はじめに

バーストとは
ギブソン社製のレスポールスタンダードの事で
1958年半ばから1960年に生産終了になるまでの約2年半の間に作られた物が、レスポールのなかでは最高峰と言われており、その愛称として「バースト」と呼んでいます
(ちなみに虎杢が入っているのは1958~60に製造されたオリジナルのレスポールサンバーストでも20%程度、その中でもバリバリのものはさらに1/4くらいという噂ですが、それ以前のゴールドトップの中にも杢目の強いモノが使われていたものもあるそうです)
今回紹介する70年代トーカイ製はその'58〜'60までに作られたバーストを理想とし、それに近づけるべくして作られた為、その確かな技術力とクオリティの高い出来栄えから国内外問わず高評価を得ています
70年代当時、本家を凌ぐ出来栄えとも言われ、ギブソン社からクレームがついたレス・ポールレプリカ・モデル
70年代後半、ギブソンがレスポールを再生産するも、その姿はギタープレイヤーが望むモノとは違っていました
'58'59'60のいわゆる【バースト】と呼ばれるモノたちはすでに高嶺の花で、入手はおろか実物をお目にかかる機会すら滅多にない時代、プレイヤーのニーズによって生またのがLes Paul Copy Modelでした
それらは今やジャパン・ヴィンテージと呼ばれるほど評価を受けています
実際、海外のレプリカのベースにされているものも多いほど完成度が高く
Tokai、 Greco、 Gaban、 Burnyなどのコピーモデルは、当時のギブソンのものよりも
ヴィンテージ志向が強く魅力を放っていました
ヘッドにLes Paul Modelを表記したクレーム前の国産メーカーたち

Burny Les Paul Model
【70~80年代】多くのミュージシャンが使用した日本製ギター【フェルナンデス編】 - Middle Edge(ミドルエッジ)

Gaban Les Paul Model

Ganson Les Paul Model

Anderson Les Paul Model
ヘッドのLes Paul Modelを微妙に変更したデッドコピーへ

Greco Super Real model

ARIA PRO II LeoPard model

Burny Super Grade Model

Gaban Let's Play Music
これらデッドコピーと呼ばれるギリギリ法を犯さない範疇で本家のヴィンテージを模倣したものは、Les Paul に対してのLove Rock、Super Realや、 Greco、Gaban、GibbonなどのGで始まるネーミングが多いでのが特徴です
ジャパン・ヴィンテージとは
正直、ジャパン・ヴィンテージという表現を良く思わない人も多くいます
『70年代の国産ギターを一括りに“Japan Vintage”と銘打って高い価格設定で売る風潮』の様なものが原因なのでしょうか
東海楽器製造

東海楽器製造 - Wikipediaを参考に要約すると
1947年 ピアノとハーモニカの研究開発を目的として東海楽器研究所設立。
1977年 Tokaiブランドのエレキ・ギターSTシリーズの生産、販売を開始。
1978年 エレキ・ギターLSシリーズの生産、販売を開始。アップライト・ピアノの生産、販売を開始。
1984年 フェンダー社から自社の偽造品製造をしているとして訴訟を起こされ、敗訴。裁判所命令により楽器が販売停止となり会社更生法申請。
1986年 東海楽器製造株式会社設立。
LSシリーズ
1978年より製造されているギブソン社レス・ポールのレプリカ・モデル。Les Paul Reborn、Reborn Old、Love Rockの名称もつけられている。高級モデルは現在の本家を凌ぐ出来栄えとも言われ、ギブソン社からクレームがついたため現在米国・ドイツでLSシリーズは販売されていない。
OEM
1997年フェンダー・ジャパン社の解散により、神田商会が商標のライセンス権を取得。筆頭にダイナ楽器と共に 1982年からの親会社であったフジゲンに代わるかたちでフェンダージャパンのOEM供給を開始。両者を見分けるポイントはシリアル・ナンバーで、フジゲン製造のものは MADE IN JAPAN 、ダイナ楽器および東海楽器製造のものは CRAFTED IN JAPAN と書かれている。
この他、モズライト(㈱フィルモアの国内生産モデル)のOEM生産を手がけている。
1977年〜1979年に生産された Les Paul Reborn

1978年製Les Paul Reborn LS-60

シリアルナンバーからすると1980年に製造されたとされるLes Paul Reborn

指版エンド部分にはグレードの刻印
1979年後期~1980年までの極めて短期間のみ生産された ”Reborn OLD”

Reborn OLD

うっすらと杢目が見えるReborn OLD LS-120

LS-120 マホガニー1ピースにマホガニー1ピースのバック
Reborn OLD サウンド
1980年以降使用されている LoveRockModel

LoveRockModel

ピックアップキャビティー内

Tokai LP トラスロッドカバー

ハムノイズ対策にしっかりと塗られた導電塗料に電気的なトラブルを配慮したLSシリーズで採用されているプリント基板
LoveRockModel サウンド
Tokaiカタログスペック

