下統一を賭けた戦いへとスケールアップ。クライマックスは天下統一の夢を抱いた道三の相弟子と位置付ける両者が最終的に本能寺の変で激突し、重層的な構造になっている。
司馬遼太郎の長編小説の中でも構成に破綻がなく秀作と評される傾向にあり、伊東光晴らが1994年に選んだ「近代日本の百冊」(講談社)の中の一冊に選ばれている。
1973年
1973年 NHK大河ドラマ 主演:平幹二朗
司馬遼太郎の同名小説『国盗り物語』を核に、司馬の『新史太閤記』『功名が辻』『尻啖え孫市』『梟の城』などを合わせて大野靖子が脚色した。
美濃一国を「盗る」ことに生涯を賭けた斎藤道三と、彼に後継者と目され共に天下統一に邁進しながらも、最期には本能寺で激突する織田信長と明智光秀の生き様を描いていく。司馬作品をテレビドラマ化したもの。
前作『新・平家物語』がベテラン俳優を中心としたドラマであったのにくらべ、『国盗り物語』は、高橋英樹(信長)、近藤正臣(光秀)、火野正平(秀吉)、松坂慶子(濃姫)など20代中心の布陣であった。
これは、当時のプロデューサーが放送前年に颯爽と首相に就任した田中角栄に織田信長の姿を見出し、そのあふれるエネルギーをドラマで表現したかったからだという。
原作は道三と信長の二人がリレー形式で主人公になっているが、ドラマはこの形式を踏襲しつつも実際の主役は信長となっている。