映画「死刑台のエレベーター」
70年代に「映画を観るならフランス映画さ」という歌詞を持った曲が流行ったのを憶えている方もいらっしゃることでしょう。そうなんです。当時は特に映画といえばフランス映画、フランス映画といえばオシャレでデートには最適ということで重宝したものです。
俳優さんも街並みも美しく、ファッションはお手本でした。
ただ、ハリウッド映画と違い、日常の生活を淡々と描くものが多かったためでしょう「フランス映画は退屈」という意見は多く、映画館で寝ている人も見受けられました。
それでも当時の若者は背伸びをしてデートにはフランス映画を観たものです。
もちろん、フランス映画は退屈なものばかりではありません!素晴らしい映画は星の数ほどあります。しかし、「そう、それは分かっているけど眠くなる」という方に最適な映画のひとつをご紹介しましょう。
ヌーヴェルヴァーグの幕開けを飾る傑作「死刑台のエレベーター」です。
死刑台のエレベーター
死刑台のエレベーターは、1957年(フランス/ヨーロッパ・ビスタ(1.66:1)サイズ・モノクロ91分)に制作され、日本公開は1958年9月26日、その後、何度かテレビで放映され、リバイバル上映もされた後、2010年10月9日にはニュープリントで再上映されています。
この映画ポスターからしてオシャレ具合が伝わろうかと思いますが、まだこの映画をご覧になっていないのであれば、その期待を裏切ることはありません。
この映画がなぜ眠くならないかと言いますと、サスペンス仕立ての恋愛(不倫ですね)映画だからなんですね。
そして、何より素晴らしいのが音楽です。映画はたしかに名作ですが、音楽だけ取り出しても名作の誉れ高い作品なんです。
それでは順に紹介していきましょう。
キャスト
先ず、監督はフランスの名匠となったルイ・マル監督の実質的デビュー作です。
ルイ・マル
ルイ・マル監督は当時若干25歳といいますから驚きです。そして、ヒロインを務めたのが当時29歳だったジャンヌ・モロー。あまりの美しさにため息が出る程です。
ジャンヌ・モロー
ジャンヌ・モローはこの映画で一躍注目を集め、大女優への道を歩むことになります。因みに、ルイ・マル監督とジャンヌ・モローは、当時、恋愛関係にあったそうです。映画監督ってやはりモテるんですね。
相手役は、モーリス・ロネが務めています。彼もまた素晴らしい役者さんで、残念ながら1983年に亡くなられていますが、生涯で100本以上の作品に出演しているほどです。
モーリス・ロネ
他にモーリス・ロネの出演作品といえば「太陽がいっぱい」や「鬼火」が印象深いです。
そして、そして、そして、この映画の真の主役と言っても良いのではないかというのが、音楽を担当したマイルス・デイヴィスです。
マイルス・デイヴィス
そうなんです。映画「死刑台のエレベーター」の音楽は、ジャズ界の帝王とさえ言われたマイルス・デイヴィスが担当しているのです。
しかも、録音は信じられないことに、いくつかのメロディの断片を用意していたとはいえ、真夜中のパリのスタジオでラッシュ・プリントを見ながらアドリブで録音されたという伝説的な即興演奏を聴くことができます。
それにしても、いくらマイルス・デイヴィスが天才とはいえ、とても即興にちかいカタチでの録音とは思えない素晴らしい作品となっています。
死刑台のエレベーター
アマゾン : マイルス・デイヴィス, バルネ・ウィラン, ルネ・ユルトルジュ, ピエール・ミシェロ, ケニー・クラーク : 死刑台のエレベーター[完全版] - Amazon.co.jp ミュージック
「メイン・タイトル」から始まり、「エレベーターの中のジュリアン」、「シャンゼリゼを歩むフロランス 」そして「モーテルの写真屋 」など、ストーリーに沿った曲がシーンを盛り上げていきます。
録音メンバーは、マイルス・デイヴィス(トランペット)の他、バルネウイラン(テナーサックス)、元オリジナルMJQのメンバーのケニー・クラーク(ドラム)、ルネ・ウルトルジェ(ピアノ)、ピエール・ミシュロ(ベース)です。
ストーリー
【物語】
ジュリアン・タベルニエ(モーリス・ロネ)は、自分が勤める会社の社長夫人であるフロランス・カララ(ジャンヌ・モロー)と不倫をしていました。
そして、二人で社長殺害を計画。ジュリアンは、フロランスの夫を自殺に見せかけて殺してしまいます。ところが、完全犯罪の筈でしたが思わぬミスを犯してしまい、一旦現場に戻ることになります。すると、運悪く、ジュリアンは現場のビルのエレベーターの中に閉じこめられてしまったのです。