Les Paul models LS-150CS, LS-80GT, LS-100OS, LS-60CS, LS-80BS, LS-50BB

about LS and PB models 1
『REBOORNと入っているのはレスポールが生まれ変わり、甦った事を表す』とカタログに明記

about LS and PB models 2
カタログを要約すると
LS-50/60までは量産下位モデル
LS-80/100/120までは量産上位モデル
LS-150/200が受注生産モデル
といったところでしょうか
上の表のグレード一覧をざっと説明すると
グレード/TOP /BACK/NECK/ヘッド/角
LS 50/メイプル3ピース/マホガニー2ピース/マホガニー1ピース/14度
LS 60/メイプル2ピース/マホガニー2ピース/マホガニー1ピース/14度
LS 80/メイプル2ピース/マホガニー1ピース/マホガニー1ピース/18度
LS 100/メイプル2ピース/マホガニー1ピース/マホガニー1ピース/18度
LS 120/タイガーストライプ/マホガニー1ピース/マホガニー1ピース/18度
ラミネートメイプル2ピース
LS 150/タイガーストライプ/マホガニー1ピース/マホガニー1ピース/18度
メイプル2ピース
LS 200/最高級タイガーストライプ/マホガニー1ピース/マホガニー1ピース/18度
メイプル2ピース
製造年とシリアルナンバー
製造日付 シリアルナンバー
1977年 700xxxx
1978年 800xxxx
1979年 900xxxx
1980年 00xxxxx
1981年 10xxxxx
1982年 20xxxxx
1983年 30xxxxx
1984年 40xxxxx
1985年 50xxxxx
1986年 60xxxxx
1987年 70xxxxx
1988年 80xxxxx
1989年 89xxxxx
1990年 90xxxxx
1991年 91xxxxx
Tokai Guitar Registry - Tokai Gibson Copy Information
使用アーティスト
ロバート・フリップ
現在のtokai HLSシリーズ 3.8度の魔法
ハイグレードモデルとして生産されているHLSシリーズは、ネックの角度や作りこみなど、様々なところに工夫をこらしたトーカイの中でも技術の粋を集めたモデルになります
このHLSシリーズの特徴とも言えるのネックの仕込み角度ですが、抜群のテンション感を持つGibsonのオリジナル'59レスポールの仕込み角度が「3度」、Tokai通常ラインナップのLPモデルはすべて「4.5度」で、その差は1.5度であるのに対し、「3.8度」に設定されています。
【何故3度に設定しないのか?】と疑問に思ったのですが、
それは50年以上昔と現在の日本の気候や材質の経年変化が異なる為で、このHLSシリーズを長く愛用する事を前提に試行錯誤の結果、「3.8度」に行き着いた結果の様です
「たった0.7度の違いでは大した違いではないんじゃないのか?」とも思いましたが、そのたった「0.7度」の違いがサウンドの違いを生み出すポイントとなるようです
そして、オリジナルのLPを計測してピックアップのザグリの位置を決定する拘りようは、それがただ単純に外観を重視しての事ではなくサウンド面を考慮しての事で、どの位置で原音を拾うかによって出力されるサウンドに違いが出るからだそうです
クロサワ楽器店 | Tokai Order Model Series HLS / HLC Series - トーカイオーダーモデルシリーズ HLS / HLC シリーズ
金属(メタル)のボディだからタルボ、というネーミング
TALBOは鋳造(ちゅうぞう)と言う方法で、砂型に800℃以上のドロドロに溶けたアルミを流し込み、ちょうどエンジンやアルミホイールを製作するのと同じ方法で製作されているそうで、楽器としては木材特有の『弾き込む事や経年変化での鳴りの変化の様なものは望めないのかな』と思っていましたが、'97以降の復活TALBOではボディ内に装填するウレタンが経年変化をし、当初の柔らかなものから徐々に弾力性が失われ、結果ボディ内での残響が変化したそうです
そして、ボディの材料がアルミなので回路にノイズ対策をしなくてもローノイズでボディ材のサウンド特性も相まって素直でクリアなサウンドが望めます
![[SPEC]
■BODY:Cast Aluminum alloy AC-4B(アルミ鋳造1ピース)
■NECK:Maple NUT:Graphtech Trem-nut
■FINGERBOARD:Rosewood/350R,
■MACHINEHEADS:GOTOH SGM-07
■BRIDGE:Wilkinson VS100N
■PICKUPS:GOTOH Vintage HotX1,GS-1X2
■CONTROLS:1V,1T,5way-SW(CRL/USA)
■FINISH:Platinum Black](/assets/loading-white-036a89e74d12e2370818d8c3c529c859a6fee8fc9cdb71ed2771bae412866e0b.png)
Platinum Black /Wilkinson '17 Limited Upgrade
東海楽器・Talbo - Wikipedia
タルボ遣いの先人たち
最後に
『ジャパンビンテージ』という言葉
「過去の製品はクオリティが高い」というのが理由の様ですが、思った以上に幅の広い意味の様です
18歳になってやっとギブソンレスポールカスタム69年製を手に入れるまで、自分は長い間、お古のフェルナンデスのストラトコピーモデルを使いながらグレコやアリア、トーカイなどを持った友人達と音楽を語り合い、ミュージシャンが使う高級国産ギターや外国製ギターに憧れたものです
今思うと我々が使っていた低価格量産モデルも、憧れた高級モデルも『ジャパンビンテージ』という定義に入ります
ですから正直懐かしいという気持ちで「少しくらいならお金だしてもいいかな」くらいの気持ちもありますが、逆に高値でそれ程の価値があるのか正直疑問が残るものもあり、目利きの海外コレクターらが競って購入しているものには『投機』?と深読みしたくもなります
今や時代は変わりギブソンもヒストリックシリーズでクオリティの高い製品を出し、国産メーカーもオリジナリティを追及しつつ良質な製品を制作している中、希少価値だけで昔のコピーモデルを選ばなくても、幾らでも良いものは手に入るから自分には縁遠いですかね