『ロッキー3』『特攻野郎Aチーム』で活躍した個性派俳優『Mr.T(ミスター・T)』
『Mr.T(ミスター・T)』の名前を知らなくても、『ロッキー3』のクラバー・ラング役や『特攻野郎Aチーム』のコング役を演じた俳優と言えば、多くの人が「ああ!あのヒトか!」とすぐに頭に浮かぶはず。
モヒカン刈り、ジャラジャラと首に巻き付けた金のネックレス、ド迫力のマッスルボディ。
主役を喰わんばかりの存在感で作品を盛り上げた名俳優である。
そんな『Mr.T(ミスター・T)』の意外と知らないプロフィールや現在の活動について紹介。

Mr.T(ミスター・ティー)
俳優として活躍するまでのMr.T(ミスター・T)
Mr.TことLaurence Tureaud(ローレンス・トゥロウド)は12人兄弟の11番目として生まれ育った。
4人の姉妹と7人の兄弟とともに犯罪が多発するシカゴの厳しい環境の中、母子家庭で育った彼は身を守るため、自らの肉体を鍛えることにした。
自分の名前「Tureaud」の頭文字「T」に「Mr.」を付けた芸名「Mr.T」は白人から尊敬を得られずに虐げられた幼少期の経験が影響しているという。
高校時代はレスリング・チャンピオンに。
鍛え抜かれた肉体を武器に、ダンバー実業高校時代はアメリカン・フットボールと並行してレスリングを学び、90勝1敗という圧倒的な強さで2年連続で市のレスリング・チャンピオンになった。

高校時代のMr.T(ミスター・T)

レスリングとアメフトで活躍した高校時代のMr.T(ミスター・T)
大学で挫折し軍人(憲兵隊)に。
卓越した運動能力で高校時代はレスリングとアメフトの両方で活躍。
将来を嘱望されて大学へ進んだMr.Tだったが、ここで挫折を味わうことになる。
たった1年でテキサスA&M大学を追放されてしまう。
地元シカゴの大学への進むのも断念せざるを得なくなったMr.Tは学業の道を諦め、陸軍に志願。
Military police(憲兵隊)に配置された。
除隊後はNFLのグリーンベイ・パッカーズでのプロ生活を目指したが、ひざの負傷のため断念。
ニューヨークへ行き、用心棒として生計を立てることにした。
ナイトクラブでの用心棒時代に「Mr.T」のキャラを確立。
Mr.Tはナイトクラブで用心棒として麻薬の密売人の入店を阻んだり、客同士のケンカを仲裁するなど200以上ものトラブルを解決していった。
しかし、乱闘において怪我した相手から訴えられることも度々あった。
また、Mr.Tの評判を聞きつけ、時には暗殺の依頼も来たがそれは断ったと語っている。
無作法な客から奪ったと金のネックレスを戦利品としてジャラジャラと首に巻き、「俺を尊敬しろ」と『Mr.T』と呼ばせた。
そして、雑誌『ナショナル・ジオグラフィック』で見かけた西アフリカ・マンディンカ族の戦士を参考にモヒカン刈りを取り入れた。
こうして後に映画やドラマで活躍する「Mr.T」の個性的なスタイルができあがったという。
ボディガードに転身、多くの著名人を保護。
用心棒として有名になったMr.Tはボディガードに転身。
モハメド・アリ、スティーブ・マックイーン、ダイアナ・ロス、マイケル・ジャクソン等の有名人から依頼が舞い込むようになり、そのギャラはギャラは1日で3000ドル(約30万円)にも跳ね上がり、最高1日10,000ドル(約100万円)まで達したという。

モハメド・アリとMr.T

マイケル・ジャクソンとMr.T
テレビ番組への出演がシルベスター・スタローンの目に留まる
ボディガードとして活躍していたMr.Tは、NBCのテレビ番組「アメリカズ・タフエスト・バウンサー(アメリカで最もタフな用心棒)」に出演。
強靭な肉体と圧倒的なパワーを武器に優勝し、その活躍はMr.Tの知名度を一気に高めた。
そして、この活躍を目にしたシルベスター・スタローンは、ロッキー3の出演を要請。
Mr.Tは予期せず俳優デビューすることになった。
デビュー作、映画『ロッキー3』のクラバー・ラング役でブレイク
シルベスター・スタローンのオファーを受けて「ロッキー3」でクラバー・ラング役を演じたMr.Tは、その個性的な風貌と強面、筋骨隆々の迫力ある肉体を存分に活かし、ロッキーの対戦相手という大役を見事にこなした。

ロッキー3(1982年)
『特攻野郎Aチーム』のコング役ではコミカルな演技も披露
ロッキー3で華々しい俳優デビューを飾ったMr.Tは、勢いそのままにアメリカのNBCで制作・放送されたTVアクションドラマ『特攻野郎Aチーム』に出演。
コミカルな演技も難なくこなし、ただの肉体派俳優でないことを証明した。

テレビドラマ『特攻野郎Aチーム』
1985年にはプロレスラーとしてデビュー。
俳優として活躍するMr.Tはその知名度を活かし、1985年にはプロレスラーとしてWWF(現WWE)にハルク・ホーガンとコンビを組み電撃参戦。
ホーガンのセコンドを務めたのちに第1回レッスルマニアのメイン戦でパイパー&オンドーフ組と対戦、勝利を収めた。
しかし、プロレスラーとしての下積みを経ずにメインイベントに起用されたことから、多くのプロレスラーから反感を買ってしまい嫌がらせを受けることもあったと語っている。

プロレスラーとしてのMr.T
俳優として全米で人気を獲得していたMr.Tのプロレス参戦は大きな関心を誘った。
1980年代、北米東部地区の一団体に過ぎなかったWWF(現WWE)が世界規模のスポーツ・エンターテイメント企業となるまでにMr.Tが果たした貢献は大きいとして、2014年にWWE殿堂へ迎えられた。
Mr.T(ミスター・T)の主な出演作品
Mr.Tの1990年代~最近の活動ついて
映画・ドラマ・アニメ、そしてプロレス。
八面六臂の活躍をみせたMr.Tであったが、1995年にはT細胞リンパ腫に侵されていることを公表、以降はCM出演などに活動を制限していった。
1999年には病状が回復したとして活動を再開。
テレビドラマやテレビショッピング番組を中心に活躍している。
2005年8月末、1800人以上が死亡し約120万人が避難したアメリカ史上最大級の自然災害「ハリケーン・カトリーナ」の復興を手伝ったMr.Tは以降、自身のトレードマークの一つであった金のネックレスなど派手な格好を控えている。
「多くの人々が命を失い、土地と財産を失うのを見た。キリスト教徒として私は金を身につけ続けていることは神の前で罪であり、すべてを失った人には鈍感で無礼であると感じました。」と語っている。

DIY番組「MR.T I Pity the tool」
私生活では別れた妻との間に息子1人、娘が2人。
現在は故郷イリノイ州シカゴとニューメキシコ州アルバカーキに住居を持ち、類い稀なキャラクターを生かしてマイペースで仕事をしている。