連接車(連接台車)とは
なんのことだか、さっぱりわからないかもしれません。
要約すると、こういうことです。
電車の1両1両に、「台車」がついていますが、普通のは、1両の左右に台車が合計2つついていますが、連接車は、1両と1両の間に台車が1つ載っているということです。
台車
鉄道車両の台車 - Wikipedia
ファンは連接車がお好き
連接車の魅力は、その「走行音」にあります。
電車が通過する時の音って、電車好きでない人は何の関心もないかと思いますが、普通のイメージでは、「ガタン・ガタンガタン・ガタンガタン・・・」だと思います。
なぜ「ガタン・ガタンガタン」と鳴るかというと、1両に2つ、台車がついているからです。
それに対し、連接車は、1両の間に1台台車があるので、通過音は、「ガタン」「ガタン」と1個づつ鳴ります。
その音が非常にリズミカルなのが特徴です。
連接車の代表 小田急ロマンスカー50000系
小田急50000形 - 日本の旅・鉄道見聞録
小田急ロマンスカー7000系
小田急7000形電車 - Wikipedia
この小田急7000系、登場から30年以上たっています。
しかも登場当時の塗装で走っています。
この7000系の先頭車両に乗ってみたいものですね。
乗るなら今のうちです!たぶん。
連接車の歴史
Wikipediaによると、世界的に、1935年前後に、連接車が登場したようです。
連接車の魅力
鉄道ファンは、その走行音に魅力を感じますが、一般的にも魅力ある要素があります。
普通の車両は、乗客がいる床の下に台車が2台あるので、台車の振動、騒音が客室内に響きやすいという欠点があります。
その点、連接車は、お客さんがいない「連結部」の下に台車があるので、客室内には振動や騒音が入りにくいという利点があります。
また、普通の車両は2つの台車で重量を支えるので、大型の画一的な車両が出来上がりますが、連接車は、1つの台車で重量を支えるので、車体を大きくできないので、小型の車両になります。
いわばオーダーメイド的な車両になるので、小田急ロマンスカーをはじめ、個性的な車両ができます。
しかし、この「小型」「オーダーメイド」「個性的な車両」という要素が、連接車を主流から押しやることになるのですが・・・。
ファンには好かれるが、鉄道会社には好かれない連接車
よく、皆さんのまわりの鉄道ファンの人って、「昔の鉄道はよかった」と言ったりしませんか?
単なる「懐古主義」と思われるかもしれませんが、実は一理あるのです。
連接車は、「小型」「オーダーメイド」「個性的な車両」と書きましたが、昔の鉄道会社は、
「他社より個性的なデザインや性能を採用して、お客さんにたくさん乗ってもらおう」という考えでした。
しかし、今の鉄道会社の主流は、「コストダウン」一辺倒で、経済性を非常に重視し、違う鉄道会社でも、同じようなデザインで(デザイン1つ考えるのもお金がかかりますので)、部品も共通化され、違うのは帯の色だけ、なんてことになっています。
もちろん鉄道会社は、趣味のためのものではなく、「人を確実に安全に運ぶため」というのが第一の使命です。
デザインを統一することにより、他線への直通運転もしやすくなりますし、部品を共通化すれば、故障した時の部品の取り換えも容易であり、「安全・確実・迅速」なサービスが提供できます。
それに対し、連接車のような個性的な車両は、特殊な構造であるがゆえに、故障すると部品も特注のものを用意しなければなりませんし、連接車は車両と車両の間に台車があるので、車両を1両ごとに分けて分解するのが大変な手間となります。
なので、デフレで運賃の値上げもままならないこの時代には、鉄道会社もコストダウン第一にせざるをえないので、画一的な、個性のない車両が大量に走ることになるのです。
鉄道ファンのためにも、鉄道会社が値上げしてでも個性的な車両を作ってくれるような、景気のよい時代が再来するといいですね( ^ω^)・・・。
JR東日本 E233系の礎となった「ACトレイン」
E233系(中央線快速列車)
形式ガイド【E233系】 - 日本の旅・鉄道見聞録
すっかり首都圏の顔になった、JR東日本のE233系。
登場が2006年と、10年ちょっとしかたっていないし、JR東日本にしかない車両なのに、現在、3000両以上も活躍しています。
これは、日本全国、北は仙台から南は九州まで活躍している103系電車に次ぐ車両数です。
外国の方が日本を旅行して、日本の電車の絵を書いたら、みんなE233系を書くのでは(笑)。
【103系】国鉄時代の主力の通勤型車両。懐かしの混色編成の画像も! - Middle Edge(ミドルエッジ)
JR東日本は、稼ぎ頭の山手線に個性的な車両を投入しようと、「ACトレイン」という、連接車を研究、試作車完成までこぎつけましたが、途中で方針が変わり、E235系という、コストダウンを徹底させた車両の投入へと方針を変えました。
E235系は、「車内のつり広告のペーパーレス化」などで話題をよんだ他、運転開始当日にいきなり動かなくなり、わずか1日で大規模修理が必要になるなど、ニュースにもなった車両ですね。その前面の形状から、「電子レンジ」などと言われている車両です。
E235系(山手線の新型車両)
鉄道ファンには非常に評判のよろしくない車両です。
先頭は電子レンジみたいだし、側面は銀色で個性まったくなし(笑)。
ドアのところだけ山手線の色を塗っていますが、これは、これから山手線の駅にホームドアが設置されるため、これまでの「横帯」スタイルではホームドアの柵に隠れて色が見えず、銀一色に見えていったい何線だかわからなくなっちゃうので、ドアの上に色を塗ったという理由です。
ひたすら経済性を追求したこのE235系、やっぱり鉄道ファンには、「これが日本を代表する鉄道・山手線の車両か・・・」と絶句せざるを得ません(笑)。
ACトレインは1編成だけ京葉線に投入するも、すぐに廃車に
それでも、一応ACトレインの研究の成果をカタチにした車両を1編成だけ作りました。
E331系という車両です。
ディズニーランドの最寄り駅、舞浜駅を通る「京葉線」に配属されました。
しかし、故障続き。
そして、故障を直すのに連接車は大変な手間がかかりました。
あまりにも手間がかかったので、このE331系は、結局7年所属しただけで、お払い箱になってしまいました。
しかし、このE331系のような個性的車両こそ、鉄道ファンにはグッとくる車両なんですよね(笑)。
独特の走行音でファンを魅了し、乗り心地も良い連接車。
しかし、故障がおきると、非常にやっかいな面を持ちます。
繰り返しますが、電車は、止まってしまうと非常に多くの人に影響を及ぼします。
なので、できるだけ故障しない、故障してもすぐ直せる車両が重宝されるのは、至極当たり前のことで、鉄道会社の経済性としては、なんの問題もありません。
しかし、多くの人が使うということは、一種の「文化」でもあります。
つまり、「文化」を犠牲にして、「経済」を重視した、ということです。
実際に電車の故障などという理由で電車が止まってしまったら、その場にいる人は確かに怒り心頭になりますが、昔、「せまい日本、そんなに急いでどこへ行く」などという言葉がありました。
止まらない程度に個性的な電車は、これからも作ってほしいな、とは個人的には思います。
JR九州は、個性的な車両をたくさん作り、お抱えのデザイナーまで持つ、鉄道に非常に力を入れている会社ですが、あれだけ鉄道ネタでニュースになっても、鉄道事業は赤字なのです。
2016年に株式を上場までできたのは、鉄道事業で成功したのではなく、不動産業で利益を出せたからだと言われています。
しかし、個性的な車両に乗るために九州に行く人が増えれば、それだけ地域が活性化します。
JR九州は、自社だけの利益よりも、地域全体の発展を考えて、あえて赤字でも個性的な車両を作り出しているのでしょう。
小田急は、旅行が格安旅行会社の台頭などで多様化したため、小田急のメイン観光地である箱根に行く人が減ったことに危機感を持ち、個性的な50000系を作りました。
「経済性」と「文化」のバランスが問われる時代になるのかもしれません